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5.8Day 〜良い夢路を〜


「今っ!」

「ーーーっ⁉︎」

キィッ!

「ヴォォォッ⁉︎」

もう何度目か分からないやり取りを繰り返した。

20を超えてからは数えてない。


最初は掴まって! と言ってたんだが、次第に掴んで! 今です! という感じでコレに至るというわけだ。

アリシアさんなんてもう返事すらしない。

でもしっかり掴んでくれてるから問題無かったけどね。


その甲斐あってようやくゴーレムの足首の半分まで斬る事が出来た。

片足だけだがコレで十分! 後は引っ掻き回すだけで!

斬りつけた足が軸になるように前後左右にゴーレムを翻弄する。

そして無謀にも反対の足で踏み付けようと足を持ち上げた瞬間!

「今っ!」

「ーーーっ!」


ギキィンッ!

ダメ押しで連撃を叩き込む。

ビキビキビキビキッ!

片足に重心がかかった所にダメ押しした事により一気に亀裂が入り出した。


「ヴォオッ⁉︎」

ゴーレムの片足が崩壊しバランスを崩した。

そのまま維持出来ずに横倒しに倒れて来た。

が、俺はいつまでもそんな位置にはいない。

既に退避済みだ。


ズドォォォンッ!!

盛大な音を立ててゴーレムが横転した。


「ォォォォ…」

ゴーレムがどことなく悲しそうな声を上げている。

機能は停止しないな、足が崩れただけだし当然か。


「アリシアさん立てますか?」

「は、はい」

返事を聞いてアリシアさんを降ろす。

アリシアさんはやっと地に足が着いて安心したのか大きく息を吸っていた。

顔は赤いが…まぁ大丈夫だろう。


ドンッ!

ゴーレムがもがいているが立ち上がって来る様子は無い。

このまま放置でいいのか?

でも足一つであんな苦労したからなぁ、出来ればもう触れたくないんだが…。


ドンッ!

害は無さそうだからとりあえず無視だな。

まずはこれでちゃんと解放出来た事になるのか確認しよう。


「アリシアさん」

捕らえられていた本人に聞くのが一番いいかと思って声をかけたんだが……。

「私からあんな……でも非常時だし……いえでも……」


…………う〜ん、何やらお取り込み中のようだ。

こちらの呼びかけに気付いていない。


ドンッ!

アイツがうるさいせいか?

「……助けて頂いたのは事実ですし……でもそれとコレとは……」

「アリシアさーん」

「ひゃっ⁉︎」

可愛らしい声を上げて反応が返って来た。


「お取り込み中の所すみません。

これでアリシアさんは大丈夫ですか?」

「大丈夫…では」

ドンッ!


ウルセェな! アイツ!

アリシアさんが喋ってんのに!

というより大丈夫じゃないって言いかけて無かったか?

「……あんな……それに何度も…ーーっ!」

あれ? 顔を手で覆ってしまった?

それにまた真っ赤になってる?


ドンッ!

………………マジでウルセェな。

大丈夫じゃないならやっぱあのゴーレムをなんとかしなきゃいけないのか?

「アリシアさんアレってほっといても大丈夫ですか?」

念の為ゴーレムを指差して聞いてみる。


「え? あっ! ご、ゴーレムですね! えと、確か核となる部分があるはずです! 人型であれば心臓の位置が一般的です!」

へぇそうなんだ。

ほっといていいかどうかを聞いたつもりだったんだが、まぁいいか。

心臓の位置か…、今なら難なく辿り着けるな。


んじゃちょっと行ってみますか。

と、その前にアリシアさんも連れて行くか。

ゴーレム以外に何か出て来ても困るしな。

今のコイツなら何も出来ないだろうから側にいてもらうのが一番安全だ。

「じゃあアリシアさんも一緒に行きましょう。

何が出て来るかわからないので」

「そ、そうですね!」

アリシアさんが先に歩き出した。


「あ、ちょっとアリシアさん!」

「ど、どうしました⁉︎」

「いや俺が運びますよ」

「い、いえっ! そそそんな、お手数をおかけするわけには行きません!」

勢いよく遠慮してくるアリシアさん。

う〜ん、でもなぁ………。


「さ、さぁ! 悠生様! 行きましょう!」

「いや、あの……、アリシアさん……コレ登れます?」

「えっ?」

ゴーレムに振り返るアリシアさん。

「……………………」

「……………………」

ドンッ!


