8 王子殿下の視察②
来ていただいてありがとうございます。
短いです。
今日は王子殿下の視察の日だ。少し憂鬱な気持ちで目が覚めた。今朝は珍しく曇りの空で、私の気分みたいだった。
神殿の掃除をしてお祈りをして、朝ごはんの準備して……。いつもの楽しい神殿生活は始まらず、ちょっと早めに中神殿へ向かった。
中神殿からは迎えを寄越すと言ってもらえたけれど、断った。輿に乗せてもらって、運んでもらうのはちょっと苦手……。森の中の道を下りて行くことにした。リオン様が一緒に行くと譲らなかったので、二人でのんびり山道を歩いた。約束の時間までには余裕があった。
途中リオン様は何度か
「大丈夫か」
って聞いてくれた。リオン様だけなら狼だから、もっと早く走って行けるのに、私に合わせてゆっくり歩いてくれてる。リオン様は優しいな。慣れない山道だけど、道はわりと歩きやすかった。
「大丈夫です」
って笑って答えられるくらいには。私はリオン様と歩くのがとても楽しかった。
中神殿に着くと、星汲みの巫女の正装に着替えさせてもらった。色はいつものと同じ深い青色。でも、もっとドレスに近いデザインだった。ていうか、ドレスだった。普段は着けないアクセサリーに髪飾り。どれも銀色を基調にしたとても綺麗なものばかりだ。
神官の女の人達は、私の髪を整えてお化粧もしてくれた。神殿の女の人達って本当に何でも出来るんだね。尊敬しちゃう。
着替え終わって、リオン様といっしょにお昼ごはんをいただいてると、中神殿の神官長様が入ってこられた。最初にここへ来た時に出迎えてくれた男の人だ。麦の穂色の髪の背の高い人。お名前は確か、
「ロキオ様、お久しぶりです」
私は立ち上がってご挨拶した。
「どうぞ、そのままで。お久しぶりです、ああ、見違えましたね巫女様。……リオン様」
あ、ロキオ様リオン様をご存じなんだ。リオン様は軽く頷いただけ。ご挨拶はいいのかな?
「神殿の生活には慣れましたか?お若い方には退屈でしょう?」
ロキオ様も若いのに、なんだかお年寄りみたい……。
「いいえ、毎日とっても楽しいです!できればずっといたいなって思ってます」
私は神殿で働かせて貰おうと考え始めてたので、ちょっとだけ自己PRしておいた。もちろん神殿での暮らしは本当に楽しくて、私に合ってるみたい。このまま次の巫女が選ばれなければいいのになって思ってる。それは無理なんだろうけど……。
「おお、本当ですか!それは良いですね、リオン様」
ロキオ様もカイヤさんと同じ様な反応……、何故?
「…………」
リオン様はふいっとそっぽを向いてしまった。
「アルベリク第三王子殿下がご到着されました」
神官の女の人が伝えに来てくれた。ロキオ様に続いて王子殿下のいらっしゃる応接室へ向かった。リオン様も私の後をついてきてる。リオン様も王子殿下とお話するのかな?
どうして……?応接室に入った私はすごく驚いた。そこにはアルベリク第三王子殿下がいらした。それは当たり前だ。でもどうして
「クロード様?!」
何でこの方まで一緒なの?!アルベリク様の隣にはクロード・オラール様が座っていたのだ。
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