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レベルは存在するみたいです


只今街道村からそれなりに離れた森の中を鋭意探索中。


もちろん村の周辺も調査したさ。

最初は村から離れるわけじゃないし危険は少ないからここらで役に立てるのでは?とか考えていた時期もあったよ。


しかし!残念な事に街道も含めて村の周辺は何も無いからとても見晴らしが良いのだよ。

お陰でそりゃもうアッサリと調査は終了しましたよ。


その後アリシアさんは静かに言いました。

「では、次に行きましょうか」

だって。最初は何の事かと思ったよ。


何かあるなら視界が開けていない場所でしょう。と言うアリシアさんのもっともなご意見。


そっスね。あれだけ見晴らしが良いんだから何かあれば情報収集した時に間違いなく話に上がっていた事でしょう。

呼吸をしない人間がいないのと同じぐらいの次元の話ですね。


それにこの世界での『周辺』という言葉の範囲を見誤ったのも大きい。


徒歩で10日を移動しようという感覚をお持ちの方からするとここ(それなりに離れた森)も周辺の守備範囲だったようだ。


《浅はかでしたね》

ほっとけ!


ちなみに俺のスキルである『護身用具』は使っていない。

魔物が原因だとするなら魔物と出会う可能性を下げるスキルを使うと何も分かんないしね。


出来れば何事も無く終わりたい……。


不意にトントンと肩を叩かれた。

まさか⁉︎アリシアさんがそんなことを⁉︎

一体何のご用事だろうか?

自然と胸が高鳴ってしまう。

落ち着け落ち着け!平常心だ!


「アリシアさんどうかしましたk……どちら様デスカ?」


肩を叩いてきたのはアリシアさんでは無かった。

少なくとも元の世界に遡ったとしてもこんな知り合いはいない。


そうだな……大きさは俺の身長と同じぐらいで木に手足が生えた様な姿に目と口らしき空洞がある生物?いや植物か?


《魔物でしょうね》

やっぱりか⁉︎

だが運が悪かったな!こっちには火炎瓶という貴様達の弱点があるのだ!


さぁ、アリシアさん!

今こそ念の為を発動する時です!

「アリシアさん!」

「はい」

「?」


はて?何やら離れた所から声が聞こえた様な?

そう言えばアリシアさんは横を歩いていたはず?

声は聞こえるが姿は見えずこれ如何に?


何処となく上から聞こえたような気もするが…?

……Oh!ビッグサ〜イズ⁉︎


肩を叩いて来たやつと同じ姿をしているのに、目の前のヤツと比べて三倍ぐらいデカイ奴がその後ろに⁉︎


そしてよく見ると奴の手の部分に神々しいお姿が⁉︎

「あれはっ⁉︎」

アリシアさんが捕まってらっしゃる⁉︎


いきなり切り札を封じられた!

いや!それより助けなくては!


抜刀し鞘を投げ捨てる。鞘がどうこう言ってる場合じゃない!鞘よりアリシアさんの方が大事だ!

両手で握りしめ目の前のヤツを薙ぎ払う!


「ギェッ⁉︎」

短い断末魔の様なものをあげて胴?が二つに分かれる。


斬れた⁉︎

思いの外あっさりと斬れたので自分でも驚いた。


意外と脆いのか⁉︎ならこの調子で!

「っておい!逃げんのかよ!待て!」


その図体でまさかの逃亡かよ⁉︎

それにアイツっ⁉︎なんて羨ましいことしてんだよ!

俺の中である種の嫉妬が生まれる。


お姫様をお姫様抱っこしながら逃げるなんて!

俺がやってみてーよ‼︎


悪の手から救い出したみたいなノリしやがって!俺が悪役か⁉︎

どう見てもお前が悪もんだろーが‼︎


デカイくせに速い⁉︎

ここは向こうの庭ってことかよ!

くそっ!距離が縮まらねぇ!


