表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/23

プロローグ

 西暦二〇XX年、太平洋上に突如巨大な光の柱が出現した。それはまるで噴水のように、あるいは水中爆発によって巻き上げられる水柱のように立ち上り、瞬く間に地球上から夜の暗闇をかき消していった。突然の事にパニックを起こす暇すらなく、煌々と立ち上る光を見上げる人々は一人、また一人と次々に意識を失い倒れた。走行中の車は制御を失いクラクションをかき鳴らしながら車に、ビルに、家に、そして人に、立て続けに突っ込んでいった。やかましく鳴り続けるクラクションに爆発音、警報機のベルや火災報知器がけたたましく鳴り響く中、そこに人の声はなかった。

 水面に落とした小石から生じた波紋が輪を描いて広がっていくように、その日人類が長い年月をかけ築き上げてきた秩序は、一瞬にして混沌に塗りつぶされていった。

 人類史上かつてない程の未曾有の大災害。だがしかし、大災害の本番はここからだった。倒れていた人々が意識を取り戻すと喧騒は悲鳴を取り込みより大きく膨れ上がっていった。それは目の前に広がる惨状に対する悲鳴のみならず、自身の身に起きた異変に対する驚きと嘆き、そして恐怖の悲鳴であった。

 奇声を喚き散らしながら火ダルマで走り回る小太りの男、泣きわめきながら頭をかきむしるような姿で石になった体格の良い男性、呆然自失に陥りながらドロドロとしたスライム状の粘液に全身が変化していく中年男性、体中から無限に湧いて出るクリームに溺れもがき苦しむ若い女性、すごい速度で空を飛び回りビルに激突して真っ赤に弾け散ったスーツ姿の男性だったモノ。唐突に人類にもたらされた不可思議な異能による犠牲者の数は想像を絶し、百億人を超えようとしていた地球上の総人口はこの日、その約半数を失う事となった。

 世界中を混沌と絶望の渦中へと叩き落としたこの超大災害は後に、「フラッシュフォール」と呼ばれる。


 各国が国内の現状把握と対策に追われ失われた秩序を取り戻そうと奔走する中で、いち早く国内の沈静化を成し遂げた一つの国から国際社会に対してとある提案が出された。すべての国と地域が一体となってこの危機的状況に対処する為の組織、国際連合機関を設立しよう、というものである。

 自国の力だけでは対処不可能と判断した各国はこの提案に賛同し、世界中の国々をおおよそ十のグループに分け、それぞれの代表者によって統括理事会を組織、全てのグループで協力して問題解決を図ると共に、人類が獲得した異能に関しても研究を進める事で合意した。

 また、組織の本部はコトの発端、フラッシュフォールの原因があると推測される太平洋上に建造される事となり、この海に何かがあるのか、何が原因でこのような事態が引き起こされたのか、再び起きる事はないのか等の原因究明も進められる事となった。


 歴史的な大災害からおよそ八年の歳月を経て、太平洋上には直径二百キロメートルにも及ぶ巨大な人工島が建造され、島の中央部には本部及び研究機関等の建物が建ち並び、十に分割された各エリアではそれぞれのグループに所属する人々によって独自の街が築かれていった。

 島の八割ほどが完成に近づいた頃、統括理事会は会見を開き全世界に対してこう述べた。


 「八年前のあの日、人類に課された試練は余りにも残酷で、誰もがその体に、心に、深く……深く大きな傷を負った。多くのものを失い、絶望と悲嘆に暮れる日々は、つらく、厳しく、苦しいものである」

 「しかし、しかしまだ、我々人類は生きている。生き続けている。そしてこれからもまた、生き続けなければならない。かの大災害は我々から多くのものを奪った。だが同時に、我々人類にもたらされたものもある。――異能の力だ」

 「僅か八年という短い歳月で、これほどの巨大な人工島を築き上げる事ができたのもまた、人類が獲得した異能の力による恩恵に他ならない。制御できない力は脅威だが、扱いこなす事が出来ればこれほど頼もしいものもない」

 「たった八年。未だ傷の癒えぬ者達の中には、異能の力を恐れ、排除の声を上げる者もいる事は重々承知している。しかし目の前の現実から目を背けていては、いつまでも前に進むことはできない。人は新たな力を得た。この力と共に、これからの未来を切り拓いていく他に道はない」

 「我々は、人類に課された新たなる試練への対抗と、力ある者、力無き者、両者の間に生まれた溝を取り除くべく邁進し、人類の更なる発展の為、全身全霊をもってこれに尽力する事をここに誓う。そして、その意志を広く知って貰う為の新たな名を、ここで発表させて貰いたい」

 「組織の名は『International Ability Analysis Research and Development Coalition agency(異能の解析及び研究開発を目的とした国際連合機関)』、その頭文字を取って『ARC AID』、救済の方舟、と願いを込めて名付けた。我々の誓いが、決意が、人類の明日への船出となる事を祈っている――」


 こうして、フラッシュフォールという大災害に端を発する一連の騒動は新たな局面へと進んでいく。葛藤、喜び、執着、後悔、約束、理想、欲望、恐怖、愛、情熱。数多の思いが複雑に絡まり合い、一本の糸を紡ぐように、どこまでも果てしなく伸びてゆく。それは混沌の闇を切り裂く一筋の光となるか。はたまた、より大きな嵐へとつながる黒い導火線となるのか。

 今ここに、新時代の幕が上がる――

 お初にお目にかかります、橘月(きつき)りんごと申します。

 初めて手掛ける作品ゆえ拙い部分も多々見受けられるかと思いますが、生暖かい目でゆるりとお付き合い頂けますと幸いです。

 また、執筆速度も速くありません。お待たせしてしまう事もあると思いますが、どうか気長にお待ち頂けますようよろしくお願いいたします。

 投稿時間は朝の七時から八時代で模索中です。

 この作品は書籍化を目標に掲げ取り組んで参ります。少しでも皆様のご愛顧賜れますよう尽力して参りますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