10Day 〜みんなで盗聴です〜
『プランナー』を挟むととんでもなく分かりにくかったので会話の種類を分けています。
通常会話 →「 」
ミク →《 》
プランナー →[ ]
スズの夢から戻って隣の部屋に向いノックをする。
コンコンコン。
すると今度はすぐに中からスズが顔を見せた。
「ちゃんと起きたな」
「…そのセリフ……って事はさっきのはやっぱり夢じゃないんだ」
「いや、夢だったよ」
「……にぃさん……ややこしい」
「ほら、旦那が下で待ってるから行こうぜ」
そうしてスズを連れて旦那の元へ向かった。
下に降りたが旦那の姿は見えなかった。
「あれ?」
「こっちだ、遅かったな」
「どうしたんですか? そんな隠れるような場所で?」
「そりゃ鉢合わせしない為に決まってんだろ、いくら小僧が教えてくれるって言っても側にいないんじゃどうしようもねぇだろ」
「あ…」
「忘れてたな?」
旦那に謝って食事を終えた俺達はアリシアさんが眠ってる隣の部屋へ移動した。
「それじゃあ説明してもらおうか」
部屋に着くなり旦那から催促された。
「わかりました、これからしようとしてる事は簡単に言ってしまうと盗聴です」
「あん? んな事の為にわざわざ集まったのか? 盗聴なんざしなくても内容は分かるだろう?」
旦那の言う通り今回は盗聴する必要は無い。
「そうですね、これは俺のスキルの説明と思ってくれればいいですよ。
まずは体験してもらいましょうか」
ミク『プランナー』発動。
対象はアリシアさん、ビャッコ、アルマ、ギドの4人、オープンで。
《了解です》
[……ヴァ?]
[どうしたんだい? ビャッコ?]
「「っ⁉︎」」
突然聞こえた声に旦那とスズが周りを見回した。
「おい⁉︎ コレっ⁉︎」
「どう言う事? にぃさんの辺りから別の人の声が?」
正確には俺に見えてるマップから出てるんだが、
これは他の人には見えて無いのでしょうがない。
「これが俺のスキルです。
発動にはいくつか制限がありますが、簡単に言えば選定した対象の会話内容を知る事が出来ます」
「こいつは………おい小僧、その制限ってやつに距離は入るのか?」
おっと最初にそこを聞いて来るか。
俺はもう使い道を決めてるから分かるが、そこにすぐ頭が回る辺り流石だなぁ。
「旦那の悩みは解決ですよ。
このスキルに距離は関係ありません」
「それ盗聴? 次元が違う気がするけど?」
「同感だ」
スズの言葉に旦那が同意する。
俺からすれば盗聴以外の何物でも無いんだが…。
「んじゃあ、一応制限ってやつを教えてもらえるか?」
一応って何だ?
「えっと……それはいくつかありますね。
一つ、予め会話する対象を選定しておく事。
二つ、選定した者以外が介入又は足りないと無効。
三つ、対象の名前を俺が知っている事。
ってとこです」
「「……………………」」
2人が長い沈黙に包まれた。
「……いや…まぁ…転移の条件を聞いたから薄々察してはいたが、だいぶ常識から外れたスキルしてんなぁ」
え? 何?
「にぃさん…分かって無さそうだけど、それって人によっては転移より価値あるスキルだからね?」
「だな、国や商人からすれば国宝級の扱いを受けるレベルだな。
それをこうも軽い制限で実行出来るってのはなぁ…」
はぁっ⁉︎ 『配達』はともかく『プランナー』が?
冗談でしょ?
「いやいや、会話内容知るだけですよ?
こっちの声を届けれる訳じゃ無いですし」
「距離は関係ねぇんだろ? なら一瞬で仕入れた情報を即座に届ける事が出来るなんざ情報が命の職種なら涎ものだろうな」
「そだねぇ、ワタシらも現に合図で困ってた訳だし」
「それに相手と連絡の時間を決めとけばその時間に対象を選択してってのを繰り返せば複数の場所の情報を得れるって事だろ? 一箇所だけとはいえ転移と合わせれば手紙で返答も可能になるじゃねぇか」
………これ俺のスキルだよね?
使い方が俺より柔軟なんですけど?
