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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ゲーム実況系Vチューバーの地味走地味子が、『悪役令嬢は婚約破棄FPS』というクソゲー? を、最後までプレイしてみた。

作者: 栗野庫舞

本作のゲームプレイヤーの名前の『(そう)』は、『スポーツ』が由来です。

 あなたはネット上の動画サイトで、視聴する動画を決めた。


 動画チャンネル名、『地味スポーツChannel(チャンネル)』。


 美少女ゲームの動画広告を挟んでから、動画本編が始まる。


   □


 ヨーロッパのお城を背景にした、テレビゲームのタイトル画面が映った。


 タイトルは、『悪役令嬢は婚約破棄FPS』。FPSの文字が青く輝いている。


 画面の右下辺りに、2D(ツーディー)モデルの少女絵が表示されていた。黒髪のショートヘアのように見えるが、顔を左右に揺らすと後ろに一本の三つ編みがあるのが確認出来る。少女の衣装は紺色のブレザー制服だ。特に奇抜(きばつ)ということのない、平凡な学生服だった。


「皆さん、こんにちは。ゲーム実況系のVチューバー、地味走(じみそう)地味子(じみこ)です。今回実況するゲームは、こちら。『悪役令嬢は婚約破棄FPS』でございます。さっそくオプション画面から見て行きましょう」


 『スタート』


 □『オプション』


 地味子は白いカーソルを下に動かした。


「こちらのゲームはAで決定と弾の発射、Bでキャンセル、方向キーで移動だそうです。まあ、基本的な割り当てですね」


 オプションをAボタンで選択すると、タイトル画面が暗くなり、オプションモードが表示される。


 □『残機数 3』


 『脱衣モード OFF(オフ)


「悪役令嬢が主人公のゲームのはずですが、残機数と表示されています。3が標準で、1から5まで選べるようです。難易度設定はないみたいですね」


 地味子は脱衣モードにカーソルを合わせる。『OFF(オフ)』と『ON(オン)』を交互に動かして、最終的には『OFF』のままにした。


「この動画は全年齢向けのため、脱衣モードの開放はなしでスタートをさせて頂きます」


 タイトル画面に戻り、スタートを選択。画面が切り替わり、イラストが表示された。


 縦ロールが左右についた金髪美少女が、赤いロングドレスのスカート部分を少し持ち上げている。胸部はすごく大きい。


「悪役令嬢がごあいさつをしている場面でしょうか? お顔はかわいらしく、とても悪事を働いているような見た目ではないですよね」


 画面が薄暗くなり、下から白い文字列が出て来た。上へと、ゆっくり文章が流れる。BGMは小さく鳴っているが、テキストの読み上げはない。そのため、地味子が読み上げる。


『悪役令嬢のアルパインの趣味は、学園に通う平民たちを安全かつ楽しい魔法銃で乱射することだった。』


「――って、(しょ)(ぱな)からヤバそうな一文でした!」


『だから、平民たちは抗議した。婚約者も加勢し、アルパインは婚約破棄を言い渡された。』


『偉い貴族なのにもかかわらず、公開処刑もされそうになった。あり得ないので、アルパインは学園を脱出した。』


『国外へ逃亡し、新たな大地でも乱射してやるぞ。そう悪役令嬢のアルパインは誓った。』


『逆らう者は全員、国外追放してやろうではないか!』


「……なんかストーリーの時点で、この主人公に共感出来ませんね……。ちなみにストーリー表示は流れるのが遅い上に、ボタンを叩いてもスキップ不可でした」


 文字が全部流れ終えると画面は暗転し、ヨーロッパをモデルにした市街地の3D(スリーディー)画面が映される。


 中央にステージ1のタイトルが表示された。


「一面は『総攻撃開始!』。……悪役令嬢ものなんですよね? これ」


 画面下部には、黒い拳銃とそれを持つ手が表示されている。手には白い手袋をしているらしい。左上には、青い横棒タイプの体力ゲージがある。


 街のグラフィックはカクカクとした(あら)い印象で、拳銃と手のモデリングも、お世辞(せじ)にも綺麗とは言えない。明るい曲調のBGMだけは良かった。


「それでは、移動してみましょう。挙動がちょっとおかしいです。移動中にかなり揺れますね。立ち止まれば、揺れは(おさ)まるのですが……」


 地味子が前方へ進んでいると、向こうから人がやって来るのが分かった。グラフィックは、やっぱり粗々(あらあら)しい。長袖ロングスカートの黒い衣装で、白いエプロンをつけているのが、かろうじて分かる。


