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第十六話

 御子襲撃事件から一夜明けた朝、リーミンへと続く街道を走る馬車の荷台にソウタ達の姿はあった。天気は快晴、気持ちのいい日差しが降り注ぐ青い空の下、荷台の隅でソウタはエステリア教会の御子であるフィリアから貰ったペンダントを見つめながら昨夜から早朝にかけての出来事を思い返していた。


 フィリアとお互いの秘密を打ち明けあった後、名残惜しくも別れを告げたソウタは急ぎ出立の支度を整えた。と言ってもいつでも出られるようには常にしていた為大した時間はかからず、大半の時間を臣官ラバーカの準備の手伝いに費やした。

 もうまもなく日の出を迎えようかという頃、場所は教会前、準備の完了した馬車の側にはソウタ達を見送りに来た三人の臣官の姿もあった。襲撃にあった直後という事もあり残念ながら見送りの場にフィリアの姿はなかった。

 ソウタ達の引き受けた計画、それは白の王の調査と街道及び砦町の現状確認、そしてリーミンへの支援物資輸送である。倒せるのなら倒して欲しいというのが恐らく教会側の本音であろう、しかし人の手に負えないとまで言われる魔獣の討伐依頼までは出せない。そこで最低限砦町の現状を確認し生活に支障がないという事さえ分かれば避難民を返す事は出来る、という事でリーミンまでの道中の安全を確認してきて欲しいというのが依頼の内容であった。

 計画では今日この後出立と同時にミルドが白の王の調査に向かったと言う喧伝のビラを教会を通じてエステリア中にばら撒く手はずとなっている。エステリア住民と避難民との間に出来てしまった溝の深さを思えば一刻の猶予もなく、ぶつかり合うお互いの意識をミルドや白の王に向ける事で何とか時間を稼ごうという算段である。ひと月に及ぶ奉仕活動とお祭りの視察護衛に帯同した事でミルドの知名度は決して低くなく、少しでも前向きな気持ちを取り戻して貰えればこの難局も乗り越えられるはず……と言う教会からの藁にも縋るような依頼であった。

 そんな心情もあってかソウタのような子供を危険な場所に送らなければならないこの窮状に臣官達の表情は暗く浮かないものであった。

 「お葬式じゃないんですからそんな暗くならないで下さい、見てくるくらいなら大丈夫ですよ……多分」

 神妙な面持ちの臣官達にソウタが微笑みかけるとそのうちの一人、仏頂面に腕組みをして仁王立ちしていたアニードはいつものように鼻を鳴らした。

 「フン……儂らも集めた報告を見ただけで実物を拝んだ事はないが……並の魔獣でない事は確かだ、くれぐれも用心せい」

 あれだけ警戒されていたアニードの対応もたったひと月で随分と変わるものである、顔が怖いのは相変わらずだが送られた心配の言葉にソウタは笑顔ではい、と朗らかに応えた。

 「そうだ、念の為確認しておきたいんですけど、リーミンまでって通常どれくらい掛かるんでしょうか?」

 「順調に行っても四十は掛かるだろう。現在は砦も機能しておらん、五十日以上も覚悟しておく事だ」

 「五十ですか……」

 サポーター組合所長フューラーの部屋で地図を見た時から随分と距離があるのは分かっていた、しかし想像以上の所要日数にソウタは思わず苦笑いとため息を零した。

 「えっと、喧伝のビラの方は……そっちは全くお手伝いできませんでしたけど、大丈夫ですか?」

 「よ、夜の内に馬を走らせた……既に各支部にも配置済みだ……ひ、日の出と同時に配るようにと伝えてある」

 余り目立たないがいい仕事をする臆病そうな臣官カゴールの返答に頷いて返すとソウタは最後にあの男達について尋ねた。

 「あの男達……襲撃犯の二人は何か話しましたか?」

 この質問に三人の臣官は互いの顔を見合わせると重くため息を吐いた。不穏なオーラと空気に何かあったのかと尋ねるとラバーカは深呼吸をした後ゆっくりとソウタを見据え口を開いた。

 「……亡くなりました」

 ソウタは驚きの余り瞬きを繰り返した。襲撃事件発生からまだ丸一日と経ってはおらず、唯一の手掛かりを失った事実にソウタは慄き息を呑んだ。

 「……二人共ですか?」

 ゆっくりと深く頷くラバーカへ、殺されたのかと尋ねると俯いて口をつぐんだラバーカに代わりアニードが答えた。

 「自死だ、服を使って首をくくっておったらしい。許されない事をしたと、何度も嘆いておったようだ。見張りを牢の前に立たせておくべきだった……」

 「た、ただでさえ人手不足の現状に加えて事件直後だ……対応が後手に回るのも致し方ない……」

 「……聴取は……女の話は聞きましたか?」

 三者三様に後悔を滲ませる臣官達はソウタが女の話に言及すると驚き一斉にソウタへ視線を向けた。

 「……兵に引き渡す前か、お主も聞いておったとは……フン、全く抜け目のない。何処の何者かはわからんが、御子様はしばらく表には出せんな」

 「御子様にはまた肩身の狭い思いをさせてしまいますね……何とも心苦しい事です……」

 「お、御身の安全の方が大切だ……く、加えて今の情勢不安の中、人々に知られれば治世への悪影響は免れん……君も他言無用に頼む」

 カゴールの忠告を受けソウタが静かに頷いてみせると、白んだ東の空の彼方から差し込んだ光がソウタの横顔を照らし出した。瞳を刺す眩しさに片目を伏せる。

 「時間ですね、では……出立します」

 「身の安全を第一に、よろしくお願いします」

 ソウタは三人とそれぞれ顔を見合わせウシオ達と揃って一礼するとラバーカの温かい言葉に見送られ一路リーミンへの旅路を開始した。


 エステリアを発ってからかれこれ六時間程が経過した頃――天樹と山岳地帯から裾野へ伸びる緩やかな稜線を迂回する為南から南東へとゆったり進路を変える馬車の中では、ペンダントを見つめるソウタを隣に座るウシオが穏やかに微笑みつつも妙に気に掛けていた。

 「綺麗なペンダントですね、御子様から頂いたんですか?」

 「うん……お守りと、神吏者探しの手掛かりになればって」

 昨夜フィリアとの間で交わした話の内容をソウタは既にここまでの道中でウシオと共有していた、もちろん他言無用と言い聞かせた上である。

 「その赤い玉、落ちた星の中で見た物にそっくりですね……同じものでしょうか?」

 「サイズはこっちの方が少し小さいけど……色は同じかな。星で見た時は暗くてくすんだように見えた気がするけど、明るい所だと綺麗だ」

 ソウタはその赤い玉をぼんやりと見つめフィリアの不思議な瞳を思い出しながらそっとペンダントを小さな白い布で包み大事そうに懐へとしまった。

 「御子様のお部屋に二人きりで、いい感じになれましたか?」

 その意味ありげな発言にソウタがゆっくりとウシオの顔へ視線を向けるとウシオは穏やかに、少し悪戯っぽく微笑んでいた。

 「ウシオ……さては昨日の事反省してないね?」

 ジト目でウシオを見やるとソウタは呆れたため息を零した。昨日の事と言うのは祭りの視察の折、ソウタと御子をデートさせようとしたウシオ(とスイカ)の企みの件である。昨夜フィリアとの話が終わり出立の準備をしている時にほんのり諌めていたのだが……どうやら懲りていないようだった。

