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一話


「ーーーーー!」


目の前の男が何か言っている

剣を放り投げ手を結びこちらに懇願している

その体はボロボロで出血が絶えないもう少ししたら出血死するだろう

放置してもいいが……


ーーーーー!!!


観客がそれを許さない

視線をあたりに回す、上から見下ろすのは仮面をつけた奴ら

多分貴族かなんかだろう

この国では奴隷制度は許されていないらしい、あんな仮面をつけてまで身分を隠す必要があるのなら

……まあ、暗黙の了解的なやつだろう。互いに互いの身分を知っているが黙っているというやつだ

あんな目元だけの仮面で隠せるはずもないだろうし


ーーー!


観客達の興奮が高まった

処刑がご所望らしいな

改めて男を見る


「……………」


完全に戦う気は失せたらしい、丸まって祈っている

この世界に神がいるかは知らないがその願いは届かない

……剣を掲げる

慈悲……とは言わないがせめて楽に殺してやろう


丸まっている男の首に剣を振るう

皮膚を筋肉を断ち首の骨が砕ける感触が手に伝わる

……慣れないな

切断はできなかった

血が勢いよく吹き出し顔や頭に降り注ぐ

……血の匂いが、味がする

血を含んだ髪をかきあげる


ーーーーーー!!!


歓声が響く

「ーーーーー!」

審判が叫ぶ


俺は力無く倒れる男を一瞥し

踵を返した


―――


俺は転生者だ

と言ってもチートやハーレムなんかとは程遠い

奴隷への転生は俺という人格を破壊するのには十分だった

闘技場を出た後には行くところがある

風呂というよりかは返り血なんかを落とす場所だ

特に血は乾いてしまったら落とすのがめんどくさい、今回なんかは髪が血を吸ってしまったから早めにしないと

足早に向かおうとする俺に声が掛かる


「ーーーー」


視線を向けるそこには服を着た豚がいた


「ーーー」


ブヒブヒと鼻息荒く喋るこいつは俺の飼い主だ

言語が違うため俺には何を喋っているのかわからないコイツも理解はしているはず……だ

元々、英語なんかは苦手だった

……英語どころか世界が違うし新しい言語を理解するのは俺には無理だった

まあ、十何年かは経ってるから多少の単語は理解できるあとは、イントネーションとか喋り方とかで判断している


「ーーー」


俺がそんなくだらないことを考えていると、豚は機嫌良く去っていった

何がしたかったんだあいつ……

けど、これで心置きなく血を流せる

俺は少しウキウキしながら向かった


ついたのは風呂というよりかは井戸だが

まあ、ないよりかはマシだ

服を脱ぎ全裸になる

服はその辺に置いておく

井戸から汲んだ水を頭からかぶる


バッサーン


水が血を流す

まるで自分が出血しているみたいに見えるくらいには大量の薄まった赤色の液体が流れ落ちる

頭を振るい残った水分を飛ばす

視界の端に赤い髪の毛が見える

この髪のおかげで多少血が残っていたとしても気にならないが、臭いのと気持ち悪いのは違いないのでまた水をかぶる

一応屋内だが……寒いな

体のチェックをする、傷はついてないかなんか異常はないか


………


うん。ないな

しっかりとした栄養不良の女児の体だ

バケツの水面に反射した自分を見る

赤毛のちょっと生意気な顔をした美少女がいた

……こんなところに生まれなきゃ少しはいい生活ができたかもしれないな

この顔だわんちゃん王族とかかもしれない

希望的観測だが、夢見るくらいはいいだろう

さて、やることは終わったし戻るか

服を着る

濡れてしまうが全裸でいるよかマシだ

いや……この顔だったら濡れて透けた方が襲ってくるやつはいるか

まあ、いいかそんな奴は殺せばいい

俺は牢屋に向かい歩き出した



牢屋に着く、中には老若男女様々な人間がいた

前には獣の耳や尻尾が生えてるやつもいたが

そういうのは早めに売れるので長居はしない、購入先で幸せにしていると信じとこう

とりあえず入る

鍵は掛ってない。脱走の心配はないからこれでいいだろうが

中に入り人々の首輪を見る

これが奴隷の証だ、命令に逆らえば死ぬ

だから、誰も出れない

俺が入ると人が割れて道ができる

……ありがたいな

その道を進み、壁際で腰を下ろす

冷たい壁と濡れた衣服で体温が落ちるが……気にしない、これで死ぬのならむしろありがたい


少し目を閉じる寝るのには早いが仮眠程度の時間はあるはずだ

目を閉じて少ししたら足音が聞こえた

……3、4人か

コツコツとどんどん近づいてくる

そして、牢屋の前で止まった

目を開ける

止まったのは豚と、女一人に男二人

女の方はよく見ると綺麗なものを着ている

男二人は防具をつけ、剣を腰にかけている

騎士そんな言葉が思い浮ぶ


「ーーー」

女の方が何やら話している


「!」

貴族堕ちの奴隷が騒がしくなる

どうやら、有名人らしい

……あの感じからして姫か何かだろうか?

