2Day 〜異世界のちびっ子は凄いです〜
結構遠かったな。
方角が分かれば辿り着けるから距離の事は気にして無かったな。
お陰でマップは85%までいったけど、代わりに冷えただろうなぁコレ……しょうがないか。
「おや? アンタどうしたんだい?」
「女将さんに差し入れ持って来ました」
孤児院の入り口で止まっていた俺に女将さんが気付いてやってきた。
「差し入れ?」
「これです」
そう言って中を見せる。
「これは…トトロンだね」
「やっぱり知ってるんですね」
「そりゃ知ってるさ、どうしてまたこんなモンを?」
「この前助けて貰ったお礼です」
「アンタそんな事気にしてたのかい? いいっていったろ?」
「はい、だから今持って来ました」
「んん?」
女将さんが疑問の声を上げると後ろから別の声がカットインしてきた。
「女将さんその人誰?」
女将さんが俺の所に来た事で放置状態になった子供達がこちらに集まって来た。
「ん? ああ、こっちは………アンタ名前なんて言うんだい?」
「……そういえば言って無いですね」
今更感満載だった。
人の名前を聞くならまず自分が名乗るべきだったな。
「武器持ってるぞ! 怪しいやつだ!」
「敵襲か! 総員突撃ーっ!」
うおっ⁉︎ 騎士団ごっこの延長か⁉︎
しかし! 今の俺には秘策がある!
「そんなことを言っていいのか? これを見ろ!」
「何だそれは⁉︎」
「これは女将さんから頼まれたトトロンだ」
「コイツが欲しければ大人しくするんだな?」
「人質なんてひきょーだぞ!」
人なのかコレは? まぁいいか。
「さぁ! 欲しければ武器を捨てろ!」
「なんてこーかつなヤツだ!」
「仕方ない言う通りにしよう」
ふっ、勝った。子供なんて所詮そんなものよ。
この俺に勝てるわけが無いだろう。
潜った修羅場の数が違うのだよ。
《マスター、子供相手に何やってるんですか》
何と言うか……ノリ?
「アイツの言葉に騙されるな! 欲しいものは自分の手で奪うんだ!」
「そうだ! 盗られたら盗り返すんだ!」
「てめぇらやっちまぇ!」
待てぇい⁉︎ なんで急に盗賊のノリになるんだよ⁉︎
そもそもお前らのじゃねぇよ!
女将さんの影響か⁉︎ そうだな? そうに違いない!
やべ、やられる。
「お前達ちょっと落ち着きな!」
『へい! おやぶん!』
騎士団どこいった?
もう完全に盗賊じゃねぇか。
「せっかく買って来てくれたんだ。ちゃんと礼を言って食べな」
「にいちゃんよくやった!」
「オマエ良いやつだな!」
「ちょっと男子! ちゃんとお礼言いなさいよ!」
「…あの、ありがとうございます」
「ふふ、お兄さん、オイシソウ…」
何だ? 最後おかしいのが聞こえた気がするが?
流石の俺でも幼女はちょっと……?
「最初は指を切り落として、次に耳を、最後は首を…」
サイコかよっ⁉︎ こぇーよ⁉︎
大丈夫なのかココっ⁉︎
「こら! もう演技はいいからお礼いいなよ」
「あ、うん。お兄さんありがとう」
「え? あ、うん。どういたしまして」
何だ演技か、良かった。
でも何の遊びであんな演技が必要なんだ?
「ふふ…」
演技………だよね? 信じるからね?
「アンタいい性格してるじゃないか」
「この場合は褒め言葉として受け取っておきます」
「にいちゃんコレ細いけど剣か?」
「ん?」
女将さんと話していると服を引っ張る感触と共に声をかけられた。
「似てるけどちょっと違うかな? コレは刀って言うんだよ」
「でも剣なんだな? ちょっと貸してよ」
ん〜、異世界と言えど子供に武器を貸すのはどうなんだろうか?
女将さんを見てみる。
「刃物の扱いは教えてるから大丈夫だよ」
……本当にここの子は大丈夫だろうか?
盗賊や暗殺者の道を歩んでいる気がしてならないが?
