お酒を飲むと正直になりすぎる彼氏が痛すぎる
オニオンスライス、うまいな。
鶏の唐揚げに合う、合う!
二人の部屋で、今夜は楽しく飲み明かす。
ケンジはお酒弱いから、ビール2本目でもう顔が真っ赤っか。
ケンジは醉うと面白い。
なんでも正直に喋りだすのだ。
おかげで二人の間に嘘はない。……まぁ、あたしの過去のアレは秘密にしてるけど……、彼氏の秘密は聞き出した限りはぜんぶ知ってる。
「カナちゃん、好きだよぉ〜」
また、醉うと普段口にしないあたしへの気持ちをバンバンぶつけてくる。
「愛してる! カナちゃん! ちゅきちゅき!」
「はいはい」
うざいけど嬉しくて、あたしはついつい彼氏に飲ませすぎてしまう。
「もっと飲んで。でも寝ちゃわないでよね?」
「俺はカナちゃんのこと、本当に好きだよなぁ〜……。普段は照れくさくて言えないけど愛してる」
「うんうん。あたしもケンジのこと愛してるー」
「あはっ! 嬉しい! 嬉しいよ、カナちゃん! ハグっ!♡」
「まぁ、飲んで飲んで。はい、鶏から食べて」
「うめぇ! やっぱり『とりニティー』の鶏からは最高だなっ! カナちゃんの手作りと違って──」
「何それ、ひっどーい!」
「あっ、ごめんごめん! でもカナちゃんのほうが美味しいよっ! カプッ♡」
「噛むな!」
「ごめぇん。ハハハハ! 今、酔っ払ってるからなんでも言うよ? 聞いてみて?」
「ふーん……。じゃ、あたしのこと大好きとか言っといて、ほんとうは浮気してるでしょ?」
そんなことほんとうは疑ってないけど、冗談のつもりで聞いてみた。
「うん。……知ってたの?」
「相手、どんなひと? なんて子?」
「ゆうきちゃん! サークルの後輩でさ、カナちゃんと全然違うタイプの美少女だよ」
「へえっ? どんなとこが好きなの?」
「Oppaiがね、おおきいんだ! 細身のわりにさ! あれは希少種だよ」
「ふーん。やわらかかった?」
「マシュマロみたいだった!」
「触ったんだぁ……? つまりカラダだけが好きなわけ?」
「違うよっ! 彼女、とても控えめで優しいんだ。そんな内面にも惹かれたんだ。もちろんカナちゃんの面倒見のいい包容力も好きだけどねっ!」
「で? ケンジは二股続けたいわけ?」
真剣な顔で、あたしを熱烈にまっすぐ見つめながら、彼氏は言った。
「当たり前じゃん! カナちゃんのことも心から愛してるんだからさ!」
あたしはケンジを思いっきり殴り倒すと、カエルみたいな格好で仰向けになったその顔にペッと唾を吐きかけた。
「痛い! 痛いよ、カナちゃん……!」
痛いのはてめーの存在自体だよ。泣いとけ。
あーあ、涙も出やしない。
でもまぁ、彼氏の酒癖がこんなんで、よかった……のかな?