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復帰です


スズを連れて退がった俺は負傷者で溢れたテントを訪れた。


「……結構被害出てたんだな」


ジェネラルが出て来るまではこんなにも被害は出て無かったはずなのに。


「すみません、回復薬はまだ余ってますか?」

スズを座らせてから手当をしている人に聞いてみる。


「あ、はい、ありますよ……そちらの方は急患…では無いようですので回復薬には数に限りがあるので出来れば使用は控えて応急処置でなんとかして頂けないでしょうか?」


そりゃそうか。

危険な状態の人が優先なのはしょうがないか。


「って事だからここでしばらく安静だな」

「まぁしょうがないよねぇ。

ワタシの場合は怪我より酷使したのが大きいからねぇ」


その後も絶えず負傷者が運ばれて来る状況が続いた。

軽度な者は簡易な手当をしてまた戦線に復帰していき、立つ事が出来ない者達は徐々にその数を増やしていった。


そしてしばらく経って騒がしく複数の足音がこちらに迫ってきた。


「今すぐ逃げる準備をするんだっ!!」


聞こえてきた第一声がそれだった。

逃げる準備⁉︎ 何があったんだ⁉︎


そして兵士の男がテントの中に入って続けた。

「すぐにここから脱出してくれ!」

「ちょ、ちょっと待って下さい⁉︎ ここには動けない人達がたくさんいるんです!」

「すまん! 動ける者は自力でなんとか頼む! 動けない者は我々も協力する!」


有無を言わせぬ様相に手当をしていた人も押し黙る。

その間にも他の兵士や冒険者がやって来て逃げる準備を手伝っている。


ジェネラルの数は最初より減ったはず⁉︎

どうしてそんな事態に⁉︎

「あの…一体何があったんですか?」

「……オークキングが現れた。

今の状態では撃退する事が出来ないっ!」

「キングっ⁉︎」


ってアイツかっ⁉︎

じゃあ戦場はどうなったんだっ⁉︎


「アリシアさんやクラウドさん達はどうしたんですかっ⁉︎」

「……王女や騎士団長、それにギルド長のような高レベルの人達で皆の退避する時間を稼いでいるっ! 我々がその間に可能な限り避難させる命を受けているっ!」

兵士の男が唇を噛み切りそうな言い方で漏らした。


「っ‼︎」

この人……。

手は今にも血が滲み出そうなほど握りしめている。


本当なら前線でみんなを守りたかったんだろう。

国の兵士、しかも仕える人達を置いてここに来た苦渋の決断。


そういえば初めてお願いされた時も自分はどうなってもいいから家族を助けてって言ってたな。

アリシアさんなら今回も自分を犠牲にして他を救う選択をしそうだ。


目の前の人も悔しいながらも自分の出来る事をしている。

なら俺は俺の出来る範囲の事をやりに行こう。


「行って来る」

「うん」

スズとの短いやりとりのあと俺は走り出した。


「お、おい⁉︎ そっちはっ⁉︎」

男が止めて来るがそれに構ってる暇はない!


「バカ野郎っ!」

男が走り去って行く悠生に声を荒げる。


「まぁ落ち着きなよ」

「落ち着いてられるかっ! オークキングだぞ! 中途半端なやつが行っても邪魔になるだけだぞっ!」

「半端じゃないから大丈夫だと思うげどなぁ」

正直悠生なら1人でオークキングと互角に渡りあえるだろう。

むしろ足を引っ張るのは周りの方だと思う。


「アンタ分かってんのかっ⁉︎ アイツがどれだけ凄いか知らないが大丈夫なわけないだろっ!」

「分かってるよぉオークキングでしょ?」

「天災級なんだぞっ⁉︎ それにそれだけが理由じゃないんだ!

現れたオークキングは1体じゃないっ!

2体なんだよっ‼︎」

「っ⁉︎」


2体⁉︎ アレが⁉︎

少し前の出来事を思い出す。

1体でにぃさんと互角、そしてあの時は何も出来なかった。


「それは随分厄介だねぇ」

「厄介なんて言葉で片付けられない!

事情は分かっただろ! 早く逃げてくれ!」


事情が変わった。

オークキング1体ならにぃさんで問題無い。

でも2体となると話が違う。

しょうがないかぁ。


「ちょっと通してもらっていい?」

重い腰を上げて立ち上がる。

まだ足の震えが止まって無いけどしょうがない。


「おい⁉︎ アンタどこ行く気だ⁉︎ まさかオークキングの所に向かうつもりじゃないだろうなっ⁉︎」

「そのまさかだったりするかなぁ」

「辞めろ! そんなフラフラな状態で行っても自殺行為だぞ!」

「そうかもねぇ」

「だったらっ!」

「連れが先に行ってるからワタシは今急いでる。

どかないなら無理やりにでも行くよ?」

「っ⁉︎ それでも!」


悪い人では無いし心配してくれてるのは分かるんだけどなぁ。

頭が固いというかなんというか…。


「すまない、そのねぇちゃんに俺に使うはずだった回復薬を渡してやってくれねぇか?」

「無理に動いちゃダメです!」

「大丈夫だちょっと話をするだけだ」


横から別の声が入ってきた。

見ると担架で運ばれようとしている冒険者風の男が上体を持ち上げてこちらを見ていた。


「兵士のにぃちゃん辞めとけよ。

そこのねぇちゃん…ここに来る前にギルド長とジェネラルの相手してた奴だぜ?」

「えっ⁉︎」

「無理やり通るってのはその状態でもハッタリじゃねぇぞ?」

「まぁそうだねぇ」

「………」

「って事でこのねぇちゃんに回復薬を頼む」

「……分かりました」


そう言って回復薬を手渡してくる。

「ありがとねぇ」


貰って即座に飲み干す。

「うへぇ〜まずぅ〜」

「良薬は苦いもんだ、でも効果は抜群だろ?」


その言葉通り足の震えは止まった。

「うん、これなら大丈夫そう」

「んじゃ早く行ってやんな!」

「ありがと」

「………」


短く礼を行ってその場を去ろうとしたが兵士の横を過ぎたところで一旦立ち止まる。


「1人の強さだけじゃどうにもならない事もある。

ワタシはワタシの出来る事をする、貴方は貴方の出来る事をして。

心配してくれてありがとね」


それだけ言って振り返る事なくテントを出て行った。


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