第19話 ママァからママァへ。
イモータルから子供達を救い出した翌日。
ユリス・キーダ姫は村を出発することとなった。
私達は姫と共にトット・イーネ伯爵に挨拶を済ませた。伯爵は、騎士を従えこの村を訪れた姫に感謝した。子供達を救ってくれたと。
馬車を走らせる。ガラガラという音と共にのどかな村の風景が過ぎ去って行く。
「あ! 村のみんなが手を振ってるよ!」
ガーラが馬車の窓から外を指す。その先には老若男女問わず、姫の出発を見送ろうとする村人達で溢れていた。
「「「ママ"あああああああああ!!!」」」
民衆がユリス姫のことをママァと呼ぶ。よほど出発が悲しいのか、涙を流す者ばかりだった。
そんな彼らに姫は微笑みかけ、手を振る。全ての民への愛を伝えるように。
(マ゛マ゛ァあ゛あ゛あ゛!!!)
「村の皆が私へと愛を伝えてくれておりますが、彼らが本当に感謝しているのは貴方達ですよ。アレックス」
(マ゛マ゛ァあ゛あ゛あ゛ああああ)
「え?」
(マ゛マ゛ァあ゛あ゛あ゛〜!!)
「この村の宝……子供達を救ったのはロリヴァーナイツですもの。決して私の手柄ではありません」
(マ゛マ゛ァあ゛あ゛あ゛!!!)
姫が私の顔を真っ直ぐに見つめる。
「よくやりましたよアレックス。貴方のロリヴァーナイツは立派に民を守ったのです」
(マ゛マ゛ァあ゛あ゛あ゛!!)
涙が出そうになる。姫から……そのような言葉をいただけるとは。孤独に戦って来た当時の私に聞かせてやりたい。
「ありがとうございます……これも皆仲間のおかげ。そんな仲間に恵まれた私は……幸せです」
(マ゛マ゛ァあ゛あ゛あ゛)
「えへへ〜ガーラもお姉ちゃんと出会えて幸せ♡ ニアもゼフィーもきっと同じ気持ちだよ?」
「ガーラ……ありがとう」
もう1台の馬車を見る。そこには微笑みを浮かべたゼフィーとニアがいた。
(マ゛マ゛ァあ゛あ゛あ゛……)
「ふふっ。真のママァは貴方かもしれませんねアレックス」
(マ゛マ゛ァあ゛あ゛あ゛)
「そんな。私には恐れ多いです」
「謙遜しないで。ほら、貴方も手を振ってあげて? 村の民達に愛を伝えてあげて」
ユリス姫に促され、恐る恐る窓から手を振った。すると、村のみんなが涙を流し私へと手を振り返してくれた。
「「「ママ"あああああああああ!!!」」」
「みんな……」
「ほら。皆貴方に感謝し、そして……希望を見ている」
「そう、ですね……」
(マ゛マ゛ァあ゛あ゛あ゛……あ、あ、あぁ)
「アレックス。私から貴方へ1つ、使命を下しましょう」
「使命?」
(マ゛マ゛ァあ゛あ゛あ゛〜〜〜!!!)
「そう。ユリス・キーダより命ずる。我が騎士アレックスよ。必ず魔女ヨージョカ・スルーゼを討ちなさい。そして、世界に真の平和を」
「姫……」
(マ゛マ゛ァあ゛あ゛あ゛あ、ああ!!!)
「貴方の真の望みは感じておりました。貴方はそれを成し遂げなさい」
姫……彼女はオギャるワイバーンの本来の姿も見抜いていた。それほどまでの洞察力。それは全て無償の愛によるものかもしれない。
叶わないな……この人には……。
「どうか誓って。私の最後の願いの為に」
姫の目が潤む。
(マ゛マ゛ァあ゛あ゛あ゛……っ!!!)
本当は姫が民を守りたいのだろう……だが、彼女には別の使命がある。もう大戦を引き起こさない為の婚約という使命が。自身の自由と引き換えに叶える望みが……。
(マ゛マ゛ァあ゛あ゛あ゛あ、あ、あ、ああ!!)
「姫。誓います。必ずヨージョカを討ちます。貴方に代わって」
(マ゛マ゛ァあ゛あ゛あ゛!!!)
私が言うと、姫は大きく目を見開き……そして、優しげに微笑んだ。
「ええ。頼みましたよアレックス。いえ……次なるママァ」
「はい。ママァ!」
(マ゛マ゛ァあ゛あ゛あ゛……あ、あ、あぁ)
その日、私の胸にあった復讐心は、民を守る使命へと変わった。
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あとがき。
アレックスは誓う。真に民を救ってみせると。それはママァより新たなママァへ託された使命であった。
次回は触手戦です。




