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初依頼と……


「……にぃさん、薬草に詳しかったりするの?」

「いや全然」

「……なのにコレ?」


俺とスズの2人は今王都から歩いて半日もしない場所にある森の中にいた。

森と言っても迷いの森に比べると比にならないぐらい小さい。


2人の背にはパンパンに膨らんだリュックとプラスα。

そして目の前には採集対象の群生があった。


森に入った当初はリストと見比べてポツポツと集めていたのだが、3種類の素材を見つけた後は円滑だった。


理由は簡単、マップの踏破が完了したからだ。

(ただ残念ながら名も無き森の為、ミクのレベルは上がらなかったが)


そして実物の素材を見た事で、マップに点在する場所が明らかになったのだ。

そこからはご覧の通り群生に次ぐ群生で今の状況に至るというわけだ。


「これ以上はもう持てないし帰るか」

「ちょっと荷物軽くしてもいい?」

「ん?」


スズがリュックの口に刺して物干し竿のようになっている先を指差す。


そこには鳥…にしてはやや手足が発達したような生き物が手足を縛られて逆さ吊りになっていた。

それも左右に三匹ずつ、そして俺のリュックも同様で計12匹。

討伐対象のラビットバードだ。


これも一匹見つけた後はミクのナビで場所が分かったんだよねぇ。

ちなみにスズにこの先にいるって伝えたら即座に捕獲して来たから俺は道案内ぐらいしかしてない。


「せっかく捕まえたのに置いて行くのはもったいないなぁ」

何よりコイツ美味いしな。


「そんな事しないよぉ、お昼食べて無いからこれを、ね」

「あ、そうなの? でも俺料理出来ないよ?」

「それぐらいワタシがやるよ?」

「え? こんな外で出来んの?」

「大丈夫ぅ〜」


そう言ってスズは近くの木に近づいて刀を振るった。

そしてそのまま手を木に当てて押した。

木はスズの胸の位置辺りから上が音を響かせて倒れた。


「ちょっと⁉︎ いきなり何してんの⁉︎」

突如自然破壊をしたスズに詰め寄る。


「ん? まな板と串を作るんだよ?」

そう言いながら残った木の下の部分に向けて刀を振るった。


そしてものの数分で外側の木が丸裸にされ綺麗なまな板と串が出来上がっていた。


…………何だこの職人技は?


「血抜き血抜きっと」


簡単そうに言いながら小刀を取り出して手際よく二羽のラビットバードの血抜きをしていく。


「薪を作らなきゃ」

思い出したように倒れた木に向かって刀を振るう。


「にぃさんコレで火を起こしててねぇ」

手で持てるサイズにカットされた木を指して言ってくる。


「一口サイズに切ってと」

血抜きの終わったラビットバードをカットしていき、串に刺してまな板にどんどん置いて行く。


「で〜きた、さぁ焼こう焼こ〜」

俺が起こした火の周りに串を刺して行く。


「あ、そだ」

何かを思い出したのかスズが倒れた木の方に向かって行って刀を再度振るった。

膝より少し低いぐらいの木を2つ転がして来た。


「はい、イス代わり」

「あ、ああ、ありがと」


少しすると香ばしい匂いが漂い始めて見た目も充分いい感じになってきた。


「さ、食べよ食べよぉ」


言いながらスズが串を手に取り少し冷まして頬張る。

「おいひぃ〜」


……サバイバル力高ぇなぁ。


「どしたのにぃさん? 食べないの?」

「食べるけど、凄えなぁと思って」

「ただの串焼きだよ?」

「そうなんだけど…」


結果はそうなんだが過程がなぁ。

「んん?」

「いや、何でも無い、やっぱ美味いなコレ」

「だねぇ」


スズは不思議そうにしていたが言っても伝わりそうになさそうだったので何でも無い事にした。


そして夕方になる頃に冒険者ギルドに戻って来た。


「あ〜、この時間だとこうなるのか」


ギルドには人集りが出来ていた。

朝受注した依頼を終えて戻って来た冒険者達ってところか。


「しょうがないから気長に待つかぁ」

「ワタシはここで待ってるねぇ」

スズが近くにあったイスに腰掛けて手を振っている。


「並ぶの俺かぁ…んじゃ荷物置いてくから見てて」

「はぁい」

列の最後尾に並び受付を見ると、受付嬢が一人で対応している。


ホントに人がいないんだなぁ、可哀想に。

そんな感想を抱いていると声をかけられた。


「見ない顔だな?」

「え? ああ、今日から冒険者としてやってく事になりました」

「今日から? ……そうか」


それだけ言うと男は周りと何かを話し出した。

会話内容は聞こえなかったが…。


う〜ん、この感じはテンプレ的な絡みがありそうだなぁ。

その証拠にイスに座っているスズの方にも視線が向かっている。


スズがいるから問題は無いだろうけど、むしろやり過ぎにならないかどうかの心配をするべきか。


テンプレで来るならこちらもテンプレで返す。

相手には悪いがこれを教訓としてもらうのも必要だろう。


その後は何も行動を起こしてくる事も無く順番が回って来た。

これは初任務達成の報酬を奪って行くパターンかな?