「このキャラクターは……メイドさん? 悪役令嬢もののゲームだからそれは良いにしても、地面が思いっきり道路なのが不自然です。アキバのメイドさんのようなミニスカートの衣装ではなく、中世ヨーロッパ風のヴィクトリアンメイドですし」


 メイドは髪が黒で、左右で三つ編みにしているようだ。目の大きい顔は、かわいいとは言えない。両手は正面で重ねた格好で固定され、足首がスカートで隠れているため、浮いて移動しているようにも見える。


 ある程度メイドが近づいて来たら、速度を上げてこちらに体当たりを仕掛けてきた。画面が白く点滅し、打撃音が入る。体力ゲージが少し減った。


「どうやら敵みたいですね! 片づけましょう――ってええええッ?」


 地味子が後退しながらメイドに向けて拳銃で発砲した際、とんでもないことが起きた。


「これ押しっぱなしで連射するんですけど! 拳銃じゃないのこれ!」


 グラフィックは拳銃なのに、仕様が明らかに機銃だった。


 乱射した弾丸が五発ほどメイドに命中する。


『いやぁっ!』


 女性の悲鳴とともに、一瞬()()ったメイドが白い下着姿になった。上は肌着で、下は丈の長いドロワーズのようだが、グラフィックが鮮明ではないので正確には分からない。


 メイド……元メイド姿の敵キャラは、この形態では(あら)わになった細い両手両足を動かして移動する。


 地味子は下がりながら連射を続けた。


『きゃーっ!』


 悲鳴を上げた下着姿の敵キャラは倒れ、動かなくなった。上を通過しても、何も起こらないのを確認する。


「ザコ敵は耐久力が高めですが、こちらの武器が高性能ですので、簡単に倒せます。……このゲームって、ゴール地点に行けばクリアなのか、敵を全員倒せばクリアなのかが分かりません。とりあえず、敵が出たら全員対処いたしましょう」


 距離を置いて戦えば、敵は飛び道具を持っていない分、プレイヤー側がだいぶ有利だった。


『いやぁっ!』


 押しっぱなし連射すごい。


『きゃーっ!』


 最初の面だからか、ヨーロッパ調の街の構造は複雑ではないし、敵も基本、一人ずつしか現れない。


『いやぁっ!』


『きゃーっ!』


 連射すごい。


「敵さんは……メイドしか出ませんね。出口のようなものは見当たらないですし、敵の全滅でクリアなのだと思われます。レーダー表示がないので、お時間がかかりそうです」


 地味子の心配をよそに、敵の撃破は次々とおこなえた。ひたすら弾を連射して、敵メイドを倒して進む。


 Aボタンを押している間は、左右を押しても正面を維持するようだ。また、敵の耐久力は十発分あり、五発で下着姿に変わる。


「どうもこのゲーム、弾の残数がないようですね。表示されていないだけかもしれませんが、今のところかなり撃っているのに、弾切れは一切起きていません。あと、残り時間もないですし、アイテムも出ないです」