 「ふふ、ごめんなさい。でも背格好も似てますし、お似合いだと思うのですが」

 「……お似合いかどうかは知らないけど……余計な気を回さなくていい、何より今はそれどころじゃないし」

 一際大きなため息を吐くとソウタは正面を見据え荷台の床板へ視線を落とした。

 「タイムリミットももう半分を切った。神吏者に少し近付いた気はするけど……実際はほぼ進展ゼロだ。ベッキーや調査隊員達、ボクらを信じて待っている人達もいる。色恋にかまけてたら皆に怒られるよ、先を急がなきゃ」

 「そうですね……ごめんなさい」

 その精悍な横顔を見つめウシオが悲しげに微笑んで謝意を述べるとソウタはそっと目を閉じゆっくりと一つ深呼吸をした。気を取り直しスッと開いたソウタの瞳はそのままゆっくり上がっていき、やがて頭の上の小さな少女へと向けられた。

 「――そんな訳だから……そろそろ機嫌を直して貰えない? スイカ」

 そう声をかけるソウタの頭の上では仰向けにだらしなく寝転んだスイカの手足がペシペシと……ソウタの頭を力なく叩きながら規則正しくリズムを刻んでいた。エステリアを出てから現在に到るまでの六時間余り、スイカはソウタの頭の上で大の字に寝転びながらずっと不貞腐れたままであった。

 「お祭り……今だけ……きかんげんてぇー……」

 「ごめんて……フィリアさんもいるし、別にスイカだけエステリアに残っても構わないけど……」

 「とろとろ……ふわふわ……それはやだ……」

 頭を叩くリズムに合わせてうわ言のように呟かれるスイカのボヤキにため息を零しつつ口元をほころばせたソウタは、リーミンにもきっと美味しいものあるよ……とスイカを慰めつつ今度何か埋め合わせを考えようとウシオと顔を見合わせながら頭の片隅に刻むのであった。


 エステリア、引いては天樹から遠く離れその足元が山の稜線の影に隠れ始めると街道沿いにはチラホラと魔獣の姿が散見されるようになっていった。往来が無くなり人の縄張りから自然へと回帰し始めている雑草の芽吹いた街道周辺の魔獣を追い払いながら馬車を走らせていると、目を閉じ上空を飛ぶ鳥人形の視点に意識を向けていたソウタへウシオが声を掛けた。

 「ソウタ、このまま普通に馬車を走らせるんですか? リーミンまで四十日以上掛かると仰っていましたけど……」

 異世界に来てから既に三ヶ月半が経過している現在、タイムリミットの六ヶ月を考えるとひと月以上のロスは看過できない問題であった。目を閉じたままソウタはまさか、と告げると視覚共有から帰ってくるなりおもむろに立ち上がった。

 「期限の半分を切った以上なりふり構うつもりはないよ。とは言えなるべく人目は避けたいから、エステリアから離れるのを待ってただけ」

 ウシオの問いにそう答えソウタはミルドのいる御者席に立つと足元に向けて両手をかざした。

 次の瞬間、滝のような猛烈な勢いで袖から溢れ出たモチのような白い流動体はあっという間に馬ごと馬車を包み込んでしまった。白い流動体はモニョモニョと蠢きながら次第に形を整えていくとやがて、一回り大きな純白の馬車の姿を形成した。前方には白く逞しい馬人形がしっかりと四頭並び、その後方に馬を含めた馬車まるごとを乗せた白い荷台が大きな車輪に支えられ繋がっている。馬ごと荷台に乗せた為全長は軽く二倍を越え、さながら真っ白な一斤の食パンのようである。

 「流石に四十日も掛けていられないから、こいつで二十四時間走り続けるよ。荷物もあるし街道の安全確認と砦の現状確認もあるから、そこまで速度は出せないけど……少なくともリーミンまでの所要時間は半分以下に減らせるはず」

 そう説明しながらソウタは本物の馬車から白い荷台へ降りると突然の事に驚き興奮気味の馬をなだめつつ御者席に立つウシオを見上げた。

 「万が一人の目に触れた時はどうするんですか?」

 「どうもしない、この世界の情報伝達速度は思っていた以上に遅い上に確度が低い。街なかならともかく、目算で四千キロ近くある、この往来の止まった街道で誰かに見られたとしても、然程影響はないと思う」

 今はとにかく先を急ぐ事だけ考えよう、と馬の鼻先を撫でながら告げるソウタへウシオは穏やかに微笑んではい、と頷いた。


 日ものんびりと西へ傾き南東へ走っていた馬車が徐々に真東へと向かい始める頃、真っ白な幌の上に立ち街道に近付く魔獣を粛々と追い払っていると突然不貞腐れていた少女が叫びを上げた。

 「……何かくさーい!」

 ソウタの頭の上でだらしなく大の字に寝転んでいたスイカは喚いて手足をバタつかせると傍らに立つウシオの胸元へ一目散にすっ飛んでいき服の隙間に頭から滑り込んだ。上半身だけ服の下に隠れ胸元から小さな足が生えている様はちょっと面白い絵面である。

 スイカの突然の行動にソウタとウシオは何事かと二人してキョトンと顔を見合わせた。

 「……え、ボク?」

 自分が臭いと言われたのかと動揺を見せるソウタの頭をウシオは顔を近付けクンクンと鼻を鳴らして確認する。

 「……いえ、特には……不快な匂いはありません、大丈夫ですよ」

 「ならいいけど……」

 優しく微笑むウシオに慰められながらもどこか釈然としないと微妙な表情のソウタは何が臭いのか、とウシオの胸元から生える小さな足に尋ねた。足だけの妖精はしばしモゾモゾと身じろぎした後服の隙間から顔を引き抜くとブルブルと顔を振り乱し呑気にフウと一息ついた。

 「何か、焼けた臭いがする……」

 「焼けた臭い?」

 再度顔を見合わせたソウタとウシオは揃って空を仰ぎ嗅覚に意識を集中させた。しかしスイカの言うような焼けた臭いは微塵も感じられず、ソウタの鼻にはただ爽やかな草の香りが匂うばかりであった。

 「……する? 焼けた臭い」

 「…………微かに……ごく僅かですけど確かにしますね、焦げ臭い匂い」

 ウシオには感じられたようで、念の為ミトにも聞いてみると微量感じ取れると気怠げに答えた。

 「ウシオとミトでギリギリじゃ、ボクにはわかるはずもない」

 「これだけ微量だと相当離れた場所からだと思いますけど……もしかして砦町で火事でも……」

 不穏な事を言うウシオと顔を見合わせるとソウタは地平線の彼方を見つめながら小さくため息を吐いた。

 「そうではない事を祈るよ……街が壊滅状態なんて事になったら、それこそエステリアで暴動が起きかねない……」

 避難民達が砦町に帰れるかどうかを確認する為に現在ソウタ達はリーミンまでの街道を進んでいる。帰れないどころか帰る場所を失ったなんて事になれば避難民の滞在は更に長引き、ただでさえ溝の出来たエステリア住民との摩擦は更に大きなものとなるだろう……その先は想像したくもない。

