3Day 〜言葉には気をつけよう〜
そんなのどうすりゃいいんだよ⁉︎
《入り口があった場所を調べて見るしか無いと思います》
となると戻るって事か。
しかし疲れ切っているアリシアさんにそんな残酷な事俺には言えない!
「ヴァウ」
おお、お前もそう思うか!
《共感はそのぐらいにしてどうしますか?》
ん〜そうなんだよな……あ、ちょっといい事考えついた。
「ビャッコ、ちょっとこっちこっち」
「ヴァ?」
ビャッコに声を掛けて手招きすると首を傾げながらもこちらに近づいて来た。
「ビャッコ、でっかくなってアリシアさんを乗せたり出来ないのか?」
「ヴァウゥゥ…」
ありゃ? 元気の無い返事が返って来た。
「申し訳ありませんがそれは難しいですね。あの姿は非常に魔力の消費が激しいので長くは持ちません」
あら? アリシアさんに聞こえてた?
じゃあこの姿は省エネモードって事なんだ。
まぁ、あれを見ると納得も出来るか。
これはいよいよ最終手段の『配達』の出番かもしれない。
ミク、ビャッコも一人ってカウントするの?
《します》
となると……。
「アリシアさんビャッコって呼んだり戻したり自由に出来るんですか?」
「いえ、一度呼んでしまうと2週間ほどはこちらに顕現したままになります」
おぉう、八方塞がり。
でもまぁビャッコに無双してもらえればなんとかなるのか?
「でもまぁ、いざとなればビャッコがいるから大丈夫か」
「それも万全では無いですね」
「どうしてです?」
何か問題が?
「こちら側だとビャッコの魔力が回復しないのです。ですので今ある分を上手く調整しないと身を守る手段が無くなってしまいます。
無理矢理戻す事も出来ますが、その場合は再召喚に必要な期間と魔力が増えてしまい最悪の場合再召喚に必要な魔力量が私の限界値を超えて召喚出来なくなってしまいます」
強い力を持っていても使い過ぎるとやられるし、次の召喚に影響が出ると…。
ビャッコが無尽蔵に暴れられたら大変だもんなぁ。
中々調節が難しいようだ。
参ったな、『配達』で全員送れない上にビャッコ無双も期待出来ないと。
ミク、『配達』ってバレて機能しないとかってある?
《問題ありません》
それは大丈夫なのか。
恥を忍んでアリシアさんにお金借りるか。
いやなんかもう完全にヒモだよなぁ。
すっごい抵抗ある。
「ヴァウ!」
俺が悩んでいるとビャッコが吠えた。
「どうした? ビャッコ?」
「悠生様、また何か来ます」
んな⁉︎ こっちは休憩中だぞ! 空気読めよ!
…いやむしろ読んでるからこそ今来たのか?
それだとアーミーアントより厄介なヤツが出て来そうなんだが。
脇道からガサガサという音が俺の耳にも聞こえて来た……しかも複数。
うわぁ〜、二度目のやな予感。
鬼が出るか蛇が出るか。
……あ、やっぱ今の無し! フラグ立てた気がする!
と思った矢先に姿を現したのは。
………人間?……じゃないですね、人間だったらエライ事ですね。
暗いから正確な色は分からないが、皮膚が青、赤、紫といった色をしており、間違いなくバッドステータスに汚染されているようなカラーをしている。
しかしそうじゃないと言わんばかりに頭もしくは額に1本から3本の角を生やしている方々が現れた。
…俺の記憶だと間違いなくこの方々は鬼って呼ばれてるんですが。
「アリシアさんあちらの方々って」
現れた鬼達から視線を逸らさないようにしてアリシアさんに聞いてみた。
「…魔族、それも鬼人族、だと思います」
鬼って魔族に分類されてるんだ。
それよりも絶対に出会いたくない存在とエンカウトしちゃったんですけど⁉︎
やべぇよ! やべぇよ‼︎
棍棒持ってる鬼ならなんかまだ可愛げがあったかもしれないけど、皆さんなんか普通に刃物をお持ちなんですけど⁉︎
大剣を片手に持った紫鬼が一歩踏み出て来た。
俺は即座に抜刀して構えを取ったが、その時には既に目の前に刃が迫って来ていた。
「がっ⁉︎」
ガキンッ!という刃物と刃物がぶつかる音がした後に俺は吹き飛ばされた先にある木に叩きつけられた。
「悠生様⁉︎ ビャッコ!」
「ヴァウ⁉︎」
動こうとしたビャッコの前に俺を吹き飛ばした紫鬼が立ちはだかった。
俺は意識を失いこそしなかったが、痛みで動けなくなっていた。
いってぇ! 問答無用かよ⁉︎ てか会話成立すんのか⁉︎
それより動きが見えなかった⁉︎
構えた所にたまたま剣が当たったお陰で助かったが、吹っ飛ばされるってなんだよ⁉︎
力が違い過ぎるだろ! ちょっとステータスが上がった程度で勝てる相手じゃねぇぞ!
そんなとこでイメージ通りの強さ発揮してんじゃねぇよ!
他のヤツもあんなに強いのか⁉︎
なんとか木に背中を預けながら立ち上がったが、目の前には他の鬼達がこちらを伺っている。
すぐに襲って来る事は無さそうだが、変な動きしたら襲って来そうだな。
そうでなくても痛みで身動き出来そうにないが。
ビャッコの方を気にしてる感じがするのは雑魚に用は無いってことか?
