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訓練初日

訓練初日。


「おにごっこぉ?・・・ですか?」


 フラグ先輩が魔族国モルガのシュラ教官ににらまれて質問を丁寧に言い直した。


 シュラはミブと同じく竜人で、ミブが赤い肌なのに対して暗い青色の肌をしている。その黒に近い青色の肌と、金色の眼光にビビったフラグ先輩の気持ちも分からなくはない。


「そうだ。問題あるか」


シュラが続けると


「いえ。ありません!」


気をつけ、敬礼のフラグ先輩


「改めて説明をする。今からお前たちにはおにごっこをしてもらう。レクレーションのようなものだ。


制限時間は72時間。それまで逃げ切れれば勝ちだ。鬼は我々各国の引率教官4名が行う。」


「我々に捕まらなければいいだけ。簡単でしょう?」


ドワーフ国『ドウ』のミーズ教官が続ける。女性のドワーフで背は低いが細身で身軽そうに見える。


「私のような美しいハイエルフに追われるなんて光栄に思いなさい。」


エルフの引率教官ロンがクネクネしながら言った。フェルといるときと随分態度が違うじゃないか。でも、訓練なんだからフェルはここにもいるはず・・・


 寝てる!立ったまま寝てる!!


「質問してもよろしいでしょうか」


男エルフが手を挙げる。ロンは一瞬そちらを睨んだが


「エルフならしょうがない。良いでしょう」


「はい。ありがとうございます。捕まるとはどのような状態でしょう。こどものおにごっこのようにタッチされるということでしょうか?」


「んん、良い質問だね。さすがエルフ。タッチするだけではすぐ終わってしまうだろう?しかし本当に捕まえて縛り上げるまでするとここまで戻るのがめんどくさい。そこで我々からデコピンを食らったらOUTということにする。もし、我々に一発でも攻撃を加えられたら私たちはその場で30分待機しよう。OK?」


「了解しました」


シュラが説明を受け継ぐ。


「逃げていい範囲に限りは特にないがこの訓練施設から北にしてくれ。南にある町は割と近いからな。それ以外に逃げるのは特に問題ない。北の森には魔獣も・・ん?」


「申し訳ありません。遅刻いたしました」


 初日の訓練に遅刻するとはすげー娘だ。と、思ったらジャージ姿だった。


「貴様、何だその恰好は?誰がジャージで来いと言った?」


その娘は真剣に答える。


「はい。ハタ先輩であります。訓練着を着用したところ。ハタ先輩より変更の通達をいただき、着替えてまいりました。」


ハタというのは、モルガ国の男ハーピーだ。


「では、昨日の服装もハタ訓練生の命令か!」


「そうであります」と、敬礼


ハタがそーっとその場から離れようとしていたが


「ハタ訓練生!!」


シュラの怒りの大声とともに辺りの気温が下がる。


「はい!!」今度はハタが敬礼する


「貴様!この訓練が終わったら私の部屋に来るように。みっちりしごいてやる。そして、ネリ!!お前はもうその恰好で構わん。ジャージで参加しろ」


「はい。ありがとうございます」


ネリと呼ばれた娘は敬礼した。


何がありがとうなんだ?まあ、真面目な娘なんだな。と、考えを無理にまとめていたらネリと目が合った。


ずいぶん驚いた顔をしている。

そして、みるみる目がうるみ、こちらに駆けてきて俺に抱きついた。


「パパ!!」


「パパ?!?!」


そこにいた全員が復唱した。


「ようやく会えました。パパ」


ネリは泣きながら俺にしがみつく。


「おいジョン。どういうこと?君17才だよね?」


フラグ先輩が聞いてくる


「お主、この娘とどういう関係なのじゃ?」


フェルもいつの間にか起きている。


「いや、俺も何がなんだか・・」


 今世ではもちろん前世でも彼女のいなかった俺がいきなり親になるはずがない。ネリの肩をつかんで密着した体を離す。


 改めて顔を見ると、茶褐色の肌に側頭部からねじれた小さな角と整った顔。その整った顔の真ん中、鼻に小さく横に走った傷跡が白く刻まれていた。


「あ!!あのときの」


「はい!」


 幼稚園に通っていた時に、魔犬と戦ったことがある。その時に人面石から生まれたサキュバスの赤ちゃんだ。人面石をもっとかわいらしくしようと直そうとして失敗した跡が顔に残ってしまった。申し訳ない。が、傷跡など気にならないほど美人だと思う。