姫様が奴隷を買いに来たのか、終わりだなこの国

さっきの闘技場では見なかったから今来たらしい

姫様がゆっくりと牢屋を見廻し、俺で視線が止まる

その目は少し見開かれていた……が、すぐに視線が通り越す

なんだ?俺を知ってるのか?

いや、俺は生まれた時から奴隷だ…なら親の方か

確かな赤髪は珍しいからな、知り合いでもおかしくはないか


「ーーー」


「ーーーー!」

姫様が豚に向かい何か話す

豚は喜んでいる

周囲の奴隷がざわめき出す

……奴隷を買うのだろう

それで、期待した奴らが動き出した

元貴族どもだ


「ーー!」

真っ先に動いたのは金髪のイケメン

鉄格子に縋り姫に懇願している


そいつを皮切りに貴族堕ちだけでなく他の奴らも群がり出した


馬鹿だな、買ってもらった所で以前のように暮らせるはずもないだろうに

それに……

騎士達を見る、その目は覚悟をした目だった


……姫様がわざわざ来るってことはなんかあるだろう、摘発の為なら目的は場所の特定かな

可能性でしかないけど


「ーーー!」


豚が怒鳴りつける

首ピリッとした感覚が走る


……とばっちりだな


この感覚は知ってる命令に逆らった時に従わせるための鞭だ

本来ならもっと痛いが今回は俺に向けたものではないからこの程度で済んだ

……首輪の精度を見直して欲しい

他の奴隷のやつが飛んでくるのなんてしょっちゅうだからな


鉄格子の方を見る


多くの奴隷が首輪を抑えピクピクと痙攣している

それでも縋りつこうとしている

……その精神で闘技場に立ってもらいたいものだ


「ーーー」


「ーーー!」


……買うやつが決まったらしい

誰だろうな、あの姫に買われるのなら少しはいい生活になるだろう


そんな事を考えてると


「ーーー」


姫が俺を指差した


―――

時は少し戻り


「殿下、わざわざ貴女が向かわなくとも……」

そう言ったのは私の騎士であるウォセイン・サハラ


「サハラ卿この国では奴隷を禁止しているのですよ。それに逆らうのは陛下に逆らうのも同然です」

「それに騙すのなら私以上に適任なものを連れてきてと言ってるでしょう」

サハラを軽く睨む


「ですが……危険すぎます」


はぁ、私を思ってのことですから有り難いですが。たまには信用してくれても良いのに

そんな事を思っていると


「ウォセイン、殿下のことを思うのは当然だがもう少し柔軟に対応出来ないのか?」

そう言ったのはもう一人の騎士カファイ・セラ

私のもう一人の騎士


「カファイ、貴様は殿下にもしもの事があったらどうするつもりだ」


「もしもの事が起こらないための我々だろう?」

バチバチと二人の間で火花が散るような感覚に陥る


「はい、御二方共殿下が困ってますよ。戯れ合うのは後にしてください」


「「戯れあってなど!」」


「はいはい、御二方は仲がいいですからね〜」

そう言って場を納めたのは私の専属メイドである、ナフィア


「そもそも、この件を殿下に託したのは陛下ですよ、成功させないと陛下に泥を塗ることに……」


「わかっている、だがわざわざ殿下に危険な事など……」

サハラ卿が呟く


「はぁ、そこには同感するが。なんせ相手が相手だからなぁ」


「ああ、奴隷商…ドクダミ」


そう、私が今回陛下から与えられた任務はドクダミの確保及びそれに関与した貴族の捕縛

今回でこの王国の膿を一掃する、それが目的

その為に……


「私が客として入り込む」

準備をしてきた、奴隷に興味があるように話して

当たりをつけていた貴族に接触し今回の機会を得た

無駄には出来ない


「せめて我々二名だけでなくもう少し騎士を」

サハラ卿が申し出る


「だめよ、これ以上は信用できない。どこから情報が漏れてしまっては……」

「それに、場所を突き止めたら信号を出します。それで残りの騎士たちが突入する」


「………」

わかっています、危険だと

でも、それでも、やらなくちゃいけないのです陛下に認めてもらうにはこうするしか


「……明日、実行します」


「「御意」」

二人が跪く


―――


はぁ?

俺?え?

?????

余りの衝撃でフリーズする


「ーーーー」


「ーーーーーー!」

豚が慌てて何か言ってる

多分俺を選ぶとは思ってなかったんだろう

俺もだ


「ーーー」


「ーーー………ーー」


どうやら豚が折れたらしい


「ーーー!」

「ーーーーー」


「ーー」


?あの様子からすると……条件をつけたのか?

