ここでテンプレ
試験を終えた後、俺、スズ、ムジカの3人は冒険者ギルドにやって来た。
「あ、ムジカさんお帰りなさい。
試験はどうでしたか?」
受付嬢が俺達3人を見て声をかけて来る。
「おう、問題ないぜ。
ただ一人増えちまったがな」
「増えた?」
「こっちのねぇちゃんも試験合格って事だ」
「よろしくぅ〜」
「え? え?」
受付嬢が目を白黒させてスズを見ている。
見た目と言葉だけだとやっぱそうなるよなぁ。
「このねぇちゃん俺より強いぞ」
「え? ええーっ⁉︎ ムジカさんよりっ⁉︎」
「そう言う事だから後は宜しくな。
おっと、にいちゃん登録終わったらうちに来な。
剣を折っちまったからにいちゃんに合ったやつを用意しとくからよ」
そう言ってムジカは店に戻って行った。
「………ムジカさんってBランク冒険者なのにそれより強いって……」
受付嬢がぶつぶつと独り言を言っている。
ランクかぁ…やっぱそういうのあるんだ。
とりあえず戻って来てもらわないと話が進まないな。
「すみませ〜ん、ランクって何ですか?」
「え? すみません! えっとランクですね。
ランクというのは冒険者としての実力を示唆するものになります。
全部で7段階あってFから始まり、
E、D、C、B、A、Sの順に高ランクになります。
ですのでお二人はFランクからのスタートです」
Fから? 実力があるからと言ってそこは飛び級とか無いんだ。
「ランクが上がっていい事ってあるんですか?」
「受注出来るクエストの種類が増えてその分報酬も良くなります。
またBランク以降は斡旋制度もあります」
意味は分かるが聞き慣れないワードだな?
「斡旋制度って何ですか?」
「本人が指定するクエストを優先的に依頼する制度ですね。
例えば討伐依頼限定や採集依頼限定とかですね。
ムジカさんは素材入手優先でやってますよ」
なるほど、探さなくても向こうから来るから店との両立が出来るわけか。
取り合いにならないのは助かるな。
それに稼ぎがよくなるのは悪く無い。
俺のスキルには金はいくらあっても困らないからな。
《旅行に出費は付き物ですからね》
今の所旅行という使い方は一切した覚えが無いんだが……、まぁそれは追い追いか。
「ランクCからは強襲クエストの参加権利が発生します」
「強襲クエスト?」
「『津波』、魔物の大量発生の対応等の事です。
こちらは参加するだけで報酬が支払われます。
ただしランクB以上の方は義務として参加がもとめられます。
まぁ遠方にいて間に合わないというのは対象外ですが」
スタンピードってやつか……こういう世界での定番とも言えるな。
「これは本当に緊急なのでランクが低くてもBランク以上の実力ありと認められれば参加して頂く場合がありますね。
ただランク以上の実力を持っている方は滅多にいませんが」
あれ? そうなるとスズって参加依頼が来るんじゃ?
「……あ、今回そちらの女性のような場合はランクDもあればお願いするかもしれません。
なんと言ってもムジカさんよりお強いと言われていますから」
受付嬢もスズの存在を思い出したようだ。
でもそこはDからなんだな。
「参加報酬だけじゃないなら構わないかなぁ」
「もちろん貢献度によって追加報酬が支払われます」
「それならいいかなぁ」
軽いノリだなぁ、まぁスズなら問題無いんだろうけど。
俺のスキルを考えるとちょっと困るやつだな。
ランクはC辺りで止めるのが無難だな。
「ランクはどうやったら上がるんですか?」
「ランクによって違いますが、FからEへの昇格条件は指定討伐対象1件を含むギルドクエストを5件達成する事です。
指定討伐対象はギルド認定ランクF以上の魔物になります」
そう言って受付嬢が右側の方に手を伸ばした。
「あちらの掲示板にランクごとの魔物の一覧がありますのでご確認下さいね」
「ちょっと見て来ても?」
「いいですよ」
「じゃあ失礼して」
そう言って掲示板を見に行く。
これまで出会った魔物で言うなら……。
ランクF、ラビットバード
『繁殖力旺盛、食用につき歓迎』のコメントが添えられている。
あれ美味いもんな。
次は…。
ランクE、トレンダー、トトロン
ランクD、アーミーアント
『集団はランクCに相当、討伐時にはご注意下さい』の注意書き。
素の状態ならだいたいこの辺りって事か。
ランクC、アシッドスライム、トレンニー
トレンニーがランクC⁉︎ トレンダーより2段階格上ってマジか⁉︎
同じ種類なのに可哀想に……そりゃああーなるか。
ランクB、オーク、黒狼
……何気に高ランクだったんだな。
ランクA、ジェネラルオーク
ランクS、オークキング
……最後の二つは……もう言う事ないな。
これはバレてはいけない。
「にぃさんSランクじゃん」
「静かにっ!」
「どうかしましたか?」
「いえ! 何でも無いです!」
「そうですか?」
危ねぇ! 速攻でバレそうになってしまった。
「ではこれからお二人の職業確認をさせてもらいますのでこちらにお願いします」
そう言って受付嬢の案内で別室に向かった。
部屋の中には見た事あるような水晶が中央のテーブルに置かれていた。
確か最初に触れただけで職業が分かるやつ……だったよな。
「ではこちらの水晶に触れて下さい」
言われるまま俺は水晶に触れる。
すると水晶から光が溢れ出した。
2度目なので驚きは無い。
溢れた光は水晶の手前においてあったカードのようなものに吸い込まれていった。
前回は紙だったな。
「はい、これで完了です。
えっと職業は……え? 『旅人』…? え?」
受付嬢が二度見、三度見をしている。
「え? これって職業ですか? これでムジカさんの試験を?」
ギルド職員からも疑問の声を頂きました。
「それで合ってますけど、何か問題ありますか?」
「へ? あ、いえ、試験を合格してるので問題はありません。
ただ見た事の無い職業でしたので……で、ではそちらの方もお願いします」
そう言って水晶の前に新しいカードをセットした。
「はぁい」
スズも俺同様水晶に触れると光が溢れてカードに吸い込まれる。
「はい確かに、えっと職業は……え゛⁉︎」
あれ? スズの方も何か出たのか?
