戻りました
バタバタバタッ!
外の騒がしさに目が覚める。
「いっ! つぅ〜」
体を動かしてみようと力を入れると痛みが走った。
どうやらまだまだ筋肉痛は継続中なようだ。
まぁ昨日も酷使したから治る要素は微塵も無いんだが。
目だけを移動させるが今ここには人はいないようだ。
騒がしいのは外からか…。
良い状況なら昨日の成果が現れた。
悪い状況なら追加で何かが起きたってとこか。
出来れば前者であって欲しいんだが…。
夢で予想外な終わり方したからなぁ。
ぐぅ〜。
…寝てるだけでも腹は減る、か。
これこのまま放置って事無いよね?
それから待てども医務室に人が訪れる事は無かった。
そして窓からの日が落ちて現在は夜。
やっと医務室にやって来た者がいた。
「にぃさん生きてるぅ?」
「不吉な事言うなよ」
「いやぁあれから3日経って目が覚めなかったからてっきり」
「………え?」
「ん?」
今3日って言ったか? マジ?
どうりで腹が減ってるわけだ。
……じゃあ外の騒がしさは何だ?
「外が騒がしいみたいだけど?」
「昨日王様達が正気に戻ったんだよ」
「なぬ?」
昨日?
夢でそんなに時間は掛ってないはずなんだが?
ミクどう言う事?
《確かに夢の中では時間は掛ってないのですが、行きに2日ほど掛かりました。
障害に加えて道が途絶えたりしたので》
障害? 道が途絶えた?
《はい、障害はマスターが感じた衝撃です。
道が途絶えたのは一度王族が目を覚ましたからですね》
知らない間にそんな事が……俺としてはそんなに時間が経ってる感覚なかったのに。
《夢の大半は記憶に無い時間ですので》
そんなもん?
《そんなもんです》
「……にぃさんあんまり驚かないねぇ」
「いや、驚いてるよ」
3日経ってた事実にだけど。
「正気に戻ったって事はあの怪しい装飾品が壊れたのか?」
「そうだねぇ、しかも突然三つ同時にね。
ワタシとしてはにぃさんがまた何かしたのかなぁと思って、でもその時に見に来たらまだ寝てたからさぁ」
「へぇ〜、不思議な事もあるもんだなぁ」
「ふむふむ、喋るつもりは無いと」
「…何の事?」
ぐぅ〜。
……3日経ってるって分かったらさらに腹減って来たな。
「んふふ」
スズが怪しい笑みを漏らした。
「何だよ? その笑みは?」
「コレなぁんだ?」
そう言って袖から一つのモノを取り出した。
パンだった。
「おっ、くれるのか?」
「コレが欲しければ素直に白状した方がいいよぉ」
「身動き出来ない俺に鬼かっ!」
「ほらほらぁど〜するのぉ?」
俺の叫びをモノともせずにスズが目の前でパンをチラつかせる。
「俺が何かした前提なのな」
「そりゃ〜そうでしょ」
そう言ってスズの顔が横に向く。
そこに視線を移すと刀があった。
「俺の刀?」
これには本当に意味が分からなかったが、すぐに反応が返って来た。
「ん、ヒビが入ってる」
「え?」
動けないので視線だけで見えてなかった俺にスズが刀取って見せて来る。
「っ⁉︎」
そこには確かにヒビが入っていた。
「それだけじゃないよぉ」
俺が驚いているとスズが刀の刀身を引き抜いて見せて来た。
「あっ!」
見た瞬間に声が出た。
刀身にも鞘と同じようにヒビが入っていた。
《夢の中でやられたやつですね》
いっ⁉︎ 夢の中の事が反映されんのっ⁉︎
《持ち込みはそうですね》
マジかっ⁉︎
新たな事実を突き付けられているとスズが続ける。
「コレ、鞘と刀でヒビの位置が違うし二箇所ずつヒビが入ってる。
間違い無く抜いてる状態」
ぐっ!
誤魔化せる気がしない!
「それにこのヒビ……ワタシがやられたのと同じ入り方……にぃさん、その辺どう?」
あ、無理。
誤魔化しても怪しまれたままだわ。
聞いてはいるけど目が言葉以上に確信を持っていると言っている。
「……降参、俺が…と言われれば確証は無いけど、何かしたのは間違ってないよ」
「素直でよろしぃ、はいどうぞ」
そう言ってパンを一口サイズに千切って口に運んで来る。
「んぐ………ありがと、でそっちはどうだった?」
「ん〜、一度目を覚まして暴れようとした以外は特に無いかなぁ。
拘束してたから被害も無いしねぇ。
その後は魔法で強制睡眠って感じだったよ。
そういう系に関して凄いおじいちゃんがいたから」
催眠系って事はベニーって大臣の爺さんか。
催眠や幻術を得意って言ってたな。
おかげで夢が途切れずに済んだわけか、何気にナイスアシストだな。
「いきなり装飾品が壊れた時はみんな身構えたけどねぇ、はい」
「んぐ………、その後は?」
「3人同時に目を覚ましたよ。
だいぶ警戒してたけど、正気に戻ってるなら拘束してるのは失礼だからだいぶ葛藤してたけどねぇ、はい」
「ほりゃほうふぁな」
「その後は異常が無いか入念に調べて問題無いって事で3人共休んだよ。
はむ、ひまはひぇんきになって、国の立て直しをしてるよぉ」
「そっか、じゃあやっと終わったって事か」
「んで、にぃさんは何があったのかなぁ? むぐ」
何があった、か……。
「夢の中であの装飾品を壊したんだよ、実際は似た物
だったけどな。
スズも一回体験したろ」
「ふんふん、んぐ…でもそれだけじゃああはならないでしょ? あむ」
スズが刀を目線で指した。
「………言うなよ?」
「ふんふん」
ていうかさっきから食べてるのって俺用じゃなかったの?
最初に数回くれたっきりだよね?
「……良く言えば努力の末に装飾品を壊して解放した……。
悪く言うと王族相手に殴る蹴るぶん投げる挙げ句の果てに斬りつける凶行に及んだ」
「……………にぃさん………短い間だったけど楽しかったよ」
「縁起でも無い事言うな! 絶対言うなよ!」
《本当に締まらないですね》
俺のせいじゃないでしょ!
それから動けるようになるまで約2週間を要した。




