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6Day 〜テンプレ?〜


翌日俺達は予定通り都市バルトに到着した。


「お〜! すげぇ!」

周りを見るといるいる!

現実ではお目にかかれない動物型の獣人に人型の爬虫類といった定番種族が!

これぞ異世界!


只今都市バルトを全力で観光中である。

遊んでるわけじゃないよ?


話は少し前に遡る。


到着して少し寄り道した後でここに来た目的である武闘祭への参加申込の為、古代ローマのコロシアムのような場所を訪れた。


どっちかと言うと幸い、と言うべきなのかな?

本日は唯一のハズレ種目である魔法が開催されていた。

となると残りの日程ではハズレ種目無しで選べるという事だ。

じゃあ全部の日程で! とか思ったのだが、それは断念した。

一種目ごとに参加費用が金貨1枚必要だったからだ。

いくら経費が解放軍持ちとはいえなんか、ねぇ?

この辺が庶民って事なのかね。


ちなみに参加費には理由があった。

武闘祭は一般向けに開放されていて入場は大人子供関係なく一律大銀貨1枚と有料だ。

お金を払って観に来てるのに誰でも自由に参加可能になってしまうとその分消化試合が多くなり白けてしまうからだ。

せっかくお金を払ったのにお粗末な内容ばかりだと流行らないからな。


また参加者も安くない金額を支払うので賞金を目指して腕に覚えのある猛者が集まる。

そうなると負ける為に参加する者は自然と減る。

ごく稀にそういう者もいるが、参加者のレベルを考えると数秒で決着が着くので不満の声は上がっていない。


ここからは参加者向けにはなるのだが、観客の中には稀に他国の重鎮が優秀な人材を求めて観に来る事もあるらしい。

仮に優勝する事が出来なくても優秀だと判断されればスカウトを受ける事もあるらしく、参加者は後を絶たないらしい。

この辺が武闘祭が色んな種目に分類された所以でもあるらしい。

確かにピンポイントで能力が観れるんだから発掘もしやすい。


賞金だけじゃないって事ね。

参加費の50倍の賞金でも十分魅力はあるけど、付加価値でそんな事もあるならまぁ納得かな。

その上、国営博打という面も兼ねている。

ただ一般の人は殆ど手を出さないらしい。

どっちかと言えば貴族階級の娯楽になっているそうだ。


肝心のルールだが、

基本的には殺さずが原則。

そりゃそうだ一般向け、それも子供でも入場料を払えば観れるんだからそんな殺伐としたモンを公開するわけはない。

それ以外だと気絶と降参だけらしい。


ドクターストップが無いのに殺さずとはこれ如何に? と思ったが専属のヒーラーがいるらしく部位欠損以上でなければ治療は可能とか。

ただその分治療費は状況によって請求される。

その辺は自己責任というわけだ。

嫌なら降参しとけと。


全部女将さんの受け売りだけどね。


そして気になる明日の予定は『格闘』と書かれていた。

………パスかな。

ぶっちゃけ加減が分からん。


その翌日は『剣、異種族』と書かれていたので明後日にエントリーした。

剣なら武器破壊すればなんとかなるでしょ?

それか寸止め、峰打ち辺り。

ある程度の力の差を見せればここに集まった猛者なら察する事が出来るだろうし。


余談だがエントリーした時に受付嬢に怪訝な顔をされた。

氏名と職業と得物など諸々書く必要があったんだが、まぁしょうがない…だって職業旅人ですから。

残念ながら? テンプレな絡みは無かった。

職業は受付嬢しか見てないから当然ではあるが。

どこぞの世界では職業を大声でバラす受付嬢もいるというのにこちらは随分常識的なようだ。


という事で特別イベントも発生しなかったのでマッピングも兼ねて今に至るというわけだ。

今の所踏破率は10%。

今日一日で踏破するのは難しそうだ。

感覚的には王都フリードより大きいかなぁ?


そう言えば王都の街って実際には踏破して無いな?

ミクそこら辺どうなの?

《地図を見たせいですね》

地図? そう言えば見たような…………でも王都以外は踏破扱いにならなかったよ?


《それは地図が精密じゃないからですね。

私の機能は実態と一致していれば地図でも踏破可能です。

マスターが見た地図は寸分の狂いも無いモノだったと思います。

この世界にはコピー機と言うモノは存在しないので複写品だとどうしても微妙なズレが生じる為踏破になりません》


要は原本じゃないとダメって事ね。

最初は意味不明過ぎて困ってたのに今頃になって謎が解けるなんてこの職業ナビが無いと成立しないじゃん。

《私の重要性を理解頂けて何よりです》

ホントこれからも頼りにしてます。


グゥゥ〜。

腹の音が鳴った。

《マスター…》

しょうがないでしょ! お腹は減るもんだよ!

