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試験です


簡素なベットがいくつかある部屋。


「…………」

「…ん………」


「………………」

「………んん…」


そこに男女が2人。


女性は異国の服に身を包んでいる事もあるがスタイルはよく、顔はやや童顔。

街を歩けば十中八九は振り返るほどの美女である。


只今お取り込み中……………という訳では無かった。


男は放心状態、女はそんな男を見ながら飴を頬張っていたからだ。


コンコン。

そんな状況の中扉をノックする音が聞こえた。

「ふぁ〜い」


棒付き飴を頬張っていた美女、スズが扉を開けた。

そこには城の兵士が立っており手に持っていたモノを差し出して来た。


「こちら悠生殿への手紙になります」

「どうもぉ」

「では確かに渡しましたよ」


手紙を見ると冒険者ギルドという文字が入っている。

という事は試験の日取りが決まったのだろう。


「にぃさ〜ん、ギルドから手紙届いたよぉ」

「ああ…」

放心状態の男、悠生に向かってスズが手紙を差し出すが手紙を受け取る素振りがない。


手を目の前で振って見るが反応は無い。

「にぃさんそんな調子で大丈夫ぅ?」

「ああ……」


「……飴食べる?」

「ああ…………うごっ⁉︎」

唐突に苦悶の声が上がった。


スズが先程まで食べていた飴を悠生の口に無理矢理突っ込んだのだ。


「ちょっ! 何すんの⁉︎」

「あ、戻って来た」

「どこにも行ってねぇよ!」

《実際そんな感じでしたよ》

ミクまで……。


どっちかって言うと余韻に浸ってただけなんだけどなぁ。

昨日アリシアさんから改めてお礼を言われた事が理由だった。


旦那の悪ノリで一対多数の訓練になったところへアリシアさんが現れたのだ。

せっかくアリシアさんが止めてくれたというのに旦那は構わず続行。

幸いエンドレスに続く事は無く終わってくれた。(終わらなければまた寝たきりになってしまうが)


で、その後にアリシアさんから改まってお礼を言われたのだがそこで俺は宇宙を見たのだ!

《何言ってるんですか?》


いや、銀河でしょ⁉︎ 奇跡だよ⁉︎

《もう滅茶苦茶ですね》


アリシアさんから見た事無いぐらいの笑顔を向けられたんだよ⁉︎

そりゃあ余韻に浸るでしょ⁉︎


と、いうのがさっきまでの状態というわけだ。


「それよりほらコレ、ギルドから手紙来てるよぉ」

「おっ、ついに来たか」

「さっき言ったんだけどねぇ」

そう言いながら棒付き飴を持った手で手紙を受け取るが、同時に飴を奪われた。


「はむ」

「あ」

奪った飴をスズが頬張った。

え⁉︎ そう言うもんなの⁉︎


「んん?」

「い、いや、何でも無い」

あれ⁉︎ 俺の方がおかしいのか⁉︎

異世界だから文化の違いか⁉︎


そう言えばあれって元々スズが食べてなかったっけ⁉︎

いかんいかん! 子供じゃないんだ落ち着け俺!

そうさこっちでは普通なんだ慌てるな!


「読まないの?」

「いや、読むぞ! 今読む! すぐに読む!」

「んん?」

気持ちを切り替える為急いで手紙を開けて読む。


この度は登録試験への受講誠に有難うございます。

試験官が決まりましたので明日ギルドまでお越し下さい。

なお、試験による被害は当方では一切の責任を負いかねます。

予めご了承下さいませ。


…………。

「どしたの?」

「いや、最後に不吉な文面が」

スズが手紙を覗き込んで来る。


近いっ⁉︎ スズさん! 近いですっ!

さっきの件で妙に意識してしまう!


