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第五話 待っていた言葉

 不幸。


 不幸。


 ふこう。


 フコウ。


「あんまり期待してない、だからいいよ」

「……え……」


 弱音に、きっぱりはっきりと、傷つくようなことを言われてしまった。

 歯に物を着せぬ言い方。だから、余計ちくっと胸は痛み、世界が暗くなった錯覚を覚える。

 必要ないの、私は?

 私という存在は、誰にとっても必要ないの?

 それなら、私はどうやって生きていけばいいの?

 生きている限り、誰かに必要とされて生きていきたいよ。

 そんな思いが過ぎって私は気づく、これじゃあただ肯定してほしくて、愚痴ってしまったようじゃないか。

 でもシェイはそんな私にお構いなく精悍な顔つきで、答える。

 こんな時だけ美形を主張するのは、卑怯だわ。


「MASKが判る、それ、ボクの役目。探す、夕子の役目、違う。夕子、MASKを探す、違うもの。夕子、職を探す、それ、役目でしょ?」


 言われてどきりとする言葉。

 身が震えて体中が喜び、その言葉を待っていた!――と、感動する。

 体中に歓喜が迸り、嬉しさに泣きそうになる。


 今のが丁度そんな感じかな。

 そう、私は職を見つからないからって、MASK探しの役目を被せていた。

 MASKを探すのは、私じゃない。


 それは、太陽の子の役目。


 だから、私は期待されなくて当然なんだ。私は、「手伝う」だけなんだから。

 シェイはシェイの出来ることを、私は私に出来ることを。探すべき。


 子供子供してるメンタルが幼いシェイにそんな事実を気づかされるのは、少し悔しいし気恥ずかしいけれど、何だか少しほっとした。


「シェイ、焼きリンゴ特別美味しいの作ってあげる」

「――夕子は、何だか不思議、だね。暖かい、夕子は暖かくて、優しい。そういう存在が、昔いたような、いないような気がする」

「誰?」

「ううん――パイじゃないし、グイじゃないし……ハオは違う」

 シェイは何処か遠い眼差しで、しょんぼりとしていた。

 表情は暗くて、いつも無邪気で明るい子がこんなに暗い顔をすると、心配になってくる。

「シェイ、帰る前に遊んでいく? 城下町で!」

「いいの? あ、待って、それなら尻尾、隠す! 待って待って、お願い!」

 シェイは慌てて尻尾を、瞬くと姿の一つから消して、完全なる人間になっていた。

 にこにことシェイは微笑んで、私の手を繋いでくる。

 完全に懐かれたようだ。


「夕子、人の街、何があるの?」

「シェイはどんなものが好き?」

「……好きな物? ……――サクラ」

 シェイは考え込みながら、答える。

 私と手を繋いで歩いて、片方の手でちょうど会った木々を指さす。

「あれはサクラ違う、でしょ? サクラの違い、判る! 凄いでしょう!」

 褒められたがっていたから、私は「そうね」と頭を撫でてあげる。

 嬉しそうに、握っている手をぶんぶんと振って、シェイと並んで歩いて行く。


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