2Day 〜お金って何で減るんだろう?〜
確かに昨日は真っ白に燃え尽きたけどさ…。
周りは濃い霧のようなモノで囲まれ真っ白で何も見えない。
デジャブ感ハンパ無いんだけど?
ミクー。
《………………》
返事が無いな。
マップも無くなってるし、ほっぺたをツネってみるが痛くない……また夢か。
てか異世界の夢ってコレが普通なの?
たまにしか見ないくせに随分つまらないんだな?
誰か登場人物はいないのか?
「誰かいたりしますかー?」
「…………」
応える声も無し、なんだかなぁ。
やっぱ寝るしか無いのか……寝よ。
またもや寝る選択をし、すぐに意識を手放した。
▽▽▽▽▽
さて、情報収集しながらマップを埋めますか。
村をブラつきながら暇そうな人を探す。
……ん〜、都合良くそんな人いないな?
皆何かしてて忙しそうだ。
村の朝だとそんなもんか、となるとどうするかな〜?
暇そう人が集まりそうな広場とかないかな?
そういうのって大体村の真ん中にあるイメージだな? 取り敢えずそっちに向かってみるか。
暫く歩くと開けた場所に出た。
中央には噴水があり側にはベンチが設置されていて周りには一件の屋台があった。
予想的中して広場のような場所にこれた。
ただ残念な事に人はいなかった。
都合良く人がいるのは物語の中だけですよね〜。
客がいないなら分かるけど屋台の人すらいないってどういう事?
諦めて広場を出て少し歩くと正面から前が見えていなさそうな人物が歩いているのが見えた。
縦に三つ重ねた段ボールで前が見えないとか…そんな事する人いるんだ。
その人物はヨロヨロしながら横を通り過ぎて行く。
無理に持たなくてもいいだろうに…。
あ、落ちそう。
そう思い咄嗟に落ちて来た段ボールをキャッチした。
「いや〜すまん! 助かったよ!」
頭に捩り鉢巻きを巻いたおっちゃんの顔が見えた。
「無理して運ばなくてもいいんじゃないですか?」
「次からはそうするよ。すまんが上に乗っけてくれるか?」
「…ついでなんで手伝いますよ。どこまで持って行けばいいですか?」
「助かるねぇ。じゃあ広場まで頼むよ」
「わかりました」
再び広場に戻って来たが、やっぱり人はいない。
「おう、こっちに頼む!」
「はーい」
言われた場所に段ボールを置く。
そこは先程誰も居なかった屋台だった。
開店前だったのか?
「運んで貰っといてなんだが、アンタ見ない顔だな?」
「ええ、昨日ここに来たばっかりです」
「へぇ? こんなとこになんか用でもあったのか?」
そう言いながら屋台の主であるおっちゃんがいそいそと荷解きをしている。
「成り行き……ですかね?」
「ふ〜ん? 他に連れでもいんのか?」
「そうですね……あ、おっちゃん、女将さんって知ってます?」
「ん? どの女将さんだ?」
そりゃそうだ。主語がなきゃ特定不能だ。
「えと、街道村です」
「あー、知ってるぜ。何だ連れって女将さんなのか?」
「はい、と言っても女将さんはたまたま一緒になっただけですが、ここまで商人の人と一緒に来ました。もう一人女の子がいますね」
「護衛か何かなのか?」
「半分はそうですね」
「半分?」
そのやり取りをしながらおっちゃんが段ボールから薪を取り出して火打ち石で火をつけた。
「ここに来る荷馬車が途中で襲われるって話を聞いたんでそれを確かめに来ました」
「何だ? 国のお偉いさんだったのか、よっ」
おっちゃんが燃えている薪の上に網をセットする。
今からバーベキューでもするのかな?
「いえ俺は全く違いますが、頼まれたので」
「へぇ、にいちゃんそんな凄ぇやつなのか? 見えねぇなぁ」
まぁ、旅人ですから。
「凄くはないんですが、そこが成り行きというやつですかねぇ? 出来れば何事も無いと嬉しいですが、実際どうなんです?」
おっちゃんが更に段ボールから肉のようなモノを串に刺して行く。
完全にバーベキューの準備だな。
「そう言えばそんな事もあったな。村に被害が出て無いからあまり気にして無かったな」
「あれ? 日用品とかと交換してるんじゃないんですか?」
「日用品っつても必需品じゃないからなぁ。あればいいっていう程度の品物だぜ?」
おっちゃんが肉を刺し終わった串を網の上に置いていく。
「そうなんですね。じゃあ村の近くに危険は無いんですね?」
「そうだな、それよりかは近くの森に入る方がよっぽど危険だと思うぜ?」
「ああ、『迷いの森』って呼ばれてるんでしたっけ?」
「知ってんのか? なら話は早い、なっ」
おっちゃんが串を裏返した。
ジュ〜という音と肉の焼ける匂いがお腹を刺激する。
「入ったら戻って来れないって聞きました」
「だな。村の人間でも行かねぇからな。命が惜しければ近づかないのが利口だな」
そう言うレベルなんですね…。
「はぁぁぁ〜〜……」
「何だ長い溜息ついて? もしかして行く気だったのか?」
「個人的に行く気は微塵も無いんですが、行く事になる予感がするんですよねぇ〜」
「何だそりゃ?」
「何なんでしょうね?」
「俺に聞くなよっと、どうだ? 食ってくか?」
「いいんですか?」
さっきからずっと気になってたんだよね〜。
「ただし! こっちも商売だ。美味かったら追加で買えよ?」
まさかそれが狙いか⁉︎ でも美味そうだからいっか。
「じゃあ頂きます」
「おう、熱いから気をつけろよ」
それでは実食!
