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羽のあるヒロインはいかがですか?  作者: 遊雨季
本編:宰相閣下のカナリア
2/26

第一羽

 “迷”探偵が現れた!

 ―――気が付くと、鳥籠の中にいました。



   ◇◇◇



 どうやら、落下する途中で気を失っていたようだ。


 気が付くと、私は牢のような場所いた。しかし、扉は開いている。

 何故こんなところにいるのか、と思いつつも身体を起こした。


 あれ?いつもより身体が軽い?


 自分の身体に違和感を覚えるが、先に周囲の様子を探ることにする。

 私がいるのは随分広い部屋だった。

 いや、部屋が広いと言うよりは周りにあるものが大きい気がする。


 童話とかでこういう話なかったっけ?


 ふと、視界の端に黄色いものが映った。

 私が今日着ていた服はこんな鮮やかな黄色ではなかった。というか、黄色ですらなかったはずだ。

 訝しく思い、自分の身体を見ようと頭を下げ……ようとしたができなかった。


 どういうこと?もしかして、首が固定されてる??


 混乱して首を左右に振っていると、近くのガラスに黄色の鳥が映っているのが目に入った。


 ……まさか。いや、そんなメルヘンチックなのは叔父さんの頭の中で十分でしょ。


 恐る恐る手を挙げてみる。……ガラスに映る鳥の片羽が上がる。

 次は、ジャンプしてみる。……ガラスに映る鳥が飛び跳ねた。

 とりあえず、ぐるぐる回ってみた。……ガラスに映る鳥が間抜けたように回っている。


 …えええええっ!!!!私、鳥になってる!?


 私は何だかよく分からないうちに、鳥になっていたようだ。






 ひとしきり混乱した後、何故かは分からないが、自分が鳥になっていることを理解した。

 鮮やかな黄色で染まった鳥のようだが、あまり鳥に詳しくないため何の鳥かは分からない。


 自分が鳥になっているということは、私が今いる場所は鳥籠ではないだろうか。

 私をここに移動させた“何か”が入れたのだろうが、鳥籠の扉と窓が開いていることからして閉じ込めるつもりはないようだ。


 と、とりあえず、ここから出ようかな…。籠の鳥って何だか嫌だし。


 そう思って、私は鳥籠から一歩踏み出した。

 しかし、


 …あれ?どうやって飛ぶの??


 墜落してしまった。






 『ポフッ』


 落ちたところが、ふかふかとした絨毯だったため特に怪我はない。

 しかし、飛べないし、どうしたものかと上にある鳥籠を見つめていると、足音が聞こえた。

 どうやら、誰か来たようだ。


 しばらくすると、部屋の扉を開けて、一人の男性が入ってきた。


 うっわ、美形!……男の人だよね?


 入ってきた男性は、かなりの美形だった。

 少し女性的にも見える容貌だが、骨格がしっかりしているので男性だろう。

 絹糸のような銀の髪とアイスブルーの瞳をしているせいか、近寄りがたい雰囲気がある。


「落ちてしまったようですね…。治療は施しましたが、まだ治りきっていないのでしょうか」


 いえ、たぶん治ってても落ちました。


 男性はそう言いながら、私を鳥籠に戻した。

 どうやら、彼が私を拾ってくれたようだ。話からすると、怪我をしていたようだが、治療してくれたらしい。


 ………?でも、身体に怪我のあとなかったよね?


 奇妙に思いつつも、男性を見上げた。

 そして、一言。


「ありがとうございます」


 私って鳥になってもしゃべれたんだ……。






 男性は鳥に礼を言われて、少々混乱していたようだが、すぐに自己紹介してくれた。


「私はこの国の宰相、ギルバートです。

 鳥のあなたが何故言葉を話せるのか、聞いてもよろしいですか?」


 彼は鳥に対しても丁寧に話した。

 私が言うのもなんだが、傍から見ると変な人にしか見えないだろう。


「あ、あの、私は鈴芽です。それで……」


 何から話せば良いのだろう?


 そう考えてしどろもどろになっていると、彼は何か勘違いをしていた。


「…雀?あなたはカナリアだと思いますよ」


 誰が雀だと言った。……言い方が悪かったのかもしれない。

 しかし、私はカナリアだったようだ。知らなかった。


「違います、鈴芽は名前で…。私は人間です」


 正確には、人間でした。


「………。つまり、あなたは人間に雀として育てられたカナリアだということですね?」


 惜しいが、決定的に何かが違う。

 正解は、“人間(である両親)に鈴芽として育てられた(が、今は何故か)カナリア(になってしまった人間)”である。


「私は元々人間でした。突然カナリアになってしまったんです」



   ◇◇◇



 その後の私の説明を聞いても、彼は迷推理と珍回答を繰り返したが、最終的には分かってくれた。

 初めに言っていたが、恐ろしいことに彼は宰相だ。この国は大丈夫なのだろうか。


「分かりました。つまり、あなたは人間だったが、気が付くとカナリアになっていた。カナリアになった理由もこの国にいた理由も分からない。―――ということですね?」 

「はい。…ここは日本じゃないんですよね?」

「先程も言いましたが、ここはハイディングスフェルト王国です。……残念ですが、日本という国は存じません」


 叔父さん。あなたの遊園地のジェットコースターの所為で、私は随分遠くに来てしまったようです。 





 国の名前が決まりました。

 すごい名前ですね…。作者もビックリです。


 チャックの拍手小話もどんどん更新してます。

 小話じゃないかもしれませんが……。

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