まあ、俺は闘技場で必要だからな

今までで俺以上に強いやつを見た事がない、盛り上げる為には必要なはずだ

手放したくはないはずだ……条件はなんだ?金を高くするかそれとも


「ーー!」


考えていると

いつのまにか目の前に来ていた豚に腕を引っ張られていた

牢屋を出て姫様の前に立たされた


「ーーー」


何か言ってる

多分挨拶かな

……綺麗だな、と素直に思う

今までいろんなやつを見てきたけどこの人以上はいなかった

髪は光沢を浴びる銀髪を肩まで伸ばし

身長は俺より少し上

煌びやかな服を着ているがそれに劣らない容姿をしている

まさに姫ってかんじだ


惚けていると

豚に頭を殴られた


「ーーー!」

頭を下げろかな

確かに不躾に見るのは良くないか

そう思い、頭を下げた


「ーーー」


優しい声色だった

同情か憐憫か……わからないが俺に声をかけているというのは分かった


「ーーー」

豚が俺達を何処かに誘導する

この道は……闘技場か?

なるほど?戦いを見せろと

チラリと騎士を見る

……強そうだな


そんな事を考えて歩いていると視界が開ける

そこは闘技場の客席だった


ーーーーー!!


怒号と歓声が混じった大声が耳をつんざく

魔法かなんかで闘技場内には声が小さく聞こえていたのか

うるせえ!

耳がダメになる!

耳を抑えてさっさと歩く


闘技場内を見ると奴隷達が殺し合っていた


あれは先程姫様に縋り付いてた奴らか

どうやら、豚の怒りを買ったらしい

どんまい来世は幸せに

……こんな世界に転生した俺が言えた事じゃないが


ふと姫様の方を見る

その美しい顔が無表情になっていた

寒気がした


騎士達も殺気立っている


その視線は客席にいる奴らに向かっていた

……こわ


「ーーー」


どうやら目的地に着いたらしい

貴賓席……だろうか他の席よりも内側に近しガラス張りだ

壊れたりしないのかな


「ーーー」


豚から命令が下された

どうやら、騎士様と戦わないといけないらしい

……やだな


…………


さて、準備は整った

と言っても剣を持つだけだが

ゲートの中で待つ

相手の方を見ると騎士の片割れがいた

黒髪のイケメン

甲冑は無しか、有り難い


ーーーーー!!


その時、闘技場になにか薄い膜のようなものが貼られた


おぉ!久しぶりに見たな

確かにコレがないとヤバい相手か


この結界は現在の時を保存するもの、コレにより例え戦闘で死んだとしても生き返る事ができる

ドクダミが貴族が戦う時にのみ使う大魔法に分類されるもの


うし!全力で行けるな

死んでもいい保証ができた

戦って死ぬのなんてごめんだからな

俺は静かに死にたいんだ


ゲートが開き、戦闘が始まった


…………


まずは様子見だな

異世界の騎士様だ。なんか不思議パワー持っていてもおかしくない

距離を取り相手の出方を見る


「………」


……動かないな

誘ってるのか

初撃を譲るつもりなのか

なら遠慮なく


俺は地を思い切り蹴る

大振りの軌道

俺の半分くらいの大きさの剣が唸りを上げ騎士様の首にと向かう


ガギィ!


不快な金属音と火花が散る

次に腕に痺れがくる


マジか!

すぐに距離を取る

防がれるとは思ってはいたけど何だあれ。岩に打ちつけたみたいだったぞ

騎士を見る


「ーーー」

軽く手を開く


化け物め……そんだけかよ

こっちはバカみたいに痺れてるのに

……重いのはダメだなこっちにダメージがくる

なら、軽くとも手数を増やそう


剣を軽く握り

体の力を抜く


フッ……


先程よりも早く駆ける

様々な方向から騎士に攻撃が向かうが


……はぁはぁはぁ

コレでも無理とかほんと化け物が


無傷全ての攻撃を防ぎきったのだ、しかも…


動いてねぇし


そう最初に立った位置から全く動いていなかったのだ


無理かなこれ

力の差がありすぎる

無理無理

俺が諦めて合図を出そうとした時


「ーー」

騎士が初めて構えた


……遠いな、この距離で構えたということは

この距離を詰められるのか

俺も構えを取る


騎士が剣を縦に振るう


は?


気づいた時には………左腕が飛んでいた


っ!


何だ!何をされた!

どくどくと血が溢れる

まずいまずい失血死する!

右手で左腕の根本を強く締める

多少血が止まるが


やばいな意識が無くなりそうだ

この小さい体じゃあ……

視線が定まらない


ふらっとして他に伏せる


本格的に死ぬなこりゃ

チラリと騎士の方を見る


「ーーーーー」


苦虫を噛み潰したような顔をしていた


………本当に死ぬわけじゃないのだからそんなに思い詰めないでほしい

…………やば


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