復活しました
只今一年の中で最も集中力が低下しております。
毎年の事ながらこの花粉だけはどうにもなりません。
仰向けの状態から動きたくない。
花粉症が手軽に治せる時代が来て欲しい………。
体を起こして立ち上がる。
「いてて……」
体はまだ痛い、痛いが動けない程では無い。
長かった……やっと動けるようになった。
「ありゃ? にぃさん動けるようになったの?」
俺が感慨に耽っているとスズが入って来た。
「まだ痛みは残ってるけどなんとか動けるぐらいにはなったみたい。
ちょうど良かった旦那ってどこにいるか分かる?」
「今なら朝の訓練中じゃないかなぁ?」
「案内頼める?」
「いいよぉ」
そうして俺達は旦那の元へ向かった。
「そう言えばスズはまだ雇われ中なのか?」
「ん〜ん、王様達が解放された時点でお役目御免だよぉ、報酬はまだだけどねぇ」
スズの報酬って確か大金貨100枚…だったよなぁ。
そろそろ俺も何かして金を稼ぐ方法考えないとダメだよなぁ。
大金じゃなくても一文無しの状態からは脱しないといけない。
じゃないとスキルすらままならんしな。
こっち来て生き残る事優先だったから今やっとこれからどうするかっていう選択肢が生まれたもんな。
やっぱ定番は自由な冒険者だよなぁ…そう言えば旦那元冒険者だからついでに聞いてみるか。
「あっ、姫さん」
「ん?」
スズの言葉に思考の海から戻って来た俺の視界に女神が映った。
物思いに思考に耽っている姿もまた様になってる。
流石です!
《何が流石なのやら》
「アリシアさんおはようございます」
「おはようござい…………ゆ、ゆっ、悠生様っ⁉︎」
驚かれた? 何で?
………そっか寝たきりだったのにいきなり歩いてたからかな?
「ご心配おかけしました、なんとか動けるようになりました」
「そそそ、そうなんですね! それは何よりです! わ、私はお父様に伝えに行きますねっ! そ、それではっ!」
こっちの反応を待たずにアリシアさんはその場を走るように去って行ってしまった。
「……にぃさん、姫さんに何かしたの?」
「いや、寝たきりだったから何もして無いし出来ないんだが?」
2人して首を捻ったが答えは出てこなかった。
「ま、参りました!」
「よし! 次っ!」
「はいっ!」
スズの案内で訓練場にやってくると威勢のいい声が響いて来た。
「お〜、やってるなぁ」
「関心関心」
邪魔しないように入り口から感想を漏らしていると旦那がこちらに気付いた。
「小僧、動けるようになったのか」
「おかげさまで」
「お前ら2人1組で続きをやっておけ! 気を抜くなよ!」
「「「はい!」」」
旦那の声に兵士達が元気に答える。
「いいんですか?」
「ああ、どっちにしろ俺1人だと時間が足りないからな」
「流石、体力の問題じゃ無いんですね」
「まだそこまで歳は食ってねぇよ、んじゃフリード王に小僧が動けるようになった報告に行くか」
そう言って向かおうとした旦那を引き留めた。
「あ、旦那、俺も最初そのつもりでここに来たんですけど多分王様には伝わってると思いますよ」
「ん? 何でだ?」
「ここに来る途中でアリシアさんに会って王様に伝えに行くって言ってたんで」
「王女に会ったのか? どんな感じだった?」
「どんな感じって言われても……強いて言うならなんか慌ててた?」
横にいるスズに確かめるように聞いてみる。
スズも首を縦に振って肯定する。
「気落ちしてるよりはマシ…なのか?」
「何の事です?」
「いやなんでもねぇよ。
じゃあここには何の用で来たんだ?」
「そうそう! 旦那に冒険者について聞こうと思って」
「おお? 小僧、冒険者に興味あんのか?」
「興味って言うかむしろなろうかと」
「そうなのか? まぁ小僧なら無茶しなきゃ大丈夫か」
「全力出さなければ動けないなんて事は無いんで、多分…」
「……微妙に不安の残る台詞だな。
まぁ知っとく分に損はねぇから教えるのは構わねぇよ」
そこから旦那によるレクチャーが始まった。
まずは冒険者ギルドで登録が必要になる。
そこで冒険者カードなるものを発行してもらうそうだ。
ただし冒険者になるには最初に試験を突破する必要がある。
最低限自分の身を守る力があるかどうかを判断する為だ。
