15Day 〜秒を刻め〜
複合スキル『計画地図』。
ミクのレベルが上がった事で可能になった、マップ機能と性能アップした『プランナー』の合わせ技。
これの効果は俺が4乗を使用した際の動きを知覚出来るようになるというものだ。
マップによる位置把握、『プランナー』による映像、これをダイレクトに俺が受け取る事により瞬時に状況把握が可能となった。
ただしこれには条件がある。
踏破済みエリアであるという事だ。
踏破出来ていない空間では使用不可能な限定スキルだ。
しかしこれで夢の中同様、自分の感覚で臨機応変に対応出来る。
まさに完全なるチートを手に入れた!
と思いきや欠点もあった。
『夢現』と合わせると倍速で魔力を消費するのだ。
認識と思考演算を魔力を使って補っているせいだ。
今の段階で最大12秒。
今は既にいくらか魔力を消費しているからさらに短いが文句は言えない。
《残り8秒です》
8秒……それ以内に決着が着けられなければ俺の負けだ。
こっから先は秒刻みだ!
ミク! 『夢現』っ‼︎
《了解です、残り8秒》
『夢現』発動と同時にオークキングに接近し横一閃。
しかしそれをオークキングは飛び上がる事で回避した。
最初の動きで想像出来てたけど、でけぇくせに速くて身軽ってありかよ⁉︎
だが着地を悠長に待っている暇は無い。
俺はオークキングを追って頭上に飛んだ。
そしてそのままの勢いで刀を切り上げる。
オークキングが手刀を合わせて来た。
キィ!
っ⁉︎ 固ぇ⁉︎
それに何で素手なのに金属音みたいな音してんだよ!
かすり傷程度は与えたものの致命傷にはほど遠い!
空中じゃ踏ん張りが効かない分威力不足か!
ゴッ!
「ぐっ⁉︎」
オークキングが回し蹴りを放って来た。
空中では身動き出来ずにモロにくらって壁まで吹き飛ばされた。
向こうも空中だと流石に力が入らないのか、さっきみたいに壁を破壊する事なく受け身をとれた。
「ってぇな!」
が、それでも痛いもんは痛い。
オークキングがニヤリと笑うのが見えた。
《6》
ミクが残り時間をカウントする。
のやろ〜。
向こうの着地地点に向かって突進。
着地の瞬間を狙って機動力を奪う!
ズバッ!
「ぬうっ⁉︎」
「げっ⁉︎」
ゴッ!
「ぐっ」
着地を狙って足を斬りつけたのには成功した。
しかしオークキングが声を上げたと同時に斬り傷が塞がって、反撃で殴られた。
ぐっそっ! 今のはアレか⁉︎
筋肉を収縮させて血止めしたってやつか⁉︎
動きといい今の芸当といい器用過ぎんだろ⁉︎
イメージのオークと違い過ぎる!
ゴォッ!
追撃にオークキングが左腕を振り下ろして来たがスレスレで躱し拳は地面を抉った。
そのまま伸び切った腕を全力で斬りつけた。
ザンッ!
手応えあり!
「ごはっ⁉︎」
そう思ったのも束の間、下腹部に衝撃を受けた。
膝って⁉︎ 腕が切断されたのにお構いなしか!
ギリギリ左手を差し込めたが衝撃で空気を吐き出してしまった。
《5》
ぐっ! こっちも怯んでる場合じゃないっ!
上に飛ばされる前に差し込んだ左手でオークキングの膝を鷲掴みして浮力を相殺。
そのまま前転の要領でオークキングの頭から刀を振り下ろす!
ゴッガンッ!
「がっ⁉︎」
振り下ろした刀は軸足をスライドさせて躱された上に踵落としを喰らい頭から地面に叩きつけられた。
くっそっ!
額から血が流れるのを感じるがイメージでも体は動くので問題無い!
『リモート』を駆使してすぐさま次の行動に移す。
起き上がって即座に胴を斬りつけた。
「「なっ⁉︎」」
オークキングが驚きの声を上げるが、俺も同時に声を上げた。
オークキングは手応えを感じたはずなのに俺がすぐに反撃してきた事に。
俺はまともに入ったはずなのに致命傷に至っていない事に。
一撃でダメならぶっ倒れるまでやるしか無い!