「あっち!……んぐっ⁉︎」
何だこの感触⁉︎ 歯が要らないレベルで柔らけぇ⁉︎ 肉じゃなかったのか⁉︎
「どうだ? うめぇだろ? トロけるような食感に上質な甘みが特徴の肉なんだよ」
「んぐんぐ⁉︎」
「食べてからしゃべれよ、でもその様子だと美味かったみてぇだな」
そのとお〜り! 美味い!
「おっちゃんもう一本だ!」
「ほらよ」
「コレ何の肉ですか?」
「『トトロン』だ」
………………『トトロン』?
子供の頃にしか見えなくて森に住んでる噂のもののけじゃないよね?
「……何ですかそれ?」
「知らないのか? 豚の魔物だよ」
豚なんだ…良かった。
一瞬子供から大人まで愛されるキャラクターを食しちゃったのかと思ったよ。
しかもおかわりまでしてしまった。
そんなことしたら一夜にして俺は最低最悪の悪役だぜ。
…どこかで似たフレーズを聞いた時はカッコよく思えたのに、少し違うだけで言葉も意味合いも最底辺だ!
「おっちゃん、これ一本おいくらですか?」
「大銀貨1枚だ」
一本千円とは中々だ。
しかし! これはお値段以上だ!
魔物って美味いんだなぁ。
そういや女将さんの所でも魔物だったしなぁ。
あ、そうだ! 女将さんと言えば!
「おっちゃん、さっきとは違うことが聞きたいんですけど?」
「何だ?」
「女将さんの名前を知ってたら教えて貰っても?」
「聞いてねぇのか?」
「聞いたんですけど自分から名乗るつもりは無いって言われたんですよねぇ」
「………ああ、そう言うことか」
「何か理由が?」
「そうだなぁ、タダって訳にはいかねぇなぁ? もう一本でどうだ?」
そう来たか。
「ちゃっかりしてるなぁ、よし買った!」
「まいど! ほらよ」
う〜ん! やっぱり美味い!
所持金が大銀貨8枚になったけど、必要経費ってことで。
《人のお金ですよね?》
…………。
「女将さんの名前は『カレン』だよ」
カレン? 随分可愛らしい名前だな?
「自分には似合わない。とか言ってた事があったっけなぁ」
「ああ、それで名乗るつもりはないと?」
「名前通りだろ?」
「確かに」
見た目と職業は置いといてやってる事はいい人なんだよなぁ、俺も助けて貰ったし。
孤児院にいるって言ってたしちゃんとしたお礼も兼ねて何か持ってくか?
女将さんが受け取らなくても子供達には受け入れられるだろうし…。
でもこの世界にそう言う系あんのかな?
おっちゃんに聞いてみるか。
「孤児院に差し入れ持って行こうと思うんですけど、何かいいモノ売ってるとこってありますか?」
「う〜ん、そう言うのは無ぇなぁ」
やっぱり菓子の類は無いのか…となるとどうするかな?
「ここを除いてな」
「ん?」
「コイツを持っていきな串じゃなくてバラにしてやるよ。そうだな…大銀貨3枚でどうだ?」
ホントちゃっかりしてんな?
足元見てんじゃないだろうな?
まぁ買わない選択肢もあるしそれは考え過ぎか。
「じゃあ、それで」
「おう! ちょっと待ってな!」
これで更に所持金が減って残りが大銀貨5枚となった。
お金って何で減るんだろう?
《マスターが使うからですよ》
無駄遣いじゃないよ⁉︎
《では、稼いでないからです》
ぐっ⁉︎ 全く反論出来ん!
言われてみるとこの世界に来てから一切収入を得ていない。
そもそもどうやって稼ぐかもわからん。
………まっ、なんとかなるでしょ?
それに今はそんな時間無いしね。
そういうのは自由の身になってから考えよう。
明日は明日の風が吹くのさ。
《……………》
ミクも静かになったし、なるべく冷めないうちに届けに行こう。
おっちゃんに孤児院の方角を聞いた方がいいな。
「おっちゃん、孤児院ってどっちですか?」
「ああ、あっちだぜ」
ふむ、未探索エリアか。
まぁブラブラしてた時に見てないから当然か。
「じゃあおっちゃん、ご馳走さま!」
「おう、機会があったらまた来いよ!」
軽く手を振って広場を後にした。
今の時点で踏破率は50%。
これなら昼までには無理でも今日中には行けそうだな。
そんなことを思いながら孤児院を目指した。




