開会式がはじまる
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こちらの世界に転生して12年がたった。
この世界はあの神のメイドが言った通り俺の想像していた世界とは少し違った。
いわゆる剣と魔法の世界で、村が魔物に襲われているのを通りがかりの俺こと勇者が・・みたいなことにはならない感じだ。
なぜなら魔物がほとんどでない。また、そんな無防備な村はこの国にないのだ。町には電車が走り、高層ビルもある。各家庭に電気とガスがひかれ、テレビの放送も深夜アニメまである。つまり、人々は元いた世界とほぼ変わらない生活をしている。
町には人間が元の世界と同じような服装で忙しそうに歩き回っている。
たまにエルフやドワーフを見かけるが、こちらもスーツを着ているため町にとけ込んでいる。
小学校(こちらも6年制で俺は6年)でこの世界のことを簡単に習った。
この世界には4つの国がある。バルド大陸の南東にわれらが人間の国『アルス』,北東にはエルフの国『フレスト』が,南西にはドワーフの国『ドウ』がある。北西には魔族の国『モルガ』がある。魔族にはオークやサキュバス,悪魔などいろいろな種類がいるが、悪いことをするわけではなく、他の三つの国とも共存共栄している。
そして大陸の中央には魔王の城跡があるそうだ。
この世界も電気でほとんどのことが回っていた。しかし、魔法が無いわけでもなく回復魔法を持つ医者やナースもいる。魔法のじゅうたんもあるらしいが、実際に使っているのを見たことはない。
3才くらいのころ父になぜ使わないのか聞いたところ
「落ちたら危ないだろ」
と一蹴され魔法のじゅうたんに乗れる可能性は消えた。
では、町で使われている電気はどのようにして発電しているのかというと、主に風力と水力によるものらしい。そこにも魔法は使われていない。
魔法を生活に使うには誰かの魔力を消費しなくてはならない。その犠牲に誰かがなるのはおかしいだろうという考えらしい。
では、魔法はどうなったかというと、スポーツに近いものになった。
今、俺は母と電車に乗り『アルス国立魔法競技場』に向かっている。4年に一度開かれる国別魔法対抗戦『マホリンピック』の開会式を見に行くのだ。アホみたいな名前だが本当にそうなのだから仕方ない。
マホリンピックはこの世界の4か国のスポーツ・魔法に秀でた選手が一堂に会し、その力と魔力を競うもの大会だ。今年は人間国『アルス』で行われ、今日開会式を迎える。プレミアチケットだったが、父のコネをフル活用し手に入れた。
父が勤める『MSAK』という国内最大の警備会社がマホリンピックの警備を任されていたのだ。魔獣とも戦う経験から様々な状況に対応できるだろうということらしい。
家族割引がきくのかどうか知らないが、母と俺を招待してくれたのだ。
会場は開会式の前だけあって変な盛り上がりを見せていた。そういう俺もかなりワクワクしている。
「おまたせ」
ジュースを買ってきた母が隣に座った。客席中段。競技場全体を見渡せるベストポジションだ。
開会時刻7時になるとナイター照明が消えた。
「ねえねえ、始まるわよ」
母のウキウキが止まらない。俺も何が始まるのか楽しみでしょうがない。
いよいよ開会式が始まる。