「会えて良かった。元気にしてた?」


「はい。パパに会うために一生懸命に特訓しました。あのときはありがとうございました」


また抱きつかれた。やわらかいものがまた密着する。あわてて離し、


「あの時のことを覚えているの?生まれたばっかりだったでしょ?」


「はい。少しだけ覚えています。ですが細かくは養父母が事情を教えてくれました。変な人間につかまると殺されることもあるのに助けていただいたと、父母も感謝しておりました。しっかりお礼をしないといけないと、、、」


「いい家に入れたんだね」


「はい」


「あのときは俺が5才だったから、5才年下で・・」


いったんネリの体を上から下まで眺める。ものすごくスタイルがいい。


「年下!?」


視線を理解したのかネリは


「サキュバスなので、体の成育は速いのです」


「ああ、そうか」


と納得したが、成育って。


「しかし、魔族において年齢と体の成長はあまり関係ありません。生まれたときからおじいさんもいます」


泣き止んで、少し最初のクールビューティに戻ってきた。


「とにかく、元気そうで何よりだよ。立派になって」


と、言ったもののはたから見ればネリの方がずっと大人だった。


「ゴホン・・。今は訓練中なんだが」


アルス国スターク教官が、咳ばらいをして入ってきた。普段は優しいスターク先生だが、怒らせるとこわそうだ。


「で、その子は何?」


「あ、はい、昔、関係が」


「関係?どんな?」


フラグ先輩が入ってくる。


「はい。パパであります」


ネリが誤解を招く返答をする。


「いや、違う。いや、違うかどうか分からない」


魔族はどういう人を父というんだ?


「きゃあ!責任をとらないってこと?」


エイミーがまた余計なことを。


「ジョン君、しっかりと説明しなさい」


スターク先生少しイライラ。


「そのサキュバスと何があったんだよ?」


ハーピーのハタが追質問


「いや、違う!昔、エネルギーを吸われて」


俺は事実を言う。


「サキュバスにエネルギーを吸われた!?」


フラグ先輩が悲鳴に近い声で叫ぶ。


「いや、だから、話を最後まで・・」


「ジョン君・・・」


やばい。スターク先生の逆鱗に触れた。プルプル体が震えている。


「まあ、待て。スターク。ネリの言い分も聞こう」


シュラ氏がスターク先生の前に出る。


「ネリ。貴様、いわゆるパパ活というやつか?」


真面目に生きてきたネリは「パパ活」なんて言葉は知らない。


「はい、パパです」


「許さん!」「許さん!」


シュラとスタークの魔力が一気に上がる。


シュラの口から青白い光が漏れている。あれを食らったら一発で冷凍されてしまうだろう。と、目の前に赤い人影が。ミブだ。(今は竜人モード)


「逃げなさい。これは貸しですよ。」


ミブはシュラの攻撃の前に炎を吐いた。その炎にシュラの冷凍ビームがあたる。


ボフンといった感じだがとてつもなく大きな音とともに辺りは白い水蒸気に包まれた。


「!!今だ!ネリ逃げよう」


ネリの手をつかんで逃げ出そうとしたとき、水蒸気な煙を突き抜けてスターク先生がとび出してきた。


「終わった・・」


と、思った瞬間スターク先生は俺の脇を抜けて隣の木にデコピンをぶちかました。デコピンされた部分が爆発したみたいになって5m以上ある木が倒れる。


「パパ、行きましょう」


逆にネリに手をつかまれ森の中へと走り出した。


「はっはっは。面白いねー。ルーキーは」


ドワーフ上官ミーズが1m先も見えない水煙の中で笑っていた。


「よし、このまま始めよう」


大きく息を吸い込むと、訓練生全員に聞こえるように叫んだ。


「おにごっこスタートだ!私たちは霧が晴れたらスタートするよ!がんばって逃げな!」


訓練生があわてて逃げ出す気配がした。


「あ、支給品渡すの忘れた。・・まあいいか」


その声はほとんどの訓練生に聞こえなかった。


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