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羽のあるヒロインはいかがですか?  作者: 遊雨季
本編:宰相閣下のカナリア
3/26

第二羽

 9/3 ちょっと文章つけたしました。設定忘れてた…。

 ―――異世界って信じますか?



   ◇◇◇



 拾ってくれた男性――ギルバートさんとの話し合いの後、私は王宮ではなく彼の邸でお世話になることになった。

 ……彼は、拾ったものの面倒は最後まで自分で見る人のようだ。

 詳細は知らないが、他にも色々便宜を図ってくれたらしい。

 昨日“この人が宰相でこの国大丈夫か”とか思って、本当にごめんなさい。



 そんなこんなで。色々、本当に色々あった翌日。

 窓から見た空に太陽が二つ輝いているのを見た私は、ここは異世界なのではないかという結論を出した。彼にそう言うと、何か思い当たるものがあったようだ。


「“異世界”ですか……。心当たりがないこともないので、私の方で当たってみましょう」


 しかし、その“心当たり”は後回しになった。

 鳥の姿では不便だろうと、先に私を人間に戻せるかもしれない人を呼んでもらったからだ。

 どうやら、彼の邸まで来てもらえるらしい。


 元の姿に戻れるかもしれないんだ…、良かったぁ。


 鳥になってしまった理由も分からないし、一生このままだったらどうしようかと思っていたところなので、正直かなり安心した。……彼の一言がなければ。


「アレン殿――今日お呼びした方は優秀ですが、あまり頼りたくありませんね」


 ギルバートさん、そのセリフ……すごく気になるんですが…。






 来てくれた人――アレンさんは優しそうな人だった。

 柔らかい色合いの薄茶の髪に新緑の瞳で、にっこりと微笑んでいる。

 …同じ美形でも、見た目はギルバートさんより取っ付き易そうだ。


「初めまして。私は神殿で神官長を務めております、アレンと申します」


 彼の自己紹介を聞いて驚いたが、かなりの美声である。

 神殿の人らしいが、この声で壺とか売られたら買ってしまいそうだ。

 ……それは神殿ではなく、悪徳商法か。


「こちらこそ、初めまして。私は鈴芽といいます」


 返事をすると、彼は驚いたように目を見開いた。


「…本当に言葉を話すのですね。人語を解する鳥とは…。きっと、神の御使いでしょう」


 そんなものになった覚えはない。

 彼は恍惚とした目で遠くを見つめている。……どこを見ているんだろう。

 良い人そうだと思ったが、変な人だったのかもしれない。

 ギルバートさんの方を見ると、頭が痛いとでも言うように顔を顰めていた。


「アレン殿、そういう話は結構です。……彼女は元々人間だったそうなのですが、あなたはどう思われますか?」

「………はぁ。呪いの類ではないと思いますよ。存在が掴みにくいので、今の姿が本当の姿ではないということは分かりますが、“人間に戻す”のは無理ですね」


 ギルバートさんの質問にアレンさんは溜め息を吐いてから答えたが、ギルバートさんの方が溜め息を吐きたい気分なんじゃないだろうか。

 それにしても、話がスムーズに進んでいるところを見ると、彼があらかじめ事情を説明してくれていたようだ。


「…そうですか。“呪いの類ではない”というと?」

「少し、言い表しにくいのですが…何らかの外的要因でこうなったのではないと思います」

「外的…ということは魔法でもありませんね」

「ええ。……魔法ならば宰相殿の方が詳しいでしょう」

「いえ、あなたとは得意分野が違いますから」


 二人は真面目に話しているが、それからは専門的な話になったのか、私にはチンプンカンプンだった。

 とりあえず、私を元に戻すことは無理らしい。…期待していた所為か、ものすごく落ち込む。


 ……んん?さっき、魔法って言ってなかった?


 …後で聞いてみよう。

 難しい顔をしながら話し合っている二人を見ながら、そんなことを考えていると、突然扉を叩く音が聞こえた。


「入りなさい」


 この部屋の主であるギルバートさんが許可を出すとすぐに扉が開いた。


「失礼致します。騎士団長とコウノ様…女神様が到着されました」


 入って来たのは、騎士のような格好をした人だ。

 何故か“女神様”と言ったときにちらりとアレンさんの方を見た気がする。


「分かりました。この部屋まで通してください」

「はっ」


 騎士みたいな人は短く返答して、部屋から出て行った。

 その後、すぐにアレンさんが立ち上がる。


「宰相殿。女神様が来られたようなので、私は出迎えに参ります」

「……。分かりました」


 彼は宣言すると出て行ってしまった。

 ギルバートさんの了承も聞いていなかった気がする。


「はぁ。……スズメ」


 ギルバートさんは深い溜め息を吐いてから、私に向き直った。


「申し訳ありませんが、今の段階ではあなたを人間に戻すことはできないようです。カナリアになった原因も分かりません」

「いえ!…謝らないでください、迷惑を掛けてるのは私の方ですし」

「そんなことはありませんよ。……今までの話で何か質問はありますか?」


 質問と言っても、元の姿に戻れないことがかなりショックだったため、あまり話を覚えていない。

 何かあるとしたら…魔法のことくらいだろうか?


「あの、この世界には魔法があるんですか?」


 そう尋ねると、彼は一瞬フリーズした。


「………あなたの世界にはないのですか?」

「はい。物語の中にはあるんですけど…」

「…そうですか」


 私の返答に短く返して、彼は考え込んでしまった。

 何かあったのだろうか?


「3年程前に異世界から来た女性がいます。もしかしたら、あなたも彼女と同じ世界の出身ではないかと思ったのですが…」

「違うんですか?」

「いえ、はっきりとしたことは分かりませんが、彼女は魔法に驚いていませんでしたから」


 現代から来て魔法に驚かない人はいないだろうから、きっとその女性は違う世界から来たのだろう。


「そうですか…。その人って、今朝言ってた“心当たり”の人ですか?」

「ええ、今となっては彼女が頼みの綱だったのですが……困りましたね」


 早くも頼みの綱が切れ掛かっているようです。





 次はあの夫婦が出てきます。

 というか、チャックから3年も経ってた…。

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