2人の間に流れる沈黙、そしてゴーレムのもがく音が響いた。


俯いたアリシアさんがか細い声で言った。

「……………ます」

「え?」

「……お願い……します」

「あ、分かりました。では失礼しますね?」

コクコクと頷くアリシアさん、顔は真っ赤だ。

まぁ、先頭を切った手前恥ずかしいだろうな。


そして俺はアリシアさんを抱えた。

「ーーーっ⁉︎」

また声無き悲鳴が聞こえた気がしたが……気のせいだろう。

そして俺はゴーレムの崩れた足の方から心臓部へと向かった。



▽▽▽▽▽



「えっと…、この辺りが心臓部だと思うんだけど…」

ドンッ!

「っと」

アリシアさんをしっかりと掴む。

「ーーーっ⁉︎」

ゴーレムは相変わらずもがいている。


登った後すぐにアリシアさんが降りると言ったのだが、振動が伝わって来る度に転けそうになったので俺が抱えたまま心臓部を目指していたりする。


暫く辺りを見回していると黄土色のゴーレムと違う色合いの部分を見つけた。

近づいて見てみる。

「もしかしてコレが核? このデカさでコレなの?」

そこには人差し指と親指でつまめる程度のモノが埋め込まれていた。


「おそらくコレで間違い無いと思います」

アリシアさんのお墨付きも出た。

でもコレどっかで見た事あるような?


レッド・ブルー・イエローを組み合わせたステンドグラス風のカラフルなデザイン…。

《現実でアリシアが付けてたイヤーカフですね》

あ! それだ!

しかもアリシアさんが意識封じられる時に渡されたヤツじゃん!

そんなもんぶっ壊す一択だ!


俺はアリシアさんを降ろし刀をゴーレムの核と化したイヤーカフに突き立てた。

パリン!という音を響かせて砕け散った直後。

「ヴオオオオーッ!!!」

ゴーレムが断末魔の声を上げて爆散した。


「あ」

「え? きゃあっ⁉︎」

俺達がいたのはゴーレムの上だ。

爆散したらどうなるか、お察し頂けるだろう。


「失礼」

「ーーーーーっ⁉︎」

俺はアリシアさんの手を引いて引き寄せて再度抱える。

またも声無き悲鳴が聞こえた気がしたが、今回は足場が急に無くなったからアリシアさんの悲鳴だろうと勝手に納得した。


難なく着地してアリシアさんを降ろす。

「もう大丈夫ですよ」

「は、はぃぃ」

大丈夫そうでは無いな。

突然足場が消えるなんて現実には落とし穴以外に無いだろうしな。


ピキピキッ、ピキピキ!

「「っ⁉︎」」

完全に終わったと思った矢先に何かにヒビが入るような音が耳に届いた。

アリシアさんの反応をみるに空耳では無さそうだ。

どこだっ⁉︎


ビキビキビキキッ!

「「っ⁉︎」」

次の音がした時には発生箇所が判明した。

探す必要はどこにも無かった。

何故なら周りも地面もそして空ですらヒビが入っていたからだ。


ガシャァァンッ!!!

ガラスが砕け散るような音を響かせて世界が砕けた。

「「っ⁉︎」」

咄嗟にアリシアさんを引き寄せる。

アリシアさんも今回ばかりは何も言わなくても俺を掴んでいる。


「あれ?」

さっきの比では無い足場の喪失には驚いたが、いつまで経っても落下する感覚が訪れなかった。

重力を感じない? なんかフワフワ浮いているような?

「何だ? 宇宙にでも放り出されたか?」

「『うちゅう』…とは?」

聞き慣れない単語にアリシアさんが聞き返して来た。


「あ〜、えっと…俺のいた世界での特別な場所…ですね」

上手く説明する自信が無くてそんな事を言ってしまった。


だって重力とか空気とか乗り物とかの説明に広がりそうだもん。

それは前回の電波で懲りている。

幸いアリシアさんがそれを追求してくる事も無く、キョロキョロと周りを見ている。


暫く周りを見ていたアリシアさんが危険が無さそうと判断したのかホッと一息してもたれかかって来た。

「っ⁉︎」

のも束の間一瞬にして俺から離れた。


「す! すみません! わ、私とした事が悠生様に粗相をっ!」

光の速さを追い越しそうな勢いで頭を下げて来た。

粗相をされた覚えは無いのだが?

