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特訓です


長期戦って俺のスキルだと不向きだよなぁ。

この移動期間で何とか出来ないもんか。

馬車に揺られながらこれから行う事になるシャトルランに思案する。


《戦闘はスズにお任せでいいのでは?》


男としてどうなのそれ?


《正直に白状すれば楽になれますよ》


いや、何で事情聴取されてるみたいなセリフ言われてんの?


《何となくです。

ですが知ってもらえてればどうにかなる事もあると思いますよ》


スキルのおかげなのはその後の後遺症も含めて既に知られてるからなぁ。

それは道中で話しておいて損は無いか。


でも一人の時に困るこの問題はなんとかしなきゃな。

現状は強さより持久力か……。


使用時間を伸ばすのは無理。

使い過ぎても動けなくなる。

となると節約するしか無いわけだが……節約と言ってもねぇ……。


《マスターの基礎能力を上げると言う選択肢もありますよ》


10日でそんな上がんないよ!


《言ってみただけです。

ですが後遺症は過度の肉体行使による筋肉痛ですので節約するより使い込んだ方が慣れてきますよ》


多少筋肉痛になるぐらいがちょうどいいって事?


《そうです。

普通に鍛錬するより短時間で済みますよ。

今なら3乗で完全燃焼すればちょっと動けないぐらいだと思います》


ちょっとじゃないよ!

その前に燃え尽きちゃってるじゃん!


《魔力が空になるので別の意味で動けなくなりますけどね》


そんな危ない事はしたくない!

何かあった時に困るから保険は残しておきたい!


《であれば4乗で2秒もすれば十分でしょう》


いっ⁉︎ マジ⁉︎

4乗ってそんなキツかったのっ⁉︎


《2秒を全力で使えば、ですが、

レベルの125倍の出力を出してるわけですから当然の結果ですね。

でも全身運動を2秒で終わらせれると考えれば悪くないでしょう?》


日夜何時間も鍛錬を積んでる人からすればチートもいいとこだな。

よし、筋肉痛に関してはそれで行こう。


ただ今回の対策がなぁ。

すぐに解決出来るわけもなく初日は鍛錬をして終わりを迎えた。


「か、身体中がいってぇ…」

「にぃさん、急に動き出したと思ったらどうしたの?」

「ちょっと鍛錬をな…」

「ふ〜ん?」


ミクさんや、2秒って言うのはちょっとキツかったんじゃないですか?


《1秒にした方が良かったかもしれませんね》


翌日からは1秒で慣らしていく事にした。

そして対策が閃かないまま3日が過ぎた。


考えども今の所コレと言った解決策が思いつかない。

後1週間か……。


「また来ましたぜ! 頼みますよ!」

馬車の業者からそんな声で思考の海から戻された。


「にぃさんがんばれ〜」

スズは完全に観戦モードだ。

言い出しっぺは俺なのでしょうがない。

『夢現』を使って鍛錬した翌日スズから言われたのだ。


「一人でしてもしょうがないから道中の魔物を相手にしたら?

