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羽のあるヒロインはいかがですか?  作者: 遊雨季
本編:宰相閣下のカナリア
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第四羽

 ちょっと更新遅れました、すみません。


 お気に入り登録ありがとうございます。

 ……最近、登録件数が増えたのって某騎士団長のおかげですかね?

 ―――いつまでかは分かりませんが、この世界で暮らしていくことになりました。



   ◇◇◇



「私はこの国の第三王子、レオンハルトだ。さっきは、すまなかったな」


 突然の闖入者――レオン殿下はそう謝ってくれた。


 へぇ~、王子様なんだ。……あんまり意外性ないかも?


 レオン殿下はキラキラした王子様系のイケメンだ。…金髪碧眼なところといい、いかにもな“王子様”である。

 さっきギルバートさんから説明してもらった話だと、彼の従弟らしい。


 王子様が従弟って、ギルバートさん実はすごい人なんじゃ……。


 レオン殿下は勝手に彼の邸に入って来たようだが、仲が良いのだろうか。

 そんなことを思っていると、ギルバートさんがレオン殿下に声を掛けた。


「紹介も済みましたね。……殿下、お帰りはあちらです」


 いくら血縁とはいえ、自国の王子に宰相がこんなことを言っても良いのだろうか。

 仲が悪いのかもしれない。いや、むしろ良いのか?……分からなくなってきた。


「ええっ!?私はまだスズメと話していたいんだが。…そうだ、良かったら、私お勧めの虫をやろう!

 鳥なのだから、好物だろう?」


 “お勧めの虫”って何だ。…彼は虫を食べるのだろうか?この見た目で?

 もしかして、この国……いや、この世界では普段から虫を食べるのだろうか。

 そういう文化を否定する気はないが、私には無理だ。 


「………………いえ、いりません」

「……はぁ、この虫王子が。殿下、さっき私が説明したばかりでしょう?」


 ……今、ギルバートさんが小声で“この虫王子が”って言った気がする。


「彼女は、今はカナリアの姿をしていますが、元々人間です。

 ………虫など食べませんよ、あなたじゃあるまいし」


 ギルバートさんがそう言うと、レオン殿下はショックを受けたようだ。

 虫を食べるのは王子くらいなのか。…良かった。


「そ、そんな…。虫は美味しいぞ?ギルも食べてみたら良いのに…」

「失せろ。………失礼しました。殿下を邸に招いた覚えはありませんので、さっさとお帰りください」


 二人が“帰れ、帰らない”と言い合っていると、それまで不思議なくらい黙っていたコウノさんが口を開く。


「宰相サマ、私も帰って良いですか?」

「ええっ!?…コウノさん、帰ってしまうんですか?」


 この“異世界”でたった一人、私と同じ境遇にあった人にもう少し話を聞きたかったのだが…。


「もう話すこともありませんし」

「…………そう、ですね」

「で、宰相サマ。私はもう帰りますよ?……何ならジークを置いて行きましょうか?」


 彼女の中では、もう帰ることに決まっているようだ。

 あ、団長さんは持って帰ってください。…危険物を置いて行かれても困ります。


「帰ってもらうのは構いませんが……ジークフリートはいりませんから、一緒にお帰りください」

「ほら、帰るぞ。ハルカ。可愛いシャルがそろそろ“お昼寝”から目覚める時間だ」


 間髪入れずに、団長さんがコウノさんに話し掛けた。

 彼も早く帰りたかったようだ。


「ええと、ごめんなさい、お引止めしてしまって」

「スズメ、あなたが気にすることではありません。彼らを呼んだのは私ですから」


 ギルバートさんがフォローしてくれるが、彼が二人を呼んだのは私のためなのだから、私も気にするべきだと思う。


「ジークフリート、コウノ。今日はわざわざありがとうございました。…役には立ちませんでしたが」

「はあ。…もう帰りますね。スズメさん、これから頑張ってください」


 “頑張って”って何をですか?…聞かない方が良いんですね。分かります。


「はい。今日はありがとうございました、団長さん、コウノさん。お子さんも待っているようですし、早く帰ってあげてください」

「では、さようなら。…そう言えば、シャルが宰相サマに会いたがっているので、良ければ今度遊びにいらしてください」


『カチャ』


 何だか物騒な音が聞こえる。


 ………っ!?ええ、剣抜こうとしてる!?


 団長さんの方を見ると、彼は何故か腰の剣に手を掛けていた。

 ……ギルバートさんを斬るつもりだろうか。彼なら“娘を誑かした”とか言って、殺りそうだ。


「さあ、帰りますよ。ジーク」


 コウノさんがそう言って団長さんを連れ帰った。

 次にギルバートさんが団長さんに会ったときがとても心配だ。


「あの二人がいると話が進みませんね。今度からは、使いを遣ることにしましょう。

 ……殿下もさっさと帰ってください」

「わ、私もか?………そうだな、私がいても役に立たないしな…。スズメ、今度ぜひ王宮に遊びに来てくれ。父上は珍しいものが好きだから、会ってくれたら喜ぶだろう」


 珍しいもの好きな王様に会う度胸はありません。…剥製にされる。


「殿下。役に立たないのはあなただけではありませんから、お気になさらず。

 それと、陛下には私が紹介しようと思っていますので。…その方が安全ですし、色々と」


 私は王様にドナドナされるのだろうか。

 でも、ギルバートさんの口ぶりだとその心配はなさそうだ。……おそらくは。


 あと、ギルバートさん、それってフォローのつもりですか?


「レオン殿下のお言葉に甘えて、今度ギルバートさんに連れて行ってもらいますね。

 ……殿下と知り合えて良かったです。また一緒にお話ししてください」

「あ、ああ、ぜひ!!私もスズメと会えて良かった。また話をしようっ!」


 レオン殿下はすごく嬉しそうな顔でそう言い、帰って行った。…何だか、不憫だ。



   ◇◇◇



 邸の応接室から私が昨日泊まった部屋へ移動して、私の今後について話すことになった。

 今更だが、鳥に一部屋貸すってどうなんだろう。

 ちなみに私は鳥籠の中で寝た。……意外と落ち着くんだよね。


「結局、あなたを人の姿に戻す方法と元の世界へ帰る方法は分かりませんでしたが、あなたはこれからどうしますか?」


 結局、何も分かってないってことだよね。


 理由はもちろん、人選ミスだろう。

 黙ったままの私をどう思ったのか、ギルバートさんは言葉を続ける。


「あなたさえ良ければ、この邸に滞在しませんか?」

「それは嬉しいんですが……良いんですか?」


 彼にはもうかなり良くしてもらっている。

 他にどうしようもないとしても、このまま甘えても良いのだろうか。


「ええ、もちろんです。この邸はあまり客人も来ませんから、あなたがいてくだされば使用人も喜びます」


 私は、優しい宰相様のお世話になるようです。




 

□その後の会話□


スズメ「そういえば、アレンさんはもう帰られたんですか?」

宰相「ええ。レイナルド殿が来てくださったので、特に揉めることなく追い出せたようです」

スズメ「……レイナルドさん?」

宰相「アレン殿の副神官長ですよ。……彼は気の良い男なので、今度紹介しましょう。アレン殿の相手が面倒になったら、彼が助けてくれます」

スズメ「……すごい人なんですね」



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