 「もし……万が一砦町が壊滅状態になっていたとしたら……その時は本気で白の王の討伐を考えないとならないね」

 避難民とエステリア住民との軋轢の拡大、それはすなわち御子であるフィリアを狙う何者かに更なる好機を与える事に他ならない。多くの不安や悩みを抱えながらもそれら全てを飲み込んで懸命に御子としての務めを果たそうと努力しているフィリアを守る為にも、エステリアにとってポジティブな報せを届けなければならない。

 懐にしまったペンダントに服の上から手を添えたソウタはフィリアを想いながら引き受けた依頼への決意を新たにするのだった。


 「――それにしても……ウシオやミト以上の嗅覚とはすごいね、スイカ」

 「臭いから褒められても嬉しくなーい……」

 藪から棒にソウタが褒めても小さな鼻を摘みながら渋い顔で嘆くスイカの姿に、ソウタは口元をほころばせながら好奇の目を向けていた。

 ウシオとミトは牛と蛇、どちらも優れた嗅覚の持ち主である。この二人を以ってして尚微かにしか感じ取れない匂いにいち早く気付いたスイカの嗅覚の鋭さにソウタは素直な感心を抱いていた。

 「(そう言えばいつも美味しそうな匂いがどうとか言ってたな……まさか嗅覚の鋭さがスイカの能力なんて事は……流石に無いか)」

 エステリアで見た青い妖精の力を借りた水膜の拡声器、同じ妖精であるならスイカにも何らかの力があるのではないかとソウタは考えていた。青い妖精が水の妖精として、そのまま水を操る力があるのなら風の妖精であるスイカは風を操れるのだろうか……などと考えながら、ソウタは未だ未知の多い風の妖精を強い興味を持って見つめていた。



 引き続き街道に近付く魔獣を追い払いつつ、無人となった砦が壊されたりしていないかを確認しながら昼夜問わずひた走ること数日あまり、この頃には馬車の針路は東から北東へと変わり天樹の姿ももうすっかり見えなくなっていた。

 今日も幌の上に立ち逃げていく魔獣を目で追っていたソウタはどこか難しい顔をしており、その様子に気付いたウシオはソウタの顔を覗き込むように声を掛けた。

 「ソウタ、何か考え事ですか?」

 ウシオの声に振り返り視線を交わしたソウタはもう一度逃げていく魔獣を見やるとグルリと周囲を見回しながら神妙な面持ちで口を開いた。

 「大した事ではないんだけど、魔獣の逃げる方向がどいつもこいつも同じだなと思って」

 「逃げる方向……そう言えばいつも山の方へ逃げますね」

 「街道の右側にいた奴まで何故かわざわざ街道を跨いで左側の山の方へ逃げていくから、何なんだろうって……山に何かあるのかな」

 ソウタが西から北に向かって広がる山岳地帯を眺めていると逆ではないでしょうか、とウシオは東の空を見つめながら呟いた。

 「逆?」

 「山に何かがあるのではなく、反対の方向に離れたい何かがある……例えば、白の王」

 彼の魔獣の名を口にしながらソウタと視線を交わしたウシオの表情はいつになく真剣なものだった。

 「……縄張りにしてるっていう半島の西端ですらまだ軽く千キロは離れてる、本体は恐らくもっと遠いはず……この距離で既に感じるの……?」

 慄いたソウタの問いにウシオは口をつぐんだまま、再度東の空へ視線を向けるとしばしの沈黙ののちゆっくりと口を開いた。

 「はっきりと感じるわけではありませんが……意識を向けると”向こうに何かが居る”という……圧……のようなものは感じ取れます」

 些細なものですが、と付け足しウシオはいつもの穏やかな笑顔をソウタへ向けた。その笑顔からゆっくりと東の空へ視線を移したソウタは自分には感じ取る事の出来ないまだ見ぬ脅威の大きさに静かに息を呑んだ。

 「(野生の勘とでも言うのか……他の魔獣達もそれを感じ取っているのか……)」

 ソウタは振り返りもう姿の見えない魔獣の逃げた先を見つめながら小さくため息を零した。

 袖からおもむろに取り出した一枚の依代へ目を落とすとソウタは目を細め水の神、タツキとの戦闘を思い返す。澱みに侵され荒れ狂いながらもその実、必死に侵食に抵抗していた水の神ことタツキ。自我を失いかけていた事や湖から強引に引きずり出した事、何よりウシオ達の協力があったおかげでタツキを澱みから解放する事が出来た。終始主導権を握り優勢を取っていたように思えるがそんな事はなく、殺さない、澱みに触れない等様々な制限の中あの時のソウタに出来る精一杯の最大限であった。

 白の王が水の神に劣ると言うのはただの希望的観測である。高度な知能を備え持てる力を十全に、遺憾なく発揮してきたとしたら果たして水の神に勝つ事が出来ていただろうか。そして人の手には負えないとまで評される、王の名を冠する魔獣に果たして勝てるのだろうか……とソウタは自身の戦力を客観的に捉えようと思考の海へ深く意識を沈めていった。

 日が暮れそよぐ風がひんやりと冷たさを帯びる頃、優しく頭を撫でるウシオの手に気が付くまで、今はまだ小さなソウタの長考は続いたのだった。


 エステリア出立から五日目のお昼頃、街道と砦の安全を確認しながら止まる事なく進み続けてきたソウタ達はこの日、一つ目の砦町であるアルクスをその視界に捉えていた。本来であれば二週間弱程度を要するはずなのでここまではいいペースである。焦げ臭い匂いの事もありもしかしたら火事になっているのではないか、との心配もあったのだが鳥人形からの遠目には幸い何事もなさそうでソウタはひとまずホッと胸を撫で下ろした。

 しかし安心したのも束の間、鳥人形の視点を借りていたソウタは町中に動く人影がある事に気が付いた。それも一人や二人ではなく少なくとも十人以上は見て取れる。エステリア教会の臣官達からは特に避難を拒んだ住民がいるなどと言った報告も聞いておらず、怪訝に思いながらもひとまずソウタは馬車人形を一度袖の中へしまうと本来の馬車での接近を試みた。

 アルクスは直径二キロ程度の小さな円形の町で、リーミンまで余りにも遠いので途中に町を作ろうと元々あった砦の周囲に人が住み着き大きくなっていった町である。それゆえ町の中心にはかつての砦が防壁ごとそのまま残っており、南西門から北東門に至るまで四つの門が一直線に並ぶという少し気持ちのいい光景を拝む事が出来る。生活の糧はほぼ全て行商によって賄われるという行商人憩いの宿場町である。

 ソウタ達の乗った馬車がアルクスの門前に着くと町中にあった人影は皆一様に息を潜め姿を隠していた。アルクスを視界に捉えてから辿り着くまでの間ずっと鳥人形の目から町の中を見ていたソウタはその不自然な行動から彼らは住民ではないだろうと概ね検討を付けていた。

