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15◇攻略者、獲得ス

 


 

 その日の攻略は、ここまでと決めた。

 クレセンメメオスに殺された者の内、遺体の一部でも残っている者のそれは、その場で埋葬した。

 地上へ戻る途中、七層にて、焼け焦げた遺体も、埋葬した。

 エコナに尋ね、二人の知らない死者の位置を教えてもらったが、大抵は血痕が残っているだけで、肉片一つ残っていなかった。

 シロの【我其の衣纏いし[クラヴェリ・ウェリア]】を全員に掛けたことで、魔物との遭遇率は激減。

 元々、結構な数を殺して進んでいた、というのも関係あるかもしれない。

 地上に戻り、駐屯軍の統括隊長に青年貴族のことを報告。

 彼が言うには、青年貴族は二十の奴隷と二人の従者を引き連れて迷宮に突入したらしい。

 エコナも頷いたので、事実だろう。

 幸助はグラスの映像を一部提出。

 それを確認した統括隊長の、幸助を見る目が変わった。

 畏敬の念らしきものを、視線に込めるようになった。

 レイスフォルムというらしい。レイスと呼ぶことにした。

 貴族の家名はレイスが把握しているとのことで、報告を任せることにする。

 幸い、快諾してもらえたので、感謝を述べる。

 面倒事は避けたいので、可能ならエコナのことを伏せていてもらいたいと頼むと、これもまた了承してもらえた。

 重ねて感謝すると、「あなたはきっと、八人目の英雄の器だ。期待しております」と、言われた。

 レイスは、統括隊長なんて務めるくらいだから、幸助の父くらいの年齢だったが、敬語を使われてしまう。

 その後、王都ギルティアスに戻り、判断屋と呼ばれる、石造りの建造物へと向かった。

 魔物の討伐映像を提出することで、報奨金を得られる場所だ。

 同じ映像を二度提出するなどの不正が出来ないように処理する為、多少時間が掛かった。

 貰った金は、シロが十五イルミ九十三ウルス四エイル。

 幸助が、四十アルク八十イルミ六十三ウルス十五エイル。

 一アルクが百イルミで、一イルミが百ウルスで、一ウルスが百エイルで、エイルが最小単位らしい。

 ありがたいことに、価値の高い順番から“アイウエ”と続くので、覚えるのは楽だ。

 金貨銀貨銅貨石貨なのも、わかりやすさに拍車を掛けている。

 ミルク一杯が十五エイルらしい。

 幸助だけやたら報奨金が高いのは、クレセンメメオスをほぼ単身で討伐したからだ。

 シロに助けて貰ったので、分前を半分渡すと言ったら笑われた。

「手柄を主張できるようなことはしてないから、やめて」

 魔法具はどうすると、係員に訊かれた。

 仕事のできそうな、二十代後半程の女性だ。

 嵌まるのが小指だけだったので、小指に着用する。

 丁度いいと、ステータスを確認。


 【名前】クロ 【レベル】3 【クラス】英雄へ至る者

 【ステータス】

 生命力450(158) 魔力950(850)

 膂力350(285)  体力450(285) 持久力219(50)

 技力500(395)  速力378(250) 知力312(200)

 運命力Unknown 天稟Unknown

 【状態】健常

 【経験値】158

 【スキル】

 ◆先天スキル

  『セミサイコパス』Unknown/『オートリフレクション』SS+/『リザーブチャーム』S+/『ヒーローシンドローム』Unknown/『ヒストリカルシンギュラリティ』SSS/『ラックルーラー』SSS/『ナイト・オブ・ナイツ』AA/『フルストレングス』AAA+/『レアファイドラテラルシンキング』SS/『黒[???]』E

 ◆後天スキルⅠ

 『空間識』SS/『状況判断』SSS/『適応』SSS/『知識』A/『速読』B+/『対心的苦痛』S/『対身的苦痛』SSS/『社交性』A+/『読心』SS+/『膂力補正』SS/『体力補正』SS/『持久力補正』SS/『技力補正』SS/『速力補正』S/『知力補正』A+/『危機察知』SSS/『取捨選択』-SS/『正義感』S/『酷薄』S/『深慮即断』SSS

◆後天スキルⅡ

 『クレセンメメオスの魔力再生』A+

 『クレセンメメオスの対自然属性』S-

 『クレセンメメオスの対衝撃』A+

 『クレセンメメオスの対貫通』A+

◆後天スキルⅢ

 『クレセンメメオスの魔力再生』A+

 『クレセンメメオスの対自然属性』S-

 『クレセンメメオスの対衝撃』A+

 『クレセンメメオスの対貫通』A+

【魔法】

 ・『火』

 【焼き尽くせと命ずる[バイルウィンタ・ウォン]】

 ・『水』

 【洗い流せと命ずる[トレンスラー・ウォン]】

 ・『風』

 【吹き荒べと命ずる[ストルテア・ウォン]】

 ・『地』

 【刃と成れと命ずる[セイスクロレア・ウォン]】

 【其は城塞が如き堅固の体現者[シークドイル・エルク]】

 ・『氷』(『水』+『風』)