受付嬢が固まってるんだが?
「……スズの職業って何?」
「何だろうねぇ?」
「あ、知らないんだ」
「調べた事無いからねぇ」
「そうなの?」
「ワタシの所では職業は目指すモノだったからねぇ、まぁ継ぐ場合もあるけど」
「へぇ〜」
そんなやり取りをしていると受付嬢が硬直から復帰した。
「す、すみません! ちょっと確認してきますから待ってて下さいね! 絶対ですよ⁉︎」
受付嬢が念押しして飛び出して行った。
スズの職業は一体何だったんだろうか?
少しして受付嬢ともう1人、眼帯をした40代ぐらいの男と一緒に戻って来た。
ビリッ! リッ!
「っ⁉︎」
男が入って来た瞬間大気が震えた、直後にもう一度震えが起きた感覚がした。
「そっちのねぇちゃんがそうか」
「…随分なご挨拶だねぇ」
「え? あっ! クラウドさんっ!
そういうのはこっちでは控えて下さいっ!」
クラウドと呼ばれた男とスズの会話を聞いた受付嬢がクラウドに詰め寄る。
「これが1番早いんだからいいだろ」
「だからといって出会い頭にやるのは止めて下さいっ! それのせいでせっかく戻って来てくれた職員がまたいなくなってるんですから!」
「事務ならともかくこの程度でいなくなる奴なんて実務では役に立たんだろ?」
「そう言う以前の問題です!
今は人が足りてないんですから!」
…さっきの大気が震えるような感覚はもしかしてこのおっさんがやったのか?
受付嬢可哀想に…南無。
「自己紹介が遅れたな、つい最近ここのギルド長になったクラウド・バッカスだ。
さっきはすまねぇな、ちょっと確認させてもらった。
まさか俺の圧を打ち消して来るとは思わなかったがな」
「そりゃあ防ぐでしょ」
2回震えたような感覚がしたのは気のせいじゃなかったのか。
スズが当たり前のように言ってるけど、どっちも普通しないからね?
改めておっさんを見るが……ギルド長か、確かに貫禄あるなぁ……でも。
「つい最近って?」
「ああ、前任がもう年で随分前からこっちに配属予定だったんだが、王都に入れなくてな。
やっと王都が開放されたからだいぶ遅れはしたが正式に着任したってわけだ」
そっか、監獄状態だったからな。
魔族からすれば明らかに面倒そうな輩に王都に入られても困るからってとこか。
いたら速攻で城に特攻かけてそうだ。
「それで?」
スズが咎めるような視線を放ちながら促す。
「悪かったよ。
あんまりにも珍しい職だったからな。
壊れたかと思ったんだがどうやら本物みたいだな」
「う〜ん、今回は許してあげる」
スズがだいぶ上からだが、まぁ向こうが先に手?を出して来たわけだしな。
「ありがとよ。
ねぇちゃんまだ若いのに進化職とは恐れ入るぜ」
「進化職?」
何だそれ?
「あ、進化職というのはそのままの意味です。
職業は練度が上がると進化する事があるんです」
「そういうこった。
で、ねぇちゃんの職業は『剣豪』、戦士からの進化職だな」
へぇ〜、やっぱスズって凄いんだなぁ。
「こっちじゃ珍しい職業だが、なんて言ったか……」
「クラウドさん、『侍』からの進化職ですよ」
「おお、そうだそれだ」
ん? 『侍』からの進化職?
さっき戦士って言ってなかったか?
俺が首を捻っていると回答が返って来た。
「進化するのは一本とは限らねぇ。
戦士からは『狂戦士』や『聖騎士』にも進化するんだよ。
『侍』もその一つだ。
そんで『剣豪』つーのはそのさらに先、2段階目の進化で最上級職に相当する」
「はい?」
「しかも練度が上がっての職だからな。
普通の最上級職を凌ぐだろう……単純な戦闘だけで言えばランクAは固いな」
「なんか凄そうだねぇ」
本人は相変わらず緩いままでどこか他人事だ。
凄ぇのランク一段上だったよ!
ここでそのテンプレ持ってくるか⁉︎
しかも俺じゃねぇし!
《『旅人』ですから》
分かってるけど知り合いから出るとなんか悔しい!




