おにごっこ2 (ほぼ以下同文)
◇◇◇
「いい考えがあるんだけど」
ハーピーのハタが4人の訓練生を前に話し出す。
「なんで協力する必要がある?」
双子のエルフの兄セルースが聞く。
「もう、3人つかまった」
「本当?なんでわかるの?」
「オレってば耳がいいからさ。さっき空3人目の悲鳴が聞こえたのよ」
「誰が?」
「魔族のソトス。エルフのシェン。人間のケンだね。しかも悲鳴がだんだんこちらに近づいている」
「じゃあ早く逃げないと!」
「いや、間に合わないと思う」
「あきらめるってことか」
「いや、一旦迎撃しよう。オレたち5人でしかければいくら教官でもなんとかなるだろう」
「そうとも思えないけど時間は確かになさそう。協力しましょう。作戦はあるの?」
女ドワーフのムールが聞く。
「ありがたいぜ。じゃあ、作戦はこうだ。この中で一番戦闘能力が低いオレがおとりになる。みんなはオレより先に行って教官に見つからないようにしていてくれ。オレが見つかったら合図を送るから教官に攻撃だ。攻撃方法はそれぞれ得意なものでやってくれ」
「ドワーフはあなたを置き去りに逃げるかもしれないわ」
セルースの双子の妹スルースが言うとドワーフのバリーが反論する。
「ドワーフは義理を大切にする。エルフこそ自分のことしか考えないのでは?」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
ドワーフのムールが仲裁に入るも一触即発の空気になっている。ハタが
「MSAK隊員にそんな非情な奴はいないよ。オレはみんなを信頼している。でももし、オレが即やられたら逃げてくれ」
「わかった。一番やばいのはハタだったわね。ごめんなさい。バリーさん、ムールさん」
「いや、こちらこそ冷静さを欠いた。セルース殿、スルース殿、申し訳ない」
ドワーフのバリーが頭を下げる。
「じゃあ、時間がない。みんなあの高い木を目指して進んでくれ。15秒後にオレも行く。頼んだぜ」
辺りから4人の気配が消える。15秒後ちょうどにハタは走り出した。なるべくガサガサと音をたてながら。
気づかれたとしても、俺の耳があれば教官の接近には気付けるはず、辺りの音に集中しないと・・
「ハタ君」
「わあ!!!」
いきなり後ろから肩をたたかれ、つんのめって転んでしまった。すぐに体勢をたてなおし振り返ると、エルフの教官ロンがいた。
「今の動きはまあまあでしたね」
「ちょっ・先生ちょっと待ってください。オレ結構耳に自身があったんですけど、どうやって」
「ん?エルフでもないあなたに答える必要などありませんね。私は普通に美しく追いかけただけですよ。音もそれなりに出ていたと思うけど」
「そんなはずは・・」
「まあ、そりゃ野生動物に気付かれないくらいには美しく動いていましたが。それに気付かないなら、単に修行が足りないのですよ。まあ、美しさもですが」
「くっ・・」
「さあ、その美しくない額をだしなさい。触りたくもありませんがせめて痛くないように・・・」
「今だ!」
ハタが叫んだ直後に魔法の水球がロンの辺りで爆発した。さらにその数瞬後3つの人影が爆煙に飛び込んだ。
「やったか!?」
ハタは立った。
しかし、すぐに煙の中から3人が仰向けに倒れてきた。おでこにはこぶし大のたんこぶ。そこからプスプスと煙が出ているようだ。
「逃げろ・・ハタ・・」
セルースが残り僅かな意識の中で言った。
風が煙を流しロンの姿が見えた。
「無傷?」
ロンはハタを見て、ニヤリと笑み、変なポーズをとると、急に姿を消した。
「うわっ」
反射的に腕で覆う。・・が、何も起こらない。
そっと腕を下ろし、辺りの気配を探る・・と、
ドサッと後ろから音がする。
振り返るとそこにはロン教官とその足元におでこを腫らしたスルースの姿があった。
「スルース!」
スルースはさっき魔法で遠距離攻撃をしたはずだ。なのにもう教官に捕まってしまったのだ。
ハタは逃げた。
しかし回り込まれてしまった。セルースに言われた瞬間に逃げるべきだった
「はあ、、ハタ君。君がこの作戦を考えたのですか?」
「・・はい」
のどが乾く。
「この訓練はレクレーションみたいなものだと言ったでしょう?本気で72時間美しい私たち、いや、美しい私からから逃げられるとでも思っていたのですか?」
ロンが変なポーズで嘆いている。
「作戦も雑で美しくありませんし、鍛えなおしが必要ですね。しかし、一番の敗因は、われわれ教官を軽く見すぎていたことですね」
ロンが右手の中指を親指にセットするところまで見たが次の瞬間ハタの意識は無かった。