《マスターの世界は電話や携帯がありますからそういう発想が無いんでしょう》
何かあれば本人が直接聞いたり調べたり出来る世界だったし、手紙よりLINEかメールで済ませてるもんなぁ。
「小僧、これは口外するなよ?
知られた場合は各国から狙われるぞ、それにそんなモンが存在したら職を失う奴が後を絶たん。
悪用された場合は大変な事になるからな」
俺がぼんやり元の世界の時を思い出していると旦那からそんな事を言われた。
元々スキルを口外するつもりは無かったから別に構わない。
今回は特殊なパターンで必要だから話したまでだ。
[ビャッコはどうしたんですかね?]
[さぁ? 周りを気にしてるみたいだけど、何も無いけどねぇ?]
[ヴァゥ………]
[これは気のせいだった…って事ですかね?]
[じゃないかねぇ? 何かあればアタシにも分かると思うんだけど…]
ん〜この会話を聞くにビャッコは何か感じとってるのかもなぁ。
盗賊の女将さんが何も気付かないって事は対人ならほぼ看破は不可能と見ていいかもな。
「ふむ…聞かれてる本人達は全く分からないって事か、ビャッコは何か感じとったみたいだが気のせいで済むレベル…ってとこか」
旦那も俺と同じ見解みたいだ。
「声だけ聞こえるって変な感じ」
「だな」
電話が無いとコレが普通の反応なんだろうな。
俺にはマップから音声が出てるのが分かるからあんまり違和感無いんだよなぁ。
さて、これで説明は終わったし残るは最後の確認を残すのみとなったわけだ。
そして夕方。
「さて、そろそろか」
旦那が言葉を発した後、俺達は静かにその時を待つ。
時間にして1時間ほど経った頃。
[……ん]
静かな部屋に声が聞こえた。
「「「っ!」」」
俺達3人は顔を見合わせ誰も声を出していない事を無言で確認する。
[おっ、目が覚めたかい?]
[大丈夫ですか⁉︎ どこか具合が悪いところは無いですか⁉︎]
[…ここ…は?]
[ここはマロメの村の宿だよ。
聞いた所アンタは魔族に何かされて今まで眠ってたんだよ。
コイツがアンタをここまで運んだんだよ]
[……っ⁉︎ 私っ⁉︎ あ、あのっ! 今はどうなっていますかっ⁉︎]
[ちょっ⁉︎ ちょっと落ち着きな⁉︎ 一体どうしたんだい⁉︎]
[お父様や皆様はっ⁉︎]
「ねぇ? 姫さんってこんな感じなの?」
「いや……これは様子がおかしいな」
これは無事アリシアさんを解放出来たっぽいな。
操られてる状態の時は何事にも動じないスタイルだったもんな。
「もう暫く様子をみよう、下手に動いて事態が悪化するのは避けたい」
[ちょいと落ち着いておくれよ、いきなりどうしたんだい?]
[あ! すみません! 事情を知らなければそうですよね! そうです! 悠生様ならご存知ですよね⁉︎]
[えっ⁉︎ ちょっ⁉︎ ちょっと待って下さい⁉︎
何の事ですか⁉︎]
[だって悠生様が私をっ⁉︎]
[えっ⁉︎ 俺王女に何かしましたかっ⁉︎]
[何かって⁉︎ 夢の中で私の願いを叶えてくれたではないですか!]
[[夢?]]
[そうです!]
「……これは一体どう言う事だ?
まさか操られた期間が長くておかしい事になっちまったのか?」
「さ、さぁ?」
俺は惚けたがさっきからスズから視線を感じる…。
「……にぃさん」
「…………」
スズが何かを言おうとしたが無言で押し通した。
でも今のアリシアさんのセリフでもう操られていない事をほぼ確信出来た。
後は上手く夢を誤魔化すだけだな。
[そりゃさっきまで寝てたから夢を見てたってのは分かるが、今は現実だよ?
まぁ寝てる期間が長かったから混同しちまったのかもしれないけどさぁ]
[そんな事っ!]
[もう少しゆっくりしてはどうですか?
そうすれば状況を飲み込めるのでは?]
