対ジェネラル
現れたジェネラルはクラウドさんからの先制を受けて右腕から血を流していた。
「進化したてなとこ悪いがさっさと退場してもらうぜ!」
そう吐きつつジェネラルに向かって負傷している右側から大剣を振るう。
進化したジェネラルは丸腰だ、大剣を受ける術は無い。
そう思ったが何の躊躇もなく負傷した右腕で大剣を掴んできた。
クラウドさんの大剣がジェネラルの手に食い込む。
しかし振り抜く事も出来ずにクラウドさんの動きが止まる。
そこを逃さずジェネラルが空いている左腕で拳を繰り出して来たがクラウドさんは大剣からあっさりと手を離して拳を躱した。
ゴォ!
「ガッ⁉︎」
拳は地面を穿ちジェネラルが苦悶の声を上げた。
「スキル『双刃』!」
ジェネラルの背後からムジカが未だ大剣を掴んでいる腕を斬りつけた。
そして手から大剣が離れたところでクラウドさんが大剣を握りしめた。
「スキル『剛剣』」
クラウドさんの大剣がジェネラルの首をはねる。
「悪いな、俺達は冒険者で後ろに守るもんがある。
討伐するのに時間はかけてらんねぇんだ」
そしてジェネラルは音をたてて地面に伏した。
俺は後方で見ていたから分かったが、クラウドさんが斬りかかると同時にジェネラルの左手方向からムジカが背後に回り込み、大剣を掴んで動きが止まった所をムジカが斬りつけた。
そしてスキルで大剣を持っている手をムジカが斬り落としてクラウドさんがトドメ。
いつの間にそんな打ち合わせしてたんだか。
いやこれこそが冒険者というやつなのかもしれない。
相手の脅威が分かっているからこその連携。
流石としか言いようがないな。
そしてスズの方はと言うと……一言で言うと意外だった。
この間全く動きが無かったからだ。
スズが動いて無いのはまだ百歩譲ってわかるとしてもジェネラルまで動いて無いのはどう言う事だ?
〜スズ サイド〜
「………」
最初に剣気で牽制した後無言でジェネラルを見据える。
人が死ぬのは飽きるほど見て来た。
だから今更人が死ぬ瞬間を見ても大して感慨が湧かないと思っていた。
実際傭兵をしていた時はそうだったし、そもそもが人の生死をかけた場に赴く事の方が多い職種でもあった。
でも今は気分が悪い。
単純に虫の居所が悪い。
「嬢ちゃん援護するぜ」
旦那がそう言ってくれるけど今はそういう気分じゃない。
「いい」
「よし! ……って⁉︎ はぁ⁉︎ 正気か⁉︎
相手はジェネラルだぞ⁉︎」
目の前のジェネラルが動きだそうとする寸前に相手が動かそうとした右足を斬り落とすイメージで剣気を放つ。
「ガッ⁉︎」
斬られたと思われた部分を触って確かめようとジェネラルが右腕を動かそうとした瞬間、今度はその右腕を斬るイメージの剣気を放つ。
「グッ⁉︎」
動こうとする直前で次々と剣気を放つ。
それだけで完全にジェネラルの動きを封殺する。
こっちはこれで問題無い。
旦那にはこっちを援護するぐらいなら向こう側に行ってもらった方がいい。
そう思ったが向こう側のジェネラルの背後に回り込もうとしているムジカの姿が見えた。
既に援護はいるみたいだ。
片手間でムジカが回り込もうとしている方向と逆方向から斬りつける剣気を放っておく。
距離があるから何か来た程度にしか思われないだろうしギルド長のおじさんの斬撃に反応してしまったけど、そのお陰でムジカが気づかれずに回りこめたみたい。
後はほっといても大丈夫だろう。
これで向こう側の心配は無くなった。
「コイツはワタシが始末する、援護はいらない」
「お、おお…」
素っ気ない言い方だけど今はいつもの気分じゃない。
どうしてなのかはすぐには分からなかった。
傭兵時代はそれぞれが報酬の為、我を通していた。
利があるからこその行動、そうでなければ一文の得にもならない事は一切関与せず自分を優先。
今みたいに自分の負担を増やして他の心配をするなんてありえない。
「グッ、ガッ⁉︎」
考え事をしながらもジェネラルの動きを封じていたけどそろそろ誤魔化しも限界かな。
「グアアァァーッ!!」
叫び声を上げてついにジェネラルが剣気を振り切って動き出した。
まぁこれだけやって身体に何も異常が無いんだから当然だけど。
もう一度剣気を放つけど今度は完全に無視してこちらに迫って来た。
守の型、『玉響』。
ジェネラルは残像だとは気づかずにこちらに拳を振りかぶる。
それを見つつ左右からの2連撃ずつの斬撃を頭部に向けて放つ。
斬撃が来る事自体は感じ取っているはずだけど防ぐ事も躱す事もする様子が無い。
さっきから散々偽物の斬撃を浴びてさらに目標はその場から動いていないとあれば疑う余地は無かったんだろうけど。
今のワタシにコイツを1秒でも長く生かすなんて選択肢は無い。
ジェネラルの拳がワタシの残像を貫いた。
手加減は無用。
「ワタシを不快にさせたのが悪い」
四の太刀、『顎・咬』。
ザシュ!
無防備な状態でまともに斬撃が入り、ジェネラルの頭と胴が永遠の別れを告げた。
倒れて行くジェネラルには気にも止めず周りを見回す。
さっき以上に被害が広がって無い事で気分が少し落ち着いた。
その途中で具合の悪そうなにぃさんの姿を見て先ほどの理由に思い至った。
見ず知らずのワタシの仲裁に入ろうとしてきた珍しい人。
依頼でも無いのに自分から手を出すお人好し。
せっかくの報酬に金品を求めず後々墓穴を掘るドジな人。
初めてあった時に思った今時珍しい人……それと同時に少しの懐かしさも覚えた。
だからあの時あんな事を言ったのかな?
自分から守ってあげようなんて見返りがなきゃ普段は言わない。
あの時はにぃさんが動けなくなると困るって言うのもあったけど、あてにしたのは転移のスキルだ。
にぃさんが本気でやれば勝てる奴なんてそうそういないだろうし、体が動かなくなっても転移は使えるだろう。
実際何も言わなければにぃさんがやろうとしてたし。
なのに口を出した。
……にぃさんの影響…かな。
「「うおおーーっ!!」」
2体のジェネラルが倒れた事でこちらの士気が高まった。
「……凄いとは思ってたがまさかジェネラルを瞬殺とは恐れ入るぜ」
「旦那ぁ、さっきはごめんねぇ」
「ん? さっき?」
「ん〜、ちょっと素っ気ない態度だったかなぁ〜って」
「なんだそんな事か、気にしてねぇよ。
それよりこっからも頼むぜ!」
「しょうがないなぁ〜」
その後は盛り返した冒険者と騎士団に混じってオークの軍勢を討伐していった。




