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8Day 〜人は見かけによらない〜


やっと解放された。

でもこれぐらいで解放されたのはまだいい方なのかな?

この世界の基準はよく分からんけど、ドラマとかだと翌日に解放とかってシーンがあるからな。


なんか色々聞かれたけど正直答えられる事の方が少ないんだよなぁ。

むしろ俺の方が聞きたい事だらけだよ。


今回の主謀者は俺が名も無き男と呼んでいる奴。

と思われる。

文字通り名前すら知らないので聞かれたところで答えれる事は無い。

なので目的も意図も全くもって不明。

予選前に大会要項を教えてもらったぐらいの接点しかない。

ただ会話からして奴が黒狼に何かした事は間違いない。


そもそも黒狼って何? ってとこからだったんだけど、一言で言ってしまえば魔物。

ただし狼と言えば集団をイメージするのだがコイツは違うらしい。

単体での能力が高く群れる事が無い一匹狼の性質を持つらしい。

大きさは大の大人よりひと回りから二回り大きいぐらいだとか。

今回の真紅はそれを遥かに上回るデカさだったが。


結局のところ現状では何も分からないという事で暫くの間武闘祭は休止、バルトでの検問・都市内の警備強化といった内容になるみたいだ。


「つかれたぁ〜、早くぐーたらしたいぃ〜」

内容を振り返っていると緩い声に怠さをミックスしたような声でスズが現れた。

どうやらあっちも解放されたらしい。

ちなみに俺とスズは別々に事情聴取を受けていた。

あの調子でまともな事情聴取が出来たんだろうか?


「お疲れさん、手伝えなくて悪かったね。

観客の避難誘導にまわっちまってそっちまで手が回らなかったよ。

ま、アンタら2人なら問題無かったみたいだけどね」

俺がスズにそんな疑問を思っていると女将さんから声を掛けられた。

もしかしてずっと待っててくれたんだろうか?


「アタシも少し前まで事情聴取されてたとこだよ」

相変わらずここの世界の人は読心術の心得があるのか疑うレベルの察しの良さだな。


「何かエライ事になりましたね」

「全くだね、これじゃあ今回の大会がどうなるやら…」

「あっ!」

そうだよ!

ここに来た目的である資金集め!

大会は休止になったって言うし今回のやつどうなんの?

まさか骨折り損⁉︎

「そ〜言えばにぃさん何か入り用だって言ってたねぇ」


「お取り込み中すみません。

ユウセイ選手とスズ選手ですね?」

「え?」

「ん?」

声をかけられて振り向いた先には見知らぬ女性がいた。

いや、どこかで会った事あるような気もするな?


「申し遅れました、武闘祭で受付をしていた者です。

運営からのご連絡をお二人にお伝えに来ました」

あ、道理で見た事ある気がしたわけだ。


「まずはこの度のお礼と謝罪を。

この度は被害が拡大する前に解決頂き誠にありがとうございました!

またこのような事態を引き起こしてしまい申し訳ありませんでした!」

真面目だな、どう考えてもあの名も無き男が原因だろうに。


「被害が出なくてよかったですよ」

「そう言って頂けると助かります。

それと現在運営で今回の事後処理を行なっており、お二人の処遇についても話し合っている最中になります。

明日の朝までに明確な対応をお伝え致しますので、それまで受付時に登録して頂いた宿に滞在して頂けるかの確認に参りました」

そう言われて俺は女将さんを見ると黙って頷いている。


「分かりました、それで大丈夫です」

「ありがとうございます、スズ選手もそれで宜しいでしょうか?」

「ん〜、ワタシは今日までしか宿をとってないんだよねぇ」

「そうだったんですか…困りましたね」

「じゃあアタシらのとこに来るかい?