そしたらワタシも楽出来て一石二鳥ぅ」


後半が本音なんだろうけど一理ある。

確かに相手がいる方がずっといいのは間違いない。

というわけで『護身用具』を解除したら普通にエンカウントし出したのだ。

解除した日は1件だけだったが、翌日には2件、そして今日も1発目が来た所だ。


本来は遭遇するのが普通という話だったし、今は最悪スズがいるからどうとでもなる。

今まで外に出たら常に『護身用具』を発動させていた為、移動で魔物に襲われた事が無いが、これが普通なんだろう。


昨日までは食用?と化しているブルバウやトトロンといった魔物だったが今日はやや毛色が違った。

灰色の体躯をした狼、それも団体様だ。


初対面の相手だが馬車の業者の態度を見るに討伐してしまってもいいみたいだが、見た所20匹ぐらいか…。


結構なスピードで向かって来てるな。

打って出るか、今日はまだ一回目だから抑えといた方がいいか…、ミク3乗。

《了解です》


光が全身を包み込んでいくと同時に狼の群に突っ込んで行く。


「ガアッ!」

狼の先頭がこっちの動きに反応して噛みついて来た。


うおっ⁉︎ マジか⁉︎

3乗の動きに反応して来た⁉︎


咄嗟に噛みつきを躱し狼の胴を斬りつける。


「「「ガアッ!」」」

息つく暇もなく5匹の狼がこちらに向かって飛びかかって来た。


しかし! せっかくの反応も宙に浮いたら台無し。

反応とスピードは中々だがこの程度なら問題無い!


狼の着地地点から僅かに移動し、着地寸前の所を5匹まとめて一閃!


「ギャウッ⁉︎」

断末魔を残して狼達が沈黙する。


よし次!

と思って振り返ると残りの狼達が俺を避けるように左右に分かれた。

そして俺を完全に無視して後ろ…、馬車の方へ走って行く。


「おいっ⁉︎ 潔過ぎだろっ⁉︎」

俺は左右に分かれた片方に向かって追撃をかける。


「スズ! 反対側任せる!」

向かって来るならなんとか出来るが、逃げる相手だと間に合わない!


「しょうがないなぁ」

スズはやれやれと言った様子で迫る狼達に向き合う。

そして一瞬大気が震えた。


「ガッ⁉︎ ウガァ!」

「んん?」


狼達は一瞬躊躇うような反応を見せたが、構わず走り続けた。


それを見てスズが一瞬怪訝な顔を見せて狼達に向かって歩を進める。

狼達が飛びかかる距離に迫った時スズがその場から消えた。


チン。

そして刀を鞘に納める音が鳴った。


「ギャウッ⁉︎」

続いて狼達がスズのいた場所に到達した瞬間一斉に悲鳴を上げて倒れた。


3乗ぐらいの動きなら見えるはずなんだけど……、消えたように見えるって事はそれ以上って事か…。

ほんと頼もしい事で。


俺の方も逃げる狼を仕留めて馬車の方へ戻って行き馬車の業者へ声をかけた。


「じゃ行きましょうか」

「あれ? そのまま置いて行くんですか?」

「え? アイツら食えるの?」

「あ、いえ、そうじゃなくてアイツらファングって言う魔物で牙が丈夫でいい素材なんですよ」

「そうなんだ」


そう言われると勿体無いから持って行こう。

幸い行商と違って馬車には空きがあるから持ち運びする必要がない。


牙を回収し終わって再度旅路を進めるが、程なくしてまたファングが集団でやって来た。

今度もさっきと同じぐらいの数だ。


「ファングがこの頻度で現れるのは珍しいですね」

「そうなんですか?」

「ええ、普段はこんな何も無い所には現れないんですが…」


そんな話をしているとまた大気が震える感覚を覚えた。

「ガッ⁉︎ ウガァ!」


狼達は先程と同様一瞬躊躇うような反応を見せたが、構わず走り続けて来た。


「んん?」

スズがそれを見て首を傾げている。


「スズ! また広がったから首傾げてないで半分迎え打って!」

「はぁ〜い」


スズの緩い返事を聞いて左右からそれぞれ討伐にかかる。

特に苦戦する事なく倒しきった。

そして戦闘後はまたしても剥ぎ取りタイムに突入。


牙を集めながらスズに聞いてみた。

「さっき何で首傾げてたの?」

「んん? ワタシの剣気に怯んでる割には構わずに突っ込んで来たなぁ〜と思って」


剣気って確か格下とかなら触れずに倒すっていうアレだよな?


「でも効いてたんでしょ? じゃあコイツらが手強いって事だったんじゃないの?」

「ん〜、このぐらいなら倒すのは無理でも動きを止めるか避けさせるぐらいにはなると思うんだよねぇ」

「そうなのか?」


俺は意図的に使えないからそこら辺の匙加減はよく分からない。


「もう倒しちゃったし気にしてもしょうがないけどねぇ」

「まぁそれもそうだな」


その後は狼達どころか魔物自体にエンカウントする事は無かった。

まぁ既に2回出会ってるしな。

そんな高頻度で襲われたら一般人はたまったもんじゃない。


それよりどうしよ。

これと言って対策が思いつかん。

節約考えながらだと今回みたいにスズに頼む事になるし、全開で行くと魔力不足。

分かってた事だけどどうにかならないもんか。


そしてさらに3日後。


「順調…だな」

「平和だねぇ」


その言葉通り、狼達の襲来以降魔物と遭遇しなくなったのだ。

平和なのはいい事だけど今回は鍛錬を兼ねての実践のつもりだったからこれはこれで困る。

お陰で身体を痛めつけるだけの日々を送っている。


未だにノーヒント。

リーガルまで後3日しか残されていない。

実践繰り返せば何か思い付く可能性もあったのに相手もいないんじゃ望み薄……。

試そうにも魔力は有限だし。


《試すだけなら出来ますよ?》

え? どう言う事?


《4乗を制限無しで試すだけなら夢ですれば起きるまで使い放題ですよ》

携帯のセールストークみたいな響きだが、それは大変助かる朗報だ。

これはやらない手はない。


と言う事で。

夜になり早速お試しを実行。

一応スズと交代で見張りをしてるのでその間だけではあるが。


最初は真っ白で何も無い景色が広がっていたが、ミクの計らいで今は王都フリードの街並みが再現されている。

踏破済みの場所なら再現可能と言う事だった。


何故にそんな事をしたかと言うと周りが真っ白だと距離感とか全然分かんなかったからだ。


相手でもいればそんな事はないのかもしれないけど一人だとねぇ…。


《相手もご用意出来ますよ》

なぬ? それって……。


言い終わらないうちに眼前に複数の光が立ち上がった。

それも複数。


光は徐々に輪郭を経て収まっていく。


あの……ミクさん、とても見覚えのある方々なんですが?

《そうですね、出会った事の無い相手は再現出来ないので当然ですね》


そこには夢の中で出会った青い体躯をしたジェネラルオークが視界一杯にいた。

そしてその後ろにいるオークに似つかわしく無い細身で紫の体躯。

つい先日大変お世話になったお方……オークキングがいた。


いや確かに4乗の相手になるって言えば合ってるんだろうけど、その前にいる軍勢は何?


《王は将軍を従えるものでしょう?》

サービス精神旺盛な事で、んじゃせっかく用意してくれたんだしやりますか。


俺は眼前に群れるジェネラルに突っ込んで行き即座に斬り捨てる。

斬り捨てられたジェネラルが爆散して霧になる。

しかしそこは夢の中。

周りにいたジェネラルは気にした様子もなくこちらに襲いかかって来る。


周りが一斉に棍棒を振り上げた瞬間に上空へ離脱!

ジェネラル渾身の振り下ろしは地面を叩きつけるたけに終わった。


「おわっ⁉︎」

余裕かましてた俺は突然吹っ飛ばされた。


「いっ……たくないな?」

《マスターの夢の中ですので》


あ、そうか。

今までの夢が痛みありだったからつい。


吹っ飛ばされた位置を見るとそこにはジェネラルに混じってキングがいた。

おそらくアイツに吹っ飛ばされたんだろう。

相変わらずオークに似つかわしく無い外見と動きだな。


しかもキングならもっと静観してろよ!

いきなり出て来るってなんだよ!


《マスター、一つだけご注意が》

ん? 何?


《ここでは痛みはありませんが、死ぬほどの衝撃を受ければ夢から覚めますのであしからず》

そうなの?


《はい、その場合再度夢の中に入れるのは1日経ってからになります》

えっ⁉︎


《ですので気をつけて下さいね》

ミクさん! それならもうちょっとイージーな内容にして頂けると助かるんですが!


《死ぬ心配は無いので遠慮なくさせて頂きます》

鬼!


その後ミクによるスパルタ特訓が続いた。


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