 街を探索しながら敵メイドを十人ほど倒すと、『ステージクリア!』と表示された。


「あまり爽快感がないままクリアしました。結局、敵はメイドさん一種類でした」


 画面が切り替わる。


 左に三つ編みメイド、右に青髪の美少女の、お互い横顔で見つめ合っているグラフィックが映った。


「このゲーム、一枚絵はキレイですね」


 画面が若干暗くなり、ストーリーが下から上へと流れ始める。


『王子は愛するメイドとともに、馬車で逃げようとした。』


「左のほうはさっきのザコ敵なのでしょうけど……王子様? 誰?」


『だが、悪役令嬢のアルパインは撃ちたくてたまらない。車輪に向かって連射して、馬車を止めた。』


「銃乱射が好きなキャラなのでしょうね……」


『ドアを開け、メイドの手をつかんで外に放り投げた。倒れたメイドをすぐ撃って倒した。』


「主人公外道過ぎ!」


『王子も手をつかんで外に放り投げた。王子は男装していた美少女だった。』


「じゃあ右のが王子様っ? 男装設定が全く生かされてない!」


『追放されたアルパインにとって、王族という階級など意味をなさないのだ。よくも彼女を、などと美少女は騒いでいたが、アルパインはすぐ撃って倒した。』


「悪役令嬢というよりも殺人鬼でした!」


『別にアンタ達のために撃ってあげたんじゃないんだからね! そう言い放ち、アルパインは逃亡を続けた……。』


「これ、ストーリー()らなくないですか?」


 画面が暗転し、3D画面に戻る。『ステージ2 大自然の攻防!』と表示された。


「ステージのタイトルはFPS寄りですね。恐らく、タイトルをつけた人は、ストーリーを考えた人とちゃんと相談をしていなかったのでしょう」


 二面は昼の森の中が舞台だ。ステージ内は迷路のようになっているらしい。あいかわらず、グラフィックはカクカクとしていて古くさい。


 敵が向こう側に配置されていた。


「また敵はメイドですか……。まさか敵って一種類しかいないんじゃ……」


 地味子は敵メイドにある程度近づいて、ボタン押しっぱなし連射をする。


『いやぁっ!』


 悲鳴も、ダメージを五回食らったら下着姿になるのも、変わっていない。動きも、単調な体当たり攻撃も、一面と同じ。


『きゃーっ!』


 あっけなく敵メイドを倒し、さらに奥へ。


「主人公、なんで森の中に来たのでしょうか? ――あっ、別の敵が出ました!」


 地味子は思わず喜びの声を上げた。青と白のロングドレスを着た、令嬢らしき新キャラが出現したからだ。


 茶髪の令嬢の動きはメイドと変わらないため、地味子は敵と判断し、銃を向けて大量の弾を浴びせる。


『いやぁっ!』


 女性の悲鳴とともに、一瞬()()った令嬢は、白い下着姿になった。


「メイドと変わらないんですけどッ!」

 地味子は叫んだ。


 白い下着姿は、上半身が布面積の少ないブラジャーに変更されているようだ。しかし、丈の長いドロワーズはメイドのグラフィックの使い回しのようだった。


『きゃーっ!』


 さらなる連射の後、下着姿の敵キャラは草原上で横たわった。


「メイドさんのロングスカート同様、ロングドレス姿ですから、当たり判定の広いスカートを狙えば当てやすいです。服が脱げた後は、当たり判定が小さくなりますが、弾のオート連射がすごいので、どうってことありません」


 さらに森の中へと進むと、メイドと令嬢が同時に出現する。動きが同じなのが、比較すると分かりやすい。


 地味子は左右に細かく動きながら銃乱射して、すぐに二人を片づけた。


「敵、弱過ぎますね。耐久力も一面から変わってなさそうです」


 背景が森の中になったこと、メイドと動きも性能も同じ令嬢が出現するようになったことぐらいしか、変化はなさそうだった。


「残機は三機あったはずなので、わざとやられてみることにします」


 一人でうろついていた令嬢に近づくと、メイドと同じ体当たりを仕掛けて来る。白い点滅とともに、ダメージを受ける。十回それを繰り返したところで、ようやく体力ゲージがゼロになった。


