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バレたらおしまい!? ~新選組女中は元姫様~  作者:
文久三(1863)年 二月、浪士組~
9/13

女中の朝は早い




「んー……」


目線だけ寄越して外を見ると、空が白み始める頃だった。元来怠け者なので、まだまだ寝足りないくらいだ。しかしダラダラしていると他の人達が起きて来てしまうので、仕方なく、動かない体に鞭を打って、起き上がる。


(一人は慣れないなぁ、やっぱり)


あの人達みたいに大部屋で雑魚寝するのもそれはそれで嫌だが、朝に誰も居ないのはしんみりする。新しい人が来ないかな、とは思っているが、暴れん坊の浪士組は京の人達に嫌われている様で、鈴以外に飯炊きの者はいない。


(朝御飯作らないと)


稀に彼らが早起きな事があり、その日はそれはもう大急ぎで飯を作るが、今日は大丈夫そうだ。

考え事をしながらも、鈴はテキパキと食事の準備を進める。此処に来て半月弱、慣れたものである。

米を炊いて、味噌汁を作る。朝はそれだけなのに、こんなにも労力を要するのは、十数人分を一度に作るからだ。


(これから浪士組の人が増えたら、もっと大変になっちゃうわ)


それまでに、女中も増えてると良いんだけど。

無理かなあ。


「やーっ!」


一通り終え一旦中庭に出ると、先程井戸に行った時には居なかったのに、いつの間にか浪士達が集合している。


「はぁーっ!」


この人達は、素振りを終えたらすぐに立ち会いを始めて、疲れないのだろうか。


(今日は珍しい組み合わせかも)


土方と沖田が、木刀で打ち合っている。年長者でまとめ役の近藤や芹沢鴨などは上から見ている事が多いが、同じく年長の土方や山南敬助などは、進んで汗を流している。

遠巻きに見ていると、さっきまで稽古をしていた者達が、建物に入って行く。慌てて鈴も飯の用意をした。




「いただきます」


私がそう言って箸を付けると、男達も一斉に御飯をかきこむ。


(そんなにお腹が空いてるなら、早く食べればいいのに)


毒なんて入れてないんだから。

朝は一飯一汁で、そもそも足りているのだろうか。とは言っても、貧乏だからどうしようもない。


(今日も御飯、余ってる)


芹沢は水戸の生まれで、同郷の者と行動を共にしている。そう言えば、殿内と言う、元は浪士組の責任者だったらしい人も、いつも一緒に食事をする事が無い。しかし用意しない訳にはいかないので、結局こうやって余る。浪士組には永倉を筆頭に大食いが沢山いるので、残る事は無いが……。

奴らは、米びつをひっくり返して言った。


「米が無くなってしまった」


油断した。

状況を判断した鈴は、目を吊り上げて言った。


「…そちらのはお昼と晩の分です!!永倉さん達は今日はお昼御飯抜きですよ!!」


「そっ、そんなぁ!」


「でも怒ってても可愛いー!」


困った人達である。鈴は、もう一度雷を落とした。




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