「た〜の〜む〜よ〜!」
「あ〜、分かった分かった! 少しだけだぞ?」
「やりぃ! お宝確保!」
いや返せよ?
まぁ、新しいおもちゃ?に興味を示す辺りは可愛らしいもんか。
周りから離れた所に向かう子供を見てそんなことを思った。
ん〜、ちゃんと人のいない所に行く辺り危ないというのは分かっているようだ。
女将さんの指導の賜物かな?
「おっ? 何だコレ? 抜きにくいぞ?」
そうだろう、そうだろう。
そんな簡単に抜けたら今頃俺は居合が出来てると思うんだよね。
「にいちゃん! コレ剣じゃない方どうすんだ?」
「腰に差しておくか置いとくかだな」
「腰に差した状態で抜くのか?」
「そうだよ。でもちょっと体型的に難しいんじゃないかn」
フォン!
「あ、抜けた! それになんか早かったぞ?」
なん、だとっ⁉︎
今のは間違いなく俺が夢見た居合だ。
うそ? 居合ってそんな簡単に出来るの?
俺出来ないんだけど? いやそれよりもまずは!
「師匠と呼ばせて下さい!」
「にいちゃんどうしたんだ?」
「さっきのどうやったの?」
「さっきの? ん〜、チャっとしてムンってしながらふっとする感じだぞ?」
………やべえ。全然分からん。
間違い無く感覚派のタイプだ。
「にいちゃん分かんないのか? こうだよ」
フォン!
またもや刀が風を斬る音が響いた。
凄く簡単にやってる様に見える。
そして全然分からん。
辛うじて『チャ』の所だけは分かった。
コレは俗に言う鯉口を切るってやつだろう。
すっかり失念していた。
他は分からんがとりあえずやってみよう。
左掌で鞘を握り、親指で鍔を柄の方向に押し出す。
そして一気に抜刀!…って抜けてねぇ〜!
「にいちゃん何やってんだ?」
「師匠! 大変です! 抜けません!」
「しょうがないな〜、こうだって」
フォン!
刀を渡し、またも風を斬る音が。
一緒じゃん⁉︎ 何が違うの⁉︎
鯉口を切って抜き易い感じにはなったけど、その後が続かねぇ!
でも子供の体型でも出来るって事は俺にも出来るはず!
その後もひたすら試すが変わらず。
「にいちゃん……下手くそだなぁ」
ぐはっ⁉︎
精神にクリティカルダメージを受け地面に崩れ落ちた。
「あっはっは! 面白くて黙ってたけどしょうがないねぇ」
「女将さんあの説明で分かるんですか?」
「いいや全然」
女将さんも分かってないんかい!
「ただやり方は見てて分かったよ」
ナンデストっ⁉︎
その後は女将さんに『ムン』と『ふっ』の部分を教わった。
柄を握った右手を体の前に伸ばして抜刀、その時に柄の先端部分を相手の方向に向けること。
抜刀の動作を始め、切先が少し鞘に残っているところで左手で鞘を後ろに引く。
刀身が鞘から抜けたところで、腰を入れて右手一本で真一文字に払うように一閃するということだった。
これがあの二言に込められていると言うのも凄いが、見て分かる女将さんも凄いと思った。
て言うか初見で出来るってこの世界のちびっ子凄くない?
俺がダメダメ過ぎるのか?
それとも女将さんの指導の賜物か?
そうだ! そう言うことにしておこう!
何事も土台が大事だって言うしな。
その後も練習して何とかスキル『居合』を獲得した。
《マスターにそんなスキルはありません》
ミクの言葉は気にしちゃいけない。
思わぬ所で時間を食ってしまい、気づいた時には日が傾き始めていた。
夕方には宿でアリシアさんと合流予定なので急いで村を駆け回りマップを100%にした。
旅人レベルが上がってスキルを獲得したのだが何とも言えないものだった
《マロメの村の踏破率が100%に達しました。旅人のレベルが上昇します。スキル『配達』を獲得しました》
居合の後だとなんかねぇ。
《………………》
不思議だ……なんだかミクが不機嫌になっている様な気がする。