「これ、普通にプレイしてたら、まずやられることないのでは?」


 画面が徐々に真っ暗になった後、ウインクしながら人差し指を小口に添える、茶髪の令嬢の顔の一枚絵が表示された。余白に『ちょっとお待ち下さいませ』と書いてある。


「ゲーム中のグラフィックとお顔が全然違いますけど、こちらのイラストは多分、敵令嬢なのでしょう」


『いやぁっ! お願いッ! やめて! きゃーっ!』


 残響のある叫び声が聞こえた。


「ええっと……、今のは、主人公が敵にやられて上げた悲鳴? 敵の悲鳴と声が同じ人っぽかったのですが……。使い回し?」


 ゲームは二面の開始位置に戻る。


「倒した敵は復活するみたいですが、敵の出現位置は変わってなさそうです」


 その後、メイドと令嬢を合計二十人ぐらい森の中で横にしたら、『ステージクリア!』と表示された。


「……単調ですね、このゲーム」


 画面がまたも切り替わり、研究所の内部らしきグラフィックが表示される。筒状の収容装置が配置されていて、ガラス張りの中には緑色の液体に()かったザコ敵の令嬢が入っていた。目をつぶった令嬢は、ドレスを着たままだ。3D画面のキャラよりも精密に描かれている。


 画面が少し暗くなり、ストーリーのテロップが下から出て来た。


『森の奥にあった研究所では、少女型ロボットが大量生産されていた。』


「えっ?」


『ここを破壊すれば、組織の研究成果は無駄になるだろう。』


「えっ、組織ッ?」


『だがそんなことはどうでもいい。アルパインは撃ちたい。だから思う存分乱射して、研究所を再起不能なぐらいに破壊し、廃工場にした。がはははは!』


「この笑い声誰ッ?」


『人造少女たちに罪はない。罪があるとするならば、それはアルパインを追放した者たちであろう。』


「いや、違うと思います」


『アルパインは国外退避のため、再び歩みを進めた……。』


「なんで研究施設に立ち寄ったのでしょうか?」


 画面が切り替わり、次のステージ名が表示された。『ステージ3 廃工場です、はい』。


「ここにきて急にステージ名がダジャレに!」


 三面の舞台は廃工場。突き出ているパイプが印象的な暗い雰囲気で、今までよりも道が狭い。


「このゲーム、強引に悪役令嬢のゲームにしていませんか? 廃工場はさすがに悪役令嬢とは無縁だと思いますよ。というか、研究所を廃工場にしたのはこの悪役令嬢ですよね?」


 この面の敵は、今までよりも数が多い。従来のメイドと令嬢に加え、青い(えり)とミニスカート姿の少女まで登場する。


「このセーラー服のキャラも、悪役令嬢のゲームとは関係なさそうです」


 グラフィックが違うだけで、黒髪セーラー服少女の挙動も他の敵キャラと同じだった。最初から両手両足を出している分、他の二種類よりも弾が当てづらい。


『お願いッ!』


 五発撃った後にそう喋ると、セーラー服少女は紺色のスクール水着らしき姿に変わる。


「今度の敵はまさかのスク水でした!」


『やめて!』


 さらに五発撃ち込むとそう叫んでザコ敵は倒れた。


「主人公がやられた時の声の使い回しですねぇ……。廃工場にスク水セーラー服って、適当過ぎませんか?」


 その後も、冷静に地味子は敵を対処する。道が狭いので、敵が角に引っかかったりするのが多くなってきた。


「そう言えばこの主人公の3Dモデリングって、無いのでしょうか? 最初からずっと、拳銃と白い手しか映ってないですよね。まあ、全体像があったとしても、敵キャラの質を見る限りカクカクした感じなので、むしろ無くて良かったのかもしれません」