「怪我しても自己責任って事じゃないの?」

「そんなに激しいもんなのか?」

「さぁ? ギルドで聞いてみたら分かるんじゃないかなぁ?」

「それもそうか」


考えても分かるはずもなく翌日ギルドに向かって早速聞いた。


「ああ、それは試験官によりますね。

自信過剰な人は後先考えずに突き進みますから、そういった事にならないように最初に厳しさを教える為に無茶する人もいますからね。

いわゆる洗礼というものですね」


受付嬢の話を聞いて安心した。

どう考えても俺はそういう人種では無い。

むしろ危うきには近づかずのスタイルだ。


「よぉにいちゃん、また会ったな」

「え?」

聞き覚えのある声が聞こえて来た。


「あ、ムジカさん。

今回は引き受けてくれてありがとうございます。

こちらの方とはお知り合いみたいですね」

「客として、だけどな」

そこに現れたのは俺のよく知っている武器屋のムジカだった。


「引き受けたって……もしかして試験官ってムジカ? なんでまた?」

「現役で試験官を務まるような方が今王都にいなくて、その点ムジカさんは現役で王都に店を構えてるのでよくお願いするんですよ」

「そう言う事だ。

(あね)さんと旦那から認められた実力みせてもらうぜ」

ムジカが不敵に笑う。


「お〜、やる気満々だねぇ」

「いや! コレ試験!」

「遠慮はいらねぇだろうから久しぶりに全力で行けそうだな」

「いや! だから試験でしょ!」

「ではお願いしますね」

「よし! にぃちゃん外に行くぞ!」

「ちょっと!」


俺はムジカに引きずられるように王都の外に連れ出された。


「ここなら存分に暴れても大丈夫だ」

いや試験で暴れるって何よ?

何言っても聞き入れてくれないからやるしかないんだけど何でこうなんの?

これ下手したら手加減抜きじゃないの?


「一応試験だから先手はそっちからでいいぜ」

あ、試験なのは覚えてんだ。


「お手柔らかに」

ムジカは剣を肩に担いでこちらを見ている。

得物は俺と同じ片手剣。


旦那と同じパーティーで店ではスズの抜刀の動きが見えていた事を考えるとムジカはその辺のやつらより強い。

素のままだったら相手にならないのは明白だ。


となると3乗…か、4乗だと負荷がデカ過ぎるからな。

せっかく治ったのにまた寝たきり、しかも試験でとか笑えねぇ。


ミク3乗で。

《了解です》

体を白い光が包む。


「おっ?」

構える事なくムジカに向かって駆け出す。


「ふっ!」

間合いに入った所で剣を両手で掴み下から振り上げる。


「ふん!」

キィン!

それを見てムジカが声と共に担いでいた剣を上から振り下ろして防いできた。


ギリィ!

「そいつを持てなかったとは思えねぇ動きだな」

剣を押し合いながらの状態でムジカが言ってくる。


「そいつはどう、もっ!」

「おっ?」

膝の力を抜き、ムジカの体勢を前のめりにする。


体勢を崩した瞬間を見計らってムジカの剣を弾き飛ばした。

無防備になった所に突きを放つ。

ただし試験なので『リモート』で寸止めだ。

俺個人にはそんな技量は無い。


ガッ!

「ぃてぇっ⁉︎」

寸止めの前に持ち手の部分を下から蹴り上げられた。

ムジカが体勢を崩しながらも抵抗して来たのだ。


互いに距離をとって体勢を立て直す。


「にいちゃんやるなぁ」

「ムジカこそ予想外過ぎるぞ!」

「一応現役だからな」


武器屋をしてるからてっきり名前だけの現役かと思いきや……。

見た目の筋肉は伊達じゃないってか。


「今度はこっちから行かせてもらうぜ」

言うなりムジカが距離を詰めて来る。

あ、やべ! 結構速い!

計画地図(プランマップ)』っ!

《了》


即座に送られて来た情報を頼りにムジカの横薙ぎの剣を受け止める。

ギィン!


受け止めながらムジカに接近し体当たりで距離を稼ごうとするが。

「スキル『戦士の鼓舞』」

「っ⁉︎」


ムジカの言葉と同時に受け止めていた剣が押されそのまま剣を振り抜かれた。


それにより無理矢理距離を取らされる。

そんな事より! 力が上がった⁉︎


「スキル『戦士の息吹』」

「っ⁉︎」


体勢を立て直して即座に声の場所を見たがそこにムジカはいなかった。

『計画地図』で送られて来た情報を頼りに後ろに向けて剣を振るう。

キィッ!


「おおっ?」

そのまま剣を合わせて押し合う。

さっきとは違い今度は押し切られる事は無かった。


「にいちゃんよくついて来たな!

