4Day 〜お金の稼ぎ方を聞こう②〜
井戸の中とか…なんだか昔のRPGにありそうなシチュエーションだな。
今でもあるのかもしれんがそこまで明るくないから分からんけどね。
流石に社会人になってゲーム三昧は無理だよ。
理想ではあるけど。
《引きこもり願望丸出しですね》
そりゃそうでしょ?
理想は好きな事やって生活する方が楽だもん。
その為に仕事してたんだし。
まぁ仕事辞める頃には手遅れだっただろうけどね。
そう考えるとやっぱ好きな事を仕事に出来るのが一番いいと思うよ?
今はそこからだいぶかけ離れてるけど…。
《夢の異世界生活ですね》
…夢は夢のままであって欲しかったよ。
みんな色んなチートを使って思い思いに無双してるのにさぁ。
リアルの異世界生活は甘くないよ。
主人公補正無いんだもん、マジで辛口だよ。
《マスター私と言う者がいながらそんな事を言うんですか⁉︎》
いや、アリシアさんと同じ声でそんな事言わないで。
そこだけ切り取ったら俺が極悪人みたいじゃん。
《冗談はさておき、そろそろどうするか決めませんか?》
あまり冗談に聞こえなかったんだが?
でも真剣にこれはどうするべきか、医者が井戸の中に消えるという珍事。
元の世界なら事故以外の何でも無い事態だが、異世界、しかも何処かに繋がっているとなると怪しさしかない。
でもなぁ〜、別に危害を加えられた訳じゃないからなぁ。
まだ医者が黒と決まった訳では無いし。
《危険は無い……と?》
そう思ってる、てか思いたい、そうであって欲しい。
《戻って来るのを待つ、という選択肢もありますよ?》
普通の物語ならあり得ない選択肢だな。
《という事は行くんですね?》
宛ても無いし話が進まないしね。
んじゃ行きますか。
そう思い歩を進める事数歩のところでミクに声をかけられた。
《あの? マスター? そっちは孤児院の出口ですが?》
ん? 合ってるよ?
《井戸の中に行くのでは?》
なんで? 行くのは宿だよ? だって普通の物語じゃないからね。
俺の選択肢は『戻って来るのを待つ』だよ。
話が進まないとか誰に向けてだよ?
旅人が危険を冒しちゃいかんでしょ?
《………………》
ミクの無言の圧を跳ね除けて宿まで戻って来ました。
部屋には未だ目覚めぬアリシアさんと横に丸まっているビャッコのみ。
さて、これからの事を考えようか。
《世の読者を完全に無視した割にはアッサリしてますね》
なんの話してんの? 物語じゃないし現実だよ?
それよりミク。あのギドって医者が孤児院の井戸から出て来たかどうかってわかる?
《…まぁいいでしょう。ギドという医者ならリスト登録者なので分かりますよ》
じゃあ出て来たら教えてよ、女将さんのこと聞きに行くから。
《分かりました》
そして日が暮れた頃。
ミクぅ〜、まだぁ〜?
《何度目ですか? 戻って来たらちゃんとお伝えしますよ》
いや遅くね? 井戸に入って行ったのって早朝だよ?
《私に言われても知りませんよ、マスターがセオリーを無視した選択するからじゃないですか?》
いやいや! セオリーを守ったからと言って話が進む保証も無いでしょ!
というよりこの場合はどう考えても危険フラグの色が濃くなってるでしょ⁉︎
《もしくは底無し井戸でお亡くなりになっているか》
怖い事言わないでよ!
もしかしたら俺も同じ運命辿ってたかもしれないのに!
イベント臭いっぱいの井戸に入ってゲームオーバーってどんな糞ゲーだよ!
そんなのが許されるのは某有名横スクロールゲームだけだよ!
《今はだいぶ進化してますけどね》
そだね。3D酔いしそうだったよ。
そのせいでやりたいゲームが3Dで出た時は泣く泣く断念したよ。
《マスターのそんなどうでもいい過去は置いておくとして》
今となってはどうにもならないから、どうでもいいと言われればその通りなんだが……複雑な気分だな。
《そんなマスターに朗報です。ギドが井戸から出て来ましたよ》
お? やっとか…と言ってももう夜だな。
《今日はやめておきますか?》
いや行くよ。
ただ、戻ったと同時に行くのは怪しいから少し時間を置こうか。
取り敢えず宿で夕食取ってからにしよう。
不幸中の幸いと言うべきか明日までの分は既に支払い済みなので宿と食事に困る事は無い。
来た時に乗っけてもらった商人さんが帰るのに合わせて支払いは終わらせてあるのだ。(もちろん支払いはアリシアさんが)
その後、タダ飯を食べてからギドがいるであろう場所へと向かう。
《相変わらず締まらないですね》
言われる度に凹むんですけど?
