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234◇幼女達の制服姿

 



 酒宴もお開きになり、各々明日に向けて帰路についた。

 幸助も久々にダルトラでの自宅に帰る。

「ほう、此処が(あるじ)の屋敷ですか。我が(あるじ)が住まうには少々手狭では? ましてやトワ様やエコナ嬢、娘御様もご一緒となると……さてはダルトラめ、(あるじ)を軽く見ているのか……? ご安心ください、外交上の問題を盾に必ずやより素晴らしい屋敷を用意させてみせます故! このトウマにお任せあれ!」

「そういや、あっちの屋敷は広かったもんなぁ」

 それこそ、屋敷という感じだった。

「そうでしょうそうでしょう」

「でもこれでいいよ。別に不満は無いし」

(あるじ)は慎ましやかなのですね」

「うぅん……?」

 自分ではそうは思わないのだが、言われると自信が無い。

「それより、なんでトワ達一階で待たされてるの?」

 そうなのだ。

 リビングの椅子に三人は腰掛けている。

 エコナとライムは戻るなりシロに連れられて二階に行ったきりだ。

 上がる際に「少し待ってるように」と言われたので、素直に待っている。

「英雄と他国の領主代理を待たせるなんて、あいつ大物だな」

「そんなこと言って、尻に敷かれるの嫌じゃないくせに」

 妹にそういう話題を振られるのは、あまり楽しくない。

「柔らかいしな」

「そういう話じゃないんですけど?」

 汚いものを見る目で睨まれる。

 ともあれ、追及がやんだのでよしとしよう。

「お二人は本当に仲が良いのですね」

「あぁ、言ってやってくれ。十八でブラコンはきついぞって」

「こっちのセリフだし」

 仲が良いという評価。前はなんとか反論を試みたが、もう半ば諦めていた。

 最近よく言われるので、慣れてしまったというのもある。流した方が楽だ。

 実際、過去生で妹を失う以前よりも、距離感は近いかもしれない。

 あの時は互いに交友関係が分かれていたが、今は大体一緒というのもあるかもしれないが。

「おっまたせー!」

 シロが仕事終わりとは思えないテンションで降りてくる。

 上機嫌だ。ドヤ顔にアヒル口。絶妙に似合っているのがまたなんともいえない。

「これだけ待たせたんだから、さぞ素晴らしいものなんだろうな。見ろ、トワなんて待たされ過ぎてただでさえ鋭い眼光が更に鋭くなってるぞ」

「なってないんで。イチャもんつけるのやめてもらっていいですか?」

「エコナ嬢と娘御様は何処(いずこ)におられるのですか? もう眠られたとか?」

 トウマの至極尤もな疑問に、兄妹は口論をやめる。

「さっすがトウマさん。隙きあらば仲良し度を見せつけてくる兄妹と違って、よく気づきましたね」

「え、シロさんそんな風に思ってたの……」

 ちょっとショックを受けている様子のトワだった。

「というわけで、まずはエコナちゃんに登場してもらいましょう~」

 シロの声で、蒼氷の童女が降りてくる。

 待たされた意味が分かった。

 お披露目だ。

 エコナは学院の制服に身を包んでいた。

 白と赤を基調とした、パフスリーブのワイシャツにコルセットスカートを合わせたようなデザインの制服。

 以前アリスが着ているのを見たことがあったが、エコナが着ると印象が変わる。

 恥じらうような俯き加減に、それでいてこちらの反応が気になるのか、ちらりと向く視線は天然の上目遣い。

「か、かわいさの暴力……」

 トワは胸を切なげに押さえていた。

 正直、気持ちは分かる。

「ふむ……学院とやらの制服ですか。エコナ嬢の儚げな印象によく嵌っていますね」

 トウマも微笑んでいる。

「こうすけ、さん。どう、ですか? にあって、ますか?」

 不安げな顔のエコナに、幸助もやられる。負けだ。完敗である。

「もちろん。すごく似合っててびっくりした。見れて嬉しいよ」

「……えへへ」

 もじもじと指同士を絡ませて、綻ぶような笑みを見せてくれるエコナ。

 もう辛抱できないとばかりに、トワが抱きついた。

「エコナちゃん! かわいすぎるよ!」

「ひゃあ」

 驚いた様子を見せつつも、エコナは抵抗しない。

「いいのかいトワちゃん、もう一人残っているのにそんなに興奮してしまって」

「そ、そうだった……ここから更に、ライムちゃんもだなんて……トワ耐えられるかどうか」

 二人共なんだかよく分からないテンションになっていた。

 かわいいは女子を狂わせるのかもしれない。

「ライムちゃーん。どうぞー」

「お母さんに呼ばれたので、飛び出ます。しゅぱっと俊敏に」

 とんっと階段を飛び降りてくる。

 普通の子供なら危ないと窘めたり叱りつけるところなのだろうが、彼女は過去生からして戦士だった童女だ。アークレアでは英雄規格。そのあたりを言ってもピンとこないだろう。

「行儀が悪いぞ」

 一応、それだけ言っておく。

「お父さんがそう言うなら、おうちの中ではしないようにします」

 素直で良い子だ。

「それより、どうでしょう。このゴワゴワしてお金が掛かっていそうな服は」

 礼装だった。

 彼女の『黒白』を表現するのは大変だったろうに、見事に白と黒の線が入り交じったデザインになっている。

「こっちは可愛い&凛々しい!」

 トワが叫んだ。

「ダルトラの大稀人に支給される特殊な衣装という認識で合っていますか? 大変お似合いですよ、娘御様」

「ありがとうございます。どうでしょうお父さん」

「可愛いけど、それ以上にかっこいいな」

「かっこいい……強そうということですか?」

「嫌だったかな」

「いいえ、嬉しいです。可愛いと褒められ、強そうと褒められ、わたしは大変ご満悦です。たとえるならそう、まるで満腹の時のように」

 彼女の喜びを祝福するように、二階から白い大型犬と黒い毛玉の群れが降りてくる。

 ライムが解放した魔物だ。

 それはそういうことになるのだろうが、改めてうちで世話しているのだと再認識した。

 ふぁあ、とライムが欠伸をする。

「眠いです」

「そうだな。そろそろ寝ようか」

「提案があります」

 ライムがしゅぴっと手を挙げる。

「お母さんもエコナお姉ちゃんも、そしてもちろんわたしも、お父さんがいなくて大変さみしい思いをしました。よってお父さんには今日、わたし達と一緒に寝てもらいたいのです」

「え?」

 



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