 喋りながら地味子は敵を連射しまくる。累計で四十体以上は出て来ただろうか。三面の敵は、初登場のセーラー服少女の比率が高かった。


「敵が多いと画面内の処理が追いつかず、チラつきます……」


 とにかく敵の行動パターンは単調で、作業感が強くなる。敵は壁にぶつかると、反射するように移動の向きを変える。人間の動きじゃない。


 敵の数の多さから、何度かはダメージを受けたが、やはり押しっぱなし連射が強力だった。これに尽きる。


『私の勝ちよっ!』


 そんなセリフが聞こえ、『ゲームクリア!』と表示される。


「えっ、三面で終わり?」


 感動的なBGMが流れ始め、扇子(せんす)を大きな胸元の前で開いてウインクする、愛らしい悪役令嬢のイラストが映った。


「ひとつ、いいですか? ――白い手袋、し・て・な・い! あと、あの拳銃はどこへ?」


 画面がいつも通り暗くなり、やはりストーリーのテロップが下から出て来る。


『国外逃亡に成功したアルパインは、新たな国で新しい男と婚約した。』


「展開早っ!」


『もう同じ過ちは繰り返さない。』


『次は、婚約破棄をされる前にこちらから乱射して婚約者を黙らせるのだ!』


「最後まで主人公ブレないですね!」


『どんなに追い詰められても、この魔法銃があれば、戦える。今回の旅は、それを教えてくれた。』


「拳銃のイラスト最後までありませんでした!」


『私の勝ちよっ!』


「なんでもう一回さっきと同じボイスが入るのですかッ!」


『これからもアルパインは撃ち続けるだろう。』


『そうでなければ、これまで撃たれていった人々が報われないからだ。』


「もう撃つのやめましょうよ!」


『おわり』


「終わりまでスクロール表示ぃっ!」


『制作・O.E.G.』


「……OEGって(なん)の略でしょう? おお……きな、エッグ? すみません、分からないです。このゲーム買った際のメーカー名も思い出せません」


 全てのスクロールが終わると、あっさりとお城の映るタイトル画面に戻った。


「なんか……全体的に低コストなゲームでした。まあ、ダウンロード販売で99円でしたから、こんなものでしょう」


 右下表示の地味子はゲームを終えた感想に入る。


「グラフィックは3Dがいまいちでしたが、イラストはかわいく仕上がっており、その点は高評価です」

 地味子は笑顔になった。


「操作性は、少し挙動が不安定でした。やたら揺れがあったのは、主人公の名前がアルパインということで、ある、お胸(ぱいん)、ということなのかもしれません」


 そんなに地味子は大きくないので、体が揺れても揺れない。


「ストーリーは、無理やり悪役令嬢ゲームにしようとした感じが強かったです。難易度は低めというか……実に簡単でした。とにかく連射がすさまじくて、敵の体力が十もあるのに敵が弱かったです。(じゅう)(じゅう)も撃つ……、ああ、つまらなかったですね、すみません」

 地味子は頭を下げた。


「全体的に、クソゲーには近かったものの、途中で投げ出すレベルではありませんでしたね。当たり判定もきちんとしていて、まともに遊べました」


 多くの修羅場(しゅらば)をくぐったゲームプレイヤーなら、まともに遊べないゲームが存在していることを、皆知っている。


「あと、BGMは質が高かったです。ボイスは悲鳴と最後の勝利ボイスぐらいしかなかったですが、ちゃんとした声優さんの声みたいで、私的には好ましく思いました」


 地味子が感想を述べた後、画面がステージ1へと切り替わる。


「最後に、オプションの脱衣モードをオンにしてみたので、ご覧下さい」


 街に配置された敵メイドが、最初から下着姿で登場している。


「これはもしかして……と期待しましたが、残念ながら、動画で映せる程度の内容だったのです」


 弾を五発当てると悲鳴が出て()()るものの、グラフィックは低品質な下着姿のままだった。


「……はい。最初に服を着ていないだけで、五発撃っても裸にはなりませんでした。敵令嬢とセーラー服少女も同様です。正直、期待が裏切られるモードでした。当たり判定が狭まっているので、多少難易度は上がっているかもしれませんが、手抜き感がすごい……」


 地味子は悲しげな顔をしていたが、笑顔を作る。


「ということで、今回の実況は以上でございます。Vチューバー、地味走地味子でした。この動画が良かったと思って下さった方は、高評価とチャンネル登録をよろしくお(ねが)――」


   □


 あなたは動画が完全に最後まで終わる前に、視聴を切った。


 次に視聴する動画を、あなたは見つけようとしていた。


                    (終わり)

最後の高評価・チャンネル登録をお願いする部分を見ずに終わるのは、動画あるあるですが、ちょっと残酷ですよね。今回は、小説でVチューバーをやってみる、をコンセプトに書いた作品でした。


ドロワーズ、悪役令嬢、スク水の出る作品は他にもあるので、作者の別の作品も読んで頂ければ、ありがたいです。本作を最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

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