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8Day 〜所により大雨〜


大会当日の朝。

事前に女将さんから聞いていた情報通り参加者が30名の為、バトルロワイヤルでの選抜となった。

本戦出場は4名(ここは嬉しい誤算)。

今は控えの広場で開始を待っている状態だ。


パッと見、いち、に、さん……8人ぐらいしかいないが他はまだ来てないのかな?

それとも不参加か? それなら願ったり叶ったりだが……。


「ふふ、君は初めてだね?』

「え? どうでしょう」

誰だ? この優男は?

今まで生きて来た中でこんな前髪をかき上げる仕草をする人物に覚えはないが?


「隠す必要は無いよ。周りが気になるみたいだったから声をかけさせてもらったよ」

「そんなに気にしてました?」

「そう見えたね。

些細な事に気を取られて実力を発揮出来ないなんて可哀想だからね。

質問があるなら分かる範囲で答えてあげられるよ?」

……ただ単に親切なだけか?

話半分で聞くぐらいでいいか。


「ではお言葉に甘えて、参加者が少なくないですか? もう開始前だと思うんですけど?」

「それは簡単、入場口が他にもあるんだよ。

他の参加者はそれぞれの場所で待機してるよ」

「そうなんですか? 何でまたそんな事を?」

「いくつか理由はあるけど、大きくは二つかな?

一つは集団での結託を無くす為。

武闘祭がスカウトを兼ねている事は知っているかな?」

俺は頷いて肯定する。


「優れた才能が悪意によって埋もれてしまうのを防ぐ為だね、多勢に無勢と言うやつだよ。

それ以外にも妨害防止の役割もある」

ふむ、テンプレ防止ね。


「二つ目は対策防止だよ」

「対策?」

聞き慣れないな? 何の対策防止だ?


「スカウトを兼ねてるって言ったろ? 相手や得物を見たら当然どうやって勝つかを考えるだろ?」

「そりゃ優勝する為に出てますからね」

「事前に対策出来てしまったら実力とは言えないだろう? ここでは初見の観察眼と対応力も観られるんだよ」

臨機応変さって事か、確かに俺でも相手や得物を見て想像はするよなぁ。


「ボクの相棒はコレだけど、君のは珍しいじゃない?」

腰に吊るしてある剣の柄に手を置いて刀に視線を送る名も無き男。


「是非とも残って欲しいね。

どんな戦いをするのか興味があるよ。

他に何か質問はあるかい?」

「今のトコは無いですね、親切にありがとうございます」

「そうかい。では健闘を祈るよ」

そして名も無き男は背を向けて片手を上げて去って行った。


………ホントにただのお節介ってやつだったか。


「にぃ〜さん」

「おわっ⁉︎」

後ろから唐突に声をかけられて思わず声を上げてしまった。


いつの間にか俺の背後に一昨日の子が立っていた。

やべ、いつからいたのか全然気付かなかった。

ミクの話もあながち間違ってないかもしれん、ホントに勝てんのか?


「にぃさんも参加者だったのぉ?

危ない事はしない方がいいと思うけどなぁ〜」

「忠告どうも、ちょっと事情があってね。

入り用なんだ」

「ふぅ〜ん? でもワタシも負けるつもりはないよぉ。勝っていっぱい甘味を食べるんだ」

甘味目当てかよっ! なら譲ってくれよ!

心の中で盛大に絶叫した。



▽▽▽▽▽



「さぁ! 皆様お待たせしました!

只今より予選のバトルロワイヤルの開始となります!

出場者の皆様は闘技場に入場して舞台に上がって下さい!」

ご指名があり出場者がぞろぞろと闘技場になだれ込んでいく。


お〜、結構広い。

観客席とか闘技場が円形なのはイメージ通りだけど、中央に石造りらしき舞台がある。

それに入り口が四方にあるな。


俺の左右の入り口からは10人ずつ入場してきている。

聞いた通りのようだ。


もう一つの正面の入り口は他と違って舞台が入り口まで伸びてるな?

演舞とか何かの催しとかやったりする用かな?


舞台の高さは1メートルぐらいで、広さはよく分かんないな。

少なくとも縦横30メートルずつはありそうだ。


「司会はお馴染み私ギャッツがお送りします!

今回解説としてバトルマスターのハロルド殿に来て頂きました!」

ギャッツの紹介に初老の男性が頷いた。

ざわっ!


同時に会場から騒めきも上がった。

こっちの有名人を知らない俺からすれば誰それ? って感じだな。


「ここでルールを説明致します!

気絶、降参、舞台から落ちたら即敗北!

残りが4名になった時点で終了となります!

また制限時間の30分で勝敗がつかない場合は撃破数の多い上位4名が勝者となります!」


ここに来て制限時間に撃破数とか新たな新事実が発覚。

時間は別にいいや、どのみちそんな長く戦えないし。

でも撃破数が絡んで来ると逃げ回って減るのを待つ事が出来なくなったな。


「それでは試合開始です!!」

開始の合図と同時に一斉に得物を構えて手近な相手に襲いかかった。


「おっとっ⁉︎」

かく言う俺の方にも剣士というよりはゴロツキのような輩が襲いかかって来た。

「上手く避けたなにいちゃん?

悪く思うなよ、こういう場合は弱そうなのから叩くのが定石だからな」

俺はいいカモに見えたって事か、正解だよこのヤロー! ちっとは節約させろよ! 


