スキルを獲得しました
わからん!
さっきから何かが引っ掛かっているが、一向に兆しが見えない。
……いいや、諦めよ。時には諦めも肝心だ。
それより今は久しぶりのベッドの感触を堪能しよう。
……う〜ん、元の世界とは比べ物にならないぐらい固い。が、野営してた時と比べると数倍マシだ。
地面って冷たくて固いよね。
そんなどうでもいいことをしていたら扉が開く音がした。
アリシアさんが戻って来た、んだけど…?
何だろう?何かが違う。
髪が濡れてる?まさかっ⁉︎
「早かったですね?」
「ええ、湯浴みをしていました。宿でお借りできますよ」
何てこった!お約束イベントに気づかなかったなんて!
引っ掛かりというのはこれか⁉︎これなのか⁉︎
そうに違いない!なんたる不覚!
でも知ったからと言って覗いたりはしなかったと思うよ?
世の男性からは勇者と称えられるかも知れないが、称号と引き換えに命を散らしたくはない。
でも……思えば1週間近く風呂に入ってないな。
湯浴みとはいえ俺も行くべきだな。
そういえばこの世界に風呂はあるんだろうか?
大抵の異世界モノって一般には無い設定が多いよな?
う〜ん、日本人として許せん。
これは新たな旅の目的候補だな。
風呂は命の洗濯ですよ?
「じゃあ、俺も行ってきますね」
「はい、私はお先に休みますね」
「どうぞどうぞ」
そう言うとアリシアさんが反対のベッドで就寝体勢に入った。
……………………………。
コレだよっ‼︎引っ掛かりの正体はっ‼︎
覗きイベントじゃねーよっ!
何でアリシアさんが一緒の部屋にいんのっ⁉︎
この世界ってコレが普通なの⁉︎
なんてこった!潰えた野望がこんな形で叶うなんて!
「アリシアさん?」
小声で呼んで見るが、反応は無い。
アリシアさんなら小声でも反応しそうな気がするから本当に寝ている……、んだと思う。
小声なのは本当に寝てたら起こすのが悪いと思ったからだ。
決してやましい事は考えていない。
ホントダヨ?
チョット寝顔をミルだけダヨー?
ソロリと立ち上がりさっきより近づいてみる。
う〜ん、壁側を向いているので顔が見えない。
なんてこった!最後にこんな難関が待ち構えていたとは!
「…アリシアさ〜ん」
もう一度小声で呼んで見る。
「……ん…」
微かな声と共にアリシアさんが寝返りを打った。
俺は見た!目の前に広がる銀河を!
ごはっ⁉︎
そしてその直後に襲ってきた不可視の衝撃に吹き飛ばされ自分のベッドに倒れ込んだ。
ぐっ⁉︎なんて破壊力だ⁉︎想像以上だ!
これが小宇宙というやつか⁉︎
今なら第六感を超えられるかもしれん!
そして気を取り直してもう一度アリシアさんを見る。
AMMです。
これはどう受け取ればいいのだろうか?
この世界での普通なのか、それともオッケーということなのか?
どちらかと言えばこの世界での普通のような気がする……。
だがしかし!オッケーであって欲しいというのが願望だ!
もしかして察して欲しいという無言のサインか?そうなのか⁉︎
だったら、遠慮する方が失礼だな。
うん、きっとそうに違い無い!
アリシアさん貴方の思いはちゃんと伝わりましたよ!
ソロソロとアリシアさんに近づく。
「……ん…」
「っ⁉︎」
びっくりした‼︎起きたかと思った!
「……おとう様…おかあ様…、おにぃ様…」
「っ⁉︎」
アリシアさんから微かに聞こえる声があった。
寝言か………そう言えばアリシアさんっていつも冷静だから大人びて見えるけど一体いくつ何だろうか?
そもそも王女様が護衛もつけずこんな旅をするなんて普通無いよな?
父親からの指令だから仕方なくなのかも知れないけど、アリシアさんにとってはあんなんでも父親だ。
俺的印象は最悪で既に復旧不可能なレベルだが。
尊敬してると言っていたし、父親らしい時期もあったのかも知れない。
人は見かけで判断しちゃいけないって言うしな。
アリシアさん、見た目は華奢だし知識はあるんだろうけど旅に慣れてるとは思えない。
見せて無いだけで本当は疲れや不安があったのかもしれない。
そう思うとアリシアさんがなんだか可哀想になってきた。
俺はアリシアさんの乱れた毛布をかけなおしてそっと部屋を後にした。
ちょっと夜風にあたろう。
まだ厨房の片付けをしていた女将さんに声を掛ける。
「すみません、ちょっと出掛けてきます」
返事を待たずに宿から出る。
日は完全に落ちていて外は真っ暗だ。
とは言え野営してた時と違って建物から灯りが漏れているから歩く分には問題無さそうだ。
マップを確認して埋まっていない方向へ向かって歩き出す。
程なくて探索は終了した。
ポン!
聞き覚えがある電子音が響き、
街道村の踏破率が100%に達しました。
旅人のレベルが上昇します。
▽
と表示されていた。
今回も上がるのは俺じゃなくて職業レベルの方だった。
………待てよ?レベルがあるのが当たり前だと思ってたけど、もしかしてコレが正しいのか?
そういえばその辺のことを聞いた記憶が無い。
そして何だ?最後の『▽』って?
顔文字の出来損ないか?
とりあえず触れて見る。
あ、何か続きが出た。
えっ?これって⁉︎
一文だけ現れたされたそこには……。
スキル『ナビゲーション』を獲得しました。
と表示されていた。




