ダンジョン探索です⑤
あの獣人、スズと互角ってなんだよ⁉︎
むしろ吹っ飛ばされたスズの方が押されてる⁉︎
フロア内は刀と爪が幾度もぶつかり合う音と風切り音が響き渡っている。
『計画地図』で把握してなきゃ追えてない。
少し前からスズが獣人に吹き飛ばされる回数が増えてきてる。
致命的な被弾はしてないがどう見ても劣勢だ。
そう思い始めた時、スズがこっちを見て一瞬だけ微笑んだように見えた。
スズ?
スズが腰を落として構えをとった後、剣気とは違う……空気が張り詰めるような感覚を覚えた。
剣気…じゃないな、構えから見ると『瞬閃』みたいだけど…?
「グガッ⁉︎」
獣人が動きを止めて距離をとった。
獣人も何かを感じとったのか?
気のせいじゃないって事か。
距離をとったのも束の間、獣人がスズに向かって突進した。
さっきまでより速い⁉︎
「ふぅ〜……」
スズが獣人をその場で迎え撃つ。
避けないっ⁉︎
しかも放ったのは『瞬閃』ではなく、ただの左袈裟斬りだった。
すると獣人が四つん這いになった。
え⁉︎
ザンッ!
「グゲッ⁉︎」
スズの刀が獣人を正確に捉えた。
「六の太刀、『虚構』」
チン! ボォォォンッ!
スズが刀を鞘に納めると獣人が爆散した。
それを見届けてスズが地面に座り込んだ。
「スズ⁉︎ 大丈夫かっ⁉︎」
近くに駆け寄るとこっち側に倒れ込んで来た。
「つ〜か〜れ〜たぁ〜、にぃさぁんまくら〜」
いつも通りの調子に心配の言葉はどっかに行った。
疲れたのは事実だろうし、守ってもらったのは間違い無いので大人しくその場に座りスズの頭を太ももの上に置く。
「えへへ〜、くるしゅぅないぞぉ〜」
「そりゃどうも」
ピカッ!
「「っ!」」
少ししてフロアの中央の地面が光った。
追加で何か出て来たり強制的にどこかに飛ばされる事は無かった。
「さっきと一緒でまたどっかに移動する用のやつか?」
「出られるといいけどねぇ」
とりあえず消える事もなく残ってるのでしばらくこのまま休憩する事にした。
聞きたい事もあるしな。
「スズ、さっきの最後のって何?」
「んん〜?」
目を閉じてそのまま寝そうになっているスズの目が開いて視線だけを上に向けてきた。
「ほら、最後獣人を仕留めた時の…」
「ん〜、『虚構』のことぉ?」
最後、獣人はスズが斬撃を放った時何故か四つん這いになった、アレはありえない。
「アレは剣気と掛け合わせた技だよぉ」
「……?」
言われてもよく分からなかった。
「どう言う事?」
「ん〜とねぇ…」
言いながらスズが左手で人差し指を一本立てた。
「コレ、さっきの獣人ね」
そう言って次に右手で2本の指を揃えて立てた。
「こっちの手は斬撃ね、さっきとは少し違うけどね」
そう言うと右手の2本指を水平にして獣人に近づけていく。
触れる直前に2本指を90度回転させて斬撃を二つに分けた。
「人差し指は剣気による斬撃、中指は本物の斬撃。で、剣気の方を先に相手に反応させて本物を当てるっていうのが『虚構』だよぉ」
左手の人差し指を曲げて右手の人差し指を躱す動きをして右手の中指で左手の人差し指にぶつけた。
「鈍い相手とか、ゴーレムみたいなのには効かないけどねぇ」
「……そんな事出来るなら最初からやってくれよ。心配するじゃんか」
「ごめんねぇ、でも最初からだと多分通じ無かったと思うよぉ」
「そうなの?」
「にぃさんのを避けたぐらいだからねぇ。
当てる準備はしないとねぇ」
「準備?」
スズに言わせるとこう言う事だ。
まず獣人が剣気に反応する事。
次にスズが放った技に対して1番動きを止める体勢
で可能ならば回避を選択する動作である事。
弾かれると流石にバレる。
あわよくば過程で倒せればよかったがそこまで甘く無かった。
という事で回避してかつこちらにダメージを与えた『瞬閃』が1番理想だったので剣気による『瞬閃』を放ち結果はご覧の通り、と。
「良い結果は記憶に残るからねぇ」
何ソレ?
スズさん簡単に言うけど凄すぎませんか?