オークキングが先に動き出し手刀を振り下ろして来た。
さっきのやつか!
斬撃に近い為当たるわけにはいかない!
右に避ける事で躱すがそのまま横に水平に振り切って来た。
キィッ!
それを刀で受け止めて距離を取らされる。
手だけあって変化はお手のものってわけか!
《4》
残り半分!
次離されたら間に合わない!
被弾覚悟で行くしか無い!
一直線に向かう俺をオークキングが右ストレートで迎え撃って来た。
それを懐に入るように前進しながら躱す。
左手はさっき切断したから無防備の所を全力で斬る!
ザンッ!
手応えはある! たがまだ足りない!
追撃を……。
「ふんっ!」
ゴッ!
「がっ⁉︎」
予想だにしなかった方向からの衝撃に一瞬動きが止まる。
左からって…コイツっ! 無い方の手で殴って来やがった!
王座にふんぞりかえる王様とは雲泥の差!
ちょっとぐらいだらしないとこ見せろよ!
オークキングが不敵に笑うのが見えた。
右の手刀! 躱せない!
ガキィッ!
くっそ重てぇっ!
キィィィィッ!
力勝負してる時間なんて無い!
左に受け流してオークキングの体を前に傾かせる。
そのまますれ違いざまに胴に斬撃を叩き込む。
「ぐぬっ!」
ゴッ!
「がっ!」
斬撃を叩き込まれながらオークキングがバックブローを後頭部に叩き込んで来た。
《3》
地に手をつき『リモート』を使い即座に立て直し、がらあきになった胴体を斬りつける。
それでもオークキングが喰らいながらも反撃を繰り返す。
広間に斬撃音と鈍い音だけが幾重にも折り重なり合う。
鈍重なパワータイプイメージのオークから逸脱し過ぎだろ!
絶妙に致命傷を避けてるから決定打に欠ける!
満身創痍のくせにしぶとい!
なんとかしてコイツの気を散らす事が出来れば!
流石に旦那やスズに今から頼むのは無理だ!
一瞬! 一瞬だけでも…っ⁉︎
考えながら一瞬だけスズの姿が視界入った。
その時スズが触れもしないのに相手の気を逸らしたのを思い出した。
……俺にスズみたいな芸当は出来ない。
だが気を逸らすだけなら同じじゃなくても可能性はある……賭けだがコレ以外にもう方法は無い!
ミク! 『プランナー』オープン!
《了》
[…早くっ!]
「むっ⁉︎」
絶好機!
賭けに勝った!
突然の第三者からの切迫した声が広間に広がった。
それにより俺以外が声に一瞬気を取られた。
その隙にオークキングの近距離で胴に向けて居合を放つ。
ザンッ!
今度は完璧に捉えた!
「ぐぅっ!」
オークキングが片膝をつく。
胴体切断、とまではいかなかったが致命傷だ。
間に合った……これで詰みだ。
《0》
は?
唐突にカウントされた数字に呆気に取られる。
直後に訪れた虚脱感に足が崩れ落ちる。
「ぐっ」
なんとか倒れるのは免れたがオークキングと同様に片膝をついた姿勢になった。
やっべ! 動けん!
それより何で急に⁉︎ まだ時間はあったはず⁉︎
《スキルの並列使用の為、通常より負荷が大きくなりました》
マジかっ⁉︎ どうする⁉︎
あっちはすぐには動け無さそうだが、さっきまでの攻防を見る限り無理して動く可能性も否定できん!
「誰もいないから騒がしい方に来てみたけど、奇遇だねぇ、君もココに来てたんだ」
唐突に場に似つかわしく無い調子の声が聞こえて来た。
そしてつい最近聞いた記憶のある声…。
「その様子だと真紅を倒したみたいだね。
それにそこにいるのはオークキング……これも君かな?
だとするとあれじゃちょっと荷が重かったかな」
バルトの武闘祭で出会った男。
「名も無き男!」
その姿があった。