それにやけに食べ物の屋台が多いし!


「腹が減る気持ちも分かるよ。

今はちょうど武闘祭が終わった時間だからね。

観客達で溢れる時間でもあるから当然さ」

「なるほどそういう狙いって事ですか」

「特に魔法戦は普段見ないし派手だから客の入りもいいからね」

そりゃそうだ。

街中でドンパチやるような輩はそうそういないだろうしな。


魔法戦かぁ……この世界の本格的な魔法がどんなモノか観たかったけどお預けだな。


ガシャァンッ!

突然横の店から何かが割れる音が響き続いて怒号が聞こえた。

「ふざけんなよっ! 何で俺がこんなとこで負けんだよ!」


このセリフでこれはアレか。

武闘祭参加者が酔った勢いで荒れてるってやつか?

「これは別に珍しくはないね。

殆ど毎日開催されてればこういう事もあるさ」

「かと言って見て見ぬふりをするのもなぁ」

「止めはしないけど、下手に首を突っ込んで試合前に怪我しないでおくれよ?

今日はちょっと面倒な日だから…」

と言われてもこういうのもテンプレの一種だし、見てみたい思いが強い。

女将さんの言う面倒なって言うのは少し引っ掛かるが、さっきの受付ではイベントが発生しなかったしな。


扉を開けて中を覗いてみる。

店の奥にはカウンター席があり、手前にはいくつかの丸テーブル席がある。

そのうちの一つのテーブルに皆の視線が集まっていた。

男の周りには割れたグラスらしき破片が散乱していた。

どうやらアレが騒ぎの元凶のようだ。


年齢は20ぐらいか?

武器防具の類は持ってないな。

まぁその辺の年齢だと自分を過信する時でもあるからな。


「お、お客様、て、店内ではお静かに…」

お〜、店員らしきおっちゃんが勇敢にも嗜めてる。

こういうのが珍しく無いってのはホントなんだな。

大抵遠巻きに見てるか絡まれて悲鳴を上げてるイメージだったんだが。


「あ? うるせぇよっ⁉︎  文句あんのかっ⁉︎」

いやあるだろ、むしろ文句しか無いだろ?


「で、ですから、その店内では…」

「あるってことでいいみたいだなっ⁉︎」

「い、いえ! その…」

慣れているとはいえここらが一般人の限界だろう、それでも頑張った方だと思う。


「ちょっ…」

「うるさいよぉ、飲食店ではお静かにぃ」

俺が止めに入る前にカウンター席から場違いなのんびりした調子の声が届いた。


「何だぁ⁉︎ 俺に向かって何か言った奴はどいつだっ⁉︎」

男が声の発生源を求めて振り返る。

それに釣られて俺もそちらに視線を向ける。


そこにはこちらを向きながらのんびりと串に刺さった団子らしきモノを食べている女の子がいた。

「今のはテメェかっ⁉︎」

ふふふぁいなぁ(うるさいなぁ)

食べながら喋った為、何を言ったかは分からないがニュアンスは感じとれた。


「テメェいい度胸してんじゃねぇかっ!」

「んぐん」

男のセリフを無視して女の子が団子を飲み込んだ。

「て、てめぇ! 完全に舐めてやがるな! 消し炭にしてやるっ! 炎よっ!」


ボウッ!

男の手から火が出た。

「きゃあっ⁉︎」

「うわあっ⁉︎」

周りにいた客達から驚きと悲鳴が上がる。

俺も声こそ上げなかったが同様に驚いた。


「あ〜、やっぱり今日はそういう奴だったか」

それを見て女将さんが声を上げた。

「女将さん! そういうってどういう事ですか⁉︎」

「今日はほら武闘祭の種目が魔法だろ。

十中八九やけ酒してる奴なんて負けた奴だろ」

あ、最初に女将さんが面倒な日って言ってたのはそういう事かぁ。

流石だなぁ、そんな事全然考えて無かった。


……いやいや⁉︎ 悠長に関心してる場合じゃないだろ⁉︎

魔法を街中(店内だけど)で放つなんてダメだろっ⁉︎

男として女の子を助けねばっ!

