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奔走 アリシア①

話は少し戻ってDay15のアリシア側になります。


合図を送る為の会話を終えてそれぞれが異変が無いのを確認を終えた頃、時間にして1時間も経たないうちに周りに変化が現れた。


「ここは?」

「外?」

「いつの間に?」

「何でこんな所に?」

兵達が次々に疑問を口にしていく。


「ギドさんこれはっ⁉︎」

「ええ、どうやらやってくれたようですね」

「随分早いね、流石ぶっ飛んだスキルなだけあるね」

「急ぎ城に戻りましょう!

力ではなく内部から城を落とした者が相手です。

まだ解決したと思い込むのは早いでしょう」


アリシアが被っていたフードを剥いで続けた。

「皆さん! 聞いて下さい!」

声の方へ全員が振り向く。


「あ、アリシア王女⁉︎」

姿を確認してすぐに兵達が1人残らず跪く。


「おお! 流石王女さんだ」

「女将さんお静かに」

その光景に思わずアルマが関心するがギドに諭される。


「皆さんは今まで魔族に操られていました。

かく言う私も数日前まで同じ状態でした。

そして城は落とされ王達は囚われの身となっています」

周囲からざわざわと動揺が走る。

しかし誰も口を挟む事なく王女の言葉を促している。


「ですが! それをこうして打開し今もなお城を解放しようと戦ってくれている方々がいます!

急なお話ではありますが私と共に救援に向かって頂きたいのです! 皆さんお願いします!」

アリシアが深々と頭を下げた。


その姿にまた兵達が騒つく。

「アリシア王女! 顔を上げて下さい!」

「そうです!」

「いきなりの話ではありますが王女の言葉を疑う者はここにはいません!」

「お話通りなら急ぎ救援に向かいましょう!」

兵達が口々に参戦の意を示す。


「こりゃまた人望の厚さを感じさせるねぇ。

若いのに大したもんだ」

「当然です」

アルマの感想にギドも誇らしげに答える。

それからは夜通しで王都を目指した。


そしてその甲斐あって夕刻には到着した。

「……特に何か起こってる感じはしないね。

入口の警備が少し増えてるぐらいで他は変わらないように見えるね」

「ですが本当に脅威が去ったのなら門は開いているでしょう」

「急ぎましょう!」


兵達を急かして進み始めた所で1人の兵士がこちらに向けて走ってくるのが見えた。

事は急を要する。

待つ事を良しとせず構わず王都を目指す。


やがて程なくして1人の兵士が先頭のアリシア王女を視認した所で立ち止まり方膝をつき頭を垂れる。

その様子を見て一同が足を止める。


「アリシア王女! 御帰還をお待ちしておりました!」

「顔を上げて下さい。

今はどうなっていますか?」

「はっ! 作戦は成功し城を奪還致しました!

街に被害は無く死者もおりません!

怪我人が2名、重症者1名で今は城内の医務室にて安静の状態です」


それを聞いたアルマが感嘆の声を漏らす。

「怪我人がいるのは素直に喜べないけどよくこんな大掛かりな作戦でその程度の被害で済んだね」

「はい、これも協力者のお陰です。

恐ろしいほど円滑に進みました!

あんなスキルは初めてです! ただ……」

先程までハキハキしていた兵士が急に言葉に詰まった。


「どうかしましたか?」

「あ、いや……重症者というのが…その……協力者の悠生殿なのです」

「っ⁉︎」

「あっ! お待ち下さい!」

聞いた瞬間駆け出したアリシアをギドが呼び止めるが止まる気配が無い。


「アンタは兵達を頼んだ。

ちっこいの(ビャッコ)がいるから大丈夫だとは思うけどアタシが一緒に行くよ」

そう言い残してアルマがアリシアを追いかけて行く。


街に入り一目散に城を目指す。

今は夕方、仕事帰りの人々が通りを行き交っている。

人を避けて行くのも時間が惜しい。

「すみませんっ! 通りますっ!」

「えっ⁉︎  あっ⁉︎ アリシア王女っ⁉︎」


声に振り向いた人々が顔を確認した瞬間驚愕とともに道をあけていく。

人々は何事かと見送るが動揺が広がるばかりで答える者は無かった。


そして目的地まで辿り着きやや乱暴に扉を開けて中に入る。

「はぁはぁ、あ、あの…ゆ、悠生様はっ⁉︎」

全力で走り続け息切れしながらも容態を問う。


「ア、アリシア王女っ⁉︎ こ、小僧ならそこのベッドに…」

突然の来訪に部屋にいた全員の視線が集中する中、ザックが驚きながらも答える。


そんな事は意に介さず悠生の姿が視界に入る。


そこにはベッドに横たわり目を閉じている姿が映った。

重症と聞いたが苦しそうな感じはしない、むしろ安らかと言えるような姿に最悪の結末が思い浮かんだ。

「え? ……うそ?」


ベッドに駆け寄ろうとした所をザックに肩を掴まれて止められる。

「ア、アリシア王女!」

「離してっ! 離して下さい! 悠生様がっ!」

「ちょっ! 落ち着いて下さい! どう聞いたかは分かりませんが小僧は大丈夫です!」

「え⁉︎ 重症と…それにこれは……」

「ある意味で1番重症なのは間違って無いんですが……今は魔力切れで寝てるだけですよ」

「ま、魔力切れ?」

すぐには理解出来ず言葉の意味を反芻する。


「何だい? また魔力切れしたのかい?