 ミルドに壁を乗り越えさせ扉を固く閉ざしている閂を外してもらうとソウタ達は重厚な門扉を押し開けそそくさと町中へ馬車を進ませすぐさま門を閉じた。

 住民全員が避難しているアルクスの町並みは寂しく静まり返っていた。本来であれば今ここにはソウタ達しかいないはずなのだがどういうわけか現在は姿を隠し息を潜めている者達がいる。気付いていないふりをしてゆっくりと馬車を進ませるとまだバレていないつもりの隠れている者達は建物を挟んで隠れながら後を着いてくるようだった。

 そのまま五百メートルほど進むと突然、前方の建物の中から悠々と一人の男が現れ馬車の真正面に立ち塞がった。見るからに人相の悪い無精髭の、コテコテの賊っぽいその男はニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながらソウタ達の馬車を止めると、隠れていた者達が続々と姿を現しズラッと並んで馬車を円形に取り囲んだ。左右に七人ずつと正面の最初の一人、合わせて計十五人のガラの悪い男達は何が楽しいのか揃いも揃ってへっへっへ……と憎たらしく笑いながら下品に舌なめずりを見せている。男達の手には小回りの利く短いナイフのような短剣からそこそこ大きい両手剣に槍、ソウタ達を捕らえるつもりなのだろうロープ等々様々な獲物が握られていた。

 御者席でミルドとウシオの間に立つソウタがゆったりと男達を見渡していると正面に立つ無精髭の男が酒に焼けたようなしゃがれた声を上げた。

 「悪いな坊や、ちっとばかし荷物を検めさせてくれや。ついでに有り金と馬と女と、武器と服と……はっ面倒くせえ、全部置いてきな!」

 無精髭の男が吠えると周りを取り囲む他の男達は女はオレのだガキはよこせと思い思いに身勝手な欲望を声高に吐き散らした。そんな度し難く救いようのない男達を冷めた目で見渡しながら一言も発しないソウタ達に無精髭の男は苛立ちを見せ更に吠えた。

 「冷めた面してんじゃねえ聞こえてんだろ何とか言えや! ビビって声も出ねえのか!」

 ちゃんと悪党っぽく砕けた口調に翻訳されるんだな……などと関係ない事を考えながらソウタは無精髭の男に視線を送るとようやく口を開いた。

 「いくつか質問しても宜しいですか?」

 「あぁ?」

 無精髭の男はソウタの言葉に一瞬怪訝な顔を見せるとすぐさま他の男達と顔を見合わせ笑い出した。馬鹿にするように笑いながら無精髭の男がいいぜ何でも答えてやると告げるとソウタは遠慮なく質問を畳み掛けた。

 「この町の住民は皆避難していますが、あなた方はいつから、ここで何を?」

 「避難の直後からさ、誰もいねえと不用心だろ? だから俺達が留守を守ってやってんのさ」

 「我々はリーミンへの支援物資を運んでいます、妨害する理由は?」

 「支援物資、そいつはありがてえ! メシが尽きてきてどうしようかと思ってたんだ、酒もあんのか?」

 「……白の王の脅威は感じませんか?」

 「あぁ? 白の王? なんだそりゃ?」

 「?……あなた方は一体どこからこの町へ? 元々住んでいたんですか?」

 「どこってそりゃあ……はっは、アジトの場所を聞き出そうったってそうは行かねえよ坊や」

 「(アジト……)」

 ソウタが目を伏せ質問が止まると周囲の男達からいつまで話してんだとヤジが飛んだ。しびれを切らした男達がジワジワと距離を詰めるように動き出すとソウタは顔を上げ無精髭の男を見据えて最後の質問をした。

 「最後にもう一つ、カシラはあなたですか?」

 「カシラ? まあ……今はオレがカシラっつう事になっちゃうかぁ?」

 無精髭の男がちゃらけた様子で周囲の男達を見回すとそのうちの一人からおめえがカシラってタマかよ、とこちらもふざけた様子で返し調子に乗るなとヘラヘラ笑い出した。

 「……わかりました、ありがとうございます」

 ソウタが冷ややかに感謝を述べると同時に両隣に座っていたミルドとウシオはスッと揃って静かに腰を上げた。ミルドとウシオの大きさに左右からそれぞれ色の違うどよめきが上がる中、ソウタは無精髭の男をまっすぐに見つめたまま二人に指示を出した。

 「ミルドは左、ウシオは右をお願い。あの男はボクがやる」

 「はい、捕らえるなら糸は使ってもいいですか?」

 「うん、重症を負わせないようにだけ気をつけて。エステリアに送るから、途中で死なれても困る」

 「わかりました」

 ソウタの指示を受け穏やかな微笑みを湛えたまま頷いたウシオがミルドと共に馬車から降りるとソウタは一足飛びで馬を飛び越え無精髭の男の前に降り立った。無精髭の男は毅然と佇む少年に気圧されるように一歩下がるとソウタの胸の徽章を見て冷や汗を垂らし引きつった笑みを浮かべた。

 「へっ……へへ、二つ星か……ガキの割にはやるって事か……上等じゃねえか、魔獣と人じゃ勝手がちげえって事を教えてやんぜ。ガキか女、一人でも人質に取りゃこっちのもんだ……オラァッ!?」

 無精髭の男は取り回しのしやすい小剣を手に威勢よくソウタへ襲いかかる。三対十五、五倍の人数差がある賊との戦闘は……五秒で終わった。


 「――いででででっ……痛えっつってんだろこのガキっ……あだだだだだだうっ嘘っ嘘だってっ……あ痛ったあっ!」

 文字通り瞬く間に叩きのめされた十五人の男達はあっという間に縛り上げられ一箇所に集められていた。先程から痛みを訴え喚き散らしている無精髭の男の首元にはソウタの指が触れている。

 「さっさとアジトの場所吐いてください、でないと次は背中と二の腕同時にいきますよ」

 身悶える無精髭の男を冷めた目で見下ろしているソウタが一体何をしているのかと言うと……気の流れを操り身体のあちこちに攣った時のような痛みを任意に作り出していた。ソウタの力は気の流れを整えるだけでなく気の流れを無理やり滞らせる事で痛みを感じさせたり出来る他、直接触れている間という条件はあるものの相手の身動きを完全に縛るといった事も可能であった。

 全身引き攣り尋問によってアジトの場所を聞き出したソウタは男達を荷車に乗せ、教会宛の手紙と一緒に大きな鳥人形に持たせエステリアへと送った。それと同時に中級人形を一体賊のアジトへ送りつけ一晩とかからずに壊滅、こちらで捕らえた賊もまたそのままエステリアへと送り届けた。

 賊のアジトは山の中腹、魔獣の近寄らない天樹の加護圏内にあった。魔獣の存在があるこの世界では基本防壁の外に人の生活圏は作れないが、魔獣が近寄らない天樹の加護を悪用する形で賊は街の外にアジトを形成していた。

 不届き者を片付け終わるとソウタは馬車を北東門に向けて進めながら鳥人形を無数に飛ばし賊の残党が隠れていないかと街の状況を確認して回った。賊によって荒らされた部分はあるが幸い防壁や家屋等に壊された形跡はなく、町の機能としても問題は無いようであった。