しかし! 素のままであったとしてもこんな見るからにゴロツキみたいな奴に遅れを取るわけにはいかん!

「得物を出して無い時点でお前の負けだぜ!」

威勢よくゴロツキが振りかぶって来た。


師匠(孤児院のちびっこ)直伝『居合』!

俺はゴロツキの得物目掛けて抜刀した。

キィン! カラン!

甲高い音を響かせてゴロツキの刀身が二つに分かれて地面を転がった。

「なっ⁉︎」

ゴロツキが驚愕の表情を浮かべた。


「弱そうなだけで残念だったな。まだやる?」

刀をゴロツキに向けて捨て台詞を吐く。


「得物が折れちゃ話しにならねぇよ、参った降参だ」

ゴロツキは素直に負けを認めた。

見た目がアレなだけに素直なのが違和感全開だが、負けを認めたのでよしとしよう。

今ので周りも多少俺を警戒してくれたみたいだし、そういう意味ではゴロツキに感謝だな。


「早くも一人脱落だぁーっ! ハロルド殿! 先程のは一体何があったのでしょうか⁉︎」

「こちらでは珍しいな。

あの若者が使っているのは東方の刀というモノで、そちらでは先程の鞘に納めた状態から抜く事を『居合』と呼んでおる。

知らなければ構えていないと見る所じゃがそれは大きな間違いで、あの形から繰り出される剣速は通常よりも速いのじゃ」

「なるほど流石バトルマスターと言われるハロルド殿!」

爺さんこっちの話しじゃないのに詳しいな。


「中々面白い技だね? これは楽しみだ」

名も無き男が不敵な笑みを浮かべている。

声がこっちまで聞こえてるよ?

随分余裕そうだな? あの子だけが問題じゃなさそうな気がしてきたな。


そう言えば肝心のあの子はどうしてるだろうか?

あ、いた………何か食べてる? 舐めてるとこを見るに飴か何かか?

いやそんなことより何で誰も挑んで無いの? みんな紳士なの?


「ヒャッハー! ここはねぇちゃんみてぇなのが来るとこじゃねぇぜぇ! その首もらったァァ!」

そうでもなかった。

どこかの世紀末で言ってそうなセリフを吐きながらあの子に挑む奴がいた。


ビリッ!

「っ⁉︎」

世紀末な男が襲いかかろうとした瞬間、突如全身が痺れるような感覚に襲われた。


「はれ? か、から、だ、が動、か、ない? ひぎゃっ⁉︎」

秘孔でも突かれたような断末魔を残して世紀末な男が崩れ堕ちた。

実際やった事はあの子が鞘で動けないでいた世紀末な男の頭を叩いただけなのだが。


「食べてる時は静かにねぇ」

いやそれアナタだけだから!

他の方は試合中ですよ? それも本気の。


それより何だよ⁉︎ さっきの痺れるような感覚は⁉︎

世紀末な男も言ってたけど身体が硬直したみたいに動けなかったぞ⁉︎

他の参加者も同様の感想を持ったみたいだ。

俺と同じようなリアクションをしてるというより、なんか倒れてる奴までいるんだけどっ⁉︎

もしかしてさっきまではそのせいで誰も挑んで無かったのか⁉︎


「ああ〜っと! 一体何が起こったぁ⁉︎ 異国の服を身に纏った少女に襲いかかった暴漢が突如動きを停止! そして謎の昏倒が相次いだぁーっ!」

「これはまた……希少な使い手がおったもんじゃな。

しかもあのような娘がその域に達しているとは、俄には信じ難いのぉ」

「ハロルド殿! 今のは彼女がやった事だと⁉︎ 一体彼女は何をしたんですかっ⁉︎」


少しハロルドが考え込んだ末に司会のギャッツの方を振り向き睨んだ。

「ひっ⁉︎ あ、あのハロルド殿…な、何かお気に触る事でも⁉︎」


「おお〜すまんな。

簡単に言えば今と同じ事をあの娘がしたんじゃよ」

「ど、どう言う事ですか⁉︎」

「今、ワシに睨まれて怯んだじゃろ?

あの娘はそれよりもっと強い意志を一瞬に込めて暴漢に放ったんじゃよ。

他の倒れた奴らはたまたま近くにいてとばっちりを受けただけじゃな」

爺さん何言ってんだ⁉︎


「はっ? えっ? いやいやっ⁉︎ 待って下さいっ!

意志を込めるだけで人を倒したり出来るんですか⁉︎」

「殺気を放って相手に感じさせるぐらいはワシにも出来るが、動きを止めたり倒したりは無理じゃ。

最初に言ったじゃろ? 希少と。

東方での呼び名なんだったかのぉ……確か『剣気』だったかの?」

何だよ⁉︎ そのどこかの海賊や戦闘民族が使ってそうなやつはっ⁉︎


「…………はっ! 皆様大変申し訳ありません!

あまりの予想外の出来事に思わず司会を忘れてしまいました! 意志だけで人を圧倒するとはとんでもない実力者が混じっていたぁーっ!

果たして彼女を倒せる者はいるのでしょうかぁ!!」

いや、明らかに別格じゃねぇか!

勝てる気がしないんですけどっ⁉︎


「参加者は残り17名! 本戦に進むのは一体誰だぁーっ!!」


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