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バレたらおしまい!? ~新選組女中は元姫様~  作者:
文久三(1863)年 二月、浪士組~
6/13

屯所!



「こちらが屯所ですか」


「あぁ、前川さんのお家を借りているんだよ」


先程居た所から少し歩いた所に屯所はあった。

この辺の名主である前川氏の邸宅らしい。しかし、何故か持ち主達は出て行ってしまったそうだ。


「早速案内します。土方さんは、見回りから帰ったのを報告して下さい」


あの目付きの悪い男は、土方歳三と言うらしい。土方も、沖田の言っていた道場の仲間なんだと言っていた。


「はい、まず此処が中庭。朝稽古とかは此処でやるよ」


「…私はやりませんよね…?」


大人の男と同じだけの稽古は無理だ。恐る恐る確認すると、「冗談だよ」と笑われた。


「それでこっちが食堂…あの奥のは厨房、向こうに続く廊下の大部屋で隊士達は雑魚寝です」


またも気になる点がある。

それは私はどうなるんだ。

そんな鈴の心情を汲み取ってか、沖田はまた口を開いた。


「お鈴ちゃんは、女中さん達のお部屋で寝るよ」


「あ…良かったです」


流石にそうだろう。

というか、考えていなかったが、私以外にも女中は居るのか。


「…それで、井戸は中庭にあるからね」


「あ、はい。…そう言えば、いつから始まるんですか?」


「ん?あぁ……」


沖田は手を顎に当てて、考え込むような素振りを見せた。まさか、聞いて無いのか。


「えーと…あ!多分、今日からだね!」


「……」


総司殿、そう言うのはもっと早く言って下さい。









「…あの、お話が違いませんか」


此処に来て、二日が経った。隊士は十名以上いるので時間はかかるが、その他にする事も無いので、今までの家事の経験でやれている。分からない事は丁度良く居る沖田に聞いたり、まあ何とかやっていけている状態である。

しかし、話が違うだろう。


「ん?お鈴、何の話?」


いつの間にか呼び捨てになっていた沖田は、首を傾げる。そんな顔しても無駄だ。


「総司殿のお話では、私以外にも女中はいるようでしたよね」


「……」


「私一人じゃないですか」


「…一応、募集はしているんですが」


細い声で、言い訳をするように沖田が言った。一応、幕府からの支援もあり、裕福では無いが飯は食える。荒くれ者とは言われているが、将軍警護の組織で住み込みの女中、悪く無い条件だと思うが。


「なぜですか?」


「…僕達、京の人に嫌われちゃってるみたいなんだよねえ」


「嫌われる事は無いのでは?皆様、精一杯努めておりますし」


目を逸らしていた沖田だったが、鈴の言葉を聞いて、ふとこちらに視線を移した。そして少し目尻を下げ、まるでしようがない幼子を見るような目をした。


「この町はね、色んな所からやって来た志士達によって、色んな人が傷ついています」


その事は鈴も知っていた。だから鈴の父は、必死に幕府の威信を守ろうとしたのだ。そして、その命を奪われた。


「でも、此処は天子様の御座す所。幕府に反感を持っていて、そんなのを見て見ぬ振りをする人、それを取り締まる僕達を田舎生まれの乱暴者と思う人は多い」


「……」


人と人は、理解し合えない。同じ思考の人なんて、存在しないから。同じ目的なのに反目し合っている。皆、この国を守りたいだけなのに。


「ははっ、前途多難ですよねー」


どうしてそんな風にいられるのか、と疑問に思う程、沖田の顔は無邪気だった。鈴は、何と返して良いのか分からなかった。


(今の私には、まだ、分からない。)


何が悪なんだろう。何をしたら、善と言われるのだろう。

しばらく、考えていた。



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