 【凍て付けと命ずる[アイーシャ・ウォン]】

 ・『爆』(『火』+風)

  【爆裂せよと命ずる[ヴォルガルト・ウォン]】

 ・『切断』

 【悪神断つ刃と成れ[スラックラー・ヘイズ]】

 ・『黒』

 【黒纏】

 【黒喰】

 【黒葬】 

◆適性魔術属性『黒』『火』

【加護】

 『トワの祈り』――生存率極度上昇

【呪い】

 『罪咎の業』――精神汚染進行率極度上昇

【功賞】

 『因果応報の理、実現』――実行者補正(全ステータス少量上昇)

 『クレセンメメオス、討伐』――実行者補正(対『火』属性S)

【装備】

 『異界の装飾具』――補正無し


 幸助は、『黒』魔法を理解する。

 ギルから送られてきたメッセージにあった通りなのだ。

 黒によって捕食したものの、能力や特性を得る。

 先天スキルは、持って生まれた才能。

 後天スキルⅠは、通常の手順で努力したことによって手に入れたもの。

 後天スキルⅡは、魔術的開発によって手に入れたもの。

 後天スキルⅢは、魔法具装備によって発現しているもの。

 クレセンメメオスの指輪によって、後天スキルⅢが追加されたのはわかる。

 しかし、後天スキルⅡにも、同じスキルが加わっている。

 魔術的開発。つまり、『黒』によるものだ。

 スキルの重ねがけも有効らしいから、無意味ではない。

 どうしたものかと考えていると、シロが言った。

「捧げとくと、国から表彰されるよ。クレセンメメオスくらい強いと、望めば小さな家くらい貰えるんじゃないかな」

 とのことだったので、国に捧げることにした。

 後日また呼び出されるとのことで、判断屋を後にする。

 次に何するかと問われたので、幸助は即答した。

「エコナの服を買う」

 エコナは恐縮していたが、シロから異論は無かった。

 幸助は元いた世界でもファッションセンスがあるとは言えなかったし、この世界に至っては判断すら出来ないので、全てシロに任せた。

 幾つか購入したが、着替えたのはレースのあしらわれたワンピース。

 エコナがコートは手放したくないと言うので、寸法をエコナに合わせる形で直してもらうことにした。

 それらが済み、しばらくはシロの酒場で泊まると決め、酒場に向かう。

 既に夕方に差し掛かっていたからか、大盛況だった。

 どうにかテーブル席を見つけ、腰を下ろす。

 余談だが、形式上、エコナは幸助の奴隷ということにした。

 登録上もだ。

 奴隷は人権が認められないが、所有者がいる場合は、無闇に傷つけると罪に問われる。

 所有物の、損壊罪にあたるという理屈らしい。

 そして、奴隷が主人にタメ口をきく行為や、名前で呼ぶなどはご法度ということで、エコナは結局幸助を「ご主人様」と呼んでいる。

「ご主人様、あの、わたしなどが、御一緒に、座るなど許されるのでしょうか」

「大丈夫だ。文句を言う奴がいたら殴る」

「あたしの店で暴力沙汰はやめてねー? それに、ここは来訪者が集まる酒場だから奴隷差別する奴なんていないよ」

 実際、その通りだった。

 皆気のいいやつだったので、幸助はその日、皆に酒を奢ることにした。

 シロがクレセンメメオスを倒したことを暴露したので、皆にその時の話をしろとせがまれた。

 一夜で顔見知りが随分と増え、気付いたら朝だった。

 木組みのベッド。麻っぽい何かが敷き詰められている。そして固い枕と薄い毛布。

 狭いベッドに、幸助は寝ていた。

 幸助と、エコナが寝ていた。

 幼い肢体が、真横にある。

 子供特有の、蜂蜜を混ぜたホットミルクみたいな、甘い香りが漂う。

 きっと、シロあたりが二人まとめてベッドに放ったのだろう。

 まぁ、別にいい。

 彼女の瞼から涙が漏れていたので、拭う。

 色々と、思うところがあるのだろう。

 癒えない傷も、沢山抱えている筈だ。

 だから、せめて、癒せる部分は、癒やしてやりたい。

 頭を撫でたら、起きてしまった。

「あ、悪い」

「ご、ご主人様っ」

「え、そんな嫌だったか?」

 エコナはベッドから転がり落ち、咄嗟に土下座の体勢をとった後、ハッとして顔を上げ、膝立ちになってから頭を下げた。

 顔が真っ赤だ。

「も、申し訳ありません。わ、わたしなんかが、ご主人様と床を共にしてしまうなんて……」

「いや、別にいい。俺こそ悪かった。部屋、二つとるべきだったな」

「そ、そんな! 滅相もありません!」

「それに、俺たちは対等な仲間だ。ベッドが一つしかないなら、女性に譲るべきだった」

「いえ……あの…………ありがとう、ございます」

「転んだ時、どこか打たなかったか?」

「平気、です」

 嬉しそうに、エコナが笑う。

「あ、今更だけど、おはよう」

 笑いかけると、満面の笑みが返ってくる。

「はい、おはようございます、ご主人様」

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