[悠生様までっ⁉︎]
[キュルルゥ〜]
[っ⁉︎]
[[………]]
「何だ? 急に静かになったぞ?」
「小さいけど音が聞こえたねぇ?」
「何でしょうね?」
3人が静かになる前に聞こえた音に首を傾げる。
危険は無さそうな音ではあるけど?
[王女はお疲れのようです。
少しゆっくりしてて下さい、今軽食を持って来ます]
[…………っ!]
[そりゃそうだね、1週間も寝たきりだった訳だし。
すまないね、アタシとした事がそこまで気が回らなくて]
[……申し訳ありません]
「何事かと思ったが問題無さそうだな。
それより王女の様子の方が気になるな……」
「今の所危険は無さそうなのでもう少し静観ですかね?」
「ああ、何かあれば突入する可能性もあるかもしれんから覚悟はしといてくれ」
「覚悟…ねぇ…」
旦那の言葉にスズがボソっと呟いてこっちを見てくる。
それを俺は気付いて無いフリをし続けた。
[ありがとうございました]
[いえいえ、落ち着きましたか?]
[…はい、お見苦しい所をお見せして申し訳ありませんでした。
まずはお礼が先でしたね。
この度は誠にありがとうございました]
[とんでもないです、無事で何よりです]
[その上で悠生様にお聞きしますが、覚えがありませんか?]
[はい、俺が王女に何かした記憶はありませんが]
[…そう、ですか………]
[ヴァゥ]
[ビャッコもありがとうね]
[ヴァウ!]
[じゃあこれからどうするかだねぇ]
[そうですね、正直魔族が相手だと俺達だけじゃ手に余りますからね]
[……………]
[俺としては王女様を危険に晒すわけにもいかないので一旦戻った方がいいと思うんですが]
[……?]
[ん? 何か問題あったかい?]
[いえ…そう言う訳ではありません]
[そうかい? 何かあれば言っておくれよ?]
[……はい………こう言う時に『てれび』があればいいのに、と思っただけですので]
[『てれび』……ですか?]
[はい、『てれび』です]
[何だい? その『てれび』ってのは?]
[便利な物ですよ]
[へぇ〜、そうなんですね]
[…………ビャッコ]
[ヴァウっ!]
[ちょっ、ちょっと⁉︎ どうしたんですかっ⁉︎]
[アンタ何のつもりだい⁉︎]
[……それはこちらのセリフですね。
悪い方ではないようですが貴方は誰ですか?]
[何言ってるんですかっ⁉︎ 王女が知っている通りの悠生ですよ⁉︎]
[確かに声や姿は悠生様です。
ですが、あの方は私を『王女』と呼んだ事はありません]
[それだけでっ⁉︎]
[それに『てれび』とは悠生様からお聞きした物なのにそれを知らないと?]
[[っ⁉︎]]
「偽物だとバレたか⁉︎ やむを得ん!
乗り込むぞ!」
「あっ、旦那ちょっと待って!」
旦那が扉を蹴破りそうな勢いで立ち上がったのを慌てて止める。
「何だ! 小僧!」
「大丈夫なんで普通に顔出しましょう」
「大丈夫なわけあるか! 速攻で拘束する必要があるぞ⁉︎」
「大丈夫ですって、アリシアさんはもう操られてませんから」
「はぁっ⁉︎ 何を根拠に⁉︎」
旦那の反応はごもっともだがアリシアさんに手荒な事をして後ろめたくなられても困るので端折って説明する事にした。
「アリシアさんを縛っていたのは耳に付けていたイヤーカフです。
それを俺のスキルで根本から破壊しましたから」
「小僧…、お前そんな事も出来るのか⁉︎」
「まぁ、出来るようになったのはつい最近なんですけどね。
これはここだけの話でお願いしますね。
表向きはアリシアさんが自力で解放された事にしといて下さい」
アリシアさんに夢でした事を夢で終わらす為に!
「……それでいいのか? それが本当なら救世主だぞ?」
「恩着せがましいのは好きじゃないので、それに俺が助けたいからやっただけですから」
「……小僧がそれでいいなら構わないがな」
「ありがとうございます、スズもそれで頼むな」
「はぁい」
「じゃ、行きましょうか」
俺達は緊迫しているであろう隣の部屋に向かった。




