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第13話 ママゼフィーを救え

 私達はキーダ王国とテイエス帝国の中間地点にある。「コーコの国」へと立ち寄った


 領内を進み、村に入る。そしてこの国の(あるじ)、コレスコ王より提供して貰った宿へと向かった。


 そこは、村外れの貴族の館。一見するともてなされていないような扱い……しかし敷地は厳重な警備が敷かれており、ユリス姫が蔑ろにされていないことは明白だった。


 コーコ国の騎士達のもてなしを受けながら館の2階へと登り、姫の部屋へと入る。姫は、旅と他国との交流による疲れからか、椅子の上に力無く座り込んだ。


「流石に疲れましたね……」


「魔物の襲撃もありましたから、後の対応は私達が致します。姫はゆっくりお休み下さい」


「……ありがとうアレックス」



「わ〜! おっきい部屋! ベッドでバインバインしたいよぉ〜!」


 ガーラがユリス姫のベッドに飛び込もうとするのを、ゼフィーが抱き止めた。


 そのまま彼女は、ガーラを彼女の胸に押し当てる。しかし、元々双璧だったことに加え、彼女の重装鎧の胸当てが、ガーラの頭をゴリゴリと削る。


「ほらほら♡ バインバインならママの胸でしなさい♡」


「う〜!? 痛い痛い! 離して! ゼフィーの胸じゃバインバインできないよ〜!?」


「ひどい……ママはガーラを優しい子に育てたと思ったのに……」


「ガーラはゼフィーの子じゃないもん!」


 ガーラに拒絶され、涙目となったゼフィーが抱きついて来る。



「アレックス! 俺様たちの子(・・・・・)が反抗期に……!?」



 その瞬間。



 ユリス姫が鼻から大量の血を吹き出した。



「姫!? 大丈夫ですか!?」


「ななな……何ということですか!? ガーラが2人の……!? ふふ、ふふふ……これは……なんと……記録を残しておかなくては……」


「……!? ゼフィー……っ!? どういうこと……!?」


 顔が緩み切ったユリス姫に、怒りの形相のニア。そんな2人の腕を、ガーラが必死で掴んだ。



「待って待って!! ガーラは前からいるでしょ? そんなはずないよ〜!」



「なぜ皆こんなにも知能が下がっているのだ……? これもバブみスライムの仕業なのか?」



「う〜! お姉ちゃんまで話すとややこしくなるぅ〜〜〜〜!!」


 ガーラの叫びはしばらく屋敷内に響き渡った。




◇◇◇


 落ち着きを取り戻した頃。ユリス姫に気になっていたことを聞いた。なぜこのような村が滞在地となっているのかを。



(わたくし)がコレスコ王に頼んだのです。この館にして欲しいと」


「なぜですか?」


「ここならば、仮に何かあっても民達は巻き込まなくてすみますから」


 ユリス姫……さすがだ。何よりも民のことを考えてらっしゃるとは。


「ここは中立地。大戦の中でも血が流れなかった安息の地です。(わたくし)のせいで万が一があるといけませんから」


 姫の言葉に、ニアが関心したように目を見開く。


「……さすがママァ(聖母)。他国の民のことまで気にされるなんて」


「ニア。それほど大層なものではありませんよ。この地を治めるコレスコ・コーコ王は……ユリス・キーダとヴィエル皇帝の婚約の橋渡しをしてくれた恩人なの。だからこそ、迷惑をかけたくはないのです」


 姫が見せる悲しげな笑み。そこに先ほどまでゼフィー達を見つめていた熱の籠った瞳はなかった。


 姫の婚約は彼女自身を押し殺してのことなのだろうな……何と気高いお方だ。


「う〜!! そろそろゼフィーを元に戻す方法を教えてよ〜!」

「ガーラちゃんおねむなの? ほらママが抱っこしてあげますからね♡」

「やめて〜! 背中トントンしないで〜!?」


「……」


 ユリス姫が2人を真剣な眼差しで見つめる。


「姫?」


「……はっ!? すみません! ……アレックス。ゼフィーを戻す方法をお願い」


 ユリス姫に促され、荷物から1冊の手帳を取り出す。ニアがそれを不思議そうな顔でパラパラとめくった。


「……これは?」


「魔物の特性を記録した手帳だ」


「……『ペドリアスドラゴンは装備を剥ぎ取った後、興奮して攻撃力が上がる』。すごい。こんなに詳細な魔物の情報が書かれているなんて」


「どの魔物もいつ別個体と戦うことになるか分からないからな」


「流石は世界最強と(うた)われるロリババァですね」


「ありがとうございます姫。その手帳の098ページを見てくれ」


「098ページ?」


 ニアがパラパラと手帳をめくり、ユリス姫がそれを除きこむ。そして目的のページに辿りつくとその手を止めた。


「これだね……『オギャるワイバーン』? 初めて聞いた名前だ」


「ああ。非常に凶暴な飛竜種だ。その涙を口にすればバブみスライムの洗脳を解くことができる」


 ニアが弓を握り締める。


「凶暴な飛竜か。空を飛ぶ相手ならボクが頑張らないと……」


「だが一つ問題があるんだ」


「何ですかアレックス?」


 姫の切れ長の眼が私を見つめた。


「オギャるワイバーンに涙を流させるのは至難の技なんだ。私も総計で50体と戦っているが涙を見せたのは2体ほどだ」


「……任せて。絶対ゼフィーを元に戻して見せる」


「ニア……」


 色々と喧嘩はしていても、やはり同じ騎士の仲間だな。


「ゼフィーは(わたくし)を守るためにこうなりました。私も行きましょう」


「……危険ですユリス姫。貴方がもしオギャるワイバーンに襲われでもしたら」


 ユリス姫は、心配するニアの両手をそっと取った。


「ニア? これは私のわがままです。ですが、どうか行かせてください」


「姫……分かりました」


 こうして、私達はオギャるワイバーンの巣へと向かうこととなった。






 次回。アレックス達はオギャるワイバーンと死闘を繰り広げます。


人物辞典


コレスコ・コーコ王。


ロリス・キーダ6世と親友でありながらテイエス帝国のヴェエル皇帝とも巧みに交流を行う平和主義者。その手腕により、自国の血を流すことなく大戦を乗り切った。


ユリス・キーダ姫とヴィエル皇帝の婚約の橋渡しを行うなど、外交的に重要な人物でもある。


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