暫し追いかけっこを続けたが唐突に終わりが訪れた。


止まった⁉︎何でだ⁉︎この際どうでもいいか。

よし追いつい……なっ⁉︎マジかよ⁉︎


デカイヤツの進行方向には同じサイズのヤツが視界一杯に控えていた。


サイズは一緒ぐらいだが後から出現したヤツらは全部果実みたいなモノが頭?に実っている。


別種のタイプか⁉︎仮に弱かったとしてもこの数はヤバくないか?見たところ二十はいる!


あーもう!そんな事知るかっ!

ごちゃごちゃ考えるのは目の前のアリシアさんを助けてからだ!


思い立ったが吉日!

最初の実無しに斬りかかった。

『⁉︎』

しかし斬りつける直前に実つきの一体から枝が伸びアリシアさんを奪ってしまった。


っ⁉︎マジか⁉︎あれ全部相手にするしかねぇのか⁉︎

って、あれ?

アリシアさんを奪ったヤツの枝がアリシアさんごとこっちに向かってくる?

そして俺の目の前で止まり停止している。


どうゆう事?

そう思って実つきを見る。

心なしか口角?が上がっている様に見える。

………………不気味だ。


でも悪い笑顔では無さそうだ。

受け取れってことでいいのか?


刀を置いて両手を差し出す。

すると実つきがゆっくりと枝を解きアリシアさんを解放した。


俺の元にアリシアさんが戻ってきた。

良かった。


でもこの状況は一体何なんだろうか?

実つき達は去って行くどころかジリジリとこちらに距離を詰めて来ている気がする。

アリシアさんを返してくれたって事はこっちに敵意は無いと思われるんだが?


じゃあなんで近づいて来てるんだ?と思い周りを見てみると実無しがすぐ側にいた。

大人しいからすっかり存在を忘れていた。

動かないとただの木だしな、でもこれは………実無しが震えてる?


とか思っていたら、突如実無しに向かって実つき達の枝が伸びた。

実無しは躱すことも出来ずに捕らえられ全身を枝でグルグル巻きにされて姿が見えなくなった。


そして中の実無しからベキベキベキという木が徐々に折れていくような音が聞こえる。


「ギェッ!」

最後にべキャみたいな音と断末魔の様な声を最後に実無しから応答は無くなり、巻きついていた枝が解かれた。

後には木屑と化した実無しの残りと思われる木片が地面にパラパラと落ちた。


それを見届けた実つき達は枝を振り回しながら去って行った。


一連の出来事を呆然と見届けてしばし放心。


仲間割れか?

人だったらとんでもなく恐ろしい光景だか、魔物だし木だからな。


「あの悠生様。そろそろ降ろして頂いても宜しいでしょうか?」

「へっ?」


もの凄く近い位置からアリシアさんの声が聞こえた。

視線を声の方に移動させる。そう俺の胸元へと……。

「っ⁉︎」


奇しくもつい先程実無しがしていた事が俺の現実になっていた。

「す!すいません!気付きませんでした‼︎」

とてつもなく慌てたがなんとかアリシアさんをゆっくり降ろす事に成功した。


「いえ、助けようとして頂きありがとうございます」

……いつも通りの冷静さ。

脈無しってこう言う事だよね〜。


俺が助けたのとは微妙に違う気がするからしょうがないのか?

と言うよりアリシアさん?

アッサリ捕まり過ぎじゃありません?

アリシアさんってもしかして非戦闘員?見た目通りの可憐なお姫様ですか?


「さっきのって…」

「あれはトレントと言う木の魔物です。実無しがオスのトレンダーで実つきがメスのトレンニーです」

「性別あんのっ⁉︎」

「はい、オスの特徴として人間の女性を攫います。ですが悪戯好きなだけで危害を加えることはありません。メスの特徴としてはとても嫉妬深いです」


………アリシアさんが抵抗無く捕まったのって危険が無かったから?

