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17才


 魔族国モルガ。大陸の北西に位置し、寒冷な気候だ。北部はかなり寒く草木もまばらに生える程度。前世でいうところのツンドラ気候といった感じだ。

 しかし南部の気候はわりと穏やかで栄えている。高層ビルも立ち並びこちらの4か国の中ではアルス国に次いで2番目の経済発展を遂げている。


 エルフ国「フレスト」は農業。ドワーフ国「ドウ」は鉱物、宝石などを産業としているが、ここモルガではコボルトやゴブリンなどの魔族を大量に雇用し、単純作業をさせることで様々なものを大量生産して経済が成り立っている。


 数十年前、ゴブリンたちが低賃減で働かされているのではないかと疑惑があがり、他3国によって調査が行われた。確かに賃金は他国に比べると安いものの、本人達がとても幸せそうに働いていることと、これ以上の変化を望まないという組合の意思があり、調査団はしぶしぶ帰ることになった。


 こうしてモルガは他国と多少の軋轢はあるものの(他の国同士もいろいろあるが、)4大国として繫栄している。


 先の大戦の時には魔王の部下として人間たちと戦った魔族は魔族国モルガを興し、他3国と同盟を結び仲良くやってきた。


 しかし、5年前の魔王復活は世界をゆるがせた。魔王は大きなダメージを受け、別の世界へ帰っていったのだが、また来るのか。だとしたらいつ来るのかは分からない。

 4か国はすぐに話し合いの場を設けた。人間・エルフ・ドワーフは魔族国の考えを知りたがった。過去の上司が帰ってきたのだ。どちらにつくのか。モルガ国内は混乱するかと思われたが、予想外に早く決着はついた。


 4か国同盟を継続する。


 魔王とともに勇者と戦った魔族も少数ながら生きており、当時の魔王軍のブラックぶりをしっかりと後世に伝えていたのだ。

 部下の魔族を本当に駒のように扱い、こちらの軍がわざとやられているうちに敵を叩くといったとんでもない作戦が多々あったようだ。しかし、洗脳されていた魔族はその命令に従った。

 魔王が倒され、洗脳が解けた魔族はその後、汚名を返上すべく、平和な世界のためにと働き、現在では表面上他国と同等に付き合っている。

 「この500年の努力を無駄にするわけにはいかない」と、言ったモルガの首相も実は魔王のもとで働いたことがあるらしい。

 そんな訳で一部若い世代の魔族が魔王側につくと騒いだらしいがすぐに収まり、モルガの同盟継続が決定した。

 4か国の同盟会議は魔王が再び現れても協力して戦うことを確認し合った。


 17才になった俺マイトは今、モルガの東部エルフ国フレストと面している州にいる。

 ここで各国の選抜ルーキーによる魔獣撃退チーム結成式兼訓練が行われるのだ。それに正体を隠して参加することになった。例の事件以降偽名で暮らしている。


 警備会社MSAKは同盟継続の決定を受けて新たな計画をすすめることにした。魔王は当分は現れないとは学者の推測であり、いつどうなるかは分からないというのが、MSAK上層部の考えだ。


 これまではそれぞれの国で起こった魔獣事件はそれぞれの国民が編成する部隊で対応していた。魔王召喚事件はマホリンピック会場国アルスのMSAKが対応したが、他国の協力があればもっと被害を減らせたのではないか。そこで、これからはお互いの長所をいかし、短所を補う部隊を編成する必要がある。


「というわけで、君たちがここに集まり、世界に新たな歴史を刻むことになるのだ」


と、MSAKの副社長、魔族ベン・グーダがステージで話している。両側頭部からねじれた角が真上に伸び、土色の肌をしている。まさに悪魔といった感じだが、世界の、いや、顧客の平和のために頑張れとエールを送ってくれている。


「では、諸君。半年間頑張ってくれたまえ」


 敬礼で長い話を終えた。フロアには各国のMSAKから選抜されたルーキーが5人ずつ計20人が手を後ろに組み、足は肩幅に開いて並んでいる。

 その列は右から人間、エルフ、魔族、ドワーフの順だ。エルフとドワーフは見慣れているが魔族はあまり見たことがなかった。魔族といってもいろいろな人種がいるのだと改めて感じた。足が鳥のものになっている人やリザードマンだろうか、顔がトカゲ、いや、竜かもしれない。


「今日は移動ばかりで面白くなかっただろう」


 MSAKモルガ支部長のシュラ(こちらも竜の顔をしている)が渋い低音の声で挨拶をした。


「明日からは厳しい訓練だ。夕食では互いのことを知り、交流を深めてもらいたい」


つづく

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