使い勝手が悪いのか消費が激しいのかどちらにせよ難儀だねぇ」

アリシアの後から入って来たアルマがそんな事を言った。


「成果を見るならよくそれぐらいで済んだなってとこだがな」

「ふぅん? まぁ、アタシとしてはさっきまでの姫さんの取り乱し様の方が気になるとこだけどね」

「え?」

言われて先程までの行動を振り返る。

街を脇目もふらず街中を駆け、扉を乱暴に開けて子供みたいに叫ぶ姿が脳裏に再生された。


途端に恥ずかしくなり、顔が熱くなっていくのを感じる。

「す、すみませんっ! 大変お見苦しい所をっ!」

「あっはっは! 何言ってんだいそういう面があったっていいじゃないか、それだけこの男(この子)が心配だったんだろ?」

「ーーっ!!」

王女としての立ち振る舞いからは程遠い姿に直接言われた事で益々恥ずかしさが込み上げて来て声にならなかった。


「おい、アリシア王女を相手に揶揄うなよ」

「たまにはこういうのも無いと息が詰まるだろ?」

「まったく……変わらねぇなぁ」

「人はそうそう変わるもんじゃないよ。

で、王女様としてはどうだい?」

「お、おいっ! ちょっと待て!」

「…? どう? と言いますと?」

ザックが止める意味が分からずに聞き返す。


この男(この子)の事だよ」

「悠生様ですか?……良い方だと思いますが?」

「……あ〜、そんな感じかい」

「もうその辺にしろ」

「はいはい」

「?……あの?」

「いや何でも無いよ」

……掘り返してはいけない事なのでしょうか?

悠生様の事なのは間違い無いようですが…。


まだ寝ていると思われる彼を見て真意を測りかねていると、不意にその瞳がゆっくりと開いて行くのが見えた。

彼の瞳が虚空を彷徨った後、視線だけがこちらを向いた。

「あれ? アリシアさん?」

「悠生様っ!」

目を覚ました彼の手を両手で掴む。

ちゃんと温もりがあり暖かい。

無事で良かった。


「っ!!!!」

「「あ」」

「え?」

と思ったのも束の間。

室内にいた2人、ザック騎士団長と傭兵のスズさんから同時に声が上がったので振り返る。


「どうしたんだい2人共?」

「え〜っと、アリシア王女…ある意味1番重症って言ったんですが、小僧は今全身が筋肉痛でして…」

「…筋肉痛……ですか?」

症状は分かる。

過度な運動によって翌日に訪れる症状だ。

兵士の皆様がよくそんな事を言っているのを聞いた事がある。


「はい、小僧の場合はスキルで無理矢理酷使したせいで今は身動き出来なくて動かすと激痛が走る状態でして…」

「……動かすと? 激痛?」

言われて彼の顔を見る。

心なしか顔が青くなっている気がする。

そして今自分のやっている事を思い出す。


彼の手を両手で掴んで引き寄せて動かしている。

「っ⁉︎ す、すみません‼︎」

言いながら思わず手を離してしまった。

「っ‼︎‼︎‼︎」

身動き出来ない彼が声にならない悲鳴を上げた。

「も、申し訳ありませんっ!!」

謝りながら離した手を掴んでベッドの位置に戻した。

「ーーっ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

彼が再度声無き悲鳴を上げた。

「すみません! すみません!」

「姫さん鬼だねぇ」

一連の流れを見ていたスズさんが呟いた言葉が胸に刺さった。

「悪気は無いんです!

ほ、本当にすみませんっ!!」


「アリシア王女、そんな事よりフリード王達の事でご報告が」

「え? お父様達に何か⁉︎」

「安心…とは言いにくいんですが、あっ、先に言いますが怪我は無く命に別状はありません。

ですが、ちょっと厄介な事になってまして」

「厄介な事?」

「簡潔に言えば牢に閉じ込められている状態です。

今の所救出の目処は立っていません」

「そ、そんなっ!」

「ですが必ず救出してみせます! 到底無理だと思われた城の奪還が成功したんです。

牢の一つや二つなんとかしてみせますよ」

「……そう、ですね。

悲観に暮れているぐらいなら動くべきですね」

「…牢……か、どんな状況なのかアタシも見に行っていいかい? どうにか出来るかは分からないけどね」

「もちろんだ、見解は多い方がいい」

「では一度お父様達の元に向かいましょう」

そう言って医務室を後にした。


「にぃさん災難だったねぇ」

「……死ぬかと思った」

「やせ我慢だったんだねぇ」

男の子(おのこ)だからな」

「……つん」

少し間を置いてスズが指で突いた。


「ぎゃぁぁぁーーっ‼︎‼︎‼︎ 何すんだっ⁉︎」

「いやフリかなぁっと思って」

「んなことあるかっ!」

後に残された2人がそんなやりとりをしていた。


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