そんな事考えて戦ってたの?
ほんと頼もしい事で。
そこから少しして。
「お〜いスズ、そろそろ行くぞ〜」
「ん〜、やられたのはフリじゃないから延長をきぼ〜」
「そうさせてやりたいのは山々なんだけど時間が無いからな」
「むぅ〜……しょうがないなぁ」
スズが起き上がったので俺は光を放ってる床に近づいていく。
見た目は同じっぽい。
違いがあっても分からんだろうけど。
「にぃさんコレ見てぇ」
「ん?」
スズが手のひらを見せてくる。
そこには卓球の球ぐらいの大きさの赤い石があった。
あ、そういえばさっきの獣人って爆散してたな。
「それってもしかしてさっきの獣人の?」
「そうそう」
「今までのと比べたら随分デカいな」
今集まったやつの3倍ぐらいはデカい。
「大きいとやっぱいいのかな?」
「どうなんだろうねぇ」
考えても分からないのでスズから受け取ってポケットに入れた。
まずはこっから出る方が先決だしな。
俺とスズは同時に魔法陣の中に入る。
光が俺達を包み込んでいき、2人の姿はその場から消えた。
光が収まり周囲を見渡す。
部屋の大きさはまたも同じぐらい。
ただし今回は違う場所だと見た目で分かるモノがあった。
「………なぁスズ」
「なぁに?」
「俺にはアレが宝箱に見えるんだが?」
「ワタシにもそう見えるよ」
……ゲームならそれで納得しよう。
でも現実のダンジョンでそんなのあるか?
誰がこんなとこにそんなもんを置くんだよ?
しかもどうやって出るかも分からないここに。
「胡散臭ぇ〜」
「試しに斬ってみる?」
ガタッ。
「「…………」」
俺達2人しかいない部屋に何故か物音がした。
俺はスズと顔を見合わせて頷いた。
……確定だな。
定番と言えば定番だが、アレ…宝箱に擬態した魔物、俺の知識的にはミミックだな。
俺とスズが前後でミミックを挟むような位置でそれぞれ得物を構える。
カタ、……カタカタカタガタッ。
なんか段々震え方が激しくなってきたな。
ちょっと可哀想になってきたけど、まぁ潔く散ってくれ。
「3乗、」
「一の太刀、」
ガタッ!
ミミックが飛び上がって逃げ出そうとした。
「「『瞬閃』」」
「ギェッ⁉︎」
前後を挟まれた状態からの左右の斬撃。
逃げ場は無い。
ゴシャ!
3分割されたミミックが地に落ちた直後。
カッ!
「「わっ⁉︎」」
目も眩むような光が発生した。
マジかっ⁉︎
咄嗟に目を庇うがこれじゃ何も見えない!
ミク『計画地図』!
《了解です》
これなら何かあれば対応可能だ。
とりあえず何か襲ってくる事もなく、スズと散り散りにされるような事もなかった。
「おさまったか…、スズ大丈夫か?」
「………目が、目がぁ〜」
スズが思い出したかのように両手で目を押さえて訴えた。
「……さっきまでなんとも無さそうだったよね?
それに何でそのネタ知ってんの?」
むしろ俺が大丈夫なのにスズが防いで無いわけがない。
「んん? 何の事? それよりにぃさんこれじゃ歩けないからおんぶ〜」
スズが何の迷いもなく俺の後ろに回り込んで飛びついてきた。
「いや、完全に見えてるだろ! 降りなさい!」
「むぅ〜」
スズを降ろして周りを見ると先程とは違う場所に立っていた。
「また別の場所……」
「今度は行ける道があるよぉ」
「ほんとだ、アレ? でもここって…?」
妙に見覚えがある。
そう思ってマップを見るとそこにはリーガルダンジョン地下5階を表示していた。
「戻って来れた!」
「そう言えば見覚えあるねぇ」
あ、地下5階って事は……、あ〜やっぱりあるなぁ。
そこには最初に飛ばされた場所へと続く入口があった。
早く戻ろうと思ったが少し考える。
……準中級って言われてるダンジョンで隠し通路があってその先には強敵が待っている。
たまたま戻ってこれたが実際にはどうやって脱出するのかもイマイチ……。
「知らせた方がいいよなぁ」
「そうだねぇ」
出来ればこのままフリードに直行したいところだが、コレを放置して行方不明者多数とか後味悪すぎる。
しょうがないからギルドに説明だけして後はぶん投げよう。
俺達は速攻でダンジョンを引き返した。