舐められてるが全くもってその通りだよくそが!
「ヴァウ!」
ビャッコが光を放ち巨大化しながら紫鬼に飛び掛かり前足を振り下ろした。
ガギッ!という音が周囲に響いた。
「ヴァッ⁉︎」
マジかよ⁉︎
ビャッコの攻撃を大剣で受け止めやがった⁉︎
「ヴァァッ!」
ビャッコが受け止められた姿勢のまま放電した。
すると紫鬼が大剣を手放して後ろに下がった。
剣を手放した! チャンスっ!
「ヴァッ!」
ビャッコも同じ事を思ったか紫鬼に追撃に向かった。
「あっ!」
別方向から聞こえた声に俺とビャッコは思わず声の方を向いてしまった。
視線の先には倒れているアリシアさんと赤と青2匹の鬼の姿があった。
俺は痛みを押して即座にアリシアさんに向かって走った。
ビャッコの放電のおかげで周りの鬼の注意が希薄になっているのが幸いした。
ビャッコも追撃を中止してアリシアさんに駆け出す。
赤鬼はこちらに気づいて距離をとったが、残った青鬼にビャッコが前足を振り下ろして青鬼を確かに捕らえた……はずだったが青鬼は霧の様に姿を消した。
消えた⁉︎ 何だよ今のっ⁉︎
それよりアリシアさんはっ⁉︎
「ビャッコ! 少しの間頼む!」
「ヴァウ!」
急いでアリシアさんの口元に耳を近づける。
規則ただしい呼吸音が聞こえてきた。
良かった生きてる!
出血も無さそうだな、でも一体何をされたんだ⁉︎
医療知識なんてこれっぽっちも無いが、あったとしてもこの世界で役立つかどうか不明。
となると…今するべき事は離脱あるのみ!
小声でビャッコに話かける。
「ビャッコ、俺を信じられるか?」
「ヴァウ!」
よし! 良い返事だ!
「今からアリシアさんを安全な場所へ送る。そしたら雷を鬼達に放ってくれ、出来ればあっちの道だけ避けてな。
その後は俺について来てくれ、分かったか?」
「ヴァウ!」
ミク、アリシアさんだけ安全に『配達』頼む。
安全を強調してミクに頼む。
気を失っているとはいえアリシアさんにあのシェイクを味わわせるのはいかん。
俺は返事を待たずに腰につけてあったポーションを飲み干す。
《了解しました。スキル発動します》
ミクの言葉が終わるとアリシアさんが光に包まれてすぐに姿が消えた。
その光景を見た鬼達に動揺が走った。
「ビャッコ!」
「ヴァァァウッ!」
打ち合わせ通りビャッコが雷を放出した。
俺の指示した方向だけは綺麗に避けている、そこは森の入り口に向かう道だ。
よし! 後は全力疾走あるのみ!
「行くぞ!」
「ヴァウ!」
掛け声と同時に走り出した。
流石異世界アイテム!
ポーションってしょぼいイメージがあったけど即効性は抜群だ!
打身の痛みは消えてるし、疲れもある程度緩和した気がする。
雷を放出しながらビャッコが追従してきてる。
鬼達は雷を避けるのに必死でついて来ていない。
あまりビャッコに無理させるとガス欠になるので、程々で放出を打ち切ってもらい後はひたすら走った。
▽▽▽▽▽
どうやら無事振り切ったようだ。
安心は出来ないから急ぐに越したことは無いだが、全力疾走なんてそうそう長く持つものでは無い。
ステータスが倍になったぐらいじゃそんな長時間走れないよ。
だから今はそれなりの速度で走っている。
ちなみにビャッコは元のサイズに戻って俺の頭の上にしがみついている。
《マスターここです》
ミクからポイント地点到達のお知らせがあった。
どっち?
《左がそうです》
と言われても見た目じゃ全然分からん。
しかし人を惑わすような名前がついてるような森より信じるべきはミクだ。
言われた場所に近づき草木を分けてみる。
あれ? 感触が無い?
もう一度草木に触れようと手を伸ばした。
結果は触れる感触無く突き抜けた。
ミク、何コレ? 俺の知ってる単語だと幻覚って言葉がピッタリくるんだけど?
《可能性はあります》
……あまり考えてる余裕も無いし突っ切るか。
「ビャッコ! しっかり捕まってろよ!」
「ヴァウ!」
幻覚じゃ無かったら困るので一応顔を庇いながら草木に突っ込んで行った。
見た目草木にぶつかってんのに当たってないって変な感じだな。
っ⁉︎ 唐突に目の前が開けて一本道が現れた。
抜けた⁉︎
後ろを見ると道は無く草木で塞がれた光景だった。
迷いの森じゃなくて惑わす森の間違いじゃねぇのかよ。
でもこれで脱出出来る!
「ビャッコ! 早くアリシアさんのとこに戻るぞ!」
「ヴァウ‼︎」
俺はビャッコを頭に乗せたまま残りの道を全力で駆けた。
▽▽▽▽▽
「森を抜けたみたいです」
「何? 早いな? そんな簡単に抜けれるモノではないはずだが……、それに戻る時の迷いの無さ…実力は大した事無いようだが、先程のやつといいあの小僧何かあるな」
青鬼の言葉に紫鬼が感想を漏らした。
「どうしますか?」
「監視を頼む。俺達は戻って待機しておく」
赤鬼の問いに紫鬼が答えると他の鬼達と一緒に森の中に入って行った。




