家族
「お鈴は、どうして故郷を追われたの?」
いつも通り様子を見に来た沖田が言う。無神経な笑顔だったが、不思議と苛立ちは感じない。
鈴は少し考えて口を開いた。
「実は、私の父が殺されたのです」
「え!?」
「もう何年か前の事です。しかし、隠し子の私の存在が何処からか漏れてしまったようで」
「な、なるほど…」
「思ってたより重かった……」と沖田が呟く。別に父に対して、血の繋がり以外の何も感じていない。訃報を聞いた時も、「いつかそうなると思ってた」くらいだった。
「父は……少しばかり恨みを買っていまして」
「ふぅん」
「そう言えば、総司殿の御家族のお話は聞いた事が無いですね」
そう言うと、沖田は「僕かぁ……」と眉を下げた。
何故か、この人は家族がいそうな雰囲気がしない。何と言うか、孤独ではないけど、一人でも生きていけそうな感じがする。
「僕ね、物心ついた時にはもう、両親が死んでたんだよ。姉さん達に育ててもらってたけど、九つの時に先生の道場に預けられたんだ」
「なるほど……」
先生と言うのは、局長の近藤勇の事だろう。この人も、重い身の上があったのか。家族がいなさそう、と思っていたが、本当に居なかったとは。
「総司殿は、寂しかったでしょう」
「なんで?」
「家族がいないって、孤独じゃないんですか?」
「そうだろうね。でも皆とずっと一緒に居たんだ。血が繋がってなくても、家族だよ」
そうかなぁ、とも思う。それを言ったら、家臣や侍女達も家族だ。
そんなの、馬鹿馬鹿しい。
(皆、裏切ったもの)
たまたま沖田と巡り合ったのが近藤達で、鈴はただただ不運だったと言う事だろうか。
「血が繋がってなくても、家族なんですか?」
「え?…うん、そうだよ。同じご飯を何年も食べて、同じ屋根の下で寝たんだから」
やっぱり理解できない。血の繋がりのある父にも放っておかれ、生まれた時から寝食を共にした者達には裏切られて、鈴にはもしや、家族がいないのだろうか。
「なんか良く分かってなさそうだね」
「だって、総司殿にとっては、しばらく会わない姉君も家族なんでしょう?」
「そうだね」
「じゃあ私には家族がいません」
熟考の末結論を出すと、こうなった。可愛がってくれた人、大切にしてくれた人が家族だとすると、鈴には家族がいない。
「拗ねないでよ」
「拗ねてません」
ふん、大事にされたからそんな事言えるんだ。
「ま、お鈴にも、いつか分かる日が来るさ」
来ない気がする。