 とりあえずの町の無事を確認したソウタはホッと胸を撫で下ろし小さくため息を零した。一息ついた後北東門から馬車を外へ出すとまたミルドに閂を掛けてもらい、ミルドが戻ると再び馬車人形を出してソウタ達はリーミンへの進行を再開した。

 御者席の真ん中に腰を下ろしもう一度フウと大きくため息を零すソウタへ、右隣に座っていたウシオは労いの声を掛ける。

 「お疲れ様でした、魔獣のいるこの世界にも野盗がいるとは思いませんでした……とんだ災難でしたね」

 「本当に……魔獣の脅威を確認しに来たのに、まさか人の相手をさせられるとは思わなかった」

 人の醜い悪意を見るのが嫌いで、心底うんざりした様子でうなだれため息を零すソウタを慰めるように優しく撫でながらウシオはフォローを入れた。

 「でも逆に、アルクスでは生活に支障がないという事はわかりましたね」

 「……まあ……前向きに捉えるとそうなんだけど……この感じだともう一つの町にもいるんだろうな……」

 面倒臭いとため息混じりにボヤくソウタを何とか励まそうと思案したウシオは話題の転換を試みた。

 「それにしてもソウタ、いつの間に文字まで書けるようになったんですか?」

 「ん、そりゃ……読めるんだから書けるようにもなるよ、本なら散々読んだしね。多少文法に違和感はあるかも知れないけど……そんな難しい事書いてないし、多分大丈夫でしょ」

 それでも凄い事です、偉いですよ、とウシオは褒めて気分を上げる作戦に出る。ソウタの頭を撫で続けながら更なる思慮深さを引き出しに掛かった。

 「随分と大きな人形でエステリアへ送りましたけど、見られても大丈夫ですか?」

 「その辺はちゃんと考えてあるよ。飛んでいくのは最初だけでエステリアに近付いたら馬になる、賊を街の近くに届けたら街の人と接触しないようにすぐ帰ってくる」

 「アルクスで賊を捕らえたと手紙に書いたんですよね、二週間掛かるはずの所を半分も経たずにアルクスに着いているとバレますけど……そこは?」

 このウシオの指摘にソウタは凍りついたようにピタリと動きを止めるとゆっくり大きく吸った息を盛大に吐き溢しながら頭を抱えた。

 「………………はぁ……フィリアさんが……何とか誤魔化してくれる事を祈る……」

 考えてなかったんですね、と作戦の失敗にウシオはおっとりと頬に手を添えあらあらと苦笑いを浮かべた。ソウタはため息を吐きながら急に気の抜けたように後へ倒れ込むと不貞腐れたように言い訳を始めた。

 「……だって彼らにあげる食料なんて無いし、五日間も飲まず食わずで送り届けて死なれても嫌だし……しょうがない」

 アルクスの名前書かなきゃよかった、とソウタはしたためた手紙の文言を後悔した。その後、この日街道付近にいた魔獣達はみな機嫌を損ねたソウタによって八つ当たりの憂き目に遭うのだった。(※追い払っただけです)


 エステリア出立から七日目の早朝日の出前、アルクスから東北東に針路を取りつつがなく馬車を走らせるソウタは白い幌の上に立ち目を閉じて風に漂う匂いに意識を向けていた。アルクスを出た辺りからソウタの鼻にも焦げ臭い匂いが感じられるようになり、その出処は一体どこなのかと鳥人形の視点を借り上空から周囲を見渡してみるのだが……。

 「……暗くて何も見えない」

 「もうすぐ夜が明けますから、それからで良いのでは?」

 ソウタはゆっくりと目を開くと周囲を見回しながら小さくため息を零した。

 「魔獣も見当たらないし余りにも暇なものだから……そう言えばスイカは?」

 ここ数日随分と静かな気がする、と尋ねるとウシオは自身の胸元の服に指をかけ中を覗き込んだ。

 「焦げ臭い匂いがし始めてからずっとここにいますよ、余程この匂いが嫌なようで……今はまだ寝てますね」

 「鼻が利きすぎるのも大変だね……」

 留まる事なく進み続ける白い馬車の上で他愛もない会話を楽しんでいるとやがて東の空が白み始めた。陽の光に追われ徐々に宵闇が逃げ出す中、ソウタ達は進行方向に浮かび上がった衝撃的な光景に大きく目を見開いた。

 「何あれ……」

 それは北の山岳地帯から街道を横切り南東の方角へ真っ直ぐに大地を染め上げた黒い帯であった。山の稜線から南の地平線にかけて果てしなく続いている。ソウタとウシオは顔を見合わせるとより強く周囲を警戒しながら黒い地面の元まで馬車を急がせた。

 黒い地面の手前に馬車を停めたソウタ達はゆっくりと歩み寄り慎重にその黒い地面へと手を伸ばした。指先に付着した黒い粉に鼻を近付けるとその独特な匂いからソウタは確信を得る。

 「炭だ……焼け焦げてるんだ、これ全部」

 ソウタはスッと立ち上がると黒い帯の端から端までを改めて確認しその広大な範囲に慄いた。横幅七から八メートルほど、長さは二百から三百キロほどあるだろうか……鳥人形の目を借り上空から見ても地平線の彼方まで続いており全長となるともはや検討もつかない。方角的には北西から南東に向かって一直線に伸びており、南東方向の海を越えた遥か先には白の王の縄張りである大きな半島がある。

 焦げ臭い匂いの元はこれか、何が起こればこのような状況が作り出されるのか、思案しながらソウタが鳥人形の視点に意識を向けているとウシオが何かを見つけソウタへ声を掛けた。

 「ソウタ、あそこ……」

 ウシオが指で示す先、左前方四メートルほどの所へ視線を向けると焼け焦げた黒い地面の中に一つ、獣の足跡と思われる痕跡が残されていた。かなりの日数が経ち風に吹かれて消えかかっていたその足跡は大きく、人の頭を並べて作った肉球のような形をしている。他にも足跡がないか探してみるがほぼ風に吹かれて崩れてしまっておりはっきり形を残しているものは付近には見当たらなかった。唯一残っていた足跡に歩み寄り見下ろしながらソウタとウシオはこの黒い帯を作ったであろう獣に思いを馳せた。

 「足跡は南東を向いていますね、進行方向から察するならこれは……」

 「……白の王の通り道……どこから現れたとかは聞いてないけど、燃え盛るような姿をしていると言っていた。ただ通り過ぎただけでこうなるなら……人の手には負えないと判断するのも理解できる」

 ソウタはゆっくりと振り返ると真っ直ぐに伸びた黒い道の先へ鋭い視線を向けた。もしこれほどの熱量を常に身にまとっているとすれば白の王には近付く事すら困難である。おまけにソウタの人形の依代は基本的に紙、熱や炎と言った相手には極めて相性が悪かった。遥か遠い空の彼方を見つめながら、ソウタは袖の中でひっそりと強く拳を握りしめていた。



