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剣豪の剣技

スズ視点


ふぃ〜疲れたぁ〜。

玉響(たまゆら)』、久々に使うと疲れるぅ〜。


同じ姿勢、場所を幾度も往復して実態がその場にあるように認識させる移動術。

言うは易しだがやるとなると至難の技。

単純に物凄く疲れるからやりたく無いのが本音。

ワタシじゃ斬れなかったからしょうがないけどねぇ。


「なんとかなったな」

「つかれたぁ〜、甘味が呼んでるぅ〜。

ぐーたらしたい〜」

「スズお疲れ、おかげで魔石も大量に落ちたしな」


ん〜? にぃさんの動きが……?


「…………回収は任せるねぇ」

「そんぐらいは任せとけ」


地べたに座りながら魔石を回収してるにぃさんの姿を眺める。


……これはアレだねぇ。

にぃさんから聞いてたスキルの後遺症の筋肉痛。

まだ口には出してないけどキテるねぇ。


ピカッ!

「「っ⁉︎」」


にぃさんの現状分析が終わった頃に中央の地面が光った。

さっきと同じ光で今度は強制的に転移されたりすることはなかった。


にぃさんが光った部分に近づいてく。

ワタシにはよくわからないからここはにぃさんにお任せ。


「今度は自分から行けってことか?」

「にぃさぁんおぶってってぇ〜」

「……何があるかわかんないからそこは歩こうな」

「むぅ〜……」


本音も混じってるけど思ったよりにぃさんの状態は悪そうだ。

ここは素直に自分の足で歩こう。


同時に光る床に入ると光がワタシ達を包み込んだ。


光が収まり周囲を見渡すと横でもにぃさんが同じようにキョロキョロしていた。


「あれ? 同じ場所?」


部屋の大きさはさっきと一緒ぐらい。

床の光は消えてる……そんでゴーレムが殴った痕も消えてる……となると。


「一応違う場所なんじゃないかなぁ」

「そうなのか?」

「さっきのゴーレムが地面を殴った痕が無いからねぇ」

「違う場所だったとしても出口が無いな…」

「そうだねぇ」


ピカッ!

「「っ⁉︎」」


離れた所の地面が光った。


「またゴーレムか⁉︎」

「……でも今度は一つだよ?」

「俺らの他にも被害者が⁉︎」

「……それってワタシらの状況変わらなくない?」

「…………」

むしろ良くなる事は無いよぉな…。


光が収まる前に獣のような声が聞こえた。

「グルルゥ」


姿を現したのは狼の獣人だった。

控えめに言っても好意的では無さそう。


狼の獣人を観察していると獣人の足元の地面が僅かに凹んだ。


「っ⁉︎ にぃさん構えて!」

「グァッ!」


叫んだ直後、狼の獣人がにぃさんめがけて爪を振り下ろしてきた。

速い! 間に合うか⁉︎


ガキィ!

「おわっ⁉︎」


ギリギリぃ〜。

でも受け止めはしたけ、ど、コレ!

「お、も、ぃ〜!」

「すまん! 助かった!」


にぃさんが即座に『瞬閃(しゅんせん)』を放った。

「ガッ⁉︎」


重さから解放されたけどこの獣人……にぃさんの今のを避けた⁉︎


「グルルゥ……」


腕からはポタポタと血が滴っており警戒するようにこちらを見ている。

完全に避けたわけじゃないみたいだけど厄介だねぇ。


にぃさんが獣人に一歩踏み出した。


やる気なんだ……。

でもさっきのでまた動きが悪くなってるねぇ。

しょうがないかぁ、ここでにぃさんが動けなくなるのは困るしねぇ。


「にぃさん休んでていいよぉ、そろそろ限界でしょ?」

「スズ? でもアイツやばいぞ⁉︎」

「みたいだねぇ、でも切り札を切るのは今じゃ無いよ。

だから今はワタシがにぃさんを守ってあげる」


にぃさんと獣人の間に入り向かい合う。


獣人がこっちを避けるように後ろにいるにぃさんに向かおうとした。


行かせないっ!

「ガッ⁉︎」


剣気で牽制し一瞬動きが止まったところを斬る!


キィッ!

「っ⁉︎」


爪が伸びた⁉︎ しかも硬い!


「ガアッ!」


ワタシの斬り下ろしを伸びた爪で受けてそのまま弾き返してきた。

力はあっちが上だからバカ正直に付き合う気は無い。


弾かれる方向に自分から飛ぶ。

見た目は派手に飛ばされたけど体勢は崩れてない。


追撃にくる獣人をそのまま迎え撃つ。

両手を広げて交差するように振り降ろしてくる。


「ふっ!」

二の太刀、『玄鳥(つばめ)』!

キキィンッ!


獣人の両手を瞬時に弾いて無防備になった胴を三撃目で捉える!


「ガッ⁉︎」

浅いっ! あの状態で後ろに飛ばれた!

反応が速過ぎる!


でもそのまま追撃する!

一の太刀、『瞬閃』!


刀を振り抜くより一瞬手前で相手の足が地面についた。

「グルッ!」

「っ⁉︎」


踏ん張るんじゃなくて力を抜いて四つん這いになって躱された⁉︎


その後獣人の四足に力が込められるのが見えた。


そのままの体勢でこっちに⁉︎

まずっ…!


ゴッ!

「くぅっ⁉︎」


獣人の体当たりを受けてにぃさんの近くまで吹き飛ばされた。


「スズ! 大丈夫かっ⁉︎」

「だ、だいじょぶ、一応鞘で受けたから」


痛いけどっ!

三の太刀、『明月(めいげつ)(はしら)』!


ギィィンッ!

獣人の振り下ろしの追撃を身体全体を使った円状の縦の斬撃で大きく弾く。


息つく暇も与えないって事ね、そっちがその気なら!

獣人が弾かれた体勢のうちにこちらも攻勢に出る!


五の太刀、『疾風(しっぷう)光矢(こうし)』!

獣人の胴へ高速5連突き。


ギキキィンッ!

しかしもう片方の手からも爪が伸び初突きを弾いた後、両手を使って残りも全てを防がれる。


今のでもダメか、やっぱり反応が速い!

にぃさんのアレを躱しただけの事はあるけどちょっとズルい、両手だと手数が違う。


部屋の中に刀と爪が幾度もぶつかり合う音と風切り音が響く。


速さはほぼ同じ…でも力で負けてる分腕が痺れて受け流せずに吹き飛ばされる回数が増えてきた。

このまま続けるのは旗色が悪い。


守ってあげるって言った手前にぃさんに心配かけるのも悪いしねぇ。


横目でにぃさんの方を盗み見ると心配そうな表情をしている。

心配しないでいいよ、出来ない約束はしないから…。

にぃさんに一瞬だけ微笑む。


次で決める! ここらでお開きにしようか!

「グガッ⁉︎」


獣人が動きを止めて距離をとった。

流石に危機察知は鋭い、何かを感じとったみたいだねぇ。


警戒したのも束の間、今までの最大速度でこちらに接近して来た!

その意気や良し。


「ふぅ〜……」

少し長く息を吐き出す。

しかしそれも一瞬。


ザンッ!

「グゲッ⁉︎」


ワタシの刀は獣人を完全に捉えた。


「六の太刀、『虚構(きょこう)』」


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