とっても素敵な切り札です
飽きたな。
最初は矮小な存在が足掻いている姿を見て楽しんでいたが、意外にもしぶとい。
それどころかジェネラル5体を相手にして数を減らして来るという結果になった。
それでもまだ3体のジェネラルがおり既に相手はボロボロ。
その上自分を含む2体のキングが控えている状況。
どう考えても人間共に勝ち目は無い。
なのに無駄に足掻こうとしている。
姿を見せれば泣き叫ぶかと思ったがそうでもない。
何故醜く許しを請わない?
何故醜く逃げ出さない?
理解は出来ないがその姿が無性に腹立たしくなった。
しかし考えてもその理由はわからなかった。
ただ足掻く人間共にも腹は立ったが、そうなっているジェネラル共にも腹が立って来た。
「どけ」
グチャッ!
ジェネラルの頭蓋を一撃の元砕く。
「どけと言ったはずだが?」
グチャッ!
その様子を動かずに見ていたもう1体のジェネラルの頭蓋も粉砕する。
それを見て動きの止まった最後のジェネラルも人間共によって討たれた。
「俺らが苦労してるジェネラルを一撃かよ。
全くもって厄介な相手だな」
「それでも…やるしかありません」
まだ戦意を失わない人間共を見てさらに苛立ちは募っていった。
▽▽▽▽▽
見えた! デカい奴が全部で5体。
ジェネラルが3体に……色の変(紫)なのが2体?
周りには以前遭遇したアイツがいない?
キングはどこ行ったんだ⁉︎
あの2体は新手か?
走りながら動きを見ていると後の紫色の2体のオークがジェネラルに近づいたと思いきや…。
うえっ⁉︎
ジェネラルの頭を叩き割った⁉︎
仲間割れか⁉︎
なんにしろ敵が減るのはいい事だ。
それに今ので残ってるジェネラルもクラウドさん達が倒した。
残ってるのは紫色のオーク2体のみ!
「アリシアさん!」
「悠生様⁉︎」
「無事……じゃない人も混じってますが生きてて何よりです」
「…言ってくれるな小僧」
無事じゃない人の代表格の旦那が流血しながらこちらを見てくる。
「キングが現れたって聞いたんで急いで来ましたが、意外と大丈夫そうで安心しましたよ」
「戦況は大丈夫じゃないけどな」
「来てくれたところ早々にすまんが怪我人を連れて退がってくれるか?」
クラウドさんがそんな事を言ってくる。
俺からすればクラウドさんも十分怪我人なんだが引く気は無さそうだ。
「はいはぁい、怪我してる人は退がろうねぇ〜」
「スズ⁉︎」
いつの間にか現れたスズがクラウドさんの背後をとった。
「うおっ⁉︎ 嬢ちゃん⁉︎」
「そんな簡単に後ろとられてる様じゃダメだよぉ。
こっからはワタシ達に任せておきなってぇ」
「うるさい」
ゴォッ!
言葉と共に地面を拳が穿った。
ビャッコがアリシアさんを、スズがクラウドさんを、俺が旦那をそれぞれ引っ張って回避する。
ほんの少しビャッコが羨ましいなんて思ったのは内緒だ。
「ほらぁモタモタしてるから、相手は待ってくれないよぉ」
それだけ言い残してスズが紫のオークに向かって斬りつけた。
それが煩わしかったのか執拗にスズを追い回しだした。
それをスズが器用に躱して距離をとっている。
「クラウドギルド長、ザック騎士団長をお願いします」
「アリシア王女?」
「私もここに残ります」
「何言って⁉︎」
「大丈夫です…ただ残るだけではありませんから。
ビャッコ行ける?」
「ヴァウッ!」
「ありがとう」
アリシアさんが薄い光を纏い足元が光出しアリシアさんを中心に魔法陣を描き出した。
召喚?……にしては本人の足元だな?
それに複数の契約って確か出来ないんじゃなかったっけ?
「『喚装』! ビャッコ!」
「ヴァウッ!」
アリシアさんの言葉にビャッコが吠えてアリシアさんに飛びかかった。
カッ!
そして接触する寸前に眩い光が発生した。
「うっ⁉︎」
思わず目を庇ったが光は長く続かなかった。
光が収まった代わりにバチバチという音が断続的に聞こえて来た。
一体何が?
と思いながら音の発生源を見ると………ぐはっ⁉︎
精神にクリティカルダメージを受けた。
音の発生源はアリシアさんだった。
そして全身が雷らしきモノを纏っている。
それだけならダメージを受ける事は無かった。
しかしっ!
今のアリシアさんからは耳と尻尾が生えているのだ!
しかも白黒の模様からしてビャッコそっくりの形をしていた。
くぅ! なんて破壊力だ!
危うく戦う前に死んでしまうところだった!
この世界にカメラが無い事が悔やまれる!
脳内のメモリに焼き付けておかなければ!
「あ、あの…悠生様?」
やべ、がん見してしまった。
「え? あ! すみません! アリシアさんそのお姿は?」
「これはビャッコの力を私が纏っている状態、私の切り札です。
ただ制御が難しくて完全というわけではないのでビャッコの部分が残ってしまってますが」
という事は完全に制御すると耳と尻尾が無くなると?
個人的にはそのままでも大変素晴らしいんですが。
「ですがこれならお力になれます!」
「そうは言っても…」
俺はどうするべきか悩んで旦那の方をみる。
「な、な、な⁉︎」
旦那の様子がおかしいな? どうしたんだ?
「ちょいと旦那、どうしたんですか?」
「ア、アリシア王女! なんですかそれはっ⁉︎」
「え?」
旦那のセリフに思わず声が出てしまった。
もしかして旦那も知らなかったの?
「ザック騎士団長、お話は無事乗り切る事が出来ればいくらでも」
「…………はぁ、……小僧アリシア王女を頼んだ」
旦那が力無く項垂れた。
あ〜うん、旦那も色々苦労してるんだね。
「悠生様、私はスズさんに加勢します。
この状態でも一対一では対抗出来ませんので」
「分かりました……無理はしないで下さいよ?」
「善処します」
イマイチ信用ならない言葉を置いてアリシアさんはスズの元へ向かった。
さて俺はコイツの相手か。
「お、おい! まさか1人で相手するつもりか⁉︎」
クラウドさんが心配するのも無理ないか。
俺のステータス見てるもんなぁ。
「魔力は半分ぐらいあるんでなんとかしますよ」
「なんとかって…」
「ギルド長、小僧の邪魔になるんで大人しく退がりましょう」
「正気かっ⁉︎」
「正気ですよ、小僧なら大丈夫ですよ」
「……この状況でアンタが嘘をつく理由が無いな。
信じ難いが従おう」
そんなやりとりをしてクラウドさんと旦那が距離をとった。
それを見て俺はもう1体の紫色のオークと向かい合った。