 エステリア出立から十日目、焼け焦げた黒い地面を過ぎた頃から焦げ臭い匂いはより一層強さを増し、空はどんよりとした雲に覆われる日が多くなっていた。今日もミルドとウシオ、それに人形が魔獣を追い払いながら特にトラブルもなく馬車を進ませる中、ソウタはと言うと黒い地面を見た日から馬車の中に引きこもり一人深く思索にふけっていた。

 「(下級、中級、黒符を使ったミルドにウシオ達式……あとは穿点と……上級、か……。もう一つ、手があるにはあるけど……)」

 瞑想でもするかのように姿勢良く座り目を伏せ俯いて、ソウタは頭の中であれこれ考えながらおもむろにそっと懐に手を添えた。しかしすぐに目を閉じ小さく首を振ると心の内で自身の考えを否定した。

 「(使えるわけがない……上級すら満足に制御できないのに……下手をすればウシオ達にまで危害が及びかねない……)」

 ソウタは白の王との戦闘を想定して自分に何が出来るかを考えていた。戦うと決めたわけではない、しかしその可能性がゼロではない以上考えないわけにはいかなかった。能力的に不利な相手ともなれば尚更である。ただ通り過ぎるだけで大地を焦がす炎熱の魔獣にどう対抗し得るか、ソウタにとってこれ以上無い難しい問題であった。

 明確な糸口を掴めぬまま思索を続けているとそこへ御者席にいるウシオから声がかかった。

 「ソウタ、二つ目の町が見えてきましたよ」

 その柔らかい声にソウタは一旦思索を止め、気持ちの晴れぬままのそのそと馬車の前方へ向かった。

 第二の砦町フルリオ、アルクス同様エステリアとリーミンの間が長すぎるので途中に町を作ろうと人が集まり出来た町である。規模や構造、生活に必要なものをほぼ全て行商によって賄っている事などアルクスと差異は殆どないが、強いて違いを挙げるとすればリーミンに近い為蜂蜜酒ミードが比較的安く飲めるという事だろうか。なぜリーミンに近いと蜂蜜酒が安いのかはまた後ほど語ろう。

 事前の予想通り、フルリオの町にもアルクス同様十数人の賊が入り込んでいた。ソウタはうんざりした様子でアルクスの時と同じように町へと入り、少し進んだ所で同じように取り囲んできたわかりやすい小悪党達を問答無用で叩きのめし瞬く間に拘束した。所要時間は僅か三秒、新記録である。

 そして彼らもまた前回と同じようにエステリア送りにする為の準備を進めていた、その時である。立ち並ぶ家屋の隙間から物音が聞こえ素早く視線を向けると建物を挟んだ向こうの路地に人影を確認した。ソウタ達にバレた事に気づくとその人影は静まり返った町中に足音を響かせながらバタバタと走り去っていった。賊の残党がまだ残っているようだとソウタは拘束した男達をミルドに任せウシオと共に逃げた人影を追いかけた。

 上空の鳥人形から人影が逃げ込んだ先を確認し屋根を飛び越えてその建物へ到着してみるとそこは小さな教会であった。賊が今更天樹に何を祈ろうというのか、怪訝に思いながら扉を開くと祭壇の前には賊ではなく一人のシスターが立っていた。歳は見た目三十代半ばから後半くらい、背丈はウシオと同じくらいで太っているとは言えない程度の豊かな体格の、目尻の垂れた優しそうな人相をした女性であった。

 教会の中を見渡し他に誰もいない事を確認するとソウタは息を切らし怯えた様子のシスターへ軽い会釈をして穏やかに声を掛けた。

 「逃げた賊を追ってまいりました、あなたお一人ですか? ここで何を?」

 「え、あ……えっ、と……わ、私はこの町の住民です、逃げ遅れて置いていかれてしまって……ぞ、賊は裏口の方へ逃げました!」

 ソウタはシスターの指差す祭壇右奥に位置する扉へ目を向けた。しかしソウタの前で嘘など通用するはずもなく、シスターに視線を戻すとソウタは淡々と追求を続けた。

 「賊が来たのに、悲鳴の一つも上げなかったのですか?」

 「さ……騒ぐと、殺すと脅されて……怖くて、声が出ませんでした……」

 「……そうですか、賊は我々の仲間が追います。とりあえずお一人でいると危ないので一緒に来ていただけますか?」

 このシスターが逃げた残党であるのはわかりきっているのだが、ごちゃごちゃと問答を交わすのも面倒なのでソウタはこれ以上の追及はせずそのまま連れ出す事にした。

 ソウタ達がミルドの所まで戻ってくると捕らえた男達は既に荷車に乗せられエステリア送りの準備が整っていた。ソウタ達の後ろを着いてくる拘束されていないシスターを見るなり浅はかな笑みを浮かべる男達に気付きつつも無視していると次の瞬間、ソウタは背後から首元に手を回され羽交い締めにされてナイフを突きつけられた。

 「悪いけど動くんじゃないよ、坊や。そいつらの拘束を解きな、でないとこの子がどうなるかわからないよ」

 声の主はもちろんシスターであった。形勢逆転とばかりにゲラゲラと沸き立つ男達をよそにソウタ達は一切微動だにしなかった。穏やかな笑みを浮かべたままのウシオと知らんぷりのミルドに苛立ちを見せがなり散らすシスターは自身の身に起きている異常に全く気付いていなかった。

 ソウタに触れるという事はソウタの力の干渉を受けるという事である、動けなくされている事にも気付かないシスターは淡々と、呆気なくソウタに取り上げられたナイフをわけがわからないと言った様子で呆然と眺めていた。

 逆転の計画も敢え無くご破算となりまんまと尻尾を出してしまったシスターは抵抗も虚しく拘束され男達と一緒に荷車に乗せられた。あとは手紙を書き添えてエステリアへ送るだけなのだが、ここでもう一つ波乱が起きた。切っ掛けはシスターと男達とのやり取りの中で聞こえたとある言葉である。

 「ったく使えねぇ……何やってやがる……ッ」

 「あっさり捕まっといて何が使えないだい、こっちのセリフだよ!」

 「あんなガキ一人に負けてんじゃねえってんだよ! マザーが聞いて呆れるぜ!」

 「うるっさいねぇ……こんだけ頭数揃えといてたった三人ぽっちにやられてんじゃないよ!」

 マザー……その言葉が耳に飛び込んでくると馬車の御者席で手紙をしたためていたソウタの手がピタリと止まった。まだ書き途中の手紙を投げやりに放り出したソウタは早足でシスターの元へ詰め寄ると躊躇いなくその胸ぐらを掴み上げ鼻先が触れそうなほど互いの顔を近付けて冷たく、鋭く問い掛けた。

 「王都で子供達を見捨てて逃げ出したのは、お前か?」

 ソウタの冷え切った目を見つめシスターはしばし怯えた表情でキョトンとしていた。しかし尋ねられた内容を理解すると途端に青ざめカタカタと震え始めた。

 「なっ……なんっ……なん、でっ……」

 「……なんで……? とっくに野垂れ死んでいるとでも思っていたのか? 海の向こうの事なんかバレるはずもないと?」

 シスターは怯え震え上がるばかりで答えはしなかった。しかし滲み出すオーラが、入り乱れた醜悪な感情の波が、ソウタに確信を持たせた。ソウタがゆっくりと寄せていた顔を離すとそれに伴いシスターは徐々に冷静さを取り戻し憎たらしい笑みを浮かべて流暢に語りだした。

