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第2話 ロックとラルフ

「また無茶しやがって……」

 

 アキトがヴァイザーの破損状況を見ながら顔をしかめる。十中八九俺の機体だろう。

 練習試合を終えて、俺とラルフは地下の居住エリアにあるヴァイザークラブの一室で反省会を開いていた。

 アキトは試合映像から重要なシーンを切り抜いて、戦術的に正しい判断だったかどうかを細かく説明している。俺たちはその一言一句を逃さずメモして、次の試合への糧とする。

 

 クラブというが、参加者は俺とラルフだけ、コーチもアキトと今回は不在のブレンだけだ。ハイスクールでは5人以下の部活は認められなかったから、同好会という方が相応しいかもしれない。

 当然授業料も2人分しか集まってない。なんなら俺はアキトの厚意に甘えてツケにしてもらってるから、実質ラルフの月謝30ドルだけで運営されているクラブだ。実機練習用のフィールドに金をかけてるので、この部屋は5畳ぐらいの広さに椅子やプロジェクターを詰めて非常に狭い。

 

「今回の戦術分析は以上だ。何か質問はあるか?」

 

 俺はメモを取る手を止めずに左手を挙げる。アキトの指名を受けて立ち上がった。

 

「はい、ビル内で接近戦に持ち込んだ時、俺は有利な状況だったのに勝ち切れませんでした。あの時どうすればよかったんでしょうか?」

 

 アキトは眼鏡を直し、レンズから逆光を放ちながら質問に答える。

 

「ロック、お前の弱点は単純すぎることだ。マスターキーの一撃が当たればどんな相手だろうとダウンを奪えるだろう、それは間違いない。だがそれに拘って単調な攻撃ばかりでは、タイミングさえ掴んじまえば楽々避けられる。特にラルフは冷静なタイプだからな、お前の攻撃はさぞ見切りやすかったろう」

 

「じゃあ、どうすれば……」

 

「まず攻撃のパターンを増やせ。お前の機体にはマスターキーの他にも38式カメワリ・ブレードと、550mmダマスカスダガーが標準装備されてる。接近戦だけでもこれだけの手札があるんだ、上手くやれば間合いもスピードも違う攻撃がコンビネーションで襲いかかるんだ。どんなベテランでもそうそう避けきれねえ」

 

「なるほど!」

 

 俺は急いでメモに書き足す。

 

「それと、たまにはライフルとピストルも使え。7.62mmが錆びついちまうぞ」

 

 そう言うと彼はプロジェクターの電源を切り、「本日の練習はこれにて終了!」とこれまでの緊張した空気を断ち切って解散を告げた。

 

「今回の練習はラルフが高え関節パーツ撃ち抜いてくれたからなぁ! いつものトコに修理頼んでくるわ!」

 

 アキトはヴァイザーバトルのコーチをやってる時は仏頂面で少し怖い時もあるが、それ以外のプライベートではただの気のいいオッサンに変わる。

 

「先生、僕マズい所撃っちゃったみたいで、本当にすいません」

 

 責任感の強いラルフはしょんぼりした様子で謝罪するが、アキトの方はまったく気にしていないようだ。

 

「ハッハッハ! お前ら15のガキが金勘定とか気にしなくていいんだよ! お前らが全力で遊んだことに、全力で責任を取るのが我々大人の役割なんだからな」

 

 心強い言葉だ。少なくともアキトが損得勘定で俺たちを裏切ることは絶対にないと言い切れる信頼があった。

 

「ホラ、先生もああ言ってんだし気にすんなって。それより腹減っただろ? いつものバーガーショップ行こうぜ!」

 

「うん、そうだね。マジで腹減った」



 

 夏休みということもあってか、商業エリアの通りには私服姿の学生が多かった。たまにすれ違う知り合いには軽く仲間内で通じる挨拶もしながら、行きつけの「バーガークラウン」までの道を歩いた。

「俺は今日ちょっと冒険しようかなぁ、あのバカデカい『カイジュウ・バーガー』にチャレンジしてみるよ。ラルフはどうする?」

 

「僕はいつも通りでいいかな。シュリンプ・バーガーで」

 

 結局カイジュウ・バーガーは1人では手に負えず、2人で無理をしながら食べ切った。

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