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第三十一話 空との決着


「こんな時だけ、親だというんじゃな。オレらが苦しんでいるときには、何も反応しなかった癖に。シェイが苦しんでるのに何も反応しなかった癖に」

“雲の子、お前我らを愚弄するのか? 魔物の癖に。魔物を引き取った我らに”

「愚弄じゃなかろう、真実じゃろ? 嘘だらけのお前らの中にあるただ一つの真実。魔物なのに引き取ったのは、協定を結びたかっただけじゃろう? 自分勝手じゃな、何処までも! こんな親を怯えていたのかと思うと、自分が馬鹿らしく思えるわな!」

“――人の子、お前の差し金だな…”

 急に人のことを言うんだもの、驚いちゃったわ。

「私はただシェイを見せただけよ、こうやってね!」

 そういって、シェイを見せつけるように少しだけ腕を広げる。

 色無く、悲しみに満ちたこの姿を。

「見なさいよ、この苦しんでいる顔! 全部全部貴方達が、苦しめた所為よ! 貴方達のゲームの所為よ! シェイは生きたいって言ってたわ! それなのに死んだの、何でよ? 生きたいって言ってるシェイが何故死ななきゃならなかったの!? 誰よりも貴方達を慕っていたのに! その思いに、貴方達は気づいてたんでしょ!?」

 シェイは、幸せになって欲しいと言っていた。

 皆の傍に居たいと言っていた。今、皆の傍に居るよ、望んだ形ではないだろうけれど。

“……ひっく”

 ひっく?何故しゃくりを?

 泣いているのだと、気づいたのは、次の瞬間。星の瞬きが多くなっている。

 星が泣いているのだ。

「……母上」

“ごめん、ごめんなさい。シェイ、ごめんなさい。貴方を傷つけると判っていても、反対出来なかった。怖かった、怖かったの、仲間はずれにされることが”

 …仲間はずれにされる怖さと寂しさは、私はよく知っている。

 何せ、友達が居なかった身ですから?

 ……星への怒りが揺るいだ。

 皆も同じだったようだったから思わず顔を見合わせた。

 だが、太陽と月は違うようで、次の瞬間、皆が危ないと私に声をかけてきた。

 ジャオファが後ろで強化されたシールドを張るが、ばりぃんと一気に砕け、太陽と月のエネルギーは私を狙う。

 目を開いた瞬間が、死後の世界だと思っていた。

 ああ、貴方に会うんだ、怒られちゃうな、とか思っていたら、何の熱もない。

 何の熱もなく死ねたのかな、それとも耐熱魔法の効果かな、と思って目を開けたら、金と銀の光が、砂のように頭上から降ってくる光が私を守ってくれていた…。


 ――ユウコへ、プレゼント。祝福の魔法。空が、夕子を守ってくれるよ。


 ……祝福魔法!

 シェイ、死んでまで私を守ってくれるの? こんなに思いは強かったの? 有難う、有難う、有難う以外のお礼の言葉が思い浮かばない。私って貧困な発想だから。

 眼窩から涙が滴り落ちる。嬉しくて。愛されてることが実感できて。胸が温かい、これは魔法の所為かな? 貴方の所為かな? 有難う、私、一生貴方を忘れないわ。

「シェイの……祝福魔法…? 金色と銀色のシールドなんて、シェイ以外見たこと無い…」

「……シェイがね、ハオと会う前に、祝福魔法をかけてくれたの」

「……あの子……なんていうか……――本当に、可愛い子」

 ハオが笑ったような気がした。でも、次の瞬間、ハオとグイが月を八等分にしていて、ジャオファに太陽を凍らせて、と命じていた。パイロンもそれに協力するように、氷系統の呪文を唱える。魔法に関しては、世界一と言える二人が一斉に唱えたら、威力は計り知れない。例え太陽だって、凍るだろう。

“馬鹿な、馬鹿な! ゲームの駒が、たかが駒が私たちを殺すなど!”

