冒険の準備をしよう 〜情報収集編〜
「ほらよ」
そう言って鞘に収められた刀を受け取って重さを再確認する。
現実に持ったことなんてないから少し感動…。
「ところでにいちゃん、武器なんざ仕入れてどこに行くつもりなんだ?見たところ冒険者…ってわけじゃないんだろ?」
ああ、この世界ってそういうのがあるんですね、異世界ものの定番だしね。
機会があれば見に行ってみよう。無事に帰れて自由の身になれれば……。
ちょうどいいや無事に帰る為にも情報収集しておこう。
「ちょっと街道に現れる魔物の調査に行くことになりまして…」
「!にいちゃんもしかして王国の兵士か?」
あれ?オッサ………じゃなくてムジカが急に小声になった?
そして近くに来るように手招きしている。
なんだ?きな臭い話か?
誘われるままムジカに近づくと…首に腕を回された上にムジカの顔が近くまで迫ってきた。
うおおおい!まさかの王国兵士プレイがお好みですか⁉︎
なんだその聞いたことの無いパターンの趣向はっ⁉︎
忘れたはずの件が再び脳裏にフィードバックしてきた!
我に返って慌てて逃げようとしたが、その前にムジカが口を開いた。
「にいちゃん王国の正規兵じゃねぇよな?となると雇われか」
ん?ってことは王国兵士プレイじゃないのか?
危ねえ!別の意味で死を予感したぜ。
「そんな感じです」
「じゃあ知らねえのも無理ねぇか、実はな…」
嫌な予感しかしなかったが、やっぱり碌でもなかったな。
数年前から王国が急に変わったらしい。
一言で言うと圧政だな。
それに加えて、マジで⁉︎と思ったのが出国審査だ。
よっぽどじゃないと一度国に入ったら最後、国から出れないんだと。
もう国じゃなくて監獄じゃね?
一時期王様が病で伏せっていたことがあり、復帰後出入りが厳しくなったらしい。
厳しいって言うレベルか?
人は変わるもんだよね。
元の世界も犯罪に汚職が尽きなかったもんな。
本題の方だが、魔物の仕業では無いかもしれないということだった。
なんでも魔族の目撃情報があるらしい。
はて?魔族とはなんぞや?
と言ったらムジカに呆れられた。
しょーがないじゃんこっちの常識知らないんだから!というよりイメージ通りじゃないことを期待して聞いたんだよ!
だってそうだろ⁉︎
駆け出し冒険者みたいなやつがいきなりボス級を相手にするなんて無理だろ⁉︎
しかし、期待は裏切られる為にある。
そう今の俺のように…っていらんわそんな格言!
ひたすら裏切られてんのにまだ期待してるってなんだか悲しくなってくるな。
そうですよ、イメージ通りでしたよ。
魔王の側近的ポジションでした。
そろそろこの絶望にさよなら出来ませんかね?
で、被害は出ていたものの王国から調査をすることは今まで無かったそうだ。
マジ腐ってんなあのブタ!
これ絶対知ってて黙ってただろ?
ムジカに代金を払い礼を言って店を出る。
「にいちゃん、五体満足で帰って来いよ!」
去り際に縁起でもないことを言われたが、ホントその通りだよ…。
「ご用件はお済みですか?」
いえ出来ればずっと用事をしていたいです。
とは言えず大丈夫と答えるしかなかった。
監視されてるんだからヘタなこと出来ないし。
「では行きましょう」
美少女と出かけるというのにこんなに憂鬱なことってこの世にあるんだな…。
次回は4月7日までにアップ予定です。