野望チャンス
今回は短めです。
次回も短くなりそうなので明日までにはアップ出来ると思います。
何も始まることもなく野望を打ち砕かれた俺は一人寂しく夜の見張りをしていた。
いくら野望を粉微塵に粉砕されて精神に多大なダメージを受けていたとしても、そこは男として女の子(しかも美少女!)もちろん優先で休んで頂きました。
目の前には火がパチパチと音を立てながら燃えている。
気分はまるで本能寺の信長のようだ。
実際どんな気持ちなのかは知らんけど。
今日唯一と言っていい俺の成果である薪はまだまだ余裕がある。
これなら朝までは十分持つだろう。
読むだけじゃ分からないもんだな。
百聞は一見に如かずとはよく言ったもんだよ。
周りはとても静かでマジで何の音もしない。
そして暗い。
焚き火の光が届かない所からは黒一色で何も見えない。
見える範囲はせいぜい五メートル程度。
その中には先に休んでいるであろう、アリシアさんがいるテントがあるだけ。
火が消えたら完全なる闇だ。
魔物が蔓延るこの世界でうっかり居眠りなんてしようものならそのまま永眠なんてこともありえそうだ。
何も起こらないに越した事は無いが、何も無い、というのが曲者だ。
一言で言うとヒマなのだ。
周り何も見えない、暗いから何かすることも出来ない、携帯とかあればいいんだけど…いや、あっても使えないか、電波無いだろうし。
刀でも振れよ!とか思うかもしれないが、実はやったんだよ、多少疲れるぐらいにはね。
でも休憩してる時に気づいたんだよ!
あ、今襲われたら詰むって。
と言うわけで何もしないという結論になってしまったんだが…。
一応目を奪われるって言う表現が出来るものはあったよ?
先に言っておくとアリシアさんの寝顔では無い。
そんなの見てしまったら目どころか心まで奪われて何しでかすか分からないよ?
本来ならセオリーを守ってご尊顔を拝見するのが正解なんだろうが、そこは鋼の精神で耐えたさ。
血の涙を流すというのはこういう時に使うのかもしれない。
でも目を奪われたのはそれじゃない!
いや奪われてもいいが。
感動したのは頭上、天然のプラネタリウムだ。
元の世界では夜に光が無い場所なんて探さないと見つからない。むしろ24時間眠ら無い街が殆どで灯りが完全に消えることなんて皆無に等しい。
実際のところ夜になっても星なんて見えないとこに住んでたしね。
でもずっと観てられるわけでも無かったな。
綺麗ではあるんだけど動きが無いんだもん。
せめて流れ星でもあればねぇ。
まだユラユラしてる火を見てる方が長続きしたよ。
そう考えるとアリシアさんは凄い!
多分動きが無くてもずっと見ていられそうだ。
いかん、また寝顔が見たい欲求が湧き出してきた。
でもな〜、アリシアさんなら見てても「どうかしましたか?」程度で済みそうな気がするな?
それなら見た方が得じゃないか?
もしかしたら寝起きが弱くて今までとは違うアリシアさんが見られるかもしれん。
まだ眠い目を擦りながら若干呂律が回っていないアリシアさん………ごふっ!
いかん!想像だけで吐血しそうな破壊力だ!
そんなの直視なんてした日には身体中の穴から流血して永眠してしまいそうだ!
だが!それでいい!
漢とはかくあるべきである!
世界よ見届けよ!これより俺は修羅となる!
いざ聖地へ!
我が人生に一片の悔いなし‼︎
「悠生様、そろそろ交代致します」
「あれ?アリシアさん?もうそんな時間ですか?」
「はい、おかげで十分休ませて頂きました」
休む前と寸分違わぬ姿のアリシアさんがそこにいた。
寝起きは良さそうですね?
「悠生様はまだこの世界に不慣れだと思いますのでゆっくりなさって下さい」
「では、お言葉に甘えさせて頂きますね」
俺はそう言って燃える火を見てからテントへ向かった。
人間五十年、
下天のうちをくらぶれば、
夢幻の如くなり。
そして、何事もなく朝を迎えた。
歴史は詳しく無いけど信長は好きなんですよね。
作中の文だけだと言葉足らずですが、後に続く文を足すと補完されます。
ちなみに本編の主人公の悠生解釈だとこんな感じです。
人間の50年なんて神視点で見れば一瞬。
一度生まれたもん(野望)はいつかは滅びる。
これが理解出来ないなんてマジ情けねぇ。
当たらずとも遠からずってとこでしょうか?