《事実ですから、早く脱却して下さいね》
声が一緒だからアリシアさんの言葉を代弁しているように聞こえてダメージが深くなってるよ。
アリシアさん、いつか出世したらお返しします。
そんな事を心の中で強く思っていると。
《フラグですか?》
いやそれマジでダメだから。
《破滅へのカウントダウンですね》
ダメな秒読みじゃん! 何かのタイトルみたいに言えばいいってもんじゃないでしょ!
悪役に使えばカッコいいかもしれないけど俺の事だよね⁉︎
《マスター、ドンマイです》
いや大丈夫じゃないよ! 気になるよ!
《ほら、マスターそろそろ着きますよ。奥に見える白い建物です》
そんないつものやりとりをしていると一軒だけ白い石造りの建物が目に入った。
町の診療所って感じか。
まぁ、この世界に元の世界みたいな病院施設があるかは知らないが。
扉を開けて中を覗いてみる。
小さいながらもイメージ通りの診療所の待合室みたいな感じになっている。
そこには誰もいなかった。
うん、人が居ないのは良いことだ、病気や怪我人がいないって事だから、職としては不景気だから収入が無いという点では複雑かもしれないが。
いるのは分かっているのだが一応。
「すみませ〜ん、誰か居ませんかぁ〜」
……………………。
返答が無いな?
ミク? いるんだよね?
《いますね》
ふむ?
「すんませ〜ん! 誰か居ませんか!」
先ほどより大きな声で呼びかけてみる。
少し間を置いて奥から声が返って来た。
「………誰だい? こんな夜中に」
ここ一応病院でしょ?
急患が来る事が無いのか?
それはそれで平和だからいいんだろうが。
そんな事を思っていると、初めて会った時同様の寝癖のついた頭をしてギドが現れた。
そしてギドがしばらく俺を見て口を開いた。
「………ホントに誰? 急患?」
寝てたのかよ! 最初のやつは聞こえて無かっただけかよ!
そして俺の事覚えてねぇーー⁉︎
いや俺も人の顔覚えるの得意じゃないから責められないけどさぁ。
しかも初めて会った時と全く同じ感想言って来てるし…。
「昨日の晩、連れの女の子を見て頂いた者です」
「……………ああ、女将さんに連れて行かれた時の。どうしたの? 女の子に何かあった?」
だいぶ反応するまで間があったな?
記憶の彼方ってことか?
「いえ、そう言う訳じゃ無いです。昨日は急な診察ありがとうございました」
「構わないよ。それが仕事だしね。それじゃあ今日はどう言った要件かな? 診た感じ健康そうだけど? 他に急病人がいるという訳でも無さそうだね?」
女将さんが腕は良いという所以はこういう部分も含めてなんだろうな。
見た目はどうあれ医者としての機能は果たしているらしい。
「今日はこの間のお礼と女将さんの行方を知らないかなと思いまして」
「お礼なんていいよ。医者が患者を診るのは当たり前だし、ただ女将さんの行方って言うのは残念ながら心当たりが無いけど、どうかしたのかい?」
「そうですか。ちょっと相談事があったんで探してたんですけど町にいないみたいだったんでここならもしかしたら行方を知ってるかなと思ったんですが」
「あいにく女将さんとは前回会ったのが久々でね。まぁ医者と頻繁に会うなんて良い事じゃないから喜ばしい事ではあるけどね」
普通そうですよね。
よく会うって事はちょくちょく病気や怪我してるって事ですもんね。
「夜分にすみませんでした。それとありがとうございました」
「いいよ。何かあったらまたおいで。でも急ぎじゃ無ければ昼過ぎにね」
……微妙に本音が混じってるな。
「はい、ありがとうございます」
そう言ってギドの診療所を後にした。
《振り出しに戻りましたね》
女将さんの手掛かり無しだもんなぁ。
気が進まないけど行くしか無いか。
一旦宿に戻り、入用になりそうなモノを宿で拝借して孤児院へと向かった。