 「まさか、あんな状況で生き延びたのかい……はっ、さてはモニカが身売りでもしたのかね、あの子は優しかったし器量も悪くなかったからね……子供達の為となりゃ……ぁがッ……」

 胸ぐらを掴んでいたソウタの手はそれ以上言わせまいとほくそ笑んでモニカを貶める女の喉元を掴み締め上げた。

 「やめてくれ、見捨てたお前が彼女の優しさを語るな……身の程を弁えろ……」

 冷たく言い放ちながらソウタの細腕はゆっくりとシスターの身体を持ち上げていく、両手両足を拘束されている為何一つ抵抗できないシスターが限界を迎える直前、ウシオの静止が入るとソウタはパッと手を離しシスターを落とした。重力に引かれシスターは勢いで荷車から転げ落ちると激しくむせ返り必死に呼吸を整えながら涙目でソウタを睨み付けた。

 「お前みたいなガキに何が分かるってんだい! あんなの! 土台無理な話だったんだよ! 天樹を見た事もない田舎者に何を説いたって何にも伝わりゃしない! やっとの思いでエステリアに戻って来たのにあの人にも捨てられて! アタシだって必死にやったんだよ、アタシだって被害者なんだ……ッ!?」

 ――ズガァンッ!?

 突如鳴り響いたその轟音は地面に横たわるシスターの顔の目の前から、砂埃と共に立ち上った。驚きの余り硬直しているシスターの目の前には勢いよく振り下ろされたソウタの拳が、石畳を粉砕し深々と地面に突き刺さっていた。

 「……だとしても……本部へ嘘の報告をしたのは間違いなくあなたの罪だ。正直に報告していれば、モニカさん達の苦労も幾分減らせたはず。何の罪もないモニカさんや子供達をなかった事にしようとしたその罪、その身を以って贖え」

 冷ややかに告げ地面から拳を引き抜くとソウタはシスターを木箱の前に座らせ全身引き攣り尋問に掛けてこれまでの悪事を洗いざらい紙に書き出させた。

 したためた手紙とシスターの悪事リストを添え大きな鳥人形に持たせて賊をエステリアへ送り出すと、ソウタはしばしの間その飛び去る姿をじっと見つめていた。鳥人形の姿が見えなくなっても空の彼方を見つめているとウシオがそっと隣へ寄り添いソウタの頭を撫でながら優しく、穏やかに声を掛けた。

 「良く、我慢しましたね」

 「……何の意味もないのは分かってる……ボクが一人ここで鬱憤を晴らした所で、今更誰が救われるわけでもない。そもそもボクは何の関係もない、話を聞いただけの部外者だ……あの女を咎める資格も、ボクにはない」

 「……領分を弁えるのは良い事です。ですが……見たもの聞いた事、そう言った物事に対する心の機微も、私は大切にして欲しいと思います。関係や資格と言った境界に囚われなくてもいい、心が感じたものを抑え込まなくてもいい、それがあるから人は他者と関わり、繋がりが生まれるのです。あなたの優しさや思いやりは、モニカさんやあの子達の救いになったと思いますよ」

 「……そうだといいな」

 ウシオの温かな励ましにため息混じりの小さな呟きを零しながらソウタはいつまでも西の空を見つめていた。

 やがて気の済むまで王都のモニカや子供達に思いを馳せたソウタはウシオに感謝を告げると気を取り直し、改めてリーミンへの進行を再開した。


 フルリオを出立してすぐ、ソウタは再び馬車の中に引きこもり瞑想のような良い姿勢でまた考え事に浸り始めた。そんな中でまずは相手の事を知らなければ対策も考えようがない、とそもそもの基本的な事を思い出したソウタは白の王を視察するべく中級人形を南の半島へと飛ばした。半島まで最も接近していると言っても過言ではない事ここに至ってもまだ三百キロ以上の距離がある為視覚共有は出来ないが、地図を作った時のように人形が見聞きした情報を持ち帰る事は出来る。せめてどのような姿をしているのかだけでも分かれば動きなども想像しやすくなるだろう。

 中級を視察に送り出してから一時間半程が経過した頃、日も暮れ辺りが闇に閉ざされる中ソウタは馬車の中でウシオの膝に頭を乗せ横になっていた。睡眠を取っている訳ではなくちょっとした休憩時間である。横になりながら上空の鳥人形の視点を借り南の水平線の向こうを気に掛けていた、その時だった。丸みを帯びた水平線のラインが一瞬フッと明るくなったかと思った瞬間、ソウタはパッと目を見開き跳ねるように上体を起こした。突然起き上がったソウタにウシオも驚き一体何事かと問いかける。

 「ソウタ? 寝心地悪かったですか?」

 ソウタはウシオの声に何の反応も示さず少しの間視線を落として呆然としていた。やがてゆっくりと動き出したソウタは南の方角を向くと何が起きたのかをうわ言のように呟いた。

 「中級の反応が消えた……多分……着いてすぐだ……」

 中級がやられた、それだけでなぜソウタがここまで狼狽えているのか……理由は二つ。一つは半島の広さである。白の王が縄張りとしているリーミン南部の半島はソウタの作った地図ではざっと縦千キロ、横千五百キロはある。チーターの最高速度ですら縦の端から端まで約十時間は掛かる広大な面積を誇っている。ソウタ達のいる所から半島まで約三百キロ離れており中級は時速二百キロ程度しか出せない事から到着とほぼ同時に狩られたという事が分かる。広大な半島の中で中級がどこから来るのかを予め察知し待ち伏せていなければこれだけ早く狩られる事はない、生き物とは違い気配などもない侵入者を一瞬で排除した……その事実がまずソウタを驚かせた。

 そしてもう一つは中級は決して弱くないと言う事である。熱や炎と相性が悪いとは言え一瞬で焼き尽くされるなどという事はなく、仮に勝てない相手であっても逃げおおせるくらいの俊敏さとパワーを備えている。ソウタの人形は核となる依代が傷付かない限り仮に手足を切り落とされたとしても体積が減るだけで消滅はしない。自由自在に形を変えられる為回避能力も高く逃げや防御に徹すればその生存能力は極めて高い。制御に不安の残る上級が使えないソウタにとって正に主力とも言える中級が手も足も出ないとなれば、これは持ち得る戦力のおよそ半分が役に立たないも同義である。攻略の糸口を探るどころか逆に一筋縄ではいかない厳しい現実を突きつけられソウタはただ呆然とするしかなかった。