マジか⁉︎心配しなくて良かったのかよ⁉︎


ていうかメスの方容赦ねぇな〜、悪戯しただけで問答無用で殺害とか恐ろし過ぎる。


どこの世界でも女性は強いんだなぁ。

物理的に強いのは初めて見たけど。


「だからと言っていきなり殺害するなんて魔物の世界は厳し過ぎですね」

「あちらを見て下さい」


言われた方向を見る。

あれ?さっきのバラバラ実無し、もといトレンダーの木屑が動いてる?

眺めていると木屑が一箇所に積み重なって行き発光し始めた。


なんか影絵で植物の成長を早送りで見てるみたいだな?


一箇所に集まった木屑が徐々に木の形になり、その後手足が生えた姿に変わった所で光が収まった。

姿を現したのは子供サイズぐらいになったトレンダーだった。


「再生した⁉︎」

「生命力は強いので完全に消滅しない限りは再生します。ですが、元のサイズより小さくなるので暫くは悪戯できません」


なるほど、だから容赦ないのね。

危害は加えないって言ってるし火炎瓶で消滅させずに済んで良かったのかな?

最初に斬ったヤツも今頃は再生してるんだろうな。


トレンダーよ。お前は俺にいい夢を見させてくれた。表立って敬意を表する事は出来ないが、グッジョブだ!


そんな事を思っていると子供サイズになったトレンダーが拳を固め親指を立てたポーズをして去って行った。


なんだか通じ合った気がする。


ポン!

聞き覚えがある電子音が響いた。

ミクがいるのにまだ鳴るのコレ?


《マスターのレベルが上がりスキル『居合』を獲得しました》


マジ⁉︎

職業レベルじゃなくて俺⁉︎

しかも初の戦闘スキル獲得⁉︎


あっ!鞘投げ捨てたままだ!

『居合』というからには必須アイテムだ。


「すみません!アリシアさん鞘を置いて来たんで取りに行っていいですか?」

「はい、では今日はここまでにして村に戻りましょうか」


最初の所に戻って鞘を探す。

おっ、鞘発見!

見つけた鞘に刀を納める。


さて、ここは森の中スキルを試すには絶好の獲物達がいる。

早速試してみよう、手頃な木を居合で華麗に……斬るべし!って?斬れてな〜い⁉︎


というより刀が鞘から抜けきって無いんですけど?

今の俺の姿、もの凄い中途半端です。


ミクさんどういう事?

《すみませんマスター。嘘です》


はいぃっ⁉︎

《まさか、あれだけ説明を求めていたのに聞かずに試すとは思わなかったので》


やべ!超恥ずいんですけど!

ほらっ!アリシアさんが不思議そうに見てるよっ!


何事も無かったかのように刀を鞘に戻す。


「鞘を探すのに付き合わせてすみませんでした」

「いえ、あの」

「さぁ暗くなる前に村戻りましょうか」

「?……そうですね?」


あ〜もう!疑惑たっぷりマシマシだよ‼︎

俺の信頼と期待をど〜してくれんの!


《信頼は無い気がしますが、期待は全くと言うわけではありませんよ?》


一言余計だよ!

期待が無い訳じゃ無いってどう言う事?


《マスターのレベルが上がったのは事実です》


え?本人レベルの概念あんの?

《むしろそちらがステータスのメインです》


マジ?

《真剣です。今回はちゃんとした戦闘でのレベルの上昇でしたのでお知らせしました。その方が実感出来るかと思いましたので》


お知らせってミクの匙加減なの?


《そうです》

出来ればフェイクは勘弁して下さい。

いつか致命的な恥をかきそうです。


《ご安心下さい同じネタはしませんので…………多分》

ネタでやってんのかよ!

多分ってなんだよ⁉︎言い切ってよ!

実践でやってたら大事故だよ⁉︎


《流石にそんな場面ではしませんよ?》

そうあることを切に願うよ。


せっかく初めてレベルアップしたのにスカって………ショックでけぇ。


《マスターの今のレベルは『5』ですよ?》

はい?


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