「ゲームの駒だって、投げつければ鈍器になるのよ!」

『死』

 ハオとジャオファが同時に発動の言葉を唱えると、太陽がびきびきと凍り出す。下から上へ、大きな氷の黒い塊が出来上がる。

 それが出来上がった瞬間、私以外の全員でかかと落としを喰らわせて、砕いた。

 世界に闇が訪れる瞬間。私が悪の魔法使いと謡われる瞬間だった。

「……さて、星は、許すとして…雲はどうしましょうか?」

「オレの親は、オレが始末をつけようぞ」

 そういって、パイロンが扇を大きくして、それで雲を散らそうとした。

 だが、雲は黙って、反撃してくる。ごろごろと鳴り、雷をパイロンに向けた。

 パイロンはもろにくらって、倒れかけるが、倒れない。

 それは自分の強さか、信念の強さか、目的の強さか。

「死」

 そうパイロンが口にすると、扇がばちばちっと光った。

「お前の攻撃が判らないでか。お前の攻撃は、水、雷、雪、その三つしかない。一番簡単な雷の攻撃が来ると判れば、魔力を蓄積せんでも、跳ね返せばいい!」

 パイロンは扇に喰らった雷を、全部吸収していたのだ。

 味方ながら、敵に回したら怖い魔法使いだと思った。

「愚弟の痛みを、思い知れ」

 それでもパワーが足りないようで、パイロンは魔力を次々と注ぎ込む。

 そこに、ジャオファが手を乗せる。

「…………愚父」

「……――お前を産んだ責任だ。あいつと契った責任を取りたいだけだ、勘違いするな。協定なんて馬鹿馬鹿しい。協定など要らなくとも、我ら魔は己を守れる。弱い奴は死ね」

「……――末恐ろしい父親じゃよ、貴様は」

 パイロンは、子供のような笑みを浮かべて、雷を放つ。


 結果は、言わなくても、判るだろう。

 空が死んだ日。


 後に人々は、この日を、こう名付けた。


 「闇に纏われた日」。



*


「あたしは、月。あんたは、魔法でいいから、偶に雨を降らせなさいよ」

「判っておるよ、愚姉。愚兄、お前はどうする?」

「己はハオを手伝う」

“だけど、私の光で本当に月は輝く?”

「大丈夫よ、叔母様。貴方はやる気になれば、出来る人だから、きっと」

「母、自信を持て。太陽だって月だって、元は星だ」

“うん有難う……”

 空の会議を、空の役割分担をするところ、私しか人間で見た人はいないんじゃない?

 ただどうしても太陽だけが補えなかった。太陽は自分がやるとパイロンが名乗り出たが、ハオに「自由を愛するあんたが、縛られてどうするの」と、ぴしゃりと言いつけた。

 グイはそれに声無く笑い、ただシェイの頭を何回も撫でていた。

 ジャオファが、話を切り出す。

「そろそろ地上に戻りたいのだが。高いところは、落ち着かん」

「嗚呼、そうね、そろそろ地上に戻らないといけないわよね……有難う、ジャオファ。あんた、思ってたより、強かったわ。強い人は好きよ。……だけど、聞いていい?何で、あたしをフィアンセに?」

「……闇が好きだからだと言っただろう。醜い癖に、酷く美しいお前……の闇が好きだ」

「……あんた、まだ闇に拘るの」

 ハオが呆れたような顔をして、それから、私の方を見遣る。ジャオファは貴方が好きだと言いたかったんだろうけれど、結局は闇で誤魔化した。

 ……それに気づかないハオもハオだけど、言えないジャオファもジャオファだ。一目惚れだったのか、それとも……。

 ハオとはただ、黙って、言葉が何もお互いでなかった。

 さよならと、言いたくなくて。またねは、あり得ないから。

 「……その……あれ……えっと」

 ハオが何か言おうと口を開くが、言葉にならない。

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