それより気になる事があったので軽く流して聞いてみる事にする。


「いえ大丈夫ですよ、それよりアリシアさんよく動けましたね? 俺今の状態だと浮いてるみたいで上手く動けないんですけど?」

「え?」

アリシアさんは全く意味が分からないといった声を上げたが、少しして周りの状況を思い出したらしい。


「私…今どうやって? ただ離れなきゃと思って…でも地面が無い…」

アリシアさんが独り言のように呟いた直後。

「「っ⁉︎」」

なんの前触れもなく足元に白い地面が視界一杯に広がった。


足に確かな感触が伝わる。

「あ、地面だ。…これなら動ける」

俺は突如現れた地面の感触を確かめてみた。

「何故急に地面が? それに何もない空間だったのに…街が無くなったのも一体…?」


アリシアさんの言葉の後、2人揃って声を発した。

「「は?」」

いつの間にか先程砕け散った街並みが広がっていて周りは人々の喧騒で溢れていた。


「えっ⁉︎ 何コレ⁉︎」

しばらくその光景に唖然としていたが。

「…これ、は……っ!」

「あ! ちょっとアリシアさん⁉︎」

突然アリシアさんが走り出した。

慌てて俺もついて行く。


突然現れた人々は何事かと言う感じで走り去って行くアリシアさんを見送っている。

そして追う俺、しかし違和感を感じる…これは…俺の存在に気づいていない?


何だこれは? さっきまでとは雰囲気が違う。

それに俺が知ってるフリードの街とも活気が別物だ。


脇目も振らず走って行くアリシアさんを追いかけ続け辿り着いたのは王城だった。

城門の前には兵士が2人。

兵士という時点で俺的には良い思い出は無い。

ただそれは杞憂だったようで兵士はアリシアさんの姿を確認すると敬礼の姿勢をとった。


アリシアさんが通り過ぎて行くのを俺も追従して追いかける。

本来なら間違いなく御用になっているだろう。

見た目は逃げるアリシアさんを追う見知らぬ男という図式だからな。

しかし兵士達は俺には目線もくれる事はなかった。

この点を考えるとやっぱり俺は存在していないような扱いになっているようだ。


そのままアリシアさんは謁見の間に向かい扉を勢いよく開けた。

謁見の間には3人の姿があった。


中央にいる1人はおそらく王様、少し白髪が混じっているが長めの癖毛で茶髪、アリシアさんと同じ碧眼。

隣にいる女性は妃か? アリシアさんと同じ腰まである金髪に青い瞳。

そしてもう1人はアリシアさんより少し年上に見えるからおそらく寝言で言っていた兄だろうか?

肩まである茶髪に青い瞳荒事は苦手そうな印象を受ける。

いずれも皆スラっとした体型をしている。

どこかで出会ったブタとはえらい違いだ。


「っ⁉︎」

アリシアさんは3人の姿を見て一瞬立ち止まったが、直ぐに走り出した。


「アリシアじゃないか? どうしたんだ? そんなに慌てて?」

走って来るアリシアさんを見て王様が声をかけた。


「お父様っ!」

そのままの勢いでアリシアさんが王様に抱きついた。

王様がアリシアさんを受け止めて何事かと言った顔をしている。


「アリシアどうしたの?」

その様子を見た王妃様もアリシアさんに声をかける。

「お母様っ!」

アリシアさんが涙声で今度は王妃様に抱きついた。


「あらあら、どうしたのかしら?」

王妃様は困惑しながらも抱きついたアリシアさんの背をポンポンと壊れ物を扱うように優しく叩いた。


「アリシア何かあったのかい?」

その様子を見た王子様がアリシアさんの頭を撫でながら訪ねる。

「っ! お兄様っ! うう、うああぁぁ!」

そしてアリシアさんはそれ以上言葉を発する事なく泣き出した。


3人は急に飛び込んで来たアリシアさんに驚きながらも優しくアリシアさんを宥めていた。


ミク…これってもう大丈夫、だよな?

《はい、先程までの現象を考えるとアリシアの意志で世界が創造されています。悪夢から解放されたとみて間違いないでしょう》

やっぱそうか、良い家族だ。

これがアリシアさんが夢で望んだ光景、か。


現実では家族を人質にとられ圧政で民を苦しめ、逃亡者には追手を挙げ句の果てには魔族の戦力強化を強制的に加担させられ、夢の中ではずっと囚われの身でそんなのを見せ続けられ、その状況を何年も一人で耐えてそれでも助けを求め続けてたんだ。

まだ決着はついてないけど束の間の夢を見るぐらいはいいよな。


俺は静かに謁見の間から出て行った。

ミク戻ろうと思うんだけど。

《アリシアに事情を説明しなくていいんですか?》


何年か振りに良い夢見れてるんだしそんな無粋な事はしないよ。

《それもそうですね。では戻りましょう『夢旅行』発動します》

ミクの言葉の後、来た時と同じ意識がどこかに吸い込まれるような感覚を覚えた。


じゃあアリシアさんまた現実で、良い夢路を。


心中で言い残してアリシアさんの夢を後にした。


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