じゃあ次はどうだ?」

そう言って剣を弾いて僅かに距離が空いた。


「スキル『双刃(そうじん)』」

キィッ!


先程と変わらない横からの斬撃を受けた瞬間感触が消え、追加情報が送られて来た。

「っ⁉︎」


即座にしゃがみ込むように体勢を低くした。

キィンッ!

頭上で剣と剣がぶつかる音が鳴りそして…。


カラン。

剣の刃先が地面に落ちた。


「おお! これも凌ぐのか!」

「いやいやいや! 避けてなければ死んでるだろっ⁉︎ これホントに試験かっ⁉︎」


さっきの追加情報は受けた剣とは反対側からも剣が迫って来る内容だった。


「すまねぇな、にいちゃん。

意外と大丈夫そうだったからどこまで出来るか見たくなってつい、な」


つい、で死にそうになってるんだが?


「いけるとは思ったが『双刃』まで捌くなんて大したもんだよ」

「なんだよさっきの!」

「左右の同時斬撃って言や分かりやすいか?」

「左右同時…」


それでか、反対の剣が来たと思った時には受けてた方の感触が消えたからもしかしてと思ったけど……スキル狡くない?

《マスターに言われたくは無いと思いますけどね》


なんでよ! 俺のって制限ありで向こうはそんなのお構いなしじゃん!

《先程の『鼓舞』は攻撃アップ、『息吹』が速さアップだと思われますが併用していませんので、制限付きとは言え全ステータス向上の私のスキルの方が優秀です》


ミクがドヤってる気がする。

でもフィードバックの代償がなぁ。


《そこはそれ、あれはあれ、です》

そんなんで誤魔化されてたまるか!


「さて次はどうするかな?」

ムジカからおかわりの言葉が漏れた。


「ムジカ! コレ試験! チガウ⁉︎」

《何で片言何ですか?》


「……おっと、そうだったな。

名残惜しいが…にいちゃん、文句無く合格だ」

よ、よかった思いとどまってくれた。


《このままでも後3分はいけますよ?》

いけてもヤダよ!

登録試験で何でそんなギリギリまでやらなきゃならんのだ!


「ねぇねぇムジカぁ、試験って今からワタシも受けたり出来る?」


意外な事にスズがそんな事を言った。


「ん? ねぇちゃんも冒険者志望だったのか?」

「ん〜まぁそんなとこかな」

「ふぅん、構わないぜ。

ねぇちゃんも大分やれそうだしな」


いや! だったら試験する必要無いでしょ!

まぁ、スズがやる気だから俺が止めるのは違うからいいけどさぁ。


「どうする? さっきの『双刃』ってのを捌いたらいい?」

「お? 中々挑戦的だな? それでいいぜ」

「早く終わるに越した事はないからねぇ」


やる気があるわけじゃなかったのか……まぁこの方がスズらしいけど。


2人が得物を構える。

「いつでもどうぞぉ」

「なら行くぜ、

スキル『戦士の息吹』、『双刃』!」

「およ?」


二重使用っ⁉︎ ムジカ本気じゃなかったのか⁉︎


即座に距離を詰めてムジカの剣がスズに迫る。

スズは正眼に構えた状態で動こうとしない。


「二の太刀、玄鳥(つばめ)

キィィンッ!

剣と刀が交わる音が響いた。


「……こりゃ参ったな。

強いとは思ってたけどここまでなんてな」

スズに刀を首筋に当てられながらムジカが感想を溢す。


今回は『計画地図』だけを発動状態だったので何があったかは分かった。


ムジカは俺の時と違って『息吹』で加速した『双刃』を放った。


今度は本当に同時と言っていいぐらいだった。

なのに結果は見ての通り。


ムジカが外から内への左右の斬撃を繰り出したが、

それをスズが内から外に向けての斬撃で弾き返しムジカが無防備になった所にスズの三撃目でチェックメイト。


スズさん、ぱねぇっス。


「結果は?」

「文句のつけようもねぇよ」

「やた!」


そりゃそうだろうよ。

これで落ちたら受かる奴いねぇだろ?

むしろ俺が落ちてるよ。


こうして登録試験は無事?に終わった。


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