男と女の子の間に入ろうと動いた瞬間。


「ズズゥ〜」

のんびりと飲み物を啜る音が響き一瞬の静寂が訪れた。


「よぉし! よく分かった! 二度と目が覚めないようにしてやるよっ!!」

あっかーんっ! 場違いなリアクションに動くのを忘れてしまった! ミク!『夢現』!

俺が即座に挽回しようとミクに頼んだ。


その間にも男が手に纏った火を女の子に向けて放とうとしている。

「っ⁉︎」

今にも火を放とうとした男が言葉を失い動きを止めた。

それと同時に俺も動きを止めた。


「ここは店内、火遊びなら外でやりなよ」

「ーっ⁉︎」

男は声を上げる事が出来ないでいた。

俺も周りも一切声を発していない、いや出来ない。


女の子は既にカウンター席にはおらず男の目の前にいた。

それも先程咥えていた串を男の眼球間近で止めた状態で。

誰かがくしゃみ一つすれば間違って目に刺さってしまいそうだ。


いつ動いた⁉︎

俺には女の子の動きが全く見えなかった。

女将さんを見るが驚きの表情をしているので、見えなかったのは俺だけじゃ無いみたいだ。


男が一言も発せず冷や汗を滝のように流している。

赤かった顔も今や真っ青だ。

「場所が分からないならこの目はいらないかなぁ?」

口調は変わらずのんびりとしていたがセリフが全く一致していない。

それに有無を言わせぬ迫力があった。

女の子が串を手前に引くと男が首を左右に大きく振った。


「じゃあ割ったモノは弁償して静かにねぇ」

男はコクコクと首を振ってその場に膝から崩れ落ちた。


女の子はそのままカウンターへと戻って店員に声を掛けた。

「ねぇ〜、これでいい?」

「あ、ああ」

「やたっ!」

店員の反応に女の子が小さく喜ぶ。


店員が一度引っ込み女の子に紙の包みを差し出した。

女の子が紙の中身を確認して微笑んだ。

「おじさんありがとね」

「いや、お礼を言うのはこっちの方だよ。ありがとよ」

女の子はご機嫌で紙の中身の一つを取り出した。

それは先程食べていた団子だった。


「えへへ〜んじゃね〜、んぐ」

女の子は店員に挨拶して団子を頬張った。

そのまま扉に向かって進んだのだが、俺の横を通り過ぎる手前で立ち止まった。


「にぃさん、止めようとしてくれてありがとね」

「っ⁉︎」

正確には動こうとした、だ。

まだ明確な行動にはなっていないはずだった。


「にぃさんも私と同じ出身かな?

でもその感じだと危ない事は止した方がいいかもぉ、んぐ」

話ながら団子をもうひと齧り。


話しながら食うなよ。

それより気になる事を言ったな?

「……同じ、出身?」

ふぁれ(あれ)? んぐぐ、違った? それ刀でしょ?」

女の子が目線で俺の刀を指した後自分の腰に目線を写した。

それを受けて俺も視線を女の子の腰にぶら下がっているモノに視線を移した。


「ああ、そうだけど? そっちも?」

「そうだよぉ〜、こっちでコレを使ってる人は見た事無いからてっきりそうだと思ったけど、あむ」

言い終わってまた団子を頬張る。


確かムジカが東方で仕入れたって言ってたな?

となると出身ってのはその事か?

日本の文化に近いのかな?

服装も着物の名残がある感じだな大分アレンジが加わってるみたいだが。

着物特有の小振袖になった羽織に上半身は裾よけみたいな長襦袢を腰の帯で締めている。

下は……フリル…とは違うか……こう言うのって、えっと……ララ・スカートって言うんだったか? で草履と。


「あ〜、出身はこっち側かな?」

最初はフリードだし。

ふぉふぁの(そうなの)? んぐんぐ、まぁいいや。じゃねぇ〜」


そう言い残してその場を去って行こうとした。

「あ、そうだ」

が、何かを思い出したように踵を返してまだ膝立ちになっている男の元へしゃがみ込んで先程の串を顔に向けた。


「ひっ⁉︎」

可哀想な事に完全にビビってしまっている。

自業自得だから可哀想ではないか。


「ちゃんと弁償しなよぉ」

「は、はひぃっ!!」

「ん、よろしぃ〜」

「んんっ‼︎⁉︎」

男の口に串が差し込まれた。

そうして女の子はご機嫌な音符でも周りに撒き散らすように店を出て行った。


その後、男は店の店員に謝り割ったグラスの弁償をしていた。


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