「あ、悠生さんおかえりなさい。

どうでしたか?」

「いくつか見つける事が出来ましたよ。

量が分からなかったんで持てるだけ持って来たんですけど」

「なるほど、では見せてもらえますか?」

「じゃあ持って来ますね」


俺はスズと一緒に受付までリュックを持って来た。

「えっと…あの、まさかコレ全部⁉︎」

「そうですけど?」

「薬草だけじゃなくてラビットバードまで……」


………? 受付嬢の反応がおかしいな?

薬草は摂り過ぎた感のある反応っぽいんだが、ラビットバードはそんな驚くトコじゃ無いはずなんだが?

スズと顔を見合わせるがスズもよく分かってないみたいだ。


「あの…ラビットバードってランクFですよね?」

「確かにFで間違い無いんですけどそれは1体を仕留める場合なんですよ」

「「?」」


どういう事だろう?

集団になると厄介な奴だったのか?


「えっと、ラビットバードというのは臆病な魔物で基本単独で行動してるんですよ。

ですから同種の仲間だったとしても群れる事がありません。

討伐対象なのでむしろ同類を避ける傾向すらあります。

ですからお二人みたいに複数を捕獲している時点で姿を現さないはずなんです。

もし見つかったとしても即座に逃げ出すので捕獲が容易では無いんですよ」

「そう言われれば逃げ出そうとしてたかなぁ?」


捕まえたのは俺じゃないしな。

スズがそんな事を言っているので多分その通りなんだろう。


「ラビットバードは逃げ足だけならランクCに相当するんですけど、スズさんなら納得ですね。

その上採集も出来るなんて凄いです!

これなら上位ランクもすぐですね!」


受付嬢がやや興奮気味褒めている。


「見つけたのは全部にぃさんだけどねぇ」

「え?」

「たまたまですよ」

「いやいや⁉︎ 偶然で見つかるとは思えないんですけど⁉︎」

「運が良かったんじゃないですか?」

「そんなはずは……」

「それよりコレは依頼達成でいいですか?」

「あ、そうですね! これだけあれば充分です。

では査定に入りますので少々お待ち下さいね」


そう言って受付嬢は重そうにリュックを持って奥に引っ込んで行った。


「お待たせしました。

こちら今回の報酬で全部で金貨6枚になりますね」


おお! 大した苦労してないのに結構貰えるなぁ。

折半だとして金貨3枚、日当3万円なら中々いいんじゃないか?

この分なら借金返済もすぐだな。


スズに取り分を渡して冒険者ギルドを後にする。

どっかで食べて帰ろうとかと考えたところで声がかかった。


「お二人さんちょっと面貸しな」


そこにはギルドで順番待ちをしていた時に声をかけてきた男がいた。


ここで来るのか。

周りに話しかけていたわりには1人なんだな。

よほど自信があるのか、はたまた新人と侮っているのか。


男は横の建物を指差している。

通りで騒ぎは起こさないって事か、建物の中じゃ何人いるかも分からないな。

《あの場にいた30人ほどはいるようですよ。

後、後ろに3人控えてますよ》


ミクさん流石ですね。

待ち伏せお構いなしだね。

1人で誘導するつもりも無かったか。


俺はスズに小声で聞いてみる。

「もしかしたら30人ぐらい相手にするかもしれないけど大丈夫?」

「ん〜、相手にするだけならまぁ。

にぃさんも自衛はしてね」

「了解」


俺達は素直に男の言う事に従った。

背後からはミクの言う通り3人が姿を現してついて来ている。


建物に入るとミクの言う通りの人数ぐらいがイスに腰掛けていた。


「おっ、来たな!」

1人の男が声を上げて立ち上がる。


「よぉし! 準備はいいか⁉︎」

「「おおっ!」」

男の声にイスに座っていた奴らが一斉に立ち上がった。


一斉に来る気か⁉︎

俺は咄嗟に身構えるが予想外の事が起こった。


「新しい仲間に乾杯っ!!」

「「「乾杯っ!!」」」

机の上に置いてあった琥珀色のジョッキを手に取って高らかに掲げて揃った声を上げた。


「え? え?」

「はい、どうぞ」

俺が呆気に取られていると横から周りが掲げている物と同じジョッキが差し出された。


「受付嬢のおねぇさん? これは一体?」

「驚きましたか? ギルドは同支部所属の仲間意識が強いんですよ」

「そう言うこった! 今日は俺らの奢りだ!