誰でもほいほいなって死亡されても困るからという理由で出来た制度みたいだ。
ちなみにその試験自体には費用がかかる。
大銀貨1枚と金額的には高いわけではない。
冷やかしで受けられても暇では無いから困るわけだが、かと言って高額過ぎると受ける事も出来ないので困ると言う事での値段設定らしい。
試験官は元冒険者のギルド職員がやってる所もあるがそうでない場合はその支部所属の現役冒険者が担当する。
たまたまいればそのまま試験を受ける事は出来るがそうでない場合は後日に受ける事になる。
「小僧なら全く問題ねぇだろ、むしろ相手に怪我させんなよ」
てな事を言われたが、似た様な事を言われてバルトでは苦労させられたからあまり信用していない。
主な役割は魔物の討伐なのだが、それとは別に周囲からの依頼や採集といったモノもあるそうだ。
「まぁ、そんな感じだな」
「ありがとうございます」
概ね定番通りって事かな。
俺って今一文無しなんだよなぁ。
初期費用があるってのが最大の難関っていうのが情けないな。
それに刀にヒビ入っちゃってるし、それもなんとかしないと……。
「あ、悠生殿こちらにいましたか!」
「ん?」
どうしようかと考えているところで名前を呼ばれた。
「フリード王がお呼びです。
玉座の間まで御足労願えますか?」
聞いてすぐに使いを寄越したのか?
忙しいだろうに。
「分かりましたすぐ行きます」
「いってらっしゃ〜い」
「あ、スズ殿もご一緒にとの事です」
「ワタシも?」
そうして俺とスズの2人で玉座の間に向かう事になった。
玉座の間には王族一同と大臣のベニーの爺さん姿があった。
改めて王族一同を見る。
やっぱこっちが親子だな。
夢で見た通り外見的特徴はそれぞれ子に受け継がれてるし、何より雰囲気がみんなアリシアさんとそっくりだ。
そう思いながらアリシアさんと見比べる。
見比べている途中アリシアさんと視線がぶつかったが、すぐに顔を伏せて視線を逸らされてしまった。
「この度は本当に世話になった、遅くなってしまったが改めて礼を言わせてくれ」
「いえ、こちらこそ動けなくなってすみませんでした。
忙しい中お時間を割いて頂きありがとうございます」
「悠生殿そしてスズ殿、今日お二人を呼んだのは国に仕えるつもりが無いかをお聞きしたかったのです」
いきなり職を得るチャンスが来たな…国に仕えるなんて普通なら出世コース!
それにアリシアさんの近くにいられるってのも魅力的だ。
「ワタシは辞退かなぁ」
とか思案しているとスズが考える素振りもなく即答した。
「断るの早っ⁉︎ ちょっとは考えるもんじゃないの⁉︎」
「構わんよ、可能性は薄いと思っていたからな。
して悠生よ其方はどうだ?」
しばし黙考……。
《私としては冒険者を推進します》
ふむ? その心は?
《生き残る為です》
理由が重いよっ!
やっと自由になれるって時に何でそうなるのっ⁉︎
《今回の件でどう考えてもマスターに標的が移ってますよ。
少なくとも2人、オークキングと名も無き男は今後間違いなくマスターに接触する可能性大です》
それって俺がいる事で国を巻き込むって事なんじゃ……。
《救国の英雄から一転、災禍の種ですね》
しゃれになってねぇーよっ!!
またあんなのとバトんのかっ⁉︎
《騒いでも結果は変わらないので素直に冒険者になっておいた方がいいですよ》
選択肢が無ぇ。
「……大変嬉しい申し出ではありますが、これからは冒険者をやっていこうと考えています」
「冒険者………そうか残念だが仕方あるまい。
話は変わるが今回の件の褒美並びに報酬の件だが、傭兵のスズの報酬はザック騎士団長から聞いている。
此度の件では世話になったな。
そして悠生よ其方の褒美はあの件で良いのだな?」
「もちろんです」
「あいわかった、報酬の方もすぐに用意しよう、ベニー」
「はい、こちらに用意してあります」
そう言うなり皮袋を取り出しスズに手渡す。
100枚だからそんな量では無いけど1枚10万円相当だからなぁ。
「すぐに出て行くというのでは無いのだろう?」
「そうですね、それなりに準備をするつもりです」
「うむ、それまでは城に滞在するといい。
受けた恩は決して忘れん。
困った事があればいつでも手を貸そう」
「ありがとうございます」
そうして王様との謁見を終えた。




