表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/35

第二話 MASK

 仮面舞踏会しか、脳裏によぎらない己に悔やむ。そんな貧困な発想しか湧かないのか、自分。

 せめて、何かそんな一般的な事じゃなくても良いじゃない、つい最近まで魔法使いを目指していたんだから、人一倍、面白い感性じゃないと!

 しかし、それは当然の反応といったように、二人はその反応に興味を示さない。

 シェイの顔は暗くなり、パイロンの顔は至って飄々としている。


 「人間よ、時に自分の意志と反対のことをしておることはないかね?」

「……――どういう、こと?」


 パイロンの言葉が何を言いたいのか判らない。

 恐らくは、マスクの説明なんだろうけども。回りくどい言い方をしないで、直球に言って欲しい。

 もっと、こう判りやすくリンゴは紅色だとか、脳に入りやすい説明ってあるでしょ?


「突如叫んだり、笑ったり、怒ったり、泣いたり。もっと、悪いものを例に出すと、人を殺していたり、とか、かのう?」

 それは……最近、冒険者の中で噂になっている。

 冒険者同士で、いつの間にか殺し合ったりしていて、犯人は大体が「いつのまにか」と何も覚えてないのだ。

 動機ですら「咄嗟に」とかが多くて、自警団は混乱しているらしい。

「そういうことをしてる奴はのう、MASKに寄生されてるんじゃよ」

「寄生?」

「左様。MASKは人々に寄生して、悪意をなす、歌で言うと不吉な予感じゃ。オレらはそれの大本を抹消せねばならぬ。それを見つける役目が、太陽の子、シェイじゃ。そして、オレはシェイの監視係兼記録係、雲の子、パイロン」


 ……寄生?

そんなの本当にあるんだろうか?

 身に覚えは……ある。

そういえば、自分では抑えたい怒りを他人にぶつけて、とんでもないこと言ったりしてたっけ。


 「そんなに害は無いんじゃ……多分、普通に生活するだけなら」

 そう言うと、シェイは不思議そうな顔をして、パイロンは馬鹿にするように更に笑った。

「おかしな人間だね、夕子。MASKを庇うなんてさ」

「言ったじゃろう? 最悪の場合、人を殺す、と。それが進化した形が何か、判るか? ……戦争じゃよ。我等が父上母上兄者殿は、そんな人間の上のもと暮らしたくは無いと申されるからな」

「兄者……月の子と星の子ね?」

 私は再び、どきどきしながら問いかける。

 空の子供、あれだけ気になっていた空の子供!

 皆は童謡だからって中々気に掛けて、本気で話題にしてくれる人がいなかった。

 けど、私は本人と本気で今この話題をしている!

「うむ。シェイが見つけて、星の子、グイがMASKを抹消する。ただなぁ、MASKは厄介で、鼻がオレと同じできいていて、我等の気配がすると逃げ出すものじゃから、困って、すでに何百年という年月をかけていても尚も見つからずにいる」

「何百年?! そんなに年いってるわけ?! お爺さんなのね、貴方たち」

 私が驚くと、パイロンは馬鹿笑いして、シェイは不満げな目を向ける。

「ははっ、爺じゃとよ、シェイ」

「………シェイ、一番若い。爺、違う。」

「左様、シェイは末っ子、一番の若輩者。だから、オレらはその若い感性に期待をしておる」

「もっと若い感性は要らない?」

「む?」

「私も、暫くやることないし、落第しちゃっててひまだから、MASK探し、手伝ってあげる!」

 パイロンは一瞬目を見開いたが、その柄の悪い眼を半目にして、扇を取り出して口元を覆い、片眉を吊り上げた。

 シェイは私とパイロンを交互に見たが、慌てたように、パイロンに主張する。

「パイ、駄目だよ、人の子は巻き込んではいけない!」

「だがなぁ、シェイ、人故に気づくこともあるとも言えよう…娘、ユウコと申したか」

「日野夕子」

 今日何度目か判らない自己紹介をして、こくりと頷く。

 覆ってた口元をパイロンは扇をパシンと閉じて、露にして、口の線が孤を描く。

 その表情がどことなく、魔性を感じた。人間ではない何かを感じた。

 それに、それに私はわくわくしている。どきどきもしている。こんな気持ちを持てるなんて。落第された日に、得るなんて。


 落第されたけれど、今日は素敵な拾い物をしたようだ。


 シェイという名の、少し幼さの残ったドラゴン。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