 そんなすっかり肩を落として意気消沈気味のソウタを見かねたウシオは前向きに考えましょう、と声をかけた。

 「幸い縄張りから出てくる様子もありませんし、二つの砦町も無事だったわけですから、厄介な相手と無理に戦わなくて済んだと言う事で……納得できませんか?」

 「……そう……だね、避難民が町に戻れるかを確認しに来たんだ……戦う必要はない……」

 そう自身に言い聞かせるように呟きながらもソウタはまだ納得の行かない様子で、ウシオの心配そうな表情にも気付く事なくソウタは一晩中荷台の床を見つめ続けるのだった。


 エステリア出立から十五日目、アルクスからフルリオに掛けて東北東に続いてきた街道はフルリオから先カクッと針路を北東に曲げ緩やかに北上を始める。絶え間なく走り続ける馬車の中でソウタは朝から荷台に仰向けに寝転び天井の黄ばんだ幌をぼんやりと眺めながら頭を悩ませていた。悩みのタネはもちろん白の王である。もう倒す必要はなくなったにも関わらず今尚頭を抱え攻略法を考えているのには当然ワケがあった。

 覚えているだろうか……初めてこの異世界に踏み込んだ頃にソウタが考えていた、この任務は最高戦力群としての格を問うものである、と言う話。これは誰かにそう言い付けられたわけではなく、ソウタ自身が勝手にそう思っているだけの話ではある。しかし己の弱さを自覚しているソウタにとってこの任務の成否、引いては自身の強さそのものに対する思いというものは並々ならないものがあった。比較対象は化け物と言って差し支えない人外の領域に足を踏み入れている者達、世界中から集められた選りすぐりの精鋭部隊である。曲がりなりにもその末席に名を連ねる一人として、ソウタはもっと強くなりたかった。

 納得もできず糸口も見い出せないまま只々時間だけが無為に過ぎていくもどかしさに目を背けるように、ソウタは小さくため息を零すとそっと目を閉じた。

 いつしか静かに寝息を立て始めると、ソウタは久方ぶりの夢を見た。いつか見た子供達の声がするもの……ではなく、かつてあったソウタがある人物へ質問をした時の記憶である。


 ――……どうしたら強くなれる?

 朧気なフワフワとした意識の中で、そう尋ねたソウタに対しその人物は驚いた表情を見せていた。しかしすぐに嬉しそうに口元をほころばせるとその人物は背の低いソウタと目線を合わせるようにしゃがみ込み、ソウタに優しい視線を向けまるで子供をあやすように穏やかに語りかけた。

 「まずは自覚を持つ事だ。自分の能力を正しく自覚する、何が出来るのか、どこまで出来るのか、自分の手の届く範囲をきちんと認識する。意識を向けないと自分の事でも案外わからないものだ」

 ――……自覚。

 「次に強くなった自分を想像する。今はできない、けど強くなったら出来る、そんな姿を具体的にイメージする。目標が見えていないと、道に迷ってしまう。だから目指す先を作るんだ」

 ――……目標。

 「そしたらその目標を達成する為の手段を考える。手の届かない天井にただ手を伸ばしても永遠に届かない。台を用意する、ジャンプする、どうしたら手が届くか、自分に使える手段を考える」

 ――……手段。

 「あとは簡単、手が届くまで手段を積み重ねるだけだ。一つでは届かなくても、いろんな手段を重ねて組み合わせて、積み上げていけばいつか届く、途中で諦めなければね」

 ――…………。

 「残念だけど近道はない。地道にコツコツ、今出来る事を着実に積み重ねていく。そうしていつか手が届いた時が、限界を超える時だ。ソウタは強くなってるよ、これからも強くなる、必ずね――」

 そう締めくくりその人物は穏やかに微笑みソウタの頭を優しく撫でた。手袋をした、指の細いその手は大きく、そしてとても温かかった。


 温かな微睡みと心休まるフローラルな香りに包まれ心地の良い眠りを堪能していたソウタはふと、前髪を引くような微かな刺激と聞き覚えのある騒々しい声に導かれゆっくりと意識を引き上げられていった。

 「ソータ起きてー!」

 「……起きたよ」

 目を開くと目の前にはソウタの前髪を引っ張るスイカの姿があった。スイカはソウタの目が覚めたと気付くと顔の上からフワリと浮かび上がりソウタの胸の上に着地した。

 「ソータおはよー!」

 「……おはよう、焦げ臭い匂いはもう平気なの?」

 「うん、もう平気! それよりすっごいから、ソータも早く来て!」

 「すごい……?」

 昨日まで焦げ臭い匂いが嫌だとウシオの服の中に隠れていたとは思えないほどの元気溌剌なスイカに袖を引かれ、ソウタは一体何だと怪訝な顔をしながら促されるままに馬車の前方へと引っ張られていった。

 薄暗い荷台の中から降り注ぐ陽光の眩しさに眩む目を細めながら這い出たソウタは、視界いっぱいに広がる驚きの光景に大きく目を見開き感嘆の吐息を漏らした。

 「……すごいな……」

 語彙を失いながらスッと立ち上がったソウタはゆっくりと周囲を見渡した。

 ソウタの視線の先には色とりどりの草花が咲き乱れた花の絨毯が広がっていた。視界いっぱいに、文字通り地平線の彼方まで花で埋め尽くされている。右を見ても花、左を見ても花、青空の下おとぎ話のような花畑の世界にあるのはたった一本の街道、ただそれだけであった。

 柔風に乗って運ばれてくる花の香りと気持ちのいい景色に見惚れ立ち尽くしていると花畑の上をはしゃぎ飛び回っていたスイカが一輪の小さな白い花を手に戻ってきた。スイカはその白い花をソウタの頭にかんざしのように挿し飾り付け、少し離れて仕上がりを確認すると満足そうに笑った。

 「おそろい!」

 スイカの言葉を受け御者席に座るミルドとウシオの頭を見ると同じ小さな白い花が飾り付けられていた。

 「綺麗ですね」

 一面の花畑を眺めながらそう呟いて、まだ少し心配を残す穏やかな笑みを見せるウシオへ……ソウタは少し申し訳無さそうに目を細め微笑んで頷いた。


 豊かな香りを纏い駆け抜ける風に踊る彩り豊かな花々に祝福されるかのように、花の世界をひた走るソウタ達はやがて正面に人工的な建造物を視界に捉えた。地平線の彼方からまず浮かび上がってきたのはせり立つ険しい山肌に築かれた色彩豊かな木造建築、そしてその周囲を取り囲むようにそそり立つレンガ造りと思われる赤茶けた立派な防壁であった。数多の花に囲まれ要所に多様な彩色が成された飾り付けが見られる様は正に花と彩の国と呼ぶに相応しい格式高い優美なものであった。

 エステリア出立から半月が経過した昼下がり、最低でも四十日は掛かると言われた道程をこの日ソウタ達は半分以下の十五日間で走破し、目的地であるリーミンへと到着を果たすのだった。

第十六話、お読み頂きありがとうございます。橘月りんごです。

五月後半、一週間ほど家を空けなければならない為次の第十七話は六月以降の更新となります、申し訳ありません。

十六話ではエステリアからリーミンまでの道中をお届けしました、これと言って物語が動く場面ではないので面白みに欠けるかも知れませんがご了承下さい。

その代わりと言っては難ですが次回十七話からは本格的に後半の物語が加速して参ります、楽しみにお待ち頂けますと幸いです。

リーミンでの出会いとは、そして白の王と如何に対峙していくのか。

いよいよ佳境を迎えるエビテンを今後ともよろしくお願い申し上げます。

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