今いる部屋を空けて2人部屋にする分には問題無いだろうしね。

アンタも2人一緒にいた方が都合がいいだろ?」

「宜しいんですかっ⁉︎」

「いいの?」

女将さんの言葉に2人が反応した。


「構わないよ。そっちの子には話しもあるしね」

「女将さん話って?」

「それはまた後でって事で、って事でアンタどうする?」

「また宿取るのめんどくさいからそっちがいいならそれで」

「よし決まりだ!」

「ありがとうございます! ではまた明日そちらに伺いますね!」

受付嬢はスムーズに話が進んだ事に安心したようで元気よく去って行った。


「じゃあアタシらも宿に戻ろうか」

そう言って3人で宿に向かった。


そして遅めの夕食を食べた後に一部屋に3人が集まった。

「んじゃあ早速で悪いけどアンタに話があるんだけどいいかい?」

「どうぞぉ」

スズが相変わらずののんびりした調子で答える。


「アンタ傭兵なんだろ? アタシらに雇われてみる気はあるかい?」

「ちょっ⁉︎ 女将さんっ⁉︎ 何で傭兵って事を⁉︎」

「傭兵ってのはアンタらが大会中に会話してたじゃないか?」

「いやいや! どんだけ耳いいんですかっ⁉︎」

「ああ、『聞き耳』のスキルだからね」

……女将さん盗賊ですもんね。

それはこの際いいとして、雇うってどうなの⁉︎


「女将さん! いいんですかっ⁉︎ そんな簡単に勧誘して⁉︎」

「いいよぉ」

「ってぇっ⁉︎ そっちも即決っ⁉︎」

女将さんのスキルに関しては諦めたけど、スズが即答した事にさらに驚きが舞い戻って来た。


「どうしたんだい? そんな慌てて?」

え? 何? 俺の反応って何かおかしいの⁉︎

だって女将さんが雇うってあれだよ⁉︎

国の一大事だよ⁉︎


「いや! だってほら雇うって俺らの手伝いって事でしょ⁉︎」

「そりゃそうだよ?………あ、そうかアンタ知らないのか」

女将さんが合点がいったと言わんばかりに自己完結した。


「何をですか?」

「傭兵についてだよ」

どういう事だ?

「お金払って雇う兵隊って事じゃないんですか?」

「合ってるよぉ」

ますます分からん。


「アタシが言ってるのは信頼度の事だよ」

「信頼度?」

「そうさ、傭兵ってのは実力云々の前に信用が第一なんだよ。

変な噂があると次の仕事が無くなるからね。

それは1人であろうと団体であろうと変わらないんだよ。

次いでに言うなら1人の場合は実力も伴って無いと成り立たない場合が多い。

というより実力はもう測る必要が無いのは身に染みてるだろ?」

「まぁ」

正直勝てるかどうかも怪しい。


「という事で後は報酬の件だけど…」

「ん〜、…大金貨100枚…かなぁ」

「っ⁉︎」

優勝賞金の20倍っ⁉︎

大金貨が1枚10万相当だから……1000万っ⁉︎

年収オーバーっ⁉︎


「上出来だね、交渉成立だ」

女将さんも即答っ⁉︎

「お、女将さんっ⁉︎ そんな金額即答して大丈夫ですかっ⁉︎」

「大丈夫だよ、見た目のんびりしてるけどそこらの奴より遥かに優良株だよ」

「え? それってどういう…」

「にぃさんホント変わってるねぇ」

「まぁそれについては同感だねぇ」

「え、え?」

何何⁉︎ どういう事⁉︎


「自覚が無いみたいだから言っておくけど、アンタ相当な実力示してるからね?」

「俺?」

そりゃレベル的には一瞬とはいえ凄いとは思うけど?

何でここで俺が出てくんの?


「その辺の実感が無いんだろうね。

まぁ、アタシも今回の大会を観たから言える事だけどね。

今のアンタは間違い無くそこいらの奴より遥かに抜きん出てるよ。

そんなアンタがいるにも関わらずまだ戦力を保有しようとしてる状況を考えれば依頼の難易度が伺い知れるだろう?

この娘はそれを加味して報酬を掲示して来たんだよ」

この世界の基準が分からないからそう言われてもいまいちピンと来ないけど、女将さんが言うならそうなんだろう。


上出来と言ったのは状況もしっかり把握する事が出来てるってって事か。

そう思いながらスズの方を見る。

「ふぁ〜」

呑気に欠伸をしていてとてもそうは見えない。

ホント人は見かけによらないな。


「て事でここからの事は他言無用で頼むよ」

「りょうかぁい」

ホント緩いな。

でも実力は折り紙付きだから心強い限りだ。


その後女将さんから説明を受けていたスズの反応は以下のようなものだった。

「たいへんそうだねぇ」


やっぱり緩いな。


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