頑張れよ!」


想像していたテンプレと違い聞いてもしばらく呆気に取られたまんまだった俺を他所に周りが盛り上がっていった。


「おっ! ねぇちゃん行ける口だな!」

「ふぃ〜、動いた後の一杯は美味しいねぇ」

「わかってるねぇ!」


スズは既に溶け込んでいるようだが。

「えっと、コレって酒だよね?

スズ飲んでいいの? てか飲めるの?」

「んん? エールにそんな制限ないよぉ?

そもそもお酒に分類されてないしねぇ」

「エールって言うのかコレ」


異世界定番の名前だな。

最初に辿り着いた村人が絶賛してたやつだよな。

こんな流れで飲む機会が訪れるとは思ってなかったが、せっかく奢りって言うんだから飲まなきゃな失礼だしな。

そう思い一口飲んでみる。


「っ⁉︎ これはまた染みる!」

「おっ! にいちゃんも行ける口だな!

よし! ドンドン飲め!」

「いただきます!」


俺は久々の味を楽しみながらジョッキを空けた。


「では皆さん、そんな新人さんが仕入れたラビットバードの唐揚げですよ〜」

受付嬢がそんな事を言って皿を運んできた。


「おっ! こんなに⁉︎

新人にしちゃやるじゃねぇか!」

「何言ってんだよ、お前じゃいっぺんに捕まえらんねぇだろ」

「すぐ逃げ出すから無駄な労力を使わねぇだけだよ!」

「言うのは自由だよなぁ」


その後もわいわい騒ぎながら飲み食いしていると異変が起こった。

主に俺の中で。


《ますた〜、わらしをのけものにしてたのしんでますね〜?》

え? ミク?


《はぁい、あなたのミクたんですよぉ〜》

え? え?


「おい、にぃちゃんもっと飲んでこーぜぇ〜?」

俺が思わぬ出来事に固まっていると泥酔した男がジョッキを勧めて来た。


《むぅ〜、わらしのますた〜になれなれしいですねぇ〜、このめぎつねめ!》

いやいや! どう見ても男だろ!

ミク何言ってんの⁉︎


《そんなやからはこうれす! 『ごしんようぐ』はつろう!》

ちょい待てぇっ⁉︎

無断でスキル使うなよっ!!


「うおっ⁉︎ 何か寒気がして来たな。

ちょっと飲み過ぎたか? ちょっと用を足してくるか」

………俺のスキルのせいですまん。


「……にぃさんどしたの?」

「いや俺にも分からん」

分からんがこの現象はまさかミクが酔っ払ってんのか⁉︎

むしろそうとしか考えられん!


《むむ? こんろはてごわそうなあいてですね〜。

しょうがらいですね『ゆめうつつ』4じょうはつろう!》

何ぃぃぃぃっ!!!?


ミクの言葉の後に俺の体が光に包まれる。

そしてスズ以外の全員が意識を失った。


《どうら〜まいったかぁ〜、ますた〜はわたしのものだぁ〜……zzz……》


え⁉︎ ミク?

《……zzz》


呼びかけても反応が無い。

まさか寝たのっ⁉︎


「にぃさん何事?」

「分からん……分からんがスキルが酔っ払って嫉妬したのかもしれん」

「……何それ?」

「少なくとも酒は危険だと言う事が分かった」

「制御が効かなくなるって事?

にぃさん突然暴れたりするのはやめてね?」

「物理的に何かする事は無い……と思う」


正直分からんが、俺がイメージしなければ多分大丈夫…だろう。

『護身用具』といい『夢現』は余波みたいなもんがあるからな。

物理的にどうにか出来ないからその辺りをチョイスしたミクのスペックも困ったもんだが。


「これどうしよ?」

「起きるまで待つしかないんじゃない?」


スズは結構飲んでたみたいだったのに俺の魔力にいち早く反応して即座に距離をとっていた。


酒は飲んでも